著者
垣本 直人
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究では、超高圧電力系統に停電事故が発生した場合の復旧操作を支援するエキスパ-トシステムの開発を行った。以下に成果をまとめる。1。電力会社の超高圧系統給電操作細則を分析し、電気所が全停電と自断の各々について復旧操作の基本となるル-ルを抽出した。そしてこれらのル-ルに基づいてエキスパ-トシステムの知識ベ-スを構築した。これにより、常時の系統の運用形態に沿った復旧操作が可能となり、その復旧手順は実際の系統復旧操作に近いものとなった。また、細則の自断の場合のル-ルを新たにシステムに組み込んだため、系統全停電だけでなく、さまざまな部分停電にも対応でき、初期電源の種々のパタ-ンや、故障機器がある場合でも対応する事が可能になった。2。細則中の給電指令を整理、分類した。これに優先順位を定めることにより、給電指令の自動選択を可能にした。この自動選択は機能としては非常に限られたものであるに関らず、人間が考えるのとはほぼ同様な選択を行うことができる。機能が単事であるため、系統設備の変更などに伴う給電指令の追加、削除などの変更が容易である。事故状態によって優先順位が変化するような優先順位をはっきりと定めることができないタイプの給電指令については、復旧方針決定モ-ドにおいて操作員が復旧過程の各時点で優先順位を決定することができる。また、操作員の給電指令選択の支援を行うだけでなく、給電指令の変更、復旧方針の選択など、操作員の思考も柔軟に取り入れることができる。3。細則の復旧操作だけでは復旧できない停電範囲を、細則の復旧の流れにできるだけ沿うような給電指令による復旧操作を追加することで復旧可能にした。この方法での成功は、本システムの今後の更なる機能拡張へ向けての有用な指針を与えるものと考える。今後の課題として、潮流状態のチェック、過電圧の抑制等の機能追加を行う予定である。
著者
鏑木 康志 久保田 浩之
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

糖尿病腎症(DN)患者における血清可溶性LR11(sLR11)濃度を測定しDNとの関連を検討した。対象は健常者(H)39名、2型糖尿病患者(T2DM)38名、DN2期患者(DN2)34名、DN3期以降患者(DN3)53名とした。sLR11濃度はHに比べDN2, DN3で有意に上昇し、sLR11(β:0.22)、罹病期間(β:-0.22)、収縮期血圧(β:0.17)、HbA1c(β:0.22)、eGFR(β:-0.24)がACRの有意な規定因子であった。ロジスティック回帰分析ではsLR11、HbA1c、CreがDNの危険因子となった。血清sLR11の変動はDNの発症・進展と関連する可能性がある。
著者
野々瀬 晃平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度では実際の現場観察やシミュレータを使ったより実現場に近い実験環境での行動観察データを用い、チーム協調におけるメタ認知の重要性を検討した。具体的には2006年、2007年に行われた北関東セクターを用いたシミュレータ実験および同様のセクターを用いた東京コントロールで行われた実現場の記録データを用い、対空席と調整席という二人一組で構成されるエンルート航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。まず、航空管制官同士の言語的、非言語的インタラクションを記録データより抽出し、それを相互信念に基づくチーム認知を用いた「意図の次元」(インタラクションの理由)とタスク分析に基づく「内容の次元」(インタラクションの内容)を組み合わせたコミュニケーション分析マトリクスにより分析した。これは、インタラクションが行われた空域状況や航空管制官の指示、理由等について管制官の資格を持つ協力者に確認しつつ行った。その結果、対空席と調整席ではその役割の都合上、協調時の主要なメタ認知のあり方が異なることが示唆された。