著者
木村 昌紀 余語 真夫 大坊 郁夫 Kimura Masanori Yogo Masao Daibo Ikuo キムラ マサノリ ヨゴ マサオ ダイボウ イクオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.7, pp.31-39, 2007-03

本研究では、他者の感情表出に対する感受性を測定する「情動伝染尺度(Doherty, 1997)」の改訂を行い、共感性や精神的健康との関連性を検討した。363名の大学生が質問紙に回答した。因子分析の結果から、"喜び伝染"、"悲しみ伝染"、"怒り伝染"、"愛情伝染"の4つの下位因子が抽出され、各因子の内的整合性および再検査法による信頼性が確認された。また、共分散構造分析の結果から、1因子モデルよりも4因子モデルのほうが、適合度が高かった。加えて、他者の感情表出に対する感受性は、認知的共感性よりも情緒的共感性と有意な関連を示していた。さらに、喜び伝染のようなポジティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が良かった一方、悲しみ伝染や怒り伝染のようなネガティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が悪かった。これらの結果から、特定の感情について伝染しやすい人が、別の感情についても伝染しやすいとは限らず、感情の種類によって精神的健康への影響が異なることが示唆された。情動伝染のメカニズムを考える場合、感情の種類によって独立したプロセスを仮定する必要がある。
著者
手代木 功基
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>はじめに </b><br>モンゴル国南部には草本が卓越する乾燥ステップが広がっている。こうした草本優占景観の一部には、灌木が集中して分布する地域がみられる。世界の乾燥・半乾燥地域の植生と放牧圧の関係を検討したAsner et al. (2004)は、草原中の灌木は,過放牧に起因する草原の劣化にともない優占すると指摘した。一方で、モンゴルにおいては、これらの灌木は家畜の採食資源になっているという報告もある(Fujita et al., 2013)。このように、内陸アジアの乾燥ステップにおける灌木の分布の実態や放牧との関わりについては不明な点が多い。 したがって本研究では、モンゴル国南部、マンダルゴビ地域において、高解像度衛星画像を用いて灌木の分布を明らかにすることを試みる。そしてその結果をもとに、分布の要因や家畜の放牧との関係を定量的に検討する。 &nbsp; <br><br><b>方法 </b><br>調査地はモンゴル国ドンドゴビ県、サインツァガーン郡である。特に県の中心地であるマンダルゴビの南東部を対象とした.降水量は年変動が大きく、干ばつやゾド(寒冷害)もしばしば発生する。対象地域には家畜を飼養する牧民が居住している。牧民は主に移動式の住居に居住しており、季節的に遊動しながら放牧を行っている. 現地調査は2013年9月、2014年1月,及び8月に実施した.灌木の分布を現地で記録して衛星画像解析時の参照情報にするとともに、対象地域における牧民の樹木利用や放牧活動について調査した。放牧活動については、対象地域内で家畜を飼養している牧民のヤギとヒツジにGPS首輪を取り付け、放牧場所を記録した。 灌木の分布は、空間解像度が50cm(パンクロ)、2m(マルチ)と高いWorldView-2(撮影日:2011年7月14日及び10月24日)を利用して抽出した。この解析にはExelis VIS社製ENVI5.1とFeature Extractionモジュールを使用した。 &nbsp; <br><br><b>結果と考察</b><br>調査地域では、主に<i>Caragana microphylla</i>と<i>Caragana pygmala</i>が灌木として出現した。これらの灌木の周囲にはしばしば砂が堆積したマウンド(nebkha)が形成されていた。マウンドの高さは平均が約30cmであった。 次に、衛星画像上でオブジェクト分類を行って、灌木の分布密度を算出した。その結果、灌木の分布は地域内において一様ではなく、偏りがみられることが明らかになった。これらの灌木の分布は、マクロスケールにおける地形や土壌の差異と関わりがあると考えられる。 次に、灌木の分布と放牧場所の関係について検討した。その結果、灌木が高密度で分布する場所はヤギ・ヒツジの放牧場所として利用されていることが明らかになった。牧民は季節によって放牧場所を移動させており、特に草本の採食資源が減少する冬から春にかけて灌木の密集地帯を利用していた。 牧民は、草本が不足する時期や、干ばつなどの災害時には灌木が家畜にとって需要な採食資源になると語る。したがって、今後は干ばつやゾド時における灌木の利用状況を定量的に明らかにすることを通して、乾燥ステップにおける樹木の役割を再評価していく必要がある。<br><br>*本研究は,総合地球環境学研究所「砂漠化をめぐる風と人と土」プロジェクト(研究代表者:田中樹)及びJSPS科研費・若手研究(B)「乾燥地域における放牧システムのレジリアンスに関する研究:樹木の役割に着目して」(課題番号:25750118)の成果の一部である。
著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

