著者
谷口 明子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.193-202, 2010

統計的にはいじめ発生件数が減少しているとはいえ、いじめが看過できない教育上の課題であることは変わらない。いじめ深刻化の背景にはいじめの潜在化があると言われるが、その要因のひとつに中学生のいじめ認識のゆがみがあるのではないかと考えられる。そこで、本研究においては、いじめが最も深刻である中学1、2年生を対象として、どのような行為を「いじめ」と認識しているのか、またそうした認識はいじめ経験の有無と関連があるのかどうかを質問紙調査によって検討した。結果として、衝動的暴力や遊び型のいじめ行為に対しては、それが「いじめである」という認識が低く、さらにそうした遊び型いじめに関しては、被害経験のある生徒でさえ「いじめではない」との認識があることが明らかになった。中学校におけるいじめ防止を考える際に、こうしたいじめへの認識のずれに焦点をあてた対応が望まれる。
著者
本村 猛能 森山 潤 山本 利一 角 和博 工藤 雄司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.29, pp.310-311, 2013-11-09

本研究は諸外国の中学校,高等学校学習過程における生徒の「自己評価による意識調査」の診断を通して,情報教育の体系化とその学習内容を検討することを目的とする。対象国は,日本と中国,韓国,他の調査により比較検討した。このとき,文科相の評価の観点と併せてブルームの「認知・精神運動・情意」領域の評価の観点とペレグリーノの評価理論も取り入れた。その結果,情報教育の体系化についての認知度や「情報の科学的理解」について韓国が最も有意に高く,イメージは技能習得から知識へと推移している。我が国の情報教育のカリキュラムは,生徒の発達段階に応じた基礎的・基本的な知識の習得をはかる教授法と実習(技能)を取り入れたカリキュラムを検討する必要性があることが示唆された
著者
鹿島 和枝
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 = Journal of Bunka Gakuen University (ISSN:21873372)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.13-25, 2013-01
被引用文献数
1

衣服の作品製作において、デザインに合ったシルエットを表現するためには、素材に適した縫製が求められる。その縫製方法を選択する指針を得るため、パニエを使用するAラインのウェディング・ドレスの裾上げ方法について検討した。3 種類の布地ごとに縫製方法の異なる6 種の試料を製作し、官能検査による裾の仕上りを評価した。(1)シノンウールは、裾部分の剛軟度が高い方法は評価が高く、ホースヘアブレードをヘムに入れる方法やダブルオーガンジーのバイアスの別見返しで始末する方法、共布の別見返しで始末する方法は評価が高い。(2)サテンクレープはドレープ性があり、ヘムに張りがないと垂れてまつりのひびきが大きくなることから、ホースヘアブレードをヘムに入れる方法やハイモで裏打ちする方法は評価が高い。(3)シルクタフタはドレープ性がなく、布地が平坦でヘムやまつり目が表面にひびくため、オーガンジーで裏打ちする方法が最も評価が高い。以上の官能検査による評価と裾部分の物性との相関性を分析した結果、厚さと剛軟度の計測から縫製方法を選択すると良いことがわかり、学生へ縫製指導上の指針が得られたので報告する。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学大学院文学研究科
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.14, pp.57-76, 2012-03

従来の通説では、"小山評定"は、慶長5年7月25日、徳川家康が上杉討伐のために東下した諸将を小山(下野国=現栃木県小山市)に招集して、上杉討伐の中止と諸将の西上を決定した軍議として有名であり、これまで関ヶ原の戦いに関する研究史において、動かしようのない"歴史的事実"として通説化して扱われてきた。しかし、本稿では一次史料の詳細な内容検討により、これまで通説で肯定されてきた"小山評定"が歴史的事実ではなく、フィクションであることを論証し、フィクションとしての"小山評定"が江戸時代に捏造された背景についても論及した。
著者
今西 衛 佐藤 慶一 石橋 健一 斎藤 参郎
出版者
名古屋産業大学
雑誌
名古屋産業大学論集 (ISSN:13462237)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.15-21, 2007-03-16

