著者
宮本 真二
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2013年人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.58-59, 2013 (Released:2014-02-24)

日本における環境考古学は地理学研究者によって提示され,その後、日本考古学を含めてひろく認知されている.しかし,その成立過程について言及した研究は限定的である.本研究では,歴史地理学史における地形環境研究の展開と,環境考古学の成立が深く関与したことを明示する.その上で,近年注目されている,環境史,ジオ・アーケオロジー研究の可能性について検討する.
著者
ニラシュ アグネス
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.595, pp.213-220, 2005
参考文献数
36
被引用文献数
1

I.序「メタボリズム宣言」(1960年)によれば、メタボリズムとは、「歴史の新陳代謝を積極的に促進させようとすること」を目指したグループの名称である。これまでメタボリズムに関して、「新陳代謝」を巡る理念についての研究が先行してきたが、本稿では、その計画案をCIAMからチームXへの移行時に試みられた建築と都市を取り結ぶ「メガストラクチュア」の事例として再検討するものである。ここではメタボリズムの「メガストラクチュア」の試みとして、菊竹清訓が1950年代末から1960年代末に公表した「垂直型コミュニティ」11計画案を取り上げ、まず「垂直型コミュニティ」に見られる「コア」、「アーバン・スペース」、「リビング・ユニット」に着目し、各計画案のスケールと、(a)「コア」-「アーバン・スペース」、(b)「リビング・ユニット」-「アーバン・スペース」、(c)「リビング・ユニット」-「コア」の相関から「垂直型コミュニティ」を4タイプに分類し、それぞれの形態構造を明らかにする。最後にそれらの相互比較によって菊竹の設計手法とその変化について考察する。II.「垂直型コミュニティ」のタイポロジーと各タイプの形態構造II-1.タイプ1「塔状都市1958」(表1,図1-1)と、「海上都市1958」(表1,図1-2)、「江東地区計画1961」(表1,図1-3)、「海上都市1963」(表1,図1-4)、「海洋都市1968」(表1,図1-5)の「垂直型コミュニティ」は、いずれも2枚の壁から成る巨大な円筒にカプセル群が装着された「垂直型コミュニティ」で、これらをタイプ1としてまとめることができる。ここでは、「コア」が内外二重の円筒状の壁によって構成されており、この二重壁の間に、建築設備、エレベーター・階段室から成る垂直サーキュレーションと、廊下から成る水平サーキュレーションが収められている。また中央の「アーバン・スペース」が、「コア」を構成する内側の円筒状の壁によって完全に囲われており、それにより全体の求心性が強調されている(表1,図1a)。カプセル状の「リビング・ユニット」は、「コア」を構成する外側の円筒状の壁に直接取り付けられている。その結果、「アーバン・スペース」と「リビング・ユニット」とは直結されておらず、「コア」が両者を媒介する要素となっていることがわかる(表1,図1b)。さらに「リビング・ユニット」は、構造上・設備上の基盤である「コア」を構成する外側の円筒状の壁に等しく装着されているだけで、相互の関係は見られない(表1,図1c)。II-2.タイプ2「海上都市うなばら1960」のムーバブロック(表1,図2)と、「浅海型コミュニティ計画1963」の居住ブロック(表1,図3)をタイプ2とする。前者の「コア」が、H-Pシェルのコンクリート船上に直立しているのに対して(表1,図2a)、後者のそれは、上部中央から下部にかけて3本に枝分かれして、三角錐状の「アーバン・スペース」の稜線を枠取っている(表1,図3a)。このタイプは、全体の巨大スケールという点で、タイプ1に類似しているが、「リビング・ユニット」は、各階毎に「コア」から放射状に伸ばされた3本の廊下に沿って並べられ、水平のクラスターを形成しており(表1,図2c,3c)、それゆえ「アーバン・スペース」は「リビング・ユニット」により直接限定されていない(表1,図2b,3b)。II-3.タイプ3「一つのコアをもつ樹状住居1968」(表1,図4)を唯一の事例とするタイプ3は、三段階のスケールに分節されている。まず最大のスケールを持つのが「コア」で、4つのエレベーターと階段室から成る垂直サーキュレーションのまとまりである。この「コア」から、ちょうど樹木の幹から枝が伸びるように、水平スラブが片持ち梁によって張り出されている。これら水平スラブ間では中央の「アーバン・スペース」を「リビング・ユニット」が取り囲んで一つの「コミュニティ・ユニット」が形成されており、これが中間のスケールを表している。各「リビング・ユニット」が最小のスケールを表していることは言うまでもない。「コア」を取り囲む「アーバン・スペース」は、四隅が開放されているが(表1,図4a)、他方でそれは、四辺の段状に積層された「リビング・ユニット」のクラスターによって限定され、かつそれに直接面している。この意味から、ここでの「アーバン・スペース」を、「セミパブリック・スペース」と見なすことができる(表1,図4b)。「リビング・ユニット」は、水平スラブ上に積層され、中央の「コア」とは十字形の廊下によって結ばれている(表1,図4c)。II-4.タイプ4「4つのコアをもつ樹状住居1968」(表1.図5)、「6つのコアをもつ樹状住居1968」(表1.図6)、「塔状住居1969」(表1.図7)をタイプ4とする。これは、三段階のスケールに分節されている点でタイプ3と類似している。しかし、ここでは複数の「コア」が「アーバン・スペース」の周縁に離散配置され(表1,図5a,6a,7a)、逆に「アーバン・スペース」が「コア」と「リビング・ユニット」によって囲い込まれている(表1,図5b,6b,7b)。「リビング・ユニット」は、水平スラブ上に段状に積層されるが、近傍の「コア」によっても直接支えられている(表1,図5c,6c,7c)。III.結-各タイプの比較と考察(a)「コア」-「アーバン・スペース」(c)「リビング・ユニット」-「コア」の関係を縦軸に、(b)「リビング・ユニット」-「アーバン・スペース」と水平スラブによる「リビング・ユニット」の分節を横軸に取ると、上記「垂直型コミュニティ」の4タイプは表2のように位置付けられる。「塔状都市1958」に代表されるタイプ1は、「コア」が「アーバン・スペース」の周縁にあって、直接「リビング・ユニット」を支える「塔状」の原型と見なすことができ、逆に「一つのコアをもつ樹状住居1968」に代表されるタイプ3は、「コア」が「アーバン・スペース」の中央に位置し、直接「リビング・ユニット」を支えず、逆に水平スラブ上に積層された「リビング・ユニット」が「セミパブリック・スペース」を囲い込んでいる「樹状」の原型と見なすことができる。タイプ4には菊竹の言う「塔状」と「樹状」が混在しており、これら二つの「カタ」の区分は両義的である。他方タイプ1とタイプ2が50年代後半、タイプ3とタイプ4が60年代後半に主として設計された点に着目すると、前者から後者へ、計画のスケールが次第に小さくなるとともに、スケールの分節が行われるようになったことがわかる。また50年代末には「塔状都市1958」の「コア」壁面に見られるような「個と集団を結ぶ」ための「人工地盤」が、60年代末には「一つのコアをもつ樹状住居1968」に見られるような水平スラブにり分節され、「リビング・ユニット」により直接限定された「セミパブリック・スペース」が追求された。さらに「塔状都市1958」の「アーバン・スペース」は、「コア」壁面によって完全に閉鎖されていたが、「一つのコアをもつ樹状住居1968」のそれは、4隅が開放されており、最終的に「極超高層住居」(図7)では、全体の外縁部へ押し出されることに至っている。
著者
大山 紀美栄
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.77-81, 2003-06-30 (Released:2010-10-08)
参考文献数
13
著者
松下 祥 下条 直樹 中込 一之 佐々木 巧
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