愛媛県菊間町の秋例祭に登場する牛鬼は、当初は妖怪として想像されたが、のちに疫病よけの御利益を期待され、今日に至っているものである。牛鬼は神輿とは異なり正式には神としての扱いを受けないが、にもかかわらずいくつかの場面では神の類似行為を遂行する。なかば祀られた存在であり、神に限りなく近づいてはいるがなおかつ神にはなれていない存在としての牛鬼から、神とは、宗教とは何かについて考えたい。
著者
橋本 和明
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.31-60, 2010-03

これまでの配偶者虐待研究は、実態調査や量的研究を中心とした虐待の発生や要因についての分析であった。本研究では、「事例のメタ分析」という質的研究法を用いて、虐待の深刻化のメカニズムについての要因分析を行った。対象とした事例は、ある都道府県の児童相談所及び配偶者暴力相談支援センターに持ち込まれた配偶者虐待 23事例であり、「事例のメタ分析」を実施してカテゴリーを生成し、そのカテゴリー間の構造化を図った。その結果、(1)加害者と被害者のパートナー関係、(2)加害者の特徴、(3)被害者の特徴、(4)家族関係の特徴、(5)関係機関との特徴にそれぞれ特徴が見出された。その一方で、虐待の深刻化を低下させるものとして、「ネットワーク機能のある切れ目のない支援」等、6つの要因が見出された。
著者
島田 一平
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.D30-D31, 2004

ふたつの異なる分野において,ふたつの異なる量がほとんど同一の公理系に基いて導入されている。一つは数理経済学における"効用の数値的尺度"であり、他の一つは熱力学における"エントロピー"である。このことから、複数の主体間の競合という点を別にすれば、経済的均衡が熱平衡と形式的に同一の概念である事が結論でき。均衡点(熱平衡)の安定性の考察を経て、経済動学と非平衡動力学との関係へと、アナロジーをたどる足掛かりが与えられる。
著者
伊勢田 哲治
出版者
名古屋工業大学 技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-36, 2016

フォード・ピントの設計上の欠陥の事例は, その設計のもとになったとされる非倫理的計算を示す「ピント・メモ」とともに, 日本の技術者倫理教科書の中で頻繁に言及されてきた. しかし、この事例についての「通説」には多くの不正確な点があり, とりわけ, 「ピント・メモ」は実はピントの設計に直接は関係しない文書であることが分かっている. この問題についての注意喚起はすでになされているが, 技術者倫理教育コミュニティの反応はそれほど敏感とはいえない. 本論文では「通説」の不正確な部分をより一次資料に近い文献をもとに確認するとともに, 現行の技術者倫理教科書でこの事例がどのように扱われているか, 具体的に検討し, 分類する. さらに, 現行のさまざまな取り上げ方に長短があることを踏まえ, 本論文で「フィクション派」と名付ける, 別の取り上げ方を提案する.
著者
篠田 道子 上山崎 悦代 宇佐美 千鶴
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.129, pp.15-38, 2013-09-30

