著者
赤池 孝章 岡本 竜哉
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

Helicobacter cinaediは1984年に初めてヒトへの感染が確認された新興感染症菌である。これまでの報告の多くは、免疫能低下症例における日和見感染症であるが、我々は免疫異常のない術後患者における敗血症・蜂窩織炎の事例を報告した。本菌は培養効率が悪いため、我々は本菌の主要抗原組換え蛋白質を用いた本菌感染の血清診断法を確立した。近年、非消化器疾患、特に動脈硬化症や不整脈の病態に、H.pyloriなどの慢性感染の関与が示唆されている。H.cinaediはH.pyloriに比べ血管侵襲性が強く、様々な非消化器疾患に関連している可能性が示唆される。そこで本菌と動脈硬化症や不整脈との関連について臨床疫学的な解析を行った。まず、熊本大学附属病院にて2005年から2009年にかけて精査・加療した症例で、心房性不整脈を有する群(不整脈群:132症例)と、有しない群(非不整脈群:137症例)を対象に、抗H.cinedi抗体レベルをELISA法にて測定した。その結果、非不整脈群に比べ不整脈群において有意に高い抗体レベルを認めた。一方、これまで上室性不整脈との関連が示唆されてきたH.pyloriやChlamydophila pneumoniaeに対する抗体レベルは両群間で差を認めなかった。また多変量解析にて、H.cinaedi抗体が陽性であることは、心房性不整脈に対する有意な独立した危険因子であることがわかった。さらに、本菌に対する特異抗体を作成し、解離性大動脈瘤症例から得られた剖検組織(9例)を免疫組織染色した結果、全例にて粥状硬化巣のマクロファージに一致した陽性像を認めた。以上の知見は、H.cinaedi感染が動脈硬化症や不整脈といった心臓血管疾患の病因に関連していることを強く示唆しており、当該疾患の病態解明ならびに新たな診断・治療法の確立に大きく寄与できるものと期待される。
著者
嶋村 正樹 西山 智明 榊原 恵子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

コケ植物の系統基部に位置するナンジャモンジャゴケとコマチゴケを用いて陸上植物の初期進化を明らかにするための研究基盤整備を進めた。ナンジャモンジャゴケの葉緑体全ゲノム配列情報を公開した。ナンジャモンジャゴケの粘液毛内部のハルティヒネット様構造から単離された菌類は,ツツジ科植物から単離された子嚢菌と近縁であることが示された。これまでのところコマチゴケのゲノムサイズは約3.5Gbと推定している。多くの発生,形態形成関連遺伝子について,タイ類のモデル植物であるゼニゴケゲノムと同様,遺伝子重複が少ないことが明らかになった。
著者
堀 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究の目的は、高次の理科学力を育成するため教育方法であるOPPA(One Page Portfolio Assessment)の開発とその効果を検証することにある。主として、以下の三点から研究をすすめた。第一は、OPPAの依拠している学習論および評価論の学術的など動向を検討し、その理論書と実践書をまとめたことである。第二は、小・中学校および高校理科の授業実践を通して、OPPAはメタ認知の育成に効果的であることが明らかになった。第三は、その具体的内容として、OPPシートの作成、学習および授業の実施とOPPシートの活用、OPPシートを用いた授業改善の方法などについて考察した。
著者
石田 尚行 岡澤 厚
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では有機無機ハイブリッド分子性磁性体を中心に複合機能の開発を進めた。(1)機能性低次元磁石:ラジカル-コバルト系単一次元鎖磁石からこれまでの世界最高の保磁力をもつ磁性材料を開発した。(2)分子包接誘起磁性体:ラジカル置換のホスト・配位子分子を構築し、その磁性を超分子化学手法により制御した。(3)液晶性磁石・可溶化磁石:長鎖アルキル基を有する鉄(II)錯体を合成し、中間相転移とスピン転移の共存する系を得た。
著者
木村 隆志
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、回折限界集光を実現可能な変形精度を有する硬X線用形状可変ミラーを開発することである。フィゾー型干渉計を用いた印加電圧フィードバックシステムを構築することにより、形状可変ミラーを数nmの精度で非球面形状へ変形させることに成功した。SPring-8において集光性能評価を行い、形状可変ミラーを深さの異なる非球面形状に変形させることによって、回折限界条件下で様々なサイズの集光X線ビームを形成可能であることを確認した。
著者
落合 正仁
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

