著者
森内 安子 田中 智子 逵 牧子 森下 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.154, 2004

<目的>前報では、レモン果汁を魚の酢じめに用いることで、食酢より魚肉の硬さが低下したと報告した。今回はレモン果汁の主成分であるクエン酸と食酢の主成分である酢酸および、それぞれにアスコルビン酸を添加した4種の溶液に魚を浸漬し、魚肉の硬さおよび浸漬液のpH、液量、たんぱく質量を比較検討した。<方法>試料は市販のサバを実験当日に購入して用いた。魚肉は、5%の塩をして冷蔵庫中で20時間放置した後、有機酸(酢酸4%、クエン酸6%)に5時間浸漬し魚肉の硬さを測定した。浸漬液はpH、液量、およびビュウレット法でたんぱく質量を測定した。浸漬液の測定のみ酢酸6%についても行った。また、塩をしない魚を5時間浸漬し、浸漬液中のたんぱく質量の経時変化についても測定した。<結果>有機酸に浸漬した魚肉の破断応力は酢酸4%よりクエン酸6%の方が低下していた。さらに酢酸4%およびクエン酸6%のいずれもアスコルビン酸を添加することで魚肉の軟化が見られた。魚肉の軟化に影響する浸漬液量は酢酸4%よりクエン酸6%の方が減少していることから、保水率に影響することが示唆された。浸漬液中のたんぱく質はレモン果汁、食酢ともに浸漬3時間後から増加した。5時間浸漬では、クエン酸6%より酢酸4%の方がたんぱく質は増加し、酢酸4%浸漬では魚肉の旨みの損失が考えられた。しかし酢酸6%浸漬液ではクエン酸6%との顕著な差はいずれも認められなかった。
著者
隈元 美貴子 柳田 元継
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.53-62, 2016-03-18 (Released:2018-11-28)

化粧行動を規定する要因として、ライフスタイルがあるが、このライフスタイルという概念は、その性質上、調査時期による変動的概念であるともいえる。それゆえ、現在の大学生のライフスタイルを明らかにするための十分なアンケートがほとんどない。そこで、本研究では、女子大学生を対象者とし、化粧行動とライフスタイルの関連性を明らかにすることを目的とし、まず、ライフスタイルに関するアンケートを作成し、化粧行動に関するアンケートと併せて質問紙調査を行い、その結果について検討を行った。ライフスタイルを測定する64項目への反応を因子分析(主因子・プロマックス回転)し、スクリープロットを参考に5因子を抽出した。それぞれ、「熱中度」「人間関係」「生活意識」「金か心か」「「ファッション」と命名した。次に、化粧行動を測定する27項目への反応を因子分析(主因子・プロマックス回転)し、スクリープロットを参考に5因子を抽出した。それぞれ、「自己顕示」「規範・機能」「流行性」「楽しみ」「受動性」と命名した。ここで、化粧行動に対する考え方で対象者をグループ化するために因子得点をもとにクラスター文政を行ったところ、「化粧関心型」「化粧中間型」「化粧無関心型」の3つのグループに分類することができた。各グループのライフスタイルを明らかにするために、ライフスタイルの因子特定の平均値を比較したところ、各因子においてグループ間で差異が認められ、化粧行動とライフスタイルの間に関連性があることが示唆された。
著者
岡田 努
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.346-356, 2016 (Released:2018-12-20)
参考文献数
45

本研究は青年期の友人関係の現代的特徴について検討を行ったものである。研究1では,青年の友人関係に変遷が見られるかどうかについて,1989年から2010年にかけて実施された調査に基づいて検討した。各研究で共通する項目についての項目得点の平均値を比較した結果,明確な変容は確認されなかった。青年全体の特徴についで,研究2では,青年の現代的特質についての個人差について検討した。青年の対人的な敏感さを示す現象として注目される「ランチメイト症候群」傾向について,同じく現代的な対人不適応の型とされる「ふれ合い恐怖的心性」を取り上げ,これと友人関係,自己意識,および自己愛傾向との関連について比較を行った。その結果,ランチメイト症候群傾向が高い者ほど過敏性自己愛が高い傾向が見られた。またふれ合い恐怖的心性が高い者は友人関係から退却することで不安から逃れ安定する傾向が見られるのに対して,ランチメイト症候群傾向を示す者は他者の視線を気にすることで,不安定な状態にとどまることが示された。青年の全体像だけではなく,差異にも注目することが,発達心理学が青年期の時代的な姿を明らかにする上で有効であろう。それとともに,その発生のメカニズムについて明らかにすることが必要となるだろう。
著者
魯 成煥
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.117-146, 2014-03