政府地震調査研究推進本部では、首都圏直下地震、東海地震、東南海・南海地震などの発生確率について、いずれも高い数値を与えており、近い将来、我が国の都市部が大地震に見舞われることが危惧されている。災害により多数の住宅喪失世帯が発生した際、災害救助法が適用されると、医療や食品・飲料水の供与などとともに、避難所や応急仮設住宅という居住支援が行われる。阪神・淡路大震災では、約20万の住宅喪失世帯に対して、約5万戸の応急仮設住宅が供給されたように、我が国の応急住宅支援においては、仮設住宅による対応が中心的な役割を果たす。仮設住宅については、多額の建設費、維持管理費、撤去費を要し、従来より、現物支給から現金支給へと切り替えた方が効率的ではないか、という議論があるが、理論的な検討は十分とは言えない。2004年に被災者生活再建支援法が改正され、仮住まいの家賃としても利用可能な支援金給付が認められることとなったが、どの程度利用されるのか、その評価は十分ではない。そのような状況を踏まえ、本研究では、経済学的アプローチによる理論的枠組みを構築し、費用便益分析の価値概念に基づいて災害応急居住支援の制度分析を試みた。分析を通して、仮設住宅や借上住宅の家賃が無料であるならば、住民にとってそれと同等な生活水準をもたらし、かつ、行政の費用負担が少なくなるような家賃補助制度が存在することが示され、我が国の応急居住支援の制度設計への一つの知見を得ることができた。
著者
芳賀 理佳 鈴木 幸一 松川 浩 田中 結子 一ノ瀬 昇 竹中 玄 藤田 早苗
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.285-291, 2010

香水やオーデコロンなどの香り製品は,身だしなみや香りを楽しむために使用するほか,異性から魅力的に思われたいといった理由からも使用されていると思われる。われわれは,「男性の魅力を香りで向上させることができるのか」を研究目的に,男性の印象を形成する一つの要素である声に着目し,男性の声の印象度試験を行った。試験には声に関するパラメーターを単純化するため,男性1人の声から機械的に基本周波数のみを変化させた高さの異なる6種の声を用いて女性被験者に評価させた。まず,香りを漂わせない状態で印象度試験を行ったところ,男性の声の高さの違いにより女性が感じる声の好みや印象が異なることがわかった。次に,試験に用いる香料を調整した。文献や伝承をもとに心理的な作用があるとされている香料成分34種から,専門パネルが官能評価により男性のポジティブなイメージに合致する香料成分を6種類選定した。その中で高揚感・魅力的なイメージが大きいL─ムスコンに着目して男性の声の印象度試験を行ったところ,L─ムスコンの提示の有無で男性の声の印象が変化した。そこでさらに,6種類の香料成分の中からL─ムスコンを含む1種以上の香料成分を含有する男性向けボディケア製品の香りを3種類創作した。この3種類の香りの中から男女ともに嗜好性が高く,香りのイメージが湧きやすいフローラル・スウィート調とシトラス・ムスク調の香りを試験用香料と選定した。選定した香料を用いて男性の声の印象度試験を行った結果,低い声 (基本周波数が120Hzより低い声) に対してはフローラル・スウィート調の香りに,高い声 (基本周波数が120Hzより高い声) に対してはシトラス・ムスク調の香りに,男性の声の爽やかさを向上させる効果が観測された。さらに,試験後の女性被験者の気分状態は,香りを漂わせなかった場合と比較して香りを漂わせた場合に,イライラする感じ,ほっとする感じ,イキイキする感じ,わくわくする感じが有意に改善された。
著者
鈴木 健司
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.172-145, 2013-03-15

「宮沢賢治文学における地学的想像力」というテーマのもと、「文学部紀要」を中心に十一本ほどの論文を継続的に書き、単行本『宮沢賢治文学における地学的想像力―〈心象〉と〈現実〉の谷をわたる―』(蒼丘書林、二〇一一年)として上梓した。しかしその後、新たに書き足したいテーマがあらわれ、調査、研究を続けてきた。それがまとまったので、「補遺二題」として発表することにした。第一章は、〈種山ヶ原〉に関し、賢治の岩石認識に異なりがあることを明らかにした上で、それが、〈種山ヶ原〉の体験時期の異なりや、その体験で受けたイメージと深い関連があることを指摘し、そのことが賢治文学の想像力の展開を考える切り口になるのではないか、という主旨である。第二章は、賢治テクストにあっても実在しない〈鬼越山〉を取り上げ、これまで、〈鬼古里山〉を想定していた先行研究に対し、〈燧堀山〉こそが〈鬼越山〉に当たるのではないか、という新見解を提示し、立証する。
著者
馬 成芬
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.573-592, 2017-03-31

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点松浦章教授古稀記念号[東アジアの歴史と動態]There were 151 kinds of Chinese calligraphy rubbings, totally 3797 volumes, being imported to Japan in Edo period. But all these rubbings could not be considered to be authentic works, and some of them couldn't be distinguished if they were authentic works or not. In that case, how about the condition of those counterfeited rubbings which were imported to Japan? In this paper, I will focus on these counterfeited rubbings of being imported to Japan, then explored the condition of it and the influence to the area of calligraphy of Japan.
著者
村中 淑子
出版者
桃山学院大学
雑誌
人間文化研究 = Journal of humanities research, St. Andrew's University (ISSN:21889031)
巻号頁・発行日
no.3, pp.55-83, 2015-10

