著者
田中 隆一
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人材配置とマクロ生産性の関係を記述する理論モデルを構築し、高等教育における人材選抜機能の度合いと、中等・初等教育における学力形成システムの関係を精査することで、最適な教育システムについての考察をおこなった。その結果、高等教育における人材選抜機能について、長期的なGDPを最大にする度合いは内点解となり、その解は生産物の相対価格のゆがみの度合いに依存して変化することが確かめられた。
著者
下村 明子 田中 秀樹 守田 嘉男 張 暁春 三宅 靖子 西田 千夏 島田 友子
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

障がい児の平均睡眠時間は8.61時間で健常児より約1時間以上短く,睡眠不足,昼夜逆転も多い。発達障がい児の養育者の平均睡眠時間は平日6.52時間で健常児の養育者より短く,睡眠不足は全体の52.7%,中途覚醒1回以上は80%前後で親子共に良好な睡眠状態ではない。両者の養育者のニーズの違いも明らかで,発達障がい児の養育者は親亡き後の生活保障,子どもの自立,障がいへの理解や支援を強く望んでいる。マットレス下設置センサーのデータから,発達障がい児の入眠困難,昼夜逆転,中途覚醒など健常児との違いが明確に示され,養育者の睡眠に対する意識を高めた。
著者
森澤 和子 平林 直樹 長澤 啓行
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、看護師に事前に提示する翌月分の勤務表を種々の制約条件を考慮して自動的に作成する静的スケジューリング機能に加えて,勤務予定の当日になってやむをえず出勤できない看護師が発生してしまった場合に提示済みの勤務割当をできるだけ変更することなく欠勤を補うための代替人員を選定し,かつその日以降の勤務割当を必要に応じて修正する動的スケジューリングの機能も備えたナース・スケジューリングシステムの基幹アルゴリズムを開発した.
著者
溝田 武人
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

サッカーボールがほぼ無回転で飛翔する場合にしばしば観察されている不規則な軌道変化の不思議を扱ったものである。ボール後方の渦を可視化撮影し、変動する揚力・横力を測定し、お互いの対応関係を明らかにした。サッカーボールの無回転発射装置を作成し、激しい変化の様子を観察できるようになった。
著者
伊東 正博 中島 正洋
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究期間中、チェルノブイリ組織バンクに5021例の組織登録が完了した。ヨード環境の異なる本邦とチェルノブイリ周辺地域の被曝歴のない成人の甲状腺乳頭癌症例を用いて病理組織学的検討を行った。チェルノブイリ症例では小児、成人とも充実性成分を有する症例が多くみられ、ヨード環境や遺伝的背景の差が形態形成に差をもたらすこと、放射線感受性を考える上で環境因子が重要であることを報告した。また福島原発事故関連の若年症例では、大部分の症例が古典的乳頭癌形態を呈し、BRAF点突然変異が多く、ret/PTC変異を主とするチェルノブイリ症例とは腫瘍形態、遺伝子変異が大きく異なることを明らかにした。
著者
中塚 幹也 関 明穂 新井 富士美
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

性同一性障害では,心の性と身体の性が一致せず,子どもの頃から性別違和感を持ち,不登校,自殺念慮,自殺未遂などを経験する率も高い.本研究では,各地の当時者の在学する学校,教育委員会,ジェンダークリニックを受診する性同一性障害当事者等への調査により,小学校,中学校,高等学校,大学での対応状況,問題点を明らかにし,対応マニュアルである『学校の中の「性別違和感』を持つ子ども:性同一性障害の生徒に向き合う』を作成,配布した.
著者
鷲見 洋一 井田 尚 井上 櫻子 真部 清孝 小嶋 竜寿 逸見 竜生 隠岐 さや香 小関 武史 寺田 元一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