対空席はレーダー画面の監視を行い、トラフィック状況や航空機の現在の指示状態など自身の認知過程に対するメタ認知を行い、また調整席に対し自身の認知状態の補完を求めるインタラクションが多く見られた。一方で、調整席は自身もトラフィック状況や航空機の現在の指示状態などを確認しつつも、対空席の行動を見ながらその認知状態を推測し、その信念の正確さや十分さを補完するインタラクションが多く見られた。また、対空席の考えを確認した上でより良い管制プランを提案、補助するなどの行動も見られた。そしてこの分析結果及び航空管制官の認知モデルに関する先行研究の知見を合わせ、航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。これらの成果は今後予想される管制システムの自動化の際、チーム協調の観点からシステムを評価することに寄与すると期待される。
著者
筒井 健一郎
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

グループ逆転学習課題を遂行中のサルの前頭連合野の諸領域(背外側部(DLPFC)、背側部(DPFC)、腹外側部(VLPFC))の神経活動を、低頻度反復経頭蓋磁気刺激(低頻度rTMS)によって抑制したときの、課題遂行行動の変化を調べた。グループ逆転課題は、我々が独自に開発した課題であり、モデルベースおよびモデルフリーの行動制御過程を分離することができる。8つの抽象図形によって構成される刺激セットを、4つの刺激からなる2群に分け、それぞれの群は異なる結果(ジュースあるいは食塩水)を予告する条件刺激として、パブロフ型条件づけを行った。数十試行ごとに、刺激と結果の関係をすべて逆転させる「全体逆転」を繰り返すと、サルは常に同じ意味をもつ4つの刺激を「カテゴリ」(刺激の等価性に基づいたグループ)として認識するようになり、1つの刺激について逆転を察知すると、その他の刺激については、あらかじめ結果との関係が逆転することを予測して行動するようになった(モデルベース行動)。一方で、8つの刺激のうち4つしか刺激と結果の関係を逆転させない「部分逆転」においては、このカテゴリの情報が使えず、個別の刺激について新たに刺激と結果の関係を、時間をかけて学習するストラテジーをとった(モデルフリー行動)。DLPFC、VLPFC に低頻度rTMSを与えた時には、全体逆転における課題成績が低下したが、部分逆転の課題成績には影響がなかった。一方、DPFC に低頻度rTMSを与えた時に、全体逆転、部分逆転ともに、課題成績への影響は認められなかった。この結果により、DLPFC および VLPFC は、モデルベース行動の制御に重要な役割を持っていることが明らかになった。一方、モデルフリー行動の制御には、前頭連合野を必要としないことが示唆された。
著者
嶋田 有三 安部 明雄
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

有人宇宙輸送の信頼性向上を目的として、(1)非パラメトリック方式と(2)パラメトリック方式の2タイプの適応制御方式を研究した。(1)の方式では、外乱観測器とフィードバック線形化法を併用した飛行制御システムを設計し、数値シミュレーション上でスペースシャトルを滑走路に自動着陸させることに成功した。(2)の方式では、横方向運動を最小位相系となるように設計し、外乱観測器を付加してその効果をシミュレーションで確認した。さらに、5基の操縦舵面の内、1基ないしは2基が故障しても飛行可能な制御則も開発した。
著者
竹内 健司 遠藤 守信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)の構造、CNTの均一分散技術および細孔共連続構造ポリマーであるポリマーモノリス技術を最適に融合することにより、軽量高強度樹脂複合材の技術基盤の構築を目的としている。目標を達成するために複合材に適したCNTの検討に加えてポリマーモノリス材の調製および構造解析について検討した。調製したポリマーモノリス/CNT複合材は、ポリマーソリッド材のような脆性破壊が起こらず、CNT未添加のポリマーモノリス材よりも高い初期応力、圧縮破断強度、柔軟性を有し、圧縮後も構造の割れや破断が見られないことを示した。
