著者
中島 博 岡田 とし江 見崎 徹 大橋 瑞己 増田 千恵子 住本 和歌子 中道 由香 宍戸 孝太郎
出版者
一般社団法人 日本有病者歯科医療学会
雑誌
有病者歯科医療 (ISSN:09188150)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-28, 2008-04-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
12

76歳女性, 関節リウマチ (RA) 患者の左上顎犬歯の抜歯を契機として上顎骨が融解し上顎骨骨髄炎と診断された1例を経験したので報告する. 患者は, 1992年にRAを発症しメトトレキサート (MTX), プレドニゾロン (PSL) が投与されている.2006年8月末から左上顎犬歯の軽度の疼痛を自覚するも放置, 同年10月23日疼痛が増大したため近歯科医受診, 同日左上顎犬歯根尖性歯周炎の診断のもとに抜歯を受け, セファクロル1,000mg/日が投与されたが症状増悪のため同31日に紹介来院した.初診時, 左上顎歯肉は腫脹し複数の瘻孔が認められ, CT像では同部の骨が融解していた. 血液生化学検査では, 白血球数は8.1×103/ul, 赤沈は41mm/30', 86mm/60', CRPは3.74mg/l, ALPは238IU/lであった.同日より消炎のためファロペネム (FRPM) 600mg/日を経口投与, 11月2日セフトリアキソンナトリウム (CTRX) 2g/日静脈投与に変更後に腫瘍の疑いもあり, 生検を行って上顎骨骨髄炎と診断された. MTXのみを中止し, 急性症状が消退した11月21日, 手術直前からCTRX2g/日の静脈内投与を行い全身麻酔下に左上顎部の感染組織除去手術を行った. MTXの投与が再開されたが, 2008年4月現在, 上顎骨骨髄炎, 骨融解の再燃は認めない.RA患者においては, 抜歯を含めた歯科口腔外科治療時に重篤な感染症を発症させる可能性のあることを念頭において処置する必要があると考えられた. 同時にMTX, PSL, など免疫や骨代謝に影響する薬剤を投与する必要のある患者には事前の歯性感染病巣の治療と定期的な歯科管理が必要であることを一般の医師に訴えることも大切であると考えられた.

2 0 0 0 OA CCD誕生40周年

著者
越智 成之
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.691-697, 2011-05-01 (Released:2011-08-01)
参考文献数
18
著者
森山 由紀子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.62-77, 2010-04-01

被支配待遇から丁寧語に変化した「ハベリ」の出現は900年前後とされ、『古今集』詞書の「ハベリ」もその例とされることが多い。本稿は、奥村(1957)の指摘を再検証し『古今集』諸本間の異同の分布と意味分類を対照することによって、『古今集』に当初からあった「ハベリ」は、すべて「人の存在」の意味の範囲内で用いられたものに限られることを明らかにした。このように、丁寧語として拡張した例を一例も持たない『古今集』詞書の「ハベリ」は、手紙引用部の1例を除き、11Cの和文に見られるような丁寧語ではなく、上代と同じ被支配待遇として、または、「仮想被支配段階」という丁寧語の前段階にあたる過渡的な例として考えるべきである。なお、手紙引用部の1例については、『伊勢』の他の1例とともに、900年当時、本来被支配待遇であった「ハベリ」が、すでに対人コミュニケーション場面に転用されていたことを明確に示す例として位置づけられる。
著者
森田 耕平
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.18-34, 2016 (Released:2017-01-24)
参考文献数
14