『百科全書』に散在する典拠データへの関心が私たちの研究の出発点であった。この大事典は16世紀から18世紀にかけての複雑なテクスト間の照合関係の歴史に与しており、コピー・ペーストこそが項目著者の常套手段だった。私たちが開発するデータベースは『百科全書』に含まれる無数の典拠情報を検討する「典拠研究」を実践することで、この歴史に迫ろうとするものである。抽出するデータは「著者」と「タイトル」に関するもので、それらの多くが不完全な形で表記されているため、常時「正規化」という厄介な作業を強いられる。
著者
照沼 かほる
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、アメリカにおいて19世紀からさまざまな形で展開される「少女・女性の成功物語」を、ゴシック的要素と結びつけることで、「プリンセス(願望の)物語」と位置づけ、それを用いることで、アメリカの映像作品に描かれる「プリンセス」と、一見それとは対照的とみなされてきた「戦う女性」が、ともにゴシックの呪縛を帯びた、共通の矛盾・問題点をはらんでいること、またそれが広くアメリカ文化に浸透しつづけている女性像の問題と結びついていることを、アメリカの映像作品の分析を通して、論じるものである。
著者
深見 かほり
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では居住者組織主体で住宅地および周辺環境の空間の維持管理に取り組んでいる戸建住宅地の居住者組織を対象に、ヒアリング調査および現地悉皆調査を行なった。本年度はこれまで対象としてきた開発住宅地だけでなく、既成住宅地の居住者組織も調査対象とした。今回の開発戸建住宅地の調査では、設計段階における開発コンセプトが現在のまちなみ維持活動や居住者組織の運営へのどのように影響をしているかという点も調査項目に加えた。まず、建築家宮脇檀が設計した東京都日野市の「高幡鹿島台ガーデン54」では、居住者が設計コンセプトを理解・継承しつつ、開発後30年を経た中で新規居住者を取り込みながら新たな住環境維持活動に取り組んでいる実態が確認できた。また、大手ディベロッパーが開発した、東京都武蔵野市の「ファインコート武蔵境」においては住環境運営活動を行なう居住者組織はないが、設計段階でまちなみ形成とコミュニティ形成を促すものとして敷地内に植栽帯を施すことでまちなみとして植栽帯が続く沿道となるような空間的な仕掛けをした結果、意図通り居住者は植栽を通してまちなみ維持への意識が高まり、また植栽管理を通した近所付き合いが行なわれていることがわかった。一方、既成住宅地の調査では東京都目黒区の既成住宅地の組織化されていない主婦グループが5年以上継続的に続けているハロウィンのイベント活動の事例から、これまで従来の地域組織が担ってきた地域活動とは異なる新しい地域運営の可能性が伺えた。また、沖縄県北中城村大城の「大城花咲爺会」では、世界遺産を有する村内の住環境維持を高齢者組織が中心となり村の伝統や文化を守りつつ美化活動を行っていること、高知県安芸市の「土居廓中保存会」の活動では伝統的集落の保存を中心とした住環境の維持を若手の新規居住者が中心になり取り組んでいる実態が確認できた。今年度の調査を通し、設計段階での住宅地の空間的デザインはその後の住環境運営活動に影響する可能性、また住環境運営活動を担う人材について従来型の地域組織によらない新たな組織構成の知見を得ることが出来た。
著者
勝山 貴之
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

