著者
北野 良夫
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-8, 2014-08

我が国においては、1996年から「豚コレラ清浄化5カ年計画」が本格的に開始された。この計画は、まず豚コレラGP生ワクチンの徹底接種することにより群免疫を高めて、野外ウイルスを排除することから始められ、その後にいのししを含めた豚の抗体検査により感染の有無などの実態調査を行いながら、徐々にワクチン接種を中止していくものである。2000年にはワクチン使用が原則中止され、一部都道府県知事の許可に基づき使用されていた同ワクチンの接種も徐々に中止され、2006年4月には全面中止となり、最終的にOIE規約に基づき2007年4月に「豚コレラ清浄国」となった。豚コレラ清浄国へ向けたこのような動きの中で、2004年、我が国屈指の養豚県である鹿児島県において5事例の豚コレラ疑似患畜が確認された。この発生に伴う一連の防疫活動においては、緊急ワクチン接種の強い要請があった中、西欧諸国と同様に、ワクチン接種を行わず、感染豚の摘発と淘汰及び飼養衛生管理基準の遵守により防圧された我が国初のケースとなった。
著者
和田 勉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.102, pp.57-64, 1998-11-13
参考文献数
3

情報処理学会情報処理教育委員会・初等中等情報教育委員会での、高等学校に新設される「情報」教科のあるべき内容を示すことを目的としたモデル教科書執筆プロジェクトの一部として、情報B(3)「情報処理の定式化とデータ管理」の後半の執筆を行なった。ここでは章の前半の部分での陸上競技大会を例にした問題の発見・分析等を受けて、その一部を「各競技へのコース割り当て問題」として取り出し、これの解法を探る過程でアルゴリズムやプログラミング的な考え方へ導くことをねらった。本稿ではこの教科書案を紹介し、これの試験的利用を踏まえての、この種の教えかたの長所と欠点、適切な用い方に関する考えを述べる。As a part of an IPSJ comittee's project for writing a textbook on the subject "Information" which will be established as a new subject in senior high schools, a project for the sake of showing its ideal contents, I wrote the second half of the section Information B(3) "Formalization of information processing, and data management." Corresponding to the first half of the section, in which problem finding, problem analyzing, etc. are discussed along the example "track athletic events," this second half extracts a part of it, "allocation problem of tracks to each game," and seeks its solution, aiming to introduce students to the viewpoint of algorithms and programming. In this paper, I introcuce this draft, and discuss on the advantages and drawbacksof this kind of teaching method, and on its appropriate usage.
著者
兵頭 正浩 入江 将考 濱田 和美 安田 学 花桐 武志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】</p><p></p><p>非小細胞肺癌(NSCLC)患者の肺切除後の心肺合併症(術後合併症)は,短・長期的に術後患者に悪影響を及ぼすことが報告されている。我々は先行研究において術後合併症の独立因子を同定したが(Eur Respir J. 2016),呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)としては術後合併症の予防的側面だけではなく,回復も重要な課題である。本研究は,術後合併症患者における臨床経過と身体機能の推移を明らかにすることを目的とする。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>2005年6月から2012年10月までに当院において,術前病期I期の診断で胸腔鏡下肺葉切除術を施行したNSCLC連続症例を対象とした(全例呼吸リハ実施)。身体機能評価は,6分間歩行距離(6MWD)と等尺性膝伸展筋力を,手術前,術後2病日,術後7病日,退院時の計4回測定した。呼吸リハは手術翌日から開始し漸増的運動療法を行った(2回/日)。合併症を発症しても呼吸リハは原則中止せず病態に応じて継続介入した。カルテより術後経過の詳細を調査した。術後合併症有り群と無し群において,術後在院日数と身体機能評価の推移を比較した。統計分析には,Mann-Whitney U検定,反復測定の分散分析,Bonferrorni多重比較を用いた。有意水準は危険率5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>包含基準を満たした188名を解析対象とした。術後合併症有り群は36例で,術後在院日数の中央値は9日だった。合併症内訳(重複例あり)は,肺瘻遷延18例,心房細動12例,無気肺8例,肺炎4例,気胸3例,乳糜胸1例だった。肺瘻遷延例で胸膜癒着術を1回以上行ったのは9例で胸腔ドレーン留置期間の中央値は10日間で,遅発性再気胸全例がドレーン再挿入し留置期間の中央値は13日間だった。術後在院日数は合併症有り群で有意に長かった(17日vs9日,p<0.001)。反復測定の分散分析による2群間の身体機能の比較の結果,6MWDは主効果,測定時期,交互作用の何れも有意で(p=0.024,<0.001,=0.031),多重比較検定の結果,術後7病日と退院時の差が最も大きかった。下肢筋力では測定時期のみ有意で(p<0.001),術後2病日と退院時の差が最も大きかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>先行研究ではCOPD併存は術後合併症の有意な独立因子であったが,実際,術後肺瘻,心房細動,無気肺,肺炎といった合併症が高頻度であったのは,脆弱な気腫肺,肺血管床の減少,気道クリアランス低下など,COPDの臨床的特徴と合致する結果だった。これらは胸腔ドレーン留置,心房細動のrate control,難治性肺炎などの積極的な運動療法が困難となる治療期間を伴うものだった。下肢筋力の推移はどの時期も2群間に差はなかったので,筋力は周術期において術後合併症の影響を受けていない事が示唆された。一方,6MWDは2群間に差を認め,術後合併症やその治療が影響していたと考えられた。しかしながら術後在院日数に差があったが退院時6MWDに群間差がなかったのには,呼吸リハが合併症治療期間も中止せず病態に応じ継続介入していたことも要因であった可能性が示唆された。</p>
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウパカマがレタス根長の伸長程度(対照区比)10〜20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
佐藤 晃矢 岡 瑞起 橋本 康弘 加藤 和彦
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.667-674, 2015