本稿は、九州のある篤志家が自分の私有地に朝鮮の義妓である論介を祀ることによって惹起した韓日間の葛藤について考察したものである。論介は、晋州の妓女というだけでなく、全国民に尊敬される愛国的英雄で民間信仰においても神的な人物である。韓国の国民的な英雄である論介の霊魂を祀った宝寿院の建立と廃亡は、韓日間の独特な霊魂観の対立を象徴するものであった。和解と寛容、平和という純粋な理念に基づいて行われたとしても、当初から様々な問題点を抱えていた。論介にまつわる伝説を歴史的な事件として理解し、命を失った論介と六助に対する同情から彼らの墓碑が造成され、韓日軍官民合同慰霊祭が行われた。これを日本人は、怨親平等思想に基づいた博愛精神の発露だと表現するかもしれない。しかし韓国人はそれとはまったく違う感覚で見る。つまり、それは敵と一緒に葬られることであり、霊魂の分離であり、祭祀権と所有権の侵害というだけでなく、夫のある婦人を強制的に連行し、無理やり敵将と死後結婚させる行為だと考え、想像を超える民族的な侮辱であると感じるのである。この問題は外交問題にまで発展し、韓国政府は日本人篤志家に対し、その私有財産の返還を求めた。その結果、論介の影幀と石碑は韓国側に返され、また合同慰霊祭もしないことになった。論介は日本で夫婦円満と子孫繁昌の神になりつつあったが、これによりあっけなく途絶えてしまった。言い換えれば、韓国人の子孫らは、論介が日本の神になるのを拒んだのである。まさに宝寿院の荒廃は、こうした韓日間の葛藤を象徴している。
著者
富永 京子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.17-30, 2013-05-18 (Released:2017-09-22)
被引用文献数
1

本研究は、グローバルな社会運動において運動体間の連携がどのように行われるのかを問う。先行研究は「社会問題の被害者=主要従事者」「被害者以外の人々=支援者」と定義して分析を行うが、グローバルな社会運動は被害者と加害者の境界が曖昧であるために、主要従事者と支援者を判別することが困難である。本稿はサミット抗議行動を事例とし、グローバルな運動の中で主要な運動従事者が決定される過程と、運動主体間におけるレパートリーの伝達過程を分析することにより、グローバルな社会運動における運動体間の連携のあり方を考察する。具体的には、サミット抗議行動においてレパートリーの伝達がいかになされたかを参加者50名の聞き取りデータを基に検討する。分析の結果、本運動の主要従事者はサミット抗議行動が行われる地域で普段から活動する人々であり、レパートリーは毎回の抗議行動と同様に定例化・定期化されて行われる。しかし、主要従事者は定例化されたレパートリーを義務的に行う一方、設営や資源調達といった場面で自らの政治主張や理念を反映させることがわかる。グローバルな運動における運動体の連携に関する結論として、第一に、「場所」が主たる運動従事者を決定する要素となり、第二にレパートリー伝達をめぐって「前例」が大きな役割を果たしており、第三に主要な従事者は表立ったレパートリーだけでなく資源調達によって政治的主張を行うことが明らかになる。
著者
角谷 千恵子 荻野 敏 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.554-565, 2006

【目的】第2世代抗ヒスタミン薬7剤について,スギ花粉症に対する初期療法の有効性ならびにcost qualityの比較を行った.【方法】2003年のスギ花粉飛散期に大阪・和歌山地区の耳鼻咽喉科外来において初期療法に関するアンケート調査を行った.【結果】単剤療法を受けていた症例は,アゼラスチン15例,セチリジン15例,エバスチン36例,エピナスチン16例,フェキソフェナジン16例,ロラタジン群60例,オキサトミド群17例であった.無治療群510例を対照群とし,比較を行ったところ,全般症状改善度,くしゃみ,鼻汁および眼の痒みの程度に8群間で有意差が認められた.一方,7薬剤間に有意な有効性の差は認められなかった.各薬剤について「有効例1例を得るために必要な薬剤費」を算出したところ,cost qualityに優れる上位3剤は,アゼラスチン,ロラタジン,フェキソフェナジンであった.【結語】第2世代抗ヒスタミン薬7剤の有効性に明らかな差はなく,そのcost qualityには薬価が大きく関連していた.
著者
福居 亜耶 フクイ アヤ Fukui Aya
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.13, pp.28-51, 2015-03

