著者
岸 映里 油谷 藍子 尾崎 麻子 新矢 将尚 加田平 賢史 大嶋 智子 清水 充
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.111-116, 2013-04-25 (Released:2013-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」に基づき,ホウレンソウのウラン(U)含有量を定量した.はじめに,マイクロ波分解装置を用いる有効性を検討し,マニュアル法と同等の定量値が得られることを示した.短時間で試験溶液が調製できることから,緊急時に対応するためには非常に有効であると考えられた.また,ICP-MS測定の際に2種類の内標準元素(TlまたはBi)が示されているが,低濃度のUを定量する場合は,よりUに近い感度変化を示すTlを用いるほうが望ましいと考えられた.ただし,試料によっては微量のTlやBiを含有するものがあるため,あらかじめ試験溶液中のそれらの量を確認する必要があることがわかった.平成23年4~5月に購入したホウレンソウ9検体のU含有量を定量したところ,いずれも10μg/kg以下であった.
著者
湊 太郎 横山 由香 大石 友彦 佐藤 義夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.54-59, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1

豊かな水産資源を効率的かつ持続的に利用するためには,より健全な沿岸海域環境を取り戻し,それを長期にわたって維持する必要がある.本研究では,海域環境改善の手法として,底質に光を照射し付着藻類の光合成を促すことにより,底層水の貧酸素化を抑制する方法に着目した.ここではまず,無酸素状態からの溶存酸素量の増加の可能性を調べるため,自然堆積物を用いて室内実験を行った.人工光源として,本研究ではLEDを採用した.その結果,光を照射することによって,溶存酸素量が増加し無酸素状態を脱することが確認された.このことから,底質にLEDを用いて光を照射する方法は,無酸素状態の環境を改善するために非常に有効な手段であることが明らかとなった.
著者
服部 考成 福士 惠一 早川 真 湊 太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.737-741, 2013-08-05 (Released:2013-09-04)
参考文献数
12

We developed a capillary zone electrophoresis method with direct UV detection for the determination of inorganic anions (Cl−, NO2−, and NO3−), organic acids (oxalic acid, citric acid, and malic acid), and amino acids (aspartic acid and glutamic acid) in the common ice plant (Mesembryanthemum crystallinum L.). As the background electrolyte, a 20 mmol L−1 disodium hydrogenphosphate dodecahydrate solution adjusted to pH 10.6 was used with the addition of 0.001% (w/v) hexadimethrine bromide to reverse electroosmotic flow. The detection responses for the above analytes were improved by 3.5 – 580 fold in terms of the limits of detection (LODs, S/N = 3) in comparison with conventional indirect UV detection. The LODs for the analytes were 0.040 – 2.9 mg L−1. The values of the relative standard deviation (RSD, n = 4, intra-day) of the migration time and the peak area were, respectively, 0.081 – 0.43% and 0.28 – 9.3% when extract from the common ice plant was analyzed. Using the proposed procedure, Cl−, NO2−, NO3−, and oxalic acid in the common ice plant were detected within 9 min; citric acid, malic acid, aspartic acid, and glutamic acid were detected within 12 min.
著者
高須 信行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1075-1079, 1998-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
2

甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症が極端に増悪し,生命の危機に直面した状態である.甲状腺機能亢進症の患者に,急激に,高熱,頻脈,流れるような汗,下痢,精神不安がでてきたものを甲状腺クリーゼという.やがて意識がなくなる.手術,感染,糖尿病性昏睡などが誘因となる.早期に診断し,治療することが大切である.適切な治療が行なわれないと死に至る.治療は循環系を中心にした全身管理と急速に甲状腺ホルモン産生・分泌を抑制することである.甲状腺ホルモンを下げるためにヨードを投与する.
著者
岩瀬 大輔
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.612, pp.612_219-612_238, 2011-03-31 (Released:2013-04-17)
参考文献数
23

1996年の改正保険業法に始まった生命保険自由化の流れは,業界の市場構造に大きな変化を及ぼした。しかし,これを消費者利益の観点から改めて見ると,競争によって価格を引き下げ,剰余を消費者に還元するという目的は実現できていない。規制緩和によるメリットを消費者が十分に享受するためには,消費者がニーズに合った保険を選ぶために必要な情報開示をさらに強化する必要がある。具体的には,比較情報を流通させるための前提となる約款と保険料表の開示と,それらの情報を十分に使いこなすための前提として「購入者手引」の全契約者に向けた事前交付を,保険会社に義務付けるべきである。
著者
近角 聰信
出版者
(社)日本応用磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:02850192)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.44-47, 1980-05-31 (Released:2010-05-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

After describing a history of Invar alloys, analyses of anomalous temperature dependence of Fe-Ni Invar alloys are introduced. The anomalous magnetic and elastic properties of the same alloys are wellcorrelated with that of thermal expansion. Effect of high magnetic field and that of cold-rolling are also described.
著者
神崎 奈奈 三輪 和久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.121-132, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
27

グラフの表現の違いが情報理解に与える効果が確認されてきた。このことは, 説明の仕方によって, グラフの使い分けがなされる必要があることを示唆している。本研究では, 研究発表等で日常的にグラフを使用している研究者を日常的グラフユーザと定義し, 日常的グラフユーザ, および理系大学院生, 文系学部学生を対象として, 自らが生成した説明とグラフ表現の一貫性に関する検討を行った。具体的には, 生成された説明中の特定の変数の表現と, 作成されたグラフにおける変数の配置の一貫性という観点から, グラフ作成に関する実験を行った。実験1A, 1Bの結果から, 日常的グラフユーザ, および理系大学院生は, 自らが生成した説明と一貫した表現のグラフを作成していることが確認された。一方, 実験2の結果から, 文系学部学生に関しては, 説明に関連したグラフの使い分けは確認されなかった。ただし, 実験3の結果から, 文系学部学生に関しても, グラフの候補を提示することによって, 自らグラフを作成する状況に比して, 説明に関連したグラフの使い分けが促進されることが示唆された。
著者
湊 太郎 宮内 宣宏 山崎 正一 佐藤 義夫 福江 正治
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.181-186, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10