超原子価臭素の極めて高い超脱離能を利用して、ジフルオロブロマンを用いたBaeyer-Villiger(BV)酸化の全く新しい方法論を提案することに成功した。本方法により、これまでは不可能であるとされていた脂肪族一級アルデヒドや芳香族アルデヒドのBV酸化が可能となった。また、超原子価臭素が引き起こすBV酸化が立体保持で進行することを証明すると共に、本BV酸化におけるアルキル基の転位が、アルキル基の電子供与能によって支配されることを明らかにした。同時に、芳香族アルデヒドを用いてその置換基効果を検討し、反応機構を明らかにした。更に、分子軌道計算を実施して、反応機構の検証を行った。
著者
西山 清 植月 惠一郎 川津 雅江 大石 和欣 吉川 朗子 金津 和美 小口 一郎 直原 典子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

環境に対する生命体の感応性-「環境感受性」-は、近年自然科学において注目を集めているテーマである。本研究は人文科学研究にこの概念を援用し、文学・文化および思想テクストにおいてその動態を考察することで、現代のエコロジカルな感性・思想の萌芽と展開を分析したものである。研究対象は、自然・環境の現代的認識の萌芽がもっとも顕著に観察されるイギリス・ロマン主義、およびその前後の時代の文学、文化、思想とした。本研究は、「環境感受性」が生み出され、現代的なあり方に展開していく様態を多面的に検証し、あわせて、文学研究が他分野と有機的な関連をもちつつ発展する、持続可能な営為であることも証明している。
著者
羽渕 由子
出版者
徳山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,外国人留学生が日本語でおこなう供述の特徴および正確で詳細な情報を引き出す方法を明らかにし,これらの結果を踏まえて日本語が母語でない者に対する面接のガイドラインを開発することであった。この目的を達成するために三つの研究をおこなった。第一の研究では,日本語初級と中級の留学生および日本語母語話者を対象として事故映像を見た直後と1週間後に日本語で面接をおこない,報告内容を分析した。分析の結果,初級は記憶成績が他群よりも低く,日本語でおこなう面接自体の負荷が影響している可能性が示された。また,初・中級は語彙や文法のエラーが多く,意味を確認するために面接者の介入が必要なことが示された。第二の研究では,母語による記述報告と日本語による口述報告を,事故を目撃した直後と1週間後におこない,報告内容について対応分析をおこなった。分析の結果,初・中級は,母語話者と比べて報告の形式や時期によって叙述が変化しており,複数手段で情報を確認しながら補完する必要性が示された。第三の研究では,本研究の実験的検討(第一,第二の研究成果)および先行研究(外国人留学生を含む第二言語学習者の日本語会話能力の判定基準,子どもに対する司法面接のガイドラインなど)を踏まえて,外国人留学生に対する面接のガイドラインを作成し,提案した。
著者
藤田 浄秀 谷口 英樹
出版者
横浜市立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

幹細胞アッセイ法の一つであるin vitroコロニーアッセイ法を用いて、顎下腺に幹/前駆細胞が存在するか否かを検証した。ラット新生仔顎下腺細胞の低密度培養(200cells/cm^2)により、単一細胞由来のコロニーを形成させることが可能な培養系を確立した。コロニーを構成する細胞のDoubling timeは平均24.7時間(S.D±7.02時間)と増殖能が旺盛であった。Epidermal growth factor(EGF)、hepatocyte growth factor(HGF)を添加して培養する事で、培養7日目においてコロニー構成細胞数が100個以上の大きなクローン性コロニーの形成数が13.2個(S.D±4.18個)と、何も添加せずに培養した場合の4.5個(S.D±1.73個)より2.93倍に増加した。RT-PCRにより様々な唾液腺細胞の分化マーカーの発現を検証した結果では、唾液腺を構成する三つの細胞系列の分化マーカーを発現しているクローン性コロニーが88.9%(8/9)と高頻度に存在し、免疫染色による検証では、腺房細胞マーカーであるAquaporin5(AQP5)、導管細胞マーカーであるNa+K+ATPase(Na-K)、cytokeratin19(CK19)、S100、筋上皮細胞マーカーであるα-smooth muscle actin(α-SMA)の分化マーカーの発現がコロニー中の細胞に見られた。また、成体ラット顎下腺中にも増殖能と多分化能を兼ね備えた細胞が、新生仔顎下腺よりも低い頻度ながらも存在していることが明らかになった。本研究により、高い増殖能と多分化能を兼ね備えた唾液腺幹/前駆細胞が新生児ならびに成体ラットの顎下腺中に存在することが明らかになった。
著者
永井 宏樹 山口 博之 丸山 史人 Xuan Thanh Bui
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヒトをはじめとする動物や植物などに代表される真核生物の誕生には、細菌が別の細胞内へはいりこんでミトコンドリアや葉緑体になるという、一次共生の成立が鍵となっています。しかしながら、細菌が真核細胞へ侵入するという現象自体は、細菌感染の現場で今日でも日常的に起こっています。本研究では、ヒト病原菌レジオネラ、アメーバ共生菌や病原性細胞内寄生菌とそれらの宿主である真核生物細胞との関わり方を解析することにより、生物が入れ子になって進化を駆動するというマトリョーシカ型進化の第一段階における進化原理の一端を明らかにすることができました。
著者
坂口 勝義 宮脇 正一 永田 順子 山崎 要一 岩崎 智憲 松根 彰志 黒野 祐一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