本稿では、京都府福知山市方言におけるテヤ敬語について、中年層女性の家族・親族内での会話を調査することで、以下のような運用ルールを提示した。A群:第三者待遇において(A):話し手にとって話題の人物が家族でない場合はテヤ敬語を使用する。(A-2):(A)が適用されないとき、話し手よりも話題の人物が年上の場合テヤ敬語を使用する。(A-3):(A-2)が適用されないとき、基本的にテヤ敬語は使用しない。(A-3´):(A-2)が適用されないとき、基本的にはテヤ敬語を使用しないが、話題の人物が聞き手よりも年上の場合はテヤ敬語を使用することがある。B群:対者待遇において(B):話し手にとって聞き手(=話題の人物)が家族である場合はテヤ敬語を使用しない。(B-2):(B)が適用されないとき、話し手よりも聞き手(=話題の人物)が年上の場合テヤ敬語を使用する。(B-3):(B-2)が適用されないとき、聞き手(=話題の人物)が話し手と非常に親しい場合はテヤ敬語を使用しない。(B-4):(B-3)が適用されないとき、テヤ敬語を使用する。

2 0 0 0 OA 続群書類従

著者
塙保己一 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻69-70,
著者
小合 由起 砂金 信義 太田 隆文 宇留野 強
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.1009-1011, 2005-12-01
被引用文献数
7

This study aimed to examine the effects of banana juice on levodopa bioavailability in rats. When a levodopa preparation (EC-Doparl tablets) was orally administered with banana juice made by mixing with a fresh banana and water, there were significant decreases in C_<max>(17.4±2.5vs.8.6±3.1μg/ml;α=0.05) and AUC(1882.8±49.2vs.933.5±286.6μg・min/ml;α=0.05) for levodopa. On the other hand, administration of the levodopa preparation with a commercial beverage containing 10% banana juice resulted in no significant change in C_<max> or AUC. These results indicate that concomitant intake of levodopa preparations with banana juice, but not with a commercial banana beverage, may cause a drug-food interaction reducing levodopa bioavailability, and we should pay attention to such interactions during levodopa therapy for patients with Parkinson's disease.
著者
モンポウ フラダリック ブランカフォルト マヌエル 椎名 亮輔
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学大学院文学研究科紀要 = Papers in Language, Literature, and Culture of the Graduate School of Doshisha Women's College of Liberal Arts (ISSN:18849296)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-84, 2016-03