本研究では, 大阪湾の湾奥に位置する尼崎港と尼崎運河において行った実証実験の結果をもとにして, 海水浄化船による水質汚濁物質の削減の可能性について検討した. その結果, 海水中のSSの中で粒状態有機物の占める割合が大きいほど, 海水浄化船を稼動させてSSを除去することによって, 海水中から水質汚濁物質である有機物を除去することが可能であるということが判明した. また, 植物プランクトンは, 海水中に溶存する無機栄養塩類を取り込み固定している. つまり, SSとして植物プランクトンをより多く除去することができれば, それに伴って海水中の栄養塩類の濃度をある程度まで低減させることが可能になると思われる. これらのことから, 大阪湾の湾奥のように, 植物プランクトンが大規模に増殖する海域では, 海水浄化船によるSSの除去に伴う水質改善が, より効果的に行われると考えられる.
著者
宇津 栄祐
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.32-47,95, 1965-01-30 (Released:2009-11-11)
著者
河田 則文 久保井 広志 申 東桓 筒井 ひろ子 溝口 靖紘 小林 絢三 近藤 洋子 森澤 成司 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.855-859, 1989-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

マウスKupffer細胞から産生遊離するPGE2量に及ぼすinterleukin 1(以下,IL1)とtumor necrosis factor(以下,TNF)の影響について検討した.マウスKupffer細胞を培養すると,spontaneousにもPGE2の遊離がみられ,培養上清中のPGE2量は培養開始後24時間まで経時的に増加したが,TNFを添加するとTNF1, 10ng/ml添加時にさらに有意に増加した.また,Kupffer細胞をzymosanで刺激するとPGE2産生量は約5倍にも増幅し,TNF存在下ではさらに増強された.さらに,Kupffer細胞をあらかじめTNFで24時間処理したのちzymosanで刺激を加えて産生されるPGE2量もやはり有意に増加した.このように,種々の条件下においてTNFはKupffer細胞からのPGE2産生を増加させることが明らかとなった.しかしながら,IL1にはこのような効果は見られなかった.以上の結果から,Kupffer細胞自身が産生するとされるTNFがKupffer細胞機能を調節する機構が存在する可能性が示唆された.
著者
梅谷 陽二
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.392-395, 2005-05-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
著者
梅谷 陽二
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.752-755, 2011 (Released:2011-11-15)
参考文献数
1
著者
山内 健生 有山 啓之 向井 哲也 山内 杏子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.223-229, 2006-12-01 (Released:2008-03-21)
参考文献数
30
被引用文献数
3

2002年の5-6, 10-12月に, 島根・鳥取県境に位置する中海において, オゴノリGracilaria asiatica とスジアオノリEnteromorpha prolifera に生息するヨコエビ相の調査を行った。その結果, 7科10種3117個体のヨコエビ類を確認した。これらのうち, Eogammarus possjeticus, Apocorophium acutum, アリアケドロクダムシMonocorophium acherusicum, トンガリドロクダムシMonocorophium insidiosum, ツルギトゲホホヨコエビParadexamine setigera, アゴナガヨコエビPontogeneia rostrata, ヒゲツノメリタヨコエビMelitasetiflagella, シミズメリタヨコエビMelita shimizui の8種は中海における新記録種であった。なお, これらの種が採集された水域の塩分濃度は9.99 psuから25.9 psuの範囲内であった。中海のオゴノリ葉上ヨコエビ相においてはモズミヨコエビAmpithoe valida が優占種であり, スジアオノリ葉上ではトンガリドロクダムシが優占した。
著者
山内 健生 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-99, 2007-03-20 (Released:2009-03-20)
参考文献数
6
被引用文献数
2

2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の Ornithoica exilis(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ Gallirallus okinawae 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における O. exilis の初記録であり,ヤンバルクイナは O. exilis の新宿主記録となる。
著者
石田 仁
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.489-496, 2006-09-25 (Released:2009-08-07)
参考文献数
14

積雪時の地表面温度の特性を明らかにする目的で,超音波積雪深計によって観測された積雪の有無と地表面温度(1時間インターバル)との関連について検討した.その結果,積雪時の地表面温度は,0.5±1.0℃(平均±標準偏差,最小-0.4℃,最大3.2℃)であった.地表面温度3.2℃以下,前後5時間の標準偏差が±0.22℃以下の条件を積雪下とみなした場合の積雪の有無の判定的中率は95%であった.この判別条件を用い,2003年10月上旬から2004年6月下旬までの一冬季間,富山県下の暖帯から高山帯に至る主要森林タイプ19地点で林床の地表面温度の計測を行い積雪日数の推定を行った.その結果,各地点の積雪日数は,暖温帯常緑―落葉広葉樹林:22.5日/年,暖温帯落葉広葉樹林:58.4~104.5日/年,温帯落葉広葉樹林:113.3~158.6日/年,温帯針広混交林:150.3~158.7日/年,温帯―亜高山移行帯林:167.0日/年,亜高山帯林:214.5日/年,高山帯林:200.4~207.1日/年と推定された.暖帯から亜高山帯の森林では,標高と積雪日数の間に高い相関関係が認められた.