16世紀の英国は, 強大なカトリック勢力と対峙するなか,地中海における交易路の開拓に腐心していた。エリザベスに残された唯一の道は,北アフリカや東地中海のイスラム教国と通商条約を結ぶことであった。しかし,オスマン帝国をはじめとする異教国との同盟に対して, 英国人たちは不安を抱かずにはおれなかった。彼らは,異教の文化によって,自国の文化が浸食されてしまうのではないかと恐れたのである。異教の「他者」と接触した英国人の精神的葛藤は,劇の中にどのような形で描かれたのか。東洋での異文化体験を綴った旅行記を手掛かりに,「他者」との遭遇を描いた劇の分析を試み,『シェイクスピアと異教国への旅』としてまとめた。
著者
三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.17末から19世紀前半までの英国の数学愛好者は総称してphilomathとよばれるが、その総数は2-3万人であり、イングランドはもちろん、スコットランドやアイルランドにまで及ぶ。これは同時期のフランス、ドイツ、イタリアには見られない現象である。2.普及した原因はいくつかあげられる。英国では18世紀になると印刷公刊が制度的に容易になり多くの数学書が公刊され、また行商人が各地でそれを販売し、巡回講義が頻繁に行われそこで販売されたこと。海外進出に伴い航海術が盛んになり、そのための実用数学が広く要請されたこと。北部への開墾が進み、軍事的にも正確な測量術が要求されたこと。産業、商業が展開し、さまざまな計測法の実用書の需要が増大したこと。それらの実用数学を教える学校が設立され、そのための教科書が数多く印刷され、それが相乗効果になって数学愛好者が増えたこと。女性に娯楽としての数学という発想が普及し、女性にも数学が普及したこと、など。3.彼らは独自の社会的ネットワークを構成し、ハバーマスのいう公共圏が数学界にも適用できる。その中心はThe Ladies Diaryという雑誌であった。The Ladies Diaryに関しては、その価格、普及の度合いなど詳細な研究成果を研究成果報告書に記載。そのほかの雑誌には、The Palladium, The Stockton Beeなどがある。4.数学愛好者の数学は、ニュートン流の数学ではなく、もっぱら実用数学であった。5.実用数学のための数学器具がさまざま考案された。このことはフランスでも同じであるが、フランスの器具が豪華、大型、真鍮製で銘が彫られているのに対して、英国のものは小型、木製や象牙製で無名のものが多い。英国では実用器具として大衆に普及したことがわかる。
著者
大貫 茉莉
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

小学生と中学生を対象に4基本味の味覚検査を実施した結果、全体として6.0~20.9%に感受性低下が認められた。本研究では、味覚感受性低下の有無と口腔保健状況とにあまり関連は認められなかった。今後も小・中学生を対象に、より詳細な味覚感受性低下の実態調査や原因究明に関する研究を実施していくことが必要と考えられた。
著者
直井 雅文
出版者
埼玉県立越谷北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

