著者
水間 玲子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-53, 2003-03
被引用文献数
1

自己嫌悪感にはその体験から自己形成に向かう可能性があると指摘される。本研究では,自己嫌悪感を体験する場面において,否定的な自己の変容を積極的に志向する態度を"変容志向"とし,それと他の変数との関係について検討した。変容志向は日頃の自己内省によって可能となること,未来イメージが肯定的なことと関連すること,同時に,それによって自己嫌悪感にとらわれる可能性もあること,また,日常の自己嫌悪感体験頻度によっても促進されること,を仮説として設けた。質問紙調査を行い,それらについて検討した。調査対象は大学生・大学院生255名(男子128名,女子127名)であった。その結果,自己嫌悪感場面における変容志向は,普段から自己内省の程度が低い者においては他よりも低いこと,未来イメージが肯定的である場合にも高くなっていることが明らかにされた。また,自己嫌悪感体験頻度が高い者において変容志向の程度も高くなっていたが,変容志向によって自己嫌悪感へのとらわれの程度が高まるわけではないようであった。
著者
尾畑 佑樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

ヒトの消化管粘膜は、およそ100兆個の腸内細菌に曝されている。腸内細菌は宿主の消化酵素では分解できない食物繊維などを微生物発酵により分解し、終末代謝産物として様々な低分子化合物を産生する。これら代謝物は、宿主細胞の栄養源として利用されている他、免疫系調節因子として機能している。しかしながら、腸内代謝物が免疫系を修飾する分子メカニズムは不明であった。本研究課題の目的は、腸内細菌が粘膜バリア機能の維持に重要なイムノグロブリンA(IgA)産生B細胞を誘導するメカニズムを解明することである。無菌マウスに通常のマウス由来の腸内細菌を定着させたマウスの解析から、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸の一つである「酪酸」が大腸のIgA産生B細胞の誘導を促すことが分かった。そこで、酪酸によるIgA誘導作用機序を明らかにするため、未熟B細胞をIgA誘導条件下で培養し、酪酸添加によるIgA陽性細胞割合の変化を調べた。その結果、酪酸を添加してもIgA産生細胞の割合に変化は見られなかった。これより、酪酸はB細胞以外の腸管内細胞に作用し、間接的にIgA誘導を促す可能性が示唆された。そこで、生体内における酪酸の作用を調べるため、酪酸を含む餌をマウスに一定期間与え、大腸の免疫学的表現型を解析した。その結果、酪酸は大腸の腸上皮細胞におけるTGFβの発現および樹状細胞におけるレチノイン酸(RA)合成酵素の活性(ALDH活性)を高めた。TGFβおよびRAは、IgA誘導に必須の因子であることから、酪酸はこれら因子の発現を高めることで、間接的にIgA産生細胞を増やす可能性が示唆された。現在、本現象の分子メカニズムの解析を行うとともに、本研究成果の論文化に向けた準備を進めている。
著者
小池 清治
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学国際学部研究論集 (ISSN:13420364)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.61-72, 2005-10-03

YOSHIDA Kenkou, famous essayist in medieval Japan, made his best work useing three kinds of wrting style, namely classical Chinese, classical Japanese and mixed style. In other words, he build out The Kinkakuji, The Golden temple useing three kinds of ancient Japanese language.
著者
守上 祐樹 藤森 明 久米井 真衣 灰原 博子 岡田 志緒子 溝渕 憲子 坂井 誠 中西 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.187-190, 2016 (Released:2016-02-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

血流量 (QB) とTMPの関係を明らかにする目的で, 血液透析 (HD) および前希釈オンライン血液透析濾過 (OHDF) の際, 血液側入口圧 (PBi), 血液側出口圧 (PBo), 透析液側入口圧 (PDi), 透析液側出口圧 (PDo) の4点の圧を測定した. 透析液流量は500mL/分とし, 血液流量 (QB) を100mL/分から250mL/分まで変化させTMPの変動を観察した. 5種類の計算式でTMPを算出し比較した. TMPの値は計算法によって大きく異なった. QBを上昇させた場合, HD条件ではすべての計算法でTMPは低下した. 一方, 前希釈OHDFではPBiを測定した計算法でTMPは上昇, その他の計算法では低下した. QBを上昇させると血液側の圧損失が増大するため, PBiを測定しなければ計算上のTMPの誤差が大きくなるものと考えられた. QB上昇の際, HDでは剪断速度の上昇のためTMPは低下し, 前希釈OHDFではQBの上昇により希釈率が低下したためTMPが上昇したと考えられた.
著者
宋 仁善
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.54-63, 2006-09-10 (Released:2017-08-01)