動詞中止形の継続相相当のアスペクト形式であるシテイテとシテオリについて、両形式の比較を通じて意味・機能を記述し、次のことを明らかにした。 ①シテイテとシテオリを比較すると、シテイテのみが用いられる場合がある。 ②継続相のシテイテとシテオリの共通の意味・機能は、定形動詞のアスペクトとの相関によって出来事間の同時的時間関係を表すことである。 ③シテイテのみが用いられる文の構文的特徴は、(a)定形動詞のアスペクトが完成相で、(b)二つの出来事の主体が同一であり、(c)シテイテが、定形動詞が表す偶発的な出来事が発生する状況を表す点である。 ④このときシテイテは、定形動詞と並列された述語というよりも、主語と述語が表す出来事に対して、任意的な文の成分である状況語的意味・機能を持つ。これは同じ動詞中止形で修飾語的に機能するシテとは異なったあり方を示す。
著者
大矢 勝
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.85, 2009-02-01 (Released:2009-10-09)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2018

<p>成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.</p><p></p>
著者
岡崎 和夫
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.33-48, 2011-07

この稿は、暦日の吉凶の謂いの表出をになう語の歴史的探究を目的とし、『高倉院厳島御幸記』、『古今著聞集』、『愚管抄』、『春のみ山路』、『鎌倉遺文』、『延慶本平家物語』など中世前期(鎌倉期)ごろの日本語を反映するとみとめられる諸資料を中心にその用例、またその用例に関する注釈的見解について検証を試み、(1)院政期までと同様、鎌倉期に至ってもなお「ひなみ」の暦日語としての確例は容易に見出し難いと判断される。(2)(1)にもかかわらず、『古今著聞集』や『愚管抄』など漢字表記例「日次」の認められる本文のばあい、従来の注釈的諸研究は、いずれも、その根拠を提示しないまま「ひなみ」の語としての認定がなされており、あらためて古代の暦日語彙のありようをふまえ、先入的認識を排除したたしかな知見の構築が求められる。(3)平安朝期全般にわたって、物語、日記、説話ほかの諸作品本文に暦日の吉凶の意をあらわす専用の語としておおくの確例のみとめられた「ひついで」は、なお、こののちも鎌倉期以降の資料においてもその確例をみとめ得るが、これまでのところ、管見に入った用例は何れも中世後期(室町末期)内に摂せられる。(4)(3)のいっぽう、「ひがら」は、暦日の吉凶の謂いの確実な古例がすでに鎌倉中後期にみとめられ、ひきつづいてのちの時期にも確例がみとめられるが、中世期全般を総じても、管見に入った総用例数は僅少である。の諸点をはじめとして日本語史にかかわるあらたな知見を呈示する。
著者
福島 知己
出版者
一橋大学附属図書館研究開発室
雑誌
一橋大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:21876754)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-17, 2016-06-30

慶應義塾大学および東京商科大学で教鞭をとった福田徳三は、関東大震災勃発時の東京帝国大学附属図書館全焼に際して、一見すると冷淡とも見える見解を披瀝しているが、それは彼の大学図書館についての確固とした信念にもとづいた発言であった。本稿では、極窮権を中心とする福田の見解を手掛かりにして、大学図書館についての彼の主張を、その社会思想の全体から理解しようと試みた。福田の人間研究としての経済学の立場から見て、大学図書館とは、人間の精神的発達のあかしであった。Tokuzō Fukuda, who taught at Keio University and Tokyo University of Commerce, expressed apparently cold feeling when he heard that Tokyo Imperial University Library had been totally destroyed by fire after the Great Kantō Earthquake of 1923. In fact, his opinion was based on his unshakable belief on university library. This article tried to place it in his whole social thought, connecting it especially with his idea of right to extreme need. From his point of view, economics constitute part of the study of mankind, university library a token of their mental development.
著者
中村孝也 著
出版者
アルス
巻号頁・発行日
1930
著者
木下 広章 柴田 久 石橋 知也 雨宮 護 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.350-356, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
8