月明かりは,一般に太陽光を直接月が反射したものである。しかし,三日月より細い月を見ると,太陽光が照らしていない部分も淡く見えることがある。これは,地球で反射した太陽光が月を照らしているもので,地球照である。また月が地球の影に入る皆既月食の時にも,月は完全に暗くはならずに赤銅色にほんのり見えることが多い。これは,太陽光のなかで散乱されにくい長波長の(赤い)光が地球の大気を屈折しながら回り込み,月を照らすためである。そこで,皆既月食および地球照を通常の月明かりと比較する分光観測をして,地球大気による吸収や散乱の影響を間接的に調べることが可能になる。これらの月の光を分析するために,低分散だが小型軽量の分光器を作成して観測に望んだ。2007年は6年ぶりに皆既月食が起こったが,曇天のため観測できなかった。しかし,地球照の分光観測に成功した。その結果,地球照の成分は地球大気によるレイリー散乱と地表や雲などによる反射光で説明できることが分かった。月の軌道は地球の赤道面に対して傾いている。そのため,日本で地球照が見えるとき,月から見た地球のすがたは,太平洋が大部分を占めたり,ユーラシア大陸が大部分を占めたり,インド洋が大部分を占めたりする。リモートセンシング技術の文献等をみると,地表の物質によって反射光の分光特性が異なる。そのことを利用して,人工衛星の画像から地球環境をモニターすることが可能になっている。今回観測に成功したとき,月からは太平洋が広く見えていたため,地球照には陸域の植生や土壌の反射光はほとんど無かったようである。
著者
越智 英輔 中里 浩一 石井 直方
出版者
明治学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、スポーツ現場において頻発する肉離れ損傷のメカニズムを解明することを目的とした。ラットエキセントリック筋収縮装置を用いて様々な条件下で筋損傷を誘発した結果、骨格筋萎縮を伴う比較的重度の肉離れ損傷モデルを作成することができた。さらに、タンパク質・遺伝子発現を検討した結果、修復に伴いミオスタチン・タンパク質分解系シグナル発現が増加し、骨格筋萎縮・結合組織瘢痕化への関与が示唆された。
著者
樽木 靖夫
出版者
横浜市立菅田中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究の目的と意義本研究では、学校行事に対する中学生の成就感は、個人活動のレベルだけでなく、他者との協力による活動のレベルも含めた因果モデルを検討する。具体的には、自己活動の認知、他者との相互理解、学級集団への理解を説明変数として、個人活動のレベルである自主性に次いで、他者との協力のレベルの要因が成就感に影響するかを体育祭と文化祭での学級劇を対象として検討する。2.方法及び具体的内容(1)質問紙:(1)行事活動における成就感に関する尺度は、「この活動を成し遂げたという達成感」と「またやってみたい、今度やるならこうしたいなどの意欲」の複合的な認知を測定する目的で4項目を作成した。(2)生徒の自己活動の認知に関する尺度は生徒の自主性、協力、運営を測定する項目、(3)他者との相互理解に関する尺度は他者からの理解、他者への理解を測定する項目、(4)学級集団への理解に関する尺度は学級の肯定的理解、学級でのトラブルに関する項目を6段階評定で作成した。(2)測定:文化祭で学級劇を行った中学2年生114名に体育祭後と文化祭後に測定した。3.結果と研究の重要性成就感を目的変数、自己活動の認知(自主性、協力、運営)、他者との相互理解(他者からの理解、他者への理解)、学級集団への理解(学級の肯定的理解、学級でのトラブル)を目的変数として、体育祭後と文化祭後それぞれについて、ステップワイズ方式による重回帰分析を行った。その結果、体育祭後では自主性、協力、他者への理解、運営が有意な説明変数として選択された。文化祭後では自主性、他者への理解、協力、運営が有意な説明変数として選択された。体育祭後、文化祭後のいずれの成就感についても、自主性が最も強く影響しており、協力、運営とともに自己活動の認知、さらに、他者への理解も影響していた。すなわち、個人活動のレベルの変数だけでなく他者との協力のレベルの影響が確認された。以上のように、学校行事における集団体験の重要性について、成就感の自己評価の側面より、個人活動レベルの要因と他者との協力レベルの要因の影響の重要性が示唆された。
著者
内田 千代子 高橋 由光 杉村 仁美 UCHIDA M KING R OSTROFF R FINN-STEVENSON M
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本自殺予防教育により、多くの学生が「自殺の危険のある友人に、効果的に支援を申し出ることが自分にできる、自殺したいと思っているか聞ける、それにより友人を救う可能性がある」「死別による悲しみで苦しんでいる人に、カウンセリングや精神科受診を進めることがあると思う」と感じるようになった。友人の危険に際し適切な援助を勧めることができることによる自己効力感(self-efficacy)、遺された人をサポートできる力をもち、ピアサポーティブな行動をとれる学生を養成するという本研究の目的に叶った効果が認められた.
著者
遠藤 愛
出版者
筑波学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,エリートテニス選手の生育史に関する調査結果にもとづいて,世界レベルの選手になるために必要な発育発達過程における運動遊びと,テニスの技術・体力トレーニング方法,および指導方法を提示することを目的として研究を進めた.運動遊びについては,調査対象者全員が,かくれんぼ,鬼ごっこ,竹馬,野球,サッカー,木登りなどに親しんでいた.選手らは,日常の運動遊びを通して,「相手の裏をかく,相手をだます(松岡修造氏)」,「年上の相手にいかに勝つか(井上悦子氏)」といった知恵を働かせる習慣を養っていた.幼少時の運動遊びにおける工夫は,テニスプレーヤーとしての勝負の駆け引きや,独自の技術・戦術の開発にも貢献したと述べている.また,テニストレーニングにおいては,「自分の性格に適したプレースタイル(沢松奈生子氏,錦織圭氏)」の習得を重視していた.選手,指導者らは,自らの特徴を認識し,「なぜその練習をするのかを納得してから(沢松氏)」,トレーニングを行っていた.トレーニング方法としては,「テニス中継のラジオを聞きながら素振りをする(坂井利郎氏)」,「スピンをかけて壁を越える練習(長塚京子氏)」など独創的なものも認められた.本調査の結果から,一流選手は,幼少時から運動に親しみ,その中で体を使った遊びの楽しさだけではなく,勝負の駆け引きや知恵を働かせる楽しさも学んでいたこと,テニストレーニングにおいては,自らの性格とそれに適したプレースタイルを追求していたこと,独自のトレーニング方法を開発,実践していたことなどが明らかになった.また,指導方法においては,指導者が,選手の精神面,肉体面における特徴を理解し,その選手独自のプレースタイルを開発,習得させることが重要であろう.
著者
橋本 明 中村 治 板原 和子
出版者
愛知県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