成長発育期の小児における睡眠障害の実態を解明し、顎関節症状、消化器症状、社会心理学的な問題行動などの種々の関連因子との相互関係を明らかにするため、小学校児童を対象に、消化器症状、日中の活動中の眠気、睡眠状態、問題行動について質問紙を用いた調査を行った。睡眠に異常を示す群(睡眠障害群)と正常群に分けたところ、小学校児童の一般集団において睡眠障害を訴える者は30%弱にのぼった。睡眠障害群では、授業中に眠くなる、日中にしっかりと起きていない、日中に疲れたと思うこと、イライラなどの行動的特徴、睡眠時にいびきをかく等に加え、食後におなかのあたりが気持ち悪い、げっぷなどの胃食道酸逆流の症状を示唆する項目、不安や攻撃性などの問題行動が見られた。また、問題行動に関する質問紙調査の結果から分けた問題行動群と正常群について、睡眠障害、胃食道逆流症状を比べたところ、問題行動群では正常群に比べて、睡眠障害と胃食道逆流症状が有意に多く認められた。
著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

漫才を中心とする話芸とテレビドラマの会話の分析によって,以下のことが明らかになった。[1]ある言語表現が,聞き手に対して何らかの言語的反応(広義応答)を要求ないし期待するというのは,なにも質問(回答要求)表現に限ったことではない。聞き手に対する積極的な働きかけの意志を帯びた表現は,以下の13種に分類することができるが,(1)命令,(2)禁止,(3)要求,(4)依頼,(5)質問,(6)相手状況評価,(7)訴え,(8)注意喚起・教え,(9)宣言・宣告,(10)同意確認,(11)勧誘,(12)あいさつ,(13)呼びかけこのすべての種類の言語的働きかけに対して,聞き手はまず言語によって反応することが普通である。この中には,聞き手の言語的反応が,聞き手の反応の中心である場合から,反応の前ぶれ的一部分である場合(命令に対する応諾など)までの幅があり,また,無言による応答という場合さえあるが,概括すれば,上記13種類の言語的働きかけは,すべて,広義応答(言語的反応)を要求,ないし期待するものだと言える。[2]上記のほかに,(つまり聞き手に対する働きかけの発話でなくても)ディスコ-スの中で,聞き手が黙っていられなくなるようにしむけるという種類の発話ー反応の型が見られる。(1)長い発話を「ネ」で切って、そこまでの聞き手の理解を確認する.(2)意外な内容を唐突に持ち出して,聞き手からの説明催促,質問などを誘い出す.(3)話し手の困惑,喜びなどの情動を表明して,聞き手の反応を誘う。(4)判断や意志決定をめぐる躊躇・逡巡を表明して,相手の援助の発言を誘い出す.これらの発話も、広義応答(言語的反応)を要求するものと言える。
著者
高木 節雄 土山 聡宏 中田 伸生 中島 孝一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