著者
小助川 博之
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

樹脂と炭素繊維で構成される炭素繊維強化複合材料は、優れた比強度と比剛性のために鉄鋼やアルミ合金に代わる構造材料として期待されているが、その非破壊欠陥診断の方法は未だ確立されていない。本研究では、電気化学的手法を用いることで構造体自身が欠陥の発生を自己検出するスマートな炭素繊維強化複合材料の開発に成功した。このような複合材料は、構造体内部にセンサを埋め込む必要がなく内部欠陥の発生を誘発することがないため、構造物としての高い信頼性を示すことができる。
著者
小室 一成 瀧原 圭子 松原 弘明 斉藤 能彦 室原 豊明 福田 恵一
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

本研究の目標である心不全の病態解明と新たな治療法の確立について多角的に研究を推進できたと考えられる。特にマウスの心機能解析法(心臓カテーテル検査、心臓エコー検査)を確立させたことは、我が国全体における心機能解析技術の飛躍的な向上に寄与できだと思われる。また、本研究代表者や研究分担者らがこれまで世界的にもリードしてきた研究対象であるナトリウム利尿ペプチド、アンジオテンシンII、サイトカイン、三量体G蛋白質、などに着目し、これらの遺伝子改変マウスを作製し実験に用いることができた。心機能に関与する遺伝子をターゲットとした遺伝子改変マウスの解析をおこなうことで心不全の病態を分子レベルで解明した。さらにこれらのマウスに胸部大動脈の縮窄または冠動脈の結紮などの手術を施し、圧負荷心肥大モデル、心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルなどを作製した際の心不全の発症・進展に対する影響も検討した。得られた知見は心不全の発症機序のみならず、心筋細胞が正常機能を維持するための機序についても新しい概念を与えた。心不全発症の分子機序を明らかにすることで心不全の新たな治療基盤を打ち立てることができた。また、心筋細胞の分化・発生の機序に関する研究をおこない、心筋細胞の分化に必須の転写因子や成長因子などを同定した。複数の転写因子を同時に発現させることにより心筋細胞の分化が誘導されることを明らかにした。細胞治療に関する研究では幹細胞生物学と再生医学、心臓病学の領域において先駆的な業績をあげ、国内外における心筋細胞の再生研究に大きな進歩をもたらした。
著者
三道 弘明 ROY Larke
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,対象を小売業に絞り,そこに存在するいくつかの問題を発掘するとともに,その問題を科学的に解決することを意図した数理モデルを構築した.本研究で発掘した問題は次の4種類である.(1)小売業において新規取扱商品が売れ筋商品であるのか死に筋商品であるのかを如何にして短期間で判断するか.(2)小売業における棚卸しは税法上義務付けられたものと,自主的に行うものとがある.この棚卸しの適切な頻度はどのようにして決めればよいのか.(3)特別展示商品は,展示量が多いほど売れ行きも良い.このような性質を持つ商品の最適発注量や発注点はどのようになるのか.(4)パーソナルコンピュータ等を取り扱う小売業では,追加料金を支払えば,小売業者が独自に実施しているより長い期間の保証契約を行うことができる場合が少なくない.このような場合,追加料金及び保証期間終了後の1回当たりの修理に関する適切な価格設定が問題となる.上に列挙した4種類の問題に対し,(1)テスト販売政策に関する数理モデルを構築し,コンビニエンスストアのデータに基づきその有効性について検証を行った.(2)最適棚卸し頻度に関する数理モデルを構築し,小売業現場でのヒアリング調査結果に基づき有効性について検証を行った.(3)特別展示商品の最適発注量に関する数理モデルを構築した.(4)保証期間延長契約問題を,小売業と消費者間のゲームとして捉え,契約および契約期間終了後の1回当たりの修理に関する最適価格を求めた.