Social Tagging System (STS) which is one of the content management techniques is widely adopted in the online content sharing service. Using STS, users can give any strings (tags) to contents as annotations. It is important to know the usage of tag statistics for accomplishing an effective database design and the information navigation. The frequency of tag usage as well as their dynamics are similar to the ones found in the natural language. It is possible to reproduce the branching process of the tag dynamics using a classical model called Yule-Simon process. Another characteristic aspect of tags is the tag co-occurrence generated from the simultaneous use of tags. Using the tag co-occurrence, STS is able to reconstitute the hierarchy of tags, and recommend the tag which is probably used next. However, Yule-Simon process does not consider the tag co-occurrence and thus how the tag co-occurrence is generated from the model like Yule-Simon has not been addressed yet. In this paper, we propose to expand the Yule-Simon process to model the tag co-occurrence. From the point of view of network hierarchy, we confirm the similarity in the structure of the tag co-occurrence with the empirical data obtained from a social network service called 'RoomClip'. The present result suggested that this simple model like extended Yule-Simon process generates the tag co-occurrence feature.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.598, pp.42-43, 2014-08-25

自社の製品をインフラの老朽化市場の最前線で活用するために、施工部隊を用意するという戦略にかじを切るケースも目立ち始めてきた。黄色いケースに赤い蓋の「木工用ボンド」。誰もが知るロングセラー商品を開発したコニシは、2014年3月期の決算短信で、接着剤などを製造するボンド事業の次の柱として、「土木」を真っ先に掲げた。…
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.645, 2016-08-08

大林組はコンセック(広島市)と共同で、鉄筋コンクリート構造物を前面から直接、切断するワイヤソー装置「ディープノンループカッター」を開発した(写真1)。一般的な押し切りタイプのワイヤソーと比べて、切断時間を30%短縮できる。 従来のワイヤソー工…
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.755, pp.40-43, 2010-04-28

「日銀短観、4期連続で改善」「中小企業売上DIが3カ月連続で改善」。景気の先行きは不透明だが、4月に入ってから明るいニュースが増えてきた。凍結していた開発投資を再開し、反転攻勢に向けて動き出したユーザー企業の事例ニュースも増えている。情報化投資にかかわる本誌調査からも、「最悪期」は脱した感が出てきた。
著者
阿部 敦子 池田 隆徳 柚須 悟 中村 健太郎 石黒 晴久 塚田 雄大 信太 研二 宮山 和彦 加地 英生 四倉 正之 吉野 秀朗
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.54-61, 2005