粒子分散強化は金属材料の基本的な強化機構の一つであり、鉄鋼材料の場合、セメンタイトを代表とする炭化物が一般的に強化分散粒子として使用されている。一方、近年ではナノテクノロジーによる鉄鋼材料の高機能化研究が盛んに行われており、数nm~数十nm の非常に微細な分散粒子(ナノ分散粒子)を利用して鉄鋼材料の高強度化を図ろうとする試みがなされ、その一つとしてナノCu 粒子が注目されている。ただし、ナノCu 粒子分散鋼の優れた機械的性質は、単に分散粒子のサイズが微細であることだけでなく、「分散Cu 粒子自体が鉄基地に比べて十分軟質である」というCu 粒子の特徴によってもたらされている事実も示唆されている。今後、大きな降伏強度と加工硬化率を有し高強度・高延性を兼ね備えた材料を得るためには、炭化物とCu 粒子を同時に最適な状態で分散させ、それぞれの特長を融合させてやること(ハイブリッド化)が有効であると考えられる。そのような鉄鋼材料、「ハイブリッド鋼」の有効性を証明することを本研究の最大の目的とし研究を遂行した。その結果、様々なハイブリッド鋼(フェライト型ハイブリッド鋼、マルテンサイト型ハイブリッド鋼、パーライト型ハイブリッド鋼など)の創製に成功し、炭化物とCu 粒子の複合析出により鋼の強度-延性バランスが大幅に改善することが明らかとなった。さらに、炭化物とCu 粒子それぞれの分散状態を制御することにより鋼の降伏強度と加工硬化率を独立して任意にコントロールできる可能性が示唆された。
著者
青木 恵子
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

安全で安心な食品の流通のために必要な情報公開の方法を検証するため、一般的な人々の嘘に対する意識を金銭的インセンティブがある実験環境で検証した。実験の結果は、嘘をつく割合は全体で約40%であった。匿名性で貰える金額が多く、対象者が若い人の場合が一番嘘をつく割合が多かった(約50%)。相手の顔が見える場合は、匿名性の場合に比べて、嘘をついたことを自白する人が多い傾向が観察された。嘘をつかれて、その通りの行動をした(騙された)人の割合は、嘘をつかれた人達の中で約68%であった。騙された人は、実験の種類や個人属性に大きな差がなかったが、相手を信じる傾向が観察された。
著者
森實 芳仁 芝崎 太 黒井 克昌
出版者
財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨年度より引き続き、新規診断法確立のためのMUSTag法の改良及び民間企業との共同研究による新たな診断機器・計測法の開発を継続しつつ、実際の臨床検体を用いて各種疾患に関与するバイオマーカーを標的としたより大規模な臨床研究を開始した。1.MUSTagアッセイ用検出機器の共同開発平成21年度に開発に成功した超高速PCR装置の臨床応用により、新型インフルエンザ等の感染症における遺伝子診断において、迅速(30分以内)に診断結果を得る事が可能となった。一方でMUSTagアッセイ用の検出機器としては測定可能な検体数の問題から(最大12ウェル)未だ実用可能な段階には至っていないため、今後は検体処理能力向上のための装置の改良が急務である。また昨年度開発を行ったMUSTag法の標識技術を蛍光・発光イムノクロマト検出法に応用したIMPACTag法と、民間企業と連携して開発した高感度蛍光検出機器を組み合わせる事で、各種感染症の簡便・迅速かつ超高感度なイムノクロマト検出系の開発に成功し、現在臨床診断薬としての実用化のための検証を進めている。2.アッセイ法の改良磁気ビーズを抗体の固相担体に用いるMUSTagアッセイ系の開発により最大10倍程度の高感度化が得られた他、血清等の臨床サンプルを用いた実験において適切な前処理方法との組み合わせにより、非特異的反応をほぼゼロに低減する事に成功した。現在は上記の改良を行ったMUSTagアッセイ系を、各種臨床サンプル中のバイオマーカーの測定に応用している。3.MUSTag法を用いた臨床サンプル中の各種疾患関連バイオマーカーの測定MUSTag法を用いた臨床試験により、膀胱がんや運動機能関連疾患等の診断に有用なバイオマーカーの選別・検定を開始しており、その結果いくつかの因子において患者-健常者間で有意な差が見られる事が明らかになっている。
著者
菅野 新一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々はDNA修復機構であるNHEJに関わる新規DNA修復酵素PALFの発見からCYR domainを発見した。このCYR domainをもつ遺伝子を調べたところショウジョウバエで未知タンパク質を発見し、そのヒトオルソログ(APNX)を発見した。ショウジョウバエとヒトオルソログタンパク質がDNA修復酵素である可能性を前提にこれらのタンパク質の活性を調べた。その結果AP endonucleaseの活性をつこと、また、アセチル基転移酵素活性の二つの活性をもつ稀なdual fanction enzymeであることがわかった。
著者
三時 眞貴子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、19世紀後半のイギリスにおける「浮浪児」の教育実態を、浮浪児を収容した寄宿制インダストリアル・スクールに残された入学記録、退校記録、各種委員会の議事録等、これまで使われたことのない一次史料を用いて明らかにすることを目的とした。マンチェスタ認定インダストリアル・スクールへの入所は浮浪児処遇の唯一の対応策ではなかったが、浮浪児を地域社会に包摂する手段としては決定的に重要な措置であった。マンチェスタ認定インダストリアル・スクールでは、本来であれば親や親方が責任を持って行う徒弟修行を学校内で行い、退校時にはほとんどすべての子どもたちを就職させることで浮浪児たちを労働者として送り出した。
著者
高木 堅志郎 藤島 啓 崔 博坤 酒井 啓司
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1991