著者
水野 敦子
出版者
山陽女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、チカーノ文学とカリブ海文学を代表する、アメリカ南西部のルドルフォ・アナーヤ(1937-)、及びマルチニックのエドゥアール・グリッサン(1928‐2011)とパトリック・シャモアゾー(1953‐)を中心に、南北アメリカ大陸を視野に入れたアメリカスの視点から両地域の文学を考察し、アメリカ合州国の真のあるべき姿を追求した。彼らの文学における、土地や身体との神秘的関係をもつ想像力、共同体意識やエコロジカルな思想は、ナショナリズムを超えて、他者との連帯の想像力に行き着いている。
著者
シートン フィリップ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

この研究は、日本人の戦争記憶/歴史認識における地方史の役割を明らかにした。戦争体験と集団記憶は国のレベルだけではなく、地方のレベルでも思い出され、語られている。本研究は北海道をケーススタディーにし、戦争記憶における出身地域の重要性を調査した。北海道には独自の歴史があり、それは道内メディアによって報道されている。日本人の歴史認識に関しては多くの研究がなされてきたが、本研究では特に英語圏でこれまで研究されてこなかった側面を明らかにした。
著者
南野 徹 小室 一成
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

老化の研究は世界的にもまだ端緒についたばかりであり、その機序はほとんど解明されていない。通常ヒト正常体細胞の分裂回数は有限であり、ある一定期間増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。その寿命は培養細胞のドナーの年齢に相関すること、また、早老症候群患者より得られた細胞の寿命は有意に短いことも報告されている。そこで我々は、血管の老化研究を「細胞レベルの老化が個体老化の一部の形質、特に病的な形質を担う」という仮説に基づいて進めることにした。我々はこのアプローチによってこれまでテロメアシグナル(Mol Cell Biol.2001;21:3336-3342,Circulation.2002;105:1541)やAngiotensinII/Ras/ERKシグナル(Circulation.2003;108:2264,Circulation in press)、インスリン・Aktシグナル(EMBO J.2004;23:212)が細胞レベルの老化に重要であることを報告し、さらにこれらのシグナルが血管老化・動脈硬化の病態生理に深く関与していることを示唆してきた。本研究ではさらに高齢者に認められる日内リズムの障害に細胞老化シグナルが関与していることを調べるために、細胞レベルの老化が時計遺伝子の発現にどのような影響を及ぼすかについて検討した。初期経代の血管細胞に血清刺激を加えると、時計遺伝子の発現は24時間周期の変化を示すようになる。それに対して老化した細胞では、その振幅が明らかに低下していた。テロメレースの導入によって細胞老化を抑制すると、その障害は解除された。老化したマウスにおいても、末梢臓器の時計遺伝子発現は障害されていた。そこで生体内における細胞老化の関与を調べるために、若年マウスに老化した細胞を含んだマトリゲルを移植、あるいは逆に、初期経代細胞を老化マウスに移植して、時計遺伝子の発現を観察した。その結果、老化マウスに移植された初期経代細胞ではほぼ正常であったのに対し、若年マウスに移植された老化細胞では、著しく時計遺伝子の発現が障害されていた。この障害は、細胞老化を抑制する遺伝子を導入しておくことによって正常化したことから、細胞老化シグナルの制御によって個体老化に伴う時計遺伝子の発現を改善し、高齢者で認められる生理的な日内変動リズムを改善しうることを示唆すると考えられた。
著者
木村 涼
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