わが国の近代精神医療史資料の保存と利用は危機的な状況ある。本研究は、精神医学史学会でのシンポジウムおよび資料展示、さらに研究期間中に数度開催したワークショップでの研究発表と討議をとおして、精神医療史資料の保存と利用に関する研究基盤を整備することに貢献した。また、本研究の一環として西欧の精神医学ミュージアムの現地調査を行い、その歴史と現状を比較検討しながら、今後のわが国における精神医療史資料の利用や展示のありかたを検討した。
著者
二橋 亮
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

トンボは主に視覚でお互いを認識するため、翅色や体色に著しい多様性が見られる。トンボの成虫における色彩変化や色彩多型については、生態学的、行動学的な視点から多くの研究が行われてきたが、具体的な色素や体色に関わる分子機構については、全く不明であった。本研究から、日本人に馴染みの深いアカトンボの黄色から赤色への体色変化が、皮膚のオモクローム色素の酸化還元反応によって生じていることが明らかになった。この結果は、動物の体色変化に関わるメカニズムとして過去に例のないものであると考えられた。
著者
橋本 隼一
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的はminimax探索を基盤とするコンピュータ将棋プログラムに言語処理で培われてきたアルゴリズムを導入し,特にn-gram統計を利用したヒューリスティックを用いて強化を図り名人レベルのプログラムを実現することであった.実際,昨年度導入したn-gramを用いたキラーヒューリスティックや,浅いレベルに限定したヒューリスティックの利用は本研究室で開発を行ってきたコンピュータ将棋TACOSの強化に寄与し,その名前が先日情報処理学会から日本将棋連盟に送られた挑戦状において「名人に伍する力ありと情報処理学会が認めるまでに強いコンピュータ将棋」を実現するための一プログラムとして記されたことで,当初の目的は一定の成果を挙げた.ここ数年のコンピュータ将棋の発展を概観すると,その原動力が大規模な評価関数の自動調整と計算機速度の上昇によって可能となった網羅的な探索にあったと言える.そのような状況で我々の手法は選択的な探索を指向しており方向を異にしていた感はある.しかしながら本年度の発表に挙げたような人間の熟達度を測る指標としてのn-gram統計の利用を見出したことは,一般人がほとんど太刀打ちできなくなったコンピュータ将棋のこれからの方向性-初心者への教師としてのプログラム形成-を考えていく上で貢献できると考える.また本研究での成果はコンピュータ囲碁の発展に貢献できると考えられる.将棋では名人レベルへの目処がついたが,囲碁(19路)ではいまだアマチュアのレベルである.コンピュータチェス,コンピュータ将棋の歴史を見るといずれもヒューリスティックの効果的な利用がプログラム強化のブレイクスルーとなった時期があり,コンピュータ囲碁ではまさにその時期にあたる.本研究の延長として言語ベースアルゴリズムによる名人レベルのコンピュータ囲碁の実現を今後の課題としたい.