著者
大沢 晴美 久留利 菜菜 浅川 康吉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.675-675, 2003

【目的】障害老人における閉じこもり現象は日常生活活動量を減少させ、心身の機能をより低下させるといった悪影響があると考えられている。しかし、障害老人の外出頻度とその満足度(以下、外出満足度)についての知見はきわめて少ない。本研究の目的は障害老人の外出頻度と外出満足度を明らかにし、その関連要因を検討することである。【対象】M市およびその隣接のT市にある訪問看護ステーション3ヶ所とデイケア施設1ヶ所の利用者に個別面接調査の依頼を行い70名の承諾を得た。このうち障害老人の日常生活自立度(J-ABCランク)がJランク(独力で外出する)の者と痴呆やコミュニケーションの障害がある者を除いた43名(男性16名、女性27名、平均年齢73.7±12.6歳)を対象とした。J-ABCランクの内訳はAランク15名、Bランク12名、Cランク16名であり、主な疾患名は脳血管疾患であった。なお、コミュニケーションの障害がある者のうち、その意思を主介護者が忖度して回答することが可能であった者は対象に含めた。【方法】調査は2000年と2001年の各10月から12月に行った。調査は基本属性として年齢、性別、世帯人数、J-ABCランクを、外出頻度と満足度に関する項目として外出頻度、外出満足度、主な外出先、外出不安の有無について行った。各調査項目と外出満足度との関連はカイ2乗検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】外出頻度は「毎日1回以上」が9.3%、「2_から_3日に1回程度」が39.5%、「1週間に1回程度」が7.0%、「ほとんど外出しない」が44.2%であった。外出満足度は「もっと外出したい」が48.8%、「今のままでよい」が51.2%、「もっと減らしたい」は0%であった。年齢、性別、世帯人数、J-ABCランク、外出頻度、主な外出先、外出不安の有無のいずれの項目についても外出満足度と有意な関連を認めなかった。【考察】障害老人の外出頻度は2_から_3日に1回程度かほとんど外出しないかの両極に分布する傾向を認めた。外出満足度は「もっと外出したい」と「今のままでよい」がそれぞれ半分程度を占めた。外出満足度は外出頻度とは関連を認めず、外出頻度の高いことが必ずしも高い満足度にはつながらないと考えられた。外出満足度はまたJ-ABCランク、主な外出先、外出不安の有無などとも関連を認めなかった。このことから、J-ABCランクが低い者でも外出に対して高い欲求を有する場合や、デイケア・デイサービスによる外出機会の提供があっても外出満足度の向上につながらない場合などが存在すると考えられた。外出満足度は今回の調査項目とは関連のない独立した要因として今後の検討が必要と考える。
著者
小河 智佳子
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
デジタル教科書研究 (ISSN:21887748)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.24-36, 2014-08-12 (Released:2017-06-26)
参考文献数
30

デバイス、コンテンツ、ネットワーク整備、教員支援の4 つの観点から、デジタル教科書の導入費用を試算した。デバイスは、価格と使用年数についていくつかの選択肢を考慮した。コンテンツは、既存の教科書部分と教材部分に分けて費用の試算を行った。ネットワークは、学校と家庭での接続それぞれについて、初期費用と年間費用を試算した。教員支援については、支援が必要な教員にICT 支援員を配置する場合と、各学校に1 人の支援員を配置する場合の雇用費用を計算した。これら4 つの観点での計算から、全体として要する最大費用と最小費用を計算した。結果、既存の教科書の一年あたりの費用をそのままデジタル教科書費用に充てるのでは予算が足りないことが明確となった。現状の紙の教科書のように公費で賄っていくのか、私費負担を行っていくのかは、今後検討すべき課題のひとつであると考えられる。
著者
淺野 敏久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

ラムサール条約は湿地を保全することを目的とした条約で,日本は1980年に加盟した。湿地の保全,ワイズユース,普及啓発(CEPA)を3つの柱とする。近年,登録湿地の数と対象を広げる方向に動いており,水田なども対象となっている。日本では,1980年に釧路湿原が登録されたのがはじめで,当初サイト数はあまり増えずにいた。2005年に大幅増となり,2012年6月末現在,37箇所、総面積131,027haが指定されていた。2012年7月のCOP11でさらに9箇所が新規に登録された。ラムサール条約にどの湿地を登録するかは,それぞれの国のルールによっている。日本の場合,国際的に重要な湿地であること,対象湿地が国内法で保護対象になっていること,指定にあたって地元の賛意が得られていること,が求められる。 報告者は2010年より科研費の共同研究で日韓のラムサール条約湿地を調べており,複数湿地での現地調査や国内37サイトでの利用と保全に関するアンケート調査を行っている。報告ではその一部を紹介する。 第1に,日本のラムサール湿地は基本的に保護対象地として認識されているケースが多く,登録後に,ラムサール条約を前面に出して利用を強調する取り組みが進んだケースは少ない。蕪栗沼のように農業振興とラムサール登録を結びつける戦略が意識されているところはこれまで多くなかったが,今回の円山川や渡瀬遊水地は地域づくり的方向が意識されており,今後の傾向になる可能性はある。 第2に,利用という括りで,環境教育利用が想定される傾向が強い。これはCEPAにあたるもので,ワイズユースと分けられるのであるが,日本ではラムサール湿地の利用というと教育的利用が真っ先に意識されるようである。 第3に共通する利用形態として「観光」が考えられる。アンケート調査の結果からは,バードウォッチングと写真撮影が最も多い行動になっており,日本の観光地の中でかなり特殊な性格をもっている。 その他,観光化に対する日韓の対応差や,国内での世界遺産とラムサール条約への地元の対応差などついて当日報告したい。 ラムサール条約湿地や世界遺産,エコパーク等,何が同じで何が違うのか。本報告では,ラムサール条約湿地とジオパークの相違点や,ラムサール条約のワイズユースの国内事例から示唆される,ジオパークの課題や留意点について話題提供したい。
著者
寺田 達雄
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.P211-P212, 1995-05-10 (Released:2008-06-30)
著者
杉浦 真治 山崎 一夫
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.201-205, 2005 (Released:2011-03-05)