症例は28歳男性.生来健康.突然死の家族歴あり, 残業が続いていた週の朝, 起床後に突然倒れ意識消失となる.救急隊が到着した時の心電図で心室細動が記録されたため, 直ちに電気的除細動が行われ, 当院に搬送された.12誘導心電図では下壁・左側壁誘導でJ波がみられ, そのJ波は日内・日差変動を示した.心拍変動解析では迷走神経活動が夜間~早朝で著しく亢進していた.冠攣縮性狭心症を除外するため, 右冠動脈にアセチルコリンを少量負荷したところ, ST-T変化を伴うことなく突然に房室ブロツクが誘発され, その直後に心室細動が発症した.電気的除細動が頻回に行われたが, 心室細動は停止と再発を繰り返し, 35分後にようやく洞調律を維持した.その10日後に除細動器の植込み術を予定したが, その当日の早朝に再び心室細動が頻発し, 約3時間の心肺蘇生と電気的除細動に反応することなく院内突然死に至った.剖検では心臓に器質的異常は認められなかった, 下壁・左側壁誘導で記録されたJ波と迷走神経活動の亢進が, 心室細動の発現に関与した異型Brugada症候群症例と考えられた.
著者
フィシェッティ M.
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.13, pp.92-100, 2007-12

毎日,何十億もの食品が袋詰めにされて,消費者の口元へと運ばれているが,食品汚染はきわめてわずかしか発生していない。しかし,2001年9月11日の同時多発テロ事件以来,テロリストが人を殺したり,国民の信頼失墜による経済麻痺を目論んで食べ物に毒を紛れ込ませるかもしれないという懸念が「食品防衛」の専門家の間で高まっている。
著者
勝俣 恒久 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1209, pp.124-127, 2003-09-22

"強者"の手足を縛る自由化推進論には反論する。(聞き手は本誌編集長、原田 亮介) 問 冷夏の影響もあって、懸念されていたこの夏の「電力危機」は何とか回避されました。 答 はい。最高気温35度が連日続けば、ピーク時の電力は6450万キロワット程度に達すると見ていましたが、実際のピークは5650万キロワットでした。800万キロワットの差が出たわけです。
著者
熊谷 成子 佐川 了 星野 次汪
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1068-1072, 2009-11
被引用文献数
1

雑穀の定義にもよるが、雑穀は世界中で20種類ほどが栽培されている。雑穀の栽培の歴史は古く、世界中の人々にとって、食料、油料、アルコール用、行事食用などとして雑穀は生活の中で重要な役割を果たしてきた。戦前までの日本では、雑穀が畑作や輪作体系の中で重要な位置を占め、地域によっては主食として、あるいは地域固有の食文化資源作物として利用され、現在でも伝統祭事などと強く結びついている。しかし、戦後の日本では、雑穀はコメやムギと異なり主要食料ではないため、研究対象となることは希で、最近まで雑穀に陽が当たることは少なかった。そのため、現在栽培される多くの雑穀は在来系統で、長稈種が多く、脱粒しやすく、多肥栽培や機械化には不向きで、収量が低い。しかし、雑穀は、世界規模での主穀の大量生産、大量消費とは対極にあることから、地域に根ざした高付加価値作物ともいえる。最近では食の多様化や雑穀のもつ有用成分に注目が集まり、雑穀ブームを迎えている。現在の雑穀に対する国民の信頼に応え、健康食への追い風を定着させるためにも、研究から生産、流通、加工、販売、調理までの一連の態勢確立が早急に求められる。そこで、本稿では雑穀などの用語に注目し、その生産の現状を考察し、問題点を整理してみたい。
著者
藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.643-653, 1998-08-31
参考文献数
19
被引用文献数
15

関東平野の内陸域で著しい高温(日最高気温≧36℃)の観測される日数が大幅に増えている実態を示し, それをもたらした要因を1961〜96年