「生け贄男は必要か」は、ベトナム戦争をめぐる同時代の状況に密接に関わる作品である。作中、玩具爆弾の寓意的な仕掛け、狂気じみた「善」という人物の両義的な設定には、当時日本の兵器輸出の黒幕を暴こうとする作者の戦略が作用している。人肉食と生け贄の神話的なモチーフは、反復される戦争と復興の惨めなシステムへの諷刺である。日本帝国に取って代わったアメリカ帝国のあべこべな状況、反戦と特需が共存する同時代の自家撞着など、判然としないこの時期の全体像を提示するために、大江はこの作品でメニッポス的諷刺の方法論を援用している。
著者
加藤弘之 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1900
著者
家中 茂 興梠 克久 鎌田 磨人 佐藤 宣子 松村 和則 笠松 浩樹 藤本 仰一 田村 隆雄
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

中山間地域の新たな生業として自伐型林業をとりあげた。技術研修や山林確保など自治体の支援を得ながら新規参入している地域起こし協力隊の事例や旧来の自伐林業者が共同組織化しつつ地域の担い手となっている事例など、産業としての林業とはちがう価値創造的な活動がみられた。典型的な自伐林家の山林における植物群落調査では、自然の分布を反映した地形に応じた分布がみられ、自然を活かす森林管理の手法として注目された。
著者
淺田 義和 八木(佐伯) 街子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42062, (Released:2018-10-09)
参考文献数
9

Moodle は学習履歴として様々なデータを記録・保持している.しかし,学習分析や教学IR といった観点から記録したログを利用しようとする場合,その抽出にあたっての機能はやや不十分であるといえる.今回,Moodle のプラグインの1つであるConfigurable Reports を用い,目的に応じてデータベースより直接情報を抽出することを試みた.この結果,フォーラム上での投稿傾向やMoodle そのものの活用状況などを抽出することができた.データ抽出時の負荷などを考慮すると抽出用のSQL には改善の余地が残されているが,これらは学習者支援あるいはFacultyDevelopment の検討を行うための基盤データとして利用可能と考えられる.
著者
鶴田 利郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.411-422, 2012-03-30 (Released:2016-08-08)
参考文献数
28

本研究では,ネット安全教育で扱うべき教育内容として示されている「ネット危機」(田中2009a)の1つであるネット依存に関する指導において,自己の生活のあり方を自律的に改善する力を育てることを目的とするR-PDCAサイクルの活動に注目した.そこで,田中(2009b)が示したR-PDCAサイクルの特色,具体的活動例をもとに,ネット依存に関するネット安全教育の単元内容を構成し,2009年7月から9月の間の計8時間の枠組みで,私立K高等学校の情報Bの授業内で授業実践を試行した.生徒を対象に行った質問紙調査の結果,授業実践で行ったR-PDCAサイクルの活動を通して,多くの生徒が携帯電話やパソコンの利用におけるルールの大切さについて肯定的な認識を持ったこと,携帯電話やパソコンを利用する際に,多くの生徒が自分自身で様々なことを意識しながら利用するようになったと認識していることなどが確認できた.以上より,ネット依存に関する指導におけるR-PDCAサイクルの学習活動の有効性が示唆された.
出版者
山口県内務部
巻号頁・発行日
1910
著者
辻 良三
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S9-1, 2014

発達神経毒性とは、重金属や化学物質等のばく露による、胎児期あるいは生後発達期の神経系の構造および機能に対する有害影響と定義されている。メチル水銀による胎児性水俣病やエタノールによる発達障害は、その例としてよく知られている。最近、LD(学習障害)、ADHD(注意欠損・多動性障害)、自閉症等の疾病を有する児童が増加している報告されている。また、子どものいじめ、引きこもり、自殺等の心の問題は社会問題となっている。これらの原因については、明らかになっておらず、その原因のひとつに、身の回りの化学物質のばく露による発達神経毒性が疑われている。環境省は、大規模な疫学調査であるエコチル調査を開始し、化学物質との関連性を調査している。農薬等の一部の化学物質については、動物を用いた毒性ガイドライン試験である発達神経毒性試験を実施され、その影響が検討されてきたが、高額の費用、長い試験期間、多数の動物使用等の問題があり、膨大な数の化学物質に対応するのは困難であり、より簡便な方法が望まれている。そこで、種々の生物や細胞を用いた<i>in vivo, in vitro</i>評価系の開発が進められているが、まだ十分と言える評価系は出来ていない。その理由のひとつとして、種々の既知の化学物質による発達神経毒性自体の研究が十分になされていないことが挙げられ、発達神経毒性の発現メカニズムの解明や評価に適したバイオマーカーの開発が進んでいないことが考えられる。これらの研究の今後の一層の研究の進展が望まれる。本講演では、発達神経毒性の概要及び研究動向について説明するとともに、ラットにおけるエタノールの幼若期ばく露による脳発達への影響のメカニズム研究の例についても紹介したい。