イワナシ属Epigaeaはわずか3種を含むツツジ科の小低木で、北米、コーカサス、日本にそれぞれ分布する。北米産アメリカイワナシE. repensの種子はアリにより散布されることが知られている。ツツジ科の中でアリによって種子散布が行われる種は他に全く知られていない。日本産イワナシE. asiaticaの種子もアリによって散布されるかどうかを明らかにするために、2004年5月に京都市郊外の二次林林床に生育するイワナシの果実訪問者を調査した。その結果、5種のアリのワーカーがイワナシの果実を訪れ、果肉を摂食しているのを観察した。さらに、ヤマトアシナガアリAphaenogaser japonicaのワーカーが果肉と一緒に種子を運んでいた。ヤマトアシナガアリは日本産アリ散布植物の散布者として、しばしば記録されている種類である。これは、日本産イワナシの種子もアリによって散布されていることを示唆している。しかし、イワナシの果肉のある甘い果実は、他の動物も誘引する可能性がある。
著者
鈴木 常彦
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2003年度春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2003 (Released:2003-08-01)

インターネット(以降ネット)はミーム増殖システムとして機能する。「組織なき反戦運動」、「出会い系サイト」、「ウィルス」などについて、ミームの増殖という視点から考察すると、そこにはグレシャムの法則を越える特異なメカニズムが見てとれる。それは「価値観の隙間への価値の刷り込み」である。時間をかけて醸成された文化、価値観の慣性は大きい。しかし、ニッチへのあらたな文化、特にバーチャルな文化の発生と伝搬は短時間におこりうる。さらにこうした現象をミームの観点から捉えることにより、そのキャリア、環境、コード、メカニズムとその多層性が見えてくる。そして結論として筆者が模索するミームコンピューティングによりマネジメント可能であることを論ずる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1568, pp.52-55, 2010-11-29

「独り勝ちはどこまで続くのか」。ゲーム業界関係者が一様に羨望の眼差しを向けるゲームソフト会社がある。 福岡市に本社を置くレベルファイブだ。著名ゲームクリエーターでもある日野晃博社長が率いるが、非上場のためゲームファン以外の方には聞き慣れないかもしれない。それでも同社が手がけたゲームソフトの名前は、誰しも聞き覚えがあるはずだ。
著者
楮原 京子 田代 佑徳 小坂 英輝 阿部 恒平 中山 英二 三輪 敦志 今泉 俊文
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.221-241, 2016-04-25 (Released:2016-05-12)
参考文献数
47

We should understand the earthquake potential in and around Quaternary fault zones, in view of recent destructive inland earthquakes at previously unknown active fault zones in Japan. The Senpoku Plain and its surrounding areas are characterized by high seismic activity in northeast Japan, highlighted by four destructive earthquakes, M 6.8 in 2008, M 6.4 in 2003, M 6.5 in 1962, and M 7.0 in 1900, which occurred during the past 100 years, although few geomorphic features indicate active faulting. A comprehensive survey was conducted on the tectonic geomorphology in the area to understand the structural and geomorphic expression of the Ichinoseki–Ishikoshi Flexure Line (IIFL), which suggests Quaternary activity. Geological and geomorphical mapping shows that the IIFL is located between the Kitakami Lowland Fault Zone and the Senpoku Plain. The IIFL extends about 30 km from Isawa to Ishikoshi with a slightly sinuous trace. A high-resolution seismic reflection profile and a gravity profile define the subsurface geometry of the IIFL. The IIFL is interpreted to be a steeply west-dipping reverse fault. The Pliocene Kazawa and Yushima Formations typically dip 40° to 20°E along the IIFL, and are overlain by the Pleistocene Mataki Formation, which becomes thinner toward the fold axis of the IIFL, and their dips decrease progressively upward. This suggests that the Mataki Formation was deposited concurrently with fault activity of the IIFL. Fission-track dating of a tuff layer within the uppermost section of the Kazawa Formation indicates that active reverse faulting of the IIFL began at about 2 Ma. At least 280 m of the tectonic uplift is consumed by active faulting and the average uplift rates are estimated to be 0.14–0.08 mm/yr. Vertical separations of Hh surface are about 15 to 40 m. Heights of fold scarps on L1 surface are about 2 m. Their ages are determined to be 0.4–0.5 Ma for Hh and 24–12 ka for L1, respectively. Therefore, the Quaternary average uplift rates of the IIFL are estimated to be 0.03–0.17 mm/yr. Quaternary activity of the IIFL is weak, but there are differences in the magnitude of dissection in the Iwai Hills between the hanging-wall and the footwall of the IIFL.