本研究では福岡県警察が全国に先駆けて設立した「犯罪予防研究アドバイザー制度」を事例に,(1)本制度を通じて入手した平成24~26年の福岡県内で発生したコンビニ強盗の犯行内容に関する事案概要データ(全79案件)4)ならびに被害店舗全74店舗(79件のうち5店舗は強盗被害に2回遭っている)の立地を整理,分析した.さらに(2)上記,強盗被害店舗全74店舗と徒歩圏(500m)を越えて最も近隣に立地している非被害店舗(74店舗)の合計148店舗の実地調査を実施し,強盗被害が誘発される立地・空間環境の要点とコンビニの防犯向上に向けた施策について考察した.その結果,コンビニ強盗に対する防犯施策の検討として(1)従業員に対する勤務姿勢を重視した防犯指導,(2)駐車場を中心とした視認性の向上,(3)陳列棚の高さが伴う監視性低下への認識啓発について,その重要性を示唆した.
著者
奥 俊信
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.799-804, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
10

六角格子内にランダムに打った点を連結したグラフを利用して、近似的なボロノイ図を作成する方法を提案する。この方法は、生成元として、点、線、面図形を同時に扱うことができる。また、障害物がある場合も扱うことが出来るので、汎用性の高い方法である。六角格子は正方格子よりも異方性が少ないのでより良い近似ボロノイ図がえられる。ボロノイ図には基本的に次の3種類があり、それぞれに適した別々の方法が用いられてきた。1)空間全域を生成元の領域に分割するボロノイ図。垂直二等分線が用いられる。2)線パターンで構成されたボロノイ図。グラフ理論が用いられる。3)障害物のあるボロノイ図。グラフ理論の最短経路が用いられる。本研究は以上3種類のボロノイ図を同一の手法で求めようとするものである。その基本的アイデアは次の通りである。つまり、1)空間を六角格子で分割されたセルの集合とする。2)セルの位置をセル内部のランダムな位置で代表させる。以上の方法によって実際にコンピュータを使ってボロノイ図を作成する。
著者
木村 一
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.35-47, 2005-04-01

『和英語林集成』1版(1867)の編纂に先だって,J.C.ヘボンは,ノート一冊本499ページ分からなる「原稿」を作成していた。「原稿」は,約7,000語を収録し,うち約四分の三の語が1版に収録されている。「原稿」の見出し語や漢字表記などについて,中・近世の節用集をはじめとする諸辞書と比較照合した結果,ヘボンは森楓齋著『雅俗幼学新書』(1855)を参看し,「原稿」に採録した可能性が強いと考えるに至った。その論拠について具体例を挙げながら諸面から指摘する。なお,『雅俗幼学新書』から「原稿」に採り入れられた見出し語や漢字表記などは,修正を施されながら1版に引き継がれていった。
著者
上阪 等
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1789-1795, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
丸田 恭子 園田 至人 内田 裕一 高橋 利幸 福永 秀敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.491-495, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
4 7

症例は89歳女性である.四肢のしびれと筋力低下を訴え入院した.右視神経萎縮があり視力は手動弁,四肢・体幹の全感覚消失と四肢に中等度の筋力低下を認めた.間質性肺炎が認められ,MRIでは第2から第6頸椎レベルにかけて連続性脊髄病変があり,後索から灰白質中心にかけてガドリニウムにて造影された.抗核抗体640倍(speckled type),抗DNA抗体33.1 IU/ml,抗SS-A抗体40.4,抗SS-B抗体171.9,抗RNP抗体39.5と高値を示したことから,全身性エリテマトーデスやSjögren症候群による縦断性脊髄炎を考え,ステロイドパルス療法を施行した.症状は軽快し,頸髄の異常所見は消失した.その後,抗アクアポリン4抗体陽性が判明し,頸髄病変が再燃したためセミパルス療法を行い,プレドニゾロン10 mg/日を継続している.全身性エリテマトーデスやSjögren症候群による縦断性脊髄炎が報告されているが,視神経脊髄炎においては各種の自己抗体の上昇をともなう場合があり,視神経脊髄炎関連疾患も考察して抗アクアポリン4抗体を測定することが診断および治療の上で重要と考える.
著者
井垣 誠
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.508-513, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
25
被引用文献数
2