本研究の目的は, グループインタビュー法により, 特別養護老人ホームと医療療養病床での, 終末期ケアにおける多職種の連携・協働の実態を明らかにすると共に, 両者の結果を比較し, 異同を明らかにすることである. その結果, 特養と医療療養病床の連携・協働で類似していたカテゴリーは, 多職種による情報交換, 本人・家族の希望に合わせたケア, 看取りのみに集中できないジレンマなど 8 つであった. 一方で, 異なっていた点は, (1)特養は縦型の指示体系を, 医療療養病床では横のつながりを重視, (2)特養は脆弱な人員体制を, 医療療養病床では医師や家族の指導・教育を改善すべきと考え, (3)特養は個人の力量不足を悔やみ, 医療療養病床では自分の力をもっと活用したいという意欲が見られた.
著者
関 大聡
出版者
『年報 地域文化研究』編集委員会
雑誌
年報地域文化研究 (ISSN:13439103)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-23, 2016

Le but de cet article est de mettre en lumière l'importance de la lecture du livre d'Antoine de Saint-Exupéry, La terre des hommes, dans le développement de la pensée sartrienne. Sartre le lit pendant la mobilisation de la Seconde Guerre mondiale et le rapproche de la notion d'« être-dans-le-monde » heideggerienne. Nous essayons de montrer que cette « saint-exupérisation » de la pensée heideggerienne lui fait préparer non seulement la nouvelle orientation de sa pensée mais aussi la lecture anthropologique de Heidegger. Pour commencer, nous analyserons en quoi on peut justifier une telle identification de la pensée de Saint-Exupéry avec celle de Heidegger en recourant à la notion d'être-dans-le-monde. En effet, celle-ci est ce qui sépare Saint-Exupéry des auteurs exotiques en ce qu'elle rompt avec le touriste abstrait, modèle de protagoniste de ces derniers. L'aviateur saint-exupérien dévoile, en tant qu'être-dans-le-monde, le secret du monde à travers son métier. En ce sens, il paraît pour Sartre, qui tentait d'ailleurs de saisir l'enjeu de la pensée de Heidegger, comme un exemple idéal qu'il doit suivre. Ensuite, nous arguerons que ce même exotisme exerce une influence sur la pensée philosophique de Sartre. Sa pensée d'avant-guerre se caractérise comme la pensée de survol, terme que Merleau-Ponty utilisera pour critiquer Sartre. Mais en lisant Saint-Exupéry, il commence à prendre conscience de sa propre corporéité et de sa vision fonctionnaire du monde détachée de tout lien avec la terre. C'est pourquoi il essaie de refaire de sa philosophie une philosophie enracinée dans la terre. Enfin, nous verrons que l'introduction de cette nouvelle perspective pourrait, selon lui, faire courir le risque des fascismes. En critiquant l'ancien humanisme fondé sur la notion abstraite d'espèce, Sartre décèle en même temps, dans la notion d'être-dans-le-monde, une nostalgie vague des fascismes. Pour éviter ce piège dont Sartre lui-même faillit être victime, il lui faudra un long et fastidieux effort pour anthropologiser la pensée heideggerienne, ce qui aboutira enfin sur l'établissement du nouvel humanisme.
著者
大塚 康民 岩田 吉弘 小野沢 昭彦 宮本 吉教
出版者
航空医学実験隊
雑誌
航空医学実験隊報告 (ISSN:00232858)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-113, 2006

Urinary catecholamine responses of fighter pilots were investigated in Aerial Combat Maneuver(ACM). The levels of urinary adrenaline (Ad) and noradrenaline (NA) were determined in fighterpilots during ACM with three types of aircraft (F-4, F-15 and F-2). The levels of Ad for post-flightwere significantly higher than for pre-flight, while changes were not significant for NA. The ratios(post-/pre-flight) of Ad in ACM with different types of aircraft are relatively similar values. Ourresults indicate that the ratio of urinary Ad as a good indicator to stress adaptation during ACM infighter pilots.