音波緩和法は、分子や分子集合体レベルで物質の動的な挙動を調べる非常に有効な手段である。しかし従来の技術は、周波数が主に100MHz以下に限られているため、昨今の要求である「より速く、よりミクロな現象」の研究に対応することは極めて困難であった。我々は高分解能ブラッグ反射(HRB)法という新しい音速吸収測定技術を考案し、1.5GHzまでの広帯域測定を可能にした。本研究の目的は、この測定法を実用化の観点から見直し、GHz域で音波緩和スペクトルを求める新しい物性測定装置として確立することにある。本年度まで3年間にわたって行われた研究の成果は以下のようにまとめることができる。1)HRB法の高性能化と汎用化を行った。これまで用いられてきた特殊な周波数分析機器に替えて、スペクトラムアナライザーなどの汎用器を用いた測定システムを試作し、2GHzを越える領域での迅速測定が可能となった。2)自動化・汎用化されたHRB法則定システムを、i)液晶性分子の配向緩和現象の研究 ii)たんぱく質、脂質などの生体高分子の広帯域超音波音波物性 iii)高分子ゲル系における高周波表面波伝搬、などソフトマテリアルの高周波音波物性の研究に応用した。その結果、ソフトマテリアルの分子ダイナミクスに関する多くの知見を得ることができた。3)本研究の中で示された、まったく新しい高周波フォノン測定手法である光ビ-ト分光ブリュアン散乱測定の可能性を検討し、現在のHRB法と極めて類似の光学系によって実現可能であることを確認した。この光ビ-トブリュアン散乱測定法の予備実験を進め、GHz域の熱フォノン測定に成功した。4)これらの最終的な研究成果を評価・総括し、HRBシステムを用いた今後の高周波超音波物性研究についての検討を行った。
著者
手塚 実
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

「学校嫌い」を理由に年間30日以上欠席した登校拒否(不登校)の小・中学生が、平成8年度には94,245人と過去最高を更新したことが文部省の学校基本調査(平成9年8月8日現在)によって明らかにされた。前年度より約13,000人増え、前年度に対する伸び幅は、調査開始時の平成3年度以降最も高く3倍に達した。この数は、中学生で60人に1人、小学生ではほぼ400人に1人とそれぞれ過去最多の割合である。学校に行かないという同じような現象でも、学校恐怖症のように、行かなくてはと思い前夜は登校の準備をしていても当日朝になると恐怖や不安で登校できないものと、一応の理屈をつけて行かないでいる登校拒否の病体ではその対処が異なったものでなければならないと考えられる。しかし、学校側はこの状況に対して半数が怠学・なまけと認識しており治療・教育上まだまだ大きな問題が残されている。また、学校に行かれない児童の環境(教師、友人、親、兄弟姉妹等)に対しても観察の目が行き届いているとは言いがたい。本研究ではこのような現実的な問題をふまえつつ、不登校児に対し療法的音楽教育を施しながらこの児童をとりまく周囲の人間関係にも注視し、以下の点(1.音楽教育者の立場から、学校教育の中で療法的音楽教育はどのような形で係わることが可能か。2学校教育の中で、比較的難治性の心身症児童に対して教育実習生は教師とどのような連携をとるべきか。3.言語的コミュニケーションが図れなくなった親子関係、師弟関係、友人関係等に対し言語的コミュニケーションを通して肯定的な対人関係を得るきっかけに音楽はなりうるか。4.啓豪活動を通して、地域住民の心と体の健康管理に音楽はどのような形で貢献できるか)を明らかにしようと試みた。その結果は報告書(別冊)に記載してある。