現代カタルーニャを代表する作曲家、フラダリック・モンポウ(1893~1987)とマヌエル・ブランカフォルト(1897~1987)の青年時代の往復書簡を紹介する。1918 年から1921 年6 月までの分は『同志社女子大学総合文化研究所紀要』第32 巻(2015 年)に、また1921 年7 月から1924 年7 月までの分は『同志社女子大学学術研究年報』第66 巻(2015 年)に掲載されている。 1924 年から1925 年にかけて、モンポウは31 歳から32 歳、ブランカフォルトは4歳年下だから27 歳から28 歳である。すでにモンポウの作品は、1921 年にパリで演奏され評価されていたが、ブランカフォルトは生まれ故郷のバルセロナ北郊の温泉地ラ・ガリーガで、父から任されているロール・ピアノ工場を切り盛りして行かなければならず、自由にバルセロナに「下りて」行くこともかなわないのだった。 モンポウは前年から続いている、パリ在住のスペイン人既婚夫人マリアとの恋愛関係に悩んでいる。しかしまた、留守がちなマリアの夫の不動産業の手伝いをしたり、子どもたちの面倒を見たり、それなりに家庭的な幸福を味わってもいる。またこのころに、バルセロナの友人、アウゼビ・カルニセロEusebi Carnicero と一緒にフランスのアイスクリームをバルセロナで売るという事業を思い付いて、実行に移そうとする。 一方、ブランカフォルトは、彼の名を国際的に広めた〈軽業師のポルカPolka de l'equilibrista〉を含む曲集《遊園地El parc d'atraccions》を作曲している。ブランカフォルト財団ほかの年譜では、この曲集は、1924 年にリカルド・ビニェスRicardo Viñes(カタルーニャ語ではRicard Viñes)によってパリで初演された、とされる(http : //www.manuelblancafort.org/esp/biografia/ など)が、ブランカフォルトの1924 年11 月13 日の書簡54 によれば、この時点で彼はまだこの曲集を書き上げていない。2007 年にバルセロナでビニェスについての大規模な展覧会が催されたが、そのときのカタログの年譜の部分を見てみると、ブランカフォルトのこの作品(同時にモンポウの《魅惑Charmes》も)がビニェスの手によってパリで初演されたのは、1926 年となっている(Ricard Viñes : El pianista de les avantguardes, Fundació Caixa Catalunya,Barcelona, 2007, p.243.)。そして、ビニェスによる録音は、1929 年11 月4 日パリのコロンビア社のスタジオで行われている(同時に、曲集第1 曲の〈騎馬パレードのオルガンL'orgue dels cavallets〉も録音されている)(Mildred Clary, Ricardo Viñes : Un pèlerin de l'Absolu, Actes Sud, Arles, 2011, p.294.)。
著者
森 周平 山田 実 青山 朋樹 永井 宏達 梶原 由布 薗田 拓也 西口 周 吉村 和也 國崎 貴弘 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0956, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 高齢者に於ける転倒は様々な要因との関連が報告されており,筋力・歩行速度・バランスといった身体機能の低下などの内的要因の悪化により転倒リスクが上昇することは多くの先行研究により証明されている.内的要因としては,身体能力以外に転倒恐怖感や自己効力感といった心理的要因が転倒と関連することが報告されている.しかしこれらで心理的要因の全てを説明しているとは言い難く,転倒者の性格が関与する可能性も示されている.そこで我々は熟慮的に行動する者よりも,衝動的に行動する者のほうが,転倒発生が多いという仮説を立て,本研究の目的を,地域在住高齢者に於ける衝動性と転倒との関連を明らかにすることとした.【方法】 対象は地域が主催する健康イベントに参加した65歳以上の高齢者246名(男性:40名,年齢:72.7 ± 5.8歳)とした.除外基準は認知機能の低下により会話・問診による聞き取りが困難な者,歩行の安定性を障害する明らかな疾患を有する者とした.性格の評価には,滝聞・坂元により作成された認知的熟慮性―衝動性尺度を用いた.この尺度は認知判断傾向に関する測定尺度で,「何でもよく考えてみないときがすまないほうだ.」などの10項目の文章に対し,自分があてはまるかを判断しそれぞれ4段階(4:あてはまる,3:どちらかと言えばあてはまる,2:どちらかと言えばあてはまらない,1:あてはまらない)で評価を行い(合計10~40点),点数が高いほど熟慮性が高い(衝動性が低い)ことを示すものである.さらに,過去一年間の転倒経験の有無と,転倒恐怖感の有無とを問診にて聴取した. 統計解析としては,転倒経験を有する群と有さない群との間の,認知的熟慮性―衝動性尺度の点数をMann-WhitneyのU検定にて比較し,その後転倒経験の有無を従属変数,転倒恐怖感の有無,認知的熟慮性―衝動性尺度の点数を独立変数として,年齢,性別を調整変数とした強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を受け,書面と口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた対象者に対して実施した.【結果】 転倒経験の有る者は71名,転倒恐怖感を有していた者は125名であった.認知的熟慮性―衝動性尺度の点数に於いて,転倒経験を有する群(26.7 ± 5.7点)は有さない群(28.3 ± 4.9点)に比べて有意に低かった(p < 0.05).さらに多重ロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感を有すること(p < 0.01,オッズ比 = 4.0),熟慮性が低い(衝動性が高い)こと(p < 0.05,オッズ比 = 0.9),共に有意な説明変数として抽出された(R2 = 0.19).またHosmerとLemeshowの検定の結果,p = 0.463と回帰式は適合していた.【考察】 先行研究に於いて,心理的特性として転倒との関連が報告されているのは転倒恐怖感や自己効力感などであり,性格との関連を検討した報告は存在しなかった.しかし今回の研究により,高齢者個々人の性格の要素に当たる認知的熟慮性―衝動性が転倒経験と関連しており,転倒経験を有する群では転倒経験を有さない群に比べて熟慮性が低い(衝動性が高い)ことが明らかとなった.また,同様に心理的特性である転倒恐怖感とは別の説明変数として抽出されたことから,それぞれは独立して転倒に関わっていることが示された.しかし,今回の研究は後ろ向きの研究であることから,転倒恐怖感については転倒後症候群として転倒の結果発生した可能性を留意すべきである.より衝動的であることが転倒と関連していたことから,日常生活の中で熟慮的に行動する者に比べ,衝動的に行動する者のほうが周囲への注意を怠り,転倒の起因となる危険な動作に結びつく可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 衝動性が高い,低いといった性格に関することは一概に善悪で語ることが出来ず,衝動的であるからといって性格を改める介入などは行うべきではないと考える.しかし今回の結果を踏まえ,衝動的な者は熟慮的な者に比べ転倒の可能性が高いということを本人,周囲が理解した上で,衝動的な動作などを抑えることが出来れば転倒を防止することが出来る可能性があると考える.よって,衝動的な性格であるが故に行ってしまいそうな危険行動に対して留意させる介入が必要であることが示唆された.