我々が開発したTh2/17アジュバント活性の評価方法を用いて以下を明らかにした。1)母乳のTh2アジュバント活性が高い児はアトピー性皮膚炎を発症しやすく、これは母乳中のCoenzyme-Aによる。2)ドパミンはIL-6依存性にTh17アジュバント活性を有し、受容体アンタゴニストはマウスRAモデルや好中球性気道炎症モデルを軽快させる。
著者
原 行弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.452-458, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
10

導出した筋活動電位に比例して電気刺激が行われる随意運動介助型機能的電気刺激(integrated volitional control electrical stimulator,以下IVES)は,容易な装着・操作に加えて筋肉スイッチといえる自律型制御を採用している.筋活動電位測定と電気刺激を同一筋肉で行える特徴があり,従来不可能であった可動域にまで関節機能を拡大できる.近赤外光脳機能測定装置を用いた検討では,IVES使用によって対側大脳感覚運動野の脳血流増加を認め,体性感覚入力増加と麻痺手の随意的運動促通の両方が相乗効果をもって,脳神経機構の再構築に寄与すると思われる.IVESのパワーアシストモード,外部入力モードは,脳卒中などで崩れた大脳半球間バランスを是正する作用があり,有用なニューロリハビリテーションの手段といえる.
著者
本條 晴一郎
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.31-39, 2020-03-04 (Released:2020-03-04)
参考文献数
24

先進的なニーズを認識し,ニーズの解決による便益を期待するリードユーザーは,製品の開発や普及,顧客開発など,様々な観点から注目を集めている。一方でリードユーザーについての定量的な研究は,特定の製品領域で行われてきた。本研究では,サーベイの枠組みで定量的な実証研究を行うことで,リードユーザーの一般的な特徴を見出すことを目指した。その結果,リードユーザーネスが製品領域に限定されずに消費者イノベーションの発生に帰結すること,幅広い他者に対して情報を探索するネットワーキング行動が先進性に正の,高便益期待に負の影響を与える先行要因となっていることが示された。製品領域に限定されない結果を得たこと,および,先行要因を行動レベルで捉えたことにより,リードユーザーに対する理解が,注目に見合うものに近づいたといえる。
著者
濃辺 正平
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.861-869, 1987-12-15 (Released:2011-11-04)

ギリシャにおけるワイン釀造は, ブドウとワインの神“ディオニソス (バッカス)”に守られて, 有史以前から現代にかけて営々と続いている。しかしながら, その現状については今までほとんど日本に紹介されていないだけに, 本稿はきわめて貴重な資料といえよう。
著者
石見 百江 寺田 澄玲 砂原 緑 下岡 里英 嶋津 孝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.159-165, 2003-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
13
被引用文献数
7 9

高糖質食ならびに高脂肪食 (ラード食) にショウガ粉末あるいはショウガの有効成分であるジンゲロンおよびジンゲロール (ジンゲロンの還元型) を添加し, エネルギー消費に及ぼす影響を酸素消費量と呼吸商の面から検討した。添加前と比べた12時間の累積酸素消費量はショウガの2%添加によって高糖質食群で7%と有意に増加し, ラード食群でも増加傾向 (6%) を示した。その際, 呼吸商 (RQ) はショウガの添加によって高糖質食ならびにラード食群でともに有意に低下した。比較のために唐辛子を2%添加して調べたところ, ショウガ添加とほぼ同程度の酸素消費量の増加とRQの低下を認めた。ショウガの辛味成分であるジンゲロンの効果を調べると, 0.4%の添加によって, 高糖質食群では微増にすぎなかったが, ラード食群で著しく増加した。RQはジンゲロンの添加によって両食餌群ともに低下した。一方, 辛味のないジンゲロールを0.4%添加した場合には, 酸素消費量ならびにRQ値に有意な変化がみられなかった。しかし, ジンゲロンとジンゲロールを同時に添加すると, 酸素消費量は高糖質食群で34%, ラード食群で28%と有意に増加し, 両成分の相乗効果が観察された。RQも有意な低下をみた。以上の実験結果から, ショウガあるいはその辛味成分であるジンゲロンは酸素消費量を増加させ, かつ体内の脂肪の燃焼を盛んにすることによってエネルギーの消費を促進する作用を持つことが明らかになった。
出版者
京都中央電話局
巻号頁・発行日
vol.大正11年10月改正, 1924
著者
Kenichi Kurosaki Masataka Kitano Heima Sakaguchi Isao Shiraishi Naoko Iwanaga Jun Yoshimatsu Takaya Hoashi Hajime Ichikawa Satoshi Yasuda
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2275-2285, 2020-11-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3

Background:Congenital heart disease (CHD) is often diagnosed prenatally using fetal echocardiography, but few studies have evaluated the accuracy of these fetal cardiac diagnoses in detail. We investigated the discrepancy between pre- and postnatal diagnoses of CHD and the impact of discrepant diagnoses.Methods and Results:This retrospective study at a tertiary institution included data from the medical records of 207 neonates with prenatally diagnosed CHD admitted to the cardiac neonatal intensive care unit between January 2011 and December 2016. Pre- and postnatal diagnoses of CHD differed in 12% of neonates. Coarctation of the aorta and ventricular septal defects were the most frequent causes of discrepant diagnosis. Unexpected treatments were added to 38% of discrepant diagnostic cases. However, discrepant diagnoses did not adversely affect the clinical course. The 9% of the 207 neonates who required invasive intervention within 24 h of delivery were accurately diagnosed prenatally.Conclusions:Pre- and postnatal diagnoses differed in only a few neonates, with differences not adversely affecting the clinical course. Neonates who required invasive intervention immediately after delivery were accurately diagnosed prenatally. Prenatal diagnosis thus seems to contribute to improved prognosis in neonates with CHD.
著者
松田 睦彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.199, pp.11-24, 2015-12-25