In this article we studied color terms in loanwords in Japanese, and analyzed them using Corpus Data. We focused on ten color terms of English origin, using the full-text retrieval system "Himawari" of the internet library Aozora Bunko (12023 works, accessed October 1, 2014) for language resources, and observed examples from the Meiji period to the early Showa period. The color terms studied were as follows : PINKU (pink), GURIIN (green), BURUU (blue), GUREE (gray), BEEJU (beige), BURAUN (brown), REDDO (red), IEROO (yellow), HOWAITO (white), and BURAKKU (black). Following the study, the terms were classified into two categories. (a) Those having both an indicatory function in the context of multiple choice, and a descriptive function to describe attributes of things. They can be used independently but not in compound form. PINKU (pink), GURIIN (green), BURUU (blue), GUREE (gray), and BEEJU (beige) belong to this group. (b) Those having only the indicatory function and no descriptive function. They are always used in compound form. BURAUN (brown), REDDO (red), IEROO (yellow), HOWAITO (white), and BURAKKU (black) belong to this group. It may be said that words of group (a) are more familiar in Japanese than those of group (b), in particular PINKU and GURIIN as they describe the color of natural objects. In group (b), the reason why REDDO (red), HOWAITO (white), and BURAKKU (black) have low familiarity in Japanese is that Japanese original color terms AKA (red), SHIRO (white), and KURO (black) constitute extremely basic and fundamental vocabulary in Japanese, and it is likely that there was no place for words of foreign origin having similar meaning.
著者
齊藤 文夫
出版者
追手門学院大学
雑誌
追手門学院大学人間学部紀要 (ISSN:13418084)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.15-34, 1997-07-01

性非行 / 事例研究 / 心理査定 / TAT
著者
藤堂 眞治
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.275-282, 2015-04-05

スーパーコンピュータやワークステーションが計算物理における「実験装置」であるとすると,シミュレーションソフトウェア(プログラム)はそれらを使いこなすための「実験技術」であると言える.将来の研究成果につながる「技術」は,個々の研究者あるいは研究グループが,門外不出のものとして日々磨きあげていくべきである.このような立場に立つと,シミュレーションに使うプログラムは,これまでの経験と知識に基づき「速く」て「信頼できる」ものを自分で一から作るのが当然であり,できあいをブラックボックスとして使うのは研究として認められないということになろう.コンピュータの計算速度は年とともに指数関数的に伸びている.シミュレーションの手法もそれ以上の速さで進化している.例えば,量子磁性,高温超伝導など,電子相関の強い量子多体系に対する代表的な手法の一つである量子モンテカルロ法は,状態更新のアルゴリズムにおいて,近年,多くの本質的な改善がなされ,バイアスのない最も精密な数値解析手法となっている.それに伴い,アルゴリズムはますます複雑化している.プログラム開発や並列化,チューニングのためのコストは増加し,研究者の「専門化・固定化」も大きな問題となっている.その一方で,実験家の間でも,日常的なツールとしてのシミュレーションの需要が高まっている.このような状況のもと,計算機実験の技術開発や整備は,もはや個人の素養に頼るだけではなく,コミュニティー全体で取り組み共有していくべき段階にきているのは明らかである.本稿では,計算物性物理,量子統計物理分野におけるそのような取り組みの一つである「ALPS」を紹介する.ALPS(Algorithms and Libraries for Physics Simulations)は,量子スピン系,電子系など強相関量子多体系の有効模型のシミュレーションのためのオープンソースソフトウェアの開発を行う国際共同プロジェクトである.ALPSでは,主に,量子統計物理分野のシミュレーションの共通基盤となるライブラリやデータ解析ツールを開発すると同時に,最新のアルゴリズムに基づく質の高いアプリケーションプログラムの提供を目指している.ALPSには,厳密対角化,古典・量子モンテカルロ法,密度行列くりこみ群,動的平均場近似など,量子多体系の有効模型に対する標準的あるいは先進的なアルゴリズムを用いたアプリケーションが用意されており,興味ある模型の特性や計算したい物理量に応じて,最適なアプリケーションを選ぶことができる.ALPSのようなコミュニティーコードを用いることで,計算物理の専門家でなくとも,様々な模型について手軽にシミュレーションを始めることができる.それだけでなく,新たなプログラムやアルゴリズムを開発する際のリファレンスコードとして,あるいは計算物理教育の題材,シミュレーション結果の共有やアーカイブ化のためのツールとしての活用など,ハイエンドのスーパーコンピュータによる大規模シミュレーションだけでなく,計算物理の裾野を広げていくためにも,このようなコミュニティーコードの整備・知識共有は,今後ますます重要となっていくに違いない.