天保13年(1842)6月、五代目海老蔵は、天保改革における風俗取締政策の一環である奢侈禁止令に抵触したとして南町奉行鳥居耀蔵から江戸十里四方追放の処罰を受けた。江戸を離れ嘉永2年(1849)12月に海老蔵が追放赦免を受けて江戸復帰するまでの約8年間の演劇活動を対象に研究を進めた。追放処罰を受けた海老蔵は成田山で1年間蟄居した後、芝居の場を求めて上方方面に赴いた。海老蔵は住居を大坂に構え、上方方面の拠点にしていた。したがって、大坂の芝居出演は他の地域のそれに比べて圧倒的に多い。そこで、番付をはじめとする関連資料を、大阪府立中之島図書館や大阪歴史博物館にて複写した。また、大坂の次に海老蔵が多く出演している京都での興行を調査するため、京都大学図書館や京都府立総合資料館に行き、関連資料を複写した。伊勢や名古屋などの地域も幾つか出演しているので、三重県立博物館や三重県立図書館、愛知県名古屋市蓬左文庫、同県西尾市岩瀬文庫、御園座図書館などに赴き、番付や台帳はじめとする関連資料を複写した。その他、成田や静岡、長野、広島、長崎などの資料館や博物館、図書館に赴き、海老藏の興行記録が記されている『御用留』や『御用日記』を複写し整理・翻刻した。こうして江戸追放中の上方方面を中心とする芝居出演に関する資料を収集してきた。その結果、地方におはる観客の動向や演出の相違も判明した。本研究は、海老蔵の江戸以外の地域におはる芝居興行の究明は焦眉の急であるという課題に応えるものである。
著者
茅原 拓朗
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

特にインタラクティブな映像作品制作を想定した効果的な音響デザインの指針を得るために、物理的な「正しさ」よりも聴感上の効果の面から、要素となる音を組み合わせることで狙い通りの効果をもつ雰囲気音(後景となる音)が合成できるか、また、後景となる音や前景となる音がそれぞれその時々の情動状態や他の前景情報の理解にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、前者については要素の単なる加算を超えた何らかの直接的な音響的特徴による表現が必要なこと、後者については音がその時々の情動状態や前景となる情報に確かに影響を与え、またその与え方には一定の傾向があることが見いだされた。
著者
島田 順一 加藤 大志朗 寺内 邦彦 伊藤 和弘
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タッチスクリーン画面を直感的に指でなぞるだけで、ロボットがその軌跡を追随するように手術器具を誘導するタッチスクリーン・コントロールシステムを開発した。安定して動作可能なシステム設計を行い、対象から5mmの距離を保って制御可能となった。実際の手術を想定した焼灼実験で操作精度を解析した。初学者と専門医の操作精度に差は認めなかった。専有回線で繋がった遠隔地からも操作可能なことを実証した。
著者
無藤 隆 田代 和美 柴坂 寿子 藤崎 真知代
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、幼稚園の保育を対象として複数の縦断的な観察研究を行い、幼稚園期における子どもの人間関係の体験の特徴と発達的変化を明らかにした。また、子どもの体験を大人がどのように理解しているかを、保育者と子どもの関わりの観察、保育者への面接等を通して検討した。6つの園で1年間あるいは2年間の縦断的な観察や面接を行った。その結果、いざこざに類したふざける行動に注目すると、対人的に微妙な調整を行う様々な機能を持っており、年齢の時期により機能の変化が見られた。クラスの中での子ども同士の評価が高い子どもについて、仲間入りに際してのトラブルが減少していった。評価が低い子どもについては、必ずしも減少せず、普段の評価が個別の仲間入りに影響していることが示された。ある園での保育のカンファランスの様子から、保育に対する実践的なレベルでの理解の難しさとその理解が進むなかで子どもへの関わりが変わっていく様子を示した。
著者
今井 清利
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究目的:長崎県内で難病や重度障害により四肢麻痺となり、自立した生活が困難となっている人々のために病院・施設や患者さん宅を訪問し、コンピュータやメカトロニクス技術を応用して意思伝達装置や環境制御装置等の自立を支援する装置を製作、障害者の方々が日々積極的に活動を行えるようQOL向上を支援する生活支援用具を提供する。研究成果1、脳性マヒ患者の依頼により、車イスに取り付けた車イステーブル上で操作できるDSIコントローラーを製作し、提供した。本操作装置は車イステーブルの上にマジックテープで固定され、サーボモーター部(PICマイコン基板を収納)とコントローラー部からなる。サーボモーター部とDSIの電源を入れ、コントローラー部のジョイスティックで十字キーの左右、上下を選択し、AB、XYボタンでゲームを進行する。