小稿は人の日常的な地域移動とその生活文化への影響を扱うことが困難な民俗学の現状をふまえ,その原因を学史のなかに探り,検討することによって,今後,人の移動を民俗学の研究の俎上に載せるための足掛かりを模索することを目的とする。1930年代に柳田国男によって体系化が図られた民俗学は,農政学的な課題を継承したものであった。柳田の農業政策の重要な課題の一つは中農の養成である。しかし,中農を増やすためには余剰となる農村労働力の再配置が必要となる。そこで重要となったのが「労力配賦の問題」である。これは農村の余剰労働力の適正な配置をめざすものであり,柳田の農業政策の主要課題に位置づけられる。こうした「労力配賦の問題」は,人の移動のもたらす農村生活への影響についての考察という形に変化しながら,民俗学へと吸収される。柳田は社会変動の要因として人の移動を位置づけ,生活変化の様相を明らかにしようとしたのである。しかし,柳田の没後,1970年代から1980年代にかけて,柳田の民俗学は批判の対象となる。その過程で人の移動は「非常民」「非農民」の問題へと縮小される。一方で,伝承母体としての一定の地域の存在を前提とする個別分析法の隆盛により,人の移動は民俗学の視野の外へと追いやられることになった。人の日常的な移動を見ることが困難な民俗学の現況はここに由来する。今後,民俗学が人びとの地域移動が日常化した現代社会とより正面から向きあうためには,こうした学史的経緯を再確認し,人びとが移動するという事象そのものを視野の内に取り戻す必要がある。
著者
香川 香 脇坂 智子 上西 裕之 長谷川 千洋
出版者
関西大学教育学会
雑誌
教育科学セミナリー (ISSN:02880563)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.95-99, 2006-03-31

<特集>藤井稔教授退職記念, II.研究論文
著者
猪俣 恵
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.115-122, 2020-03

自然免疫は微生物に対する防御ならびに炎症反応の開始に重要な役割を果たす。抗菌ペプチドは進化的に保存された自然免疫の1つである。何百もの抗菌ペプチドが好中球や上皮細胞より合成され存在する。中でもヒトcathelicidinペプチドのLL-37は抗菌特性に加えて、多様な免疫調節機能を有する。近年ではLL-37が乾癬や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、またアテローム性動脈硬化症や歯周病といった炎症性疾患の病態に関与していることが明らかにされている。この総説ではLL-37の自然免疫における役割、さらには自己免疫疾患および炎症性疾患への関与について近年の知見を報告する。
著者
齊藤 有里加 下田 彰子 梶並 純一郎 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.493-496, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

理系学芸員課程の授業教材として,モバイル端末アプリケーションiNaturalistを使った体験を実施した.演習は国立科学博物館付属自然教育園で行われ,動植物の管理,保存,活用についてレクチャーと,植生管理のための生物モニタリングの試みとしてiNaturalistのシステムを紹介し,「バイオブリッツ」を体験し,ディスカッションとアンケートを行った.本発表では,大学生がiNaturalistを操作し,博物館資料として野外生物情報を習得し,公開するまでの過程を紹介し,野外博物館の資料特性理解の効果について考察する。
著者
古賀 竣也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43086, (Released:2020-06-01)
参考文献数
30

研究の目的は,統計的リテラシーにおける批判的思考態度の構造を明らかにすること,および統計的リテラシーのスキルに関係する批判的思考スキルは何かを明らかにすることである.まず,質問紙調査を実施し,「数値やデータへの関心」,「懐疑的・複眼的な見方」,「他者との関わり」の3因子から構成される態度に関する尺度を開発した.次に,統計的リテラシーのスキルを測定するテストと,複数の批判的思考スキルを測定するテスト,作成した尺度を含めた質問紙調査を実施し,これらの相関を検討した.その結果,統計的リテラシーの得点と全ての批判的思考スキルの得点に正の相関がみられた.また,統計的リテラシーの得点と尺度の得点には有意な相関がみられなかったことから,統計的リテラシーにおける批判的思考態度を有していても,統計情報を適切に解釈できるとは限らないことが考察された.