2、脳性マヒ患者のために、電動車イスに装着したジョイスティックで机上のパソコンを操作する赤外線操作装置を製作し提供した。外出時にノートパソコンを操作するために、電動車イスに取り付けたジョイスティック傾き検出装置とマウスの機能の押しボタンスイッチの情報を赤外線通信を用いて、ノートパソコンに接続しているジョイスティック用基板に送信して使用する。3、重度障害者のために、圧力センサーで操作できる意思伝達装置を製作し提供した。ALSで健常者のように話すことができなくなった方のために、コミュニケーションを支援する圧力センサーを用いた意思伝達装置を製作・提供した。使用者の現状DSIコントローラーは、「今まで、この装置を使っていて分かったことは、ボタンを連打しない限り、一日三時間は、確実に使えるという事です。」と、報告がありました。赤外線操作装置は、メンテナンスを行いながら現在使用中です。圧力センサー操作装置は、現在、重度障害者の方々に幅広く利用されております。今回の研究実績は平成22年度熊本大学総合技術研究会で報告しました。
著者
高橋 弘太
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

人間の聴覚特性に基づいて,最も聞き取り易い再生速度で音声を再生する手法について研究した.この研究では,第一に,話速が聴覚にあたえる影響の定量的研究,第二にその研究成果に基づいた再生速度決定アルゴリズムの研究とそのアルゴリズムを実証するためのシステム実装と実験の2つが大きな柱である.さらに,第三の柱として,この研究のために自前で製作する話速バリエーション型音声データベースをインターネットで公開し、音声分野の研究者に利用してもらい話速推定研究を啓蒙することがあげられる.3年間の期間で,これらを計画どおり実施した.
著者
植松 恒夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究計画では素粒子の強い相互作用に対する量子色力学(QCD)の摂動論的アプローチを用いて、欧州合同原子核研究所(CERN)のラージ・ハドロンコライダー(LHC)や、近い将来に建設が計画されている国際リニアコライダー(ILC)等の先端加速器で到達されるエネルギー・フロンティアでの標準模型および標準模型を超える物理の研究を行った。特に、電子・陽電子衝突で測定される仮想光子構造関数および仮想光子中のパートン分布に対する重クォークの質量依存性、また超対称性のあるQCDでの光子構造関数とスクォークやグルイノの質量効果、さらには2光子過程での軸性アノマリーと偏極光子構造関数の和則を求めた。
著者
塚本 勝巳 西田 睦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.集団構造の解析:同一年度に台湾,中国(丹東),種子島,宮城に接岸したシラスウナギ各50個体,計200個体について,ミトコンドリアDNA調節領域(約600bP)の塩基配列を決定し,集団解析を行った結果,明瞭に分化した集団の存在は認められなかった。また,産卵親魚集団の遺伝的組成をより正確に反映している可能性のあるレプトケファルスを5回にわたる調査航海で採集し,これらについて同様の解析を行った結果,産卵時期の異なったレプトケファルス集団間に有意な遺伝的分化の徴候は得られなかった。また,核DNAレベルの詳細な比較を行うために,AFLP分析を宮城,神奈川,種子島で採集した計30個体のシラスについて行ったが,やはり明瞭な地理的分化は認められなかった。今後核DNAの遺伝的変異をさらに調べるための準備として,マイクロサテライトマーカーの単離も進めた。2.耳石解析:国内5地点で,シラス接岸時期の前・中・後期に採集したシラス計150尾について,耳石日周輪の解析を行った。ウナギの接岸日齢は約6ヶ月で,産卵期は4〜11月,産卵ピークは7月にあることがわかった。また,産卵期の早期に生またものは,遅生まれの群に比較して成長がよく,若齢でより低緯度の河口に,早期に接岸することが明らかになった。日本周辺の沿岸域と東シナ海で採集した下リウナギの耳石ストロンチウム濃度をEPMA分析で調べたところ,約75%が淡水に遡上しない個体で占められており,ウナギ資源の再生産に寄与するものの大部分は,河川に遡上しない個体が今えているものと推察された。3.結論:現在のところ東アジアのウナギ資源は巨大な単一集団と考えるのがよく,また河口域がウナギの重要な生息域であると再認識されたので,ウナギ資源の保全のためには,まず河口の汚染を改善すること,河口の親ウナギ漁業の制限,さらには東アジア4ヶ国全体でシラス漁業の国際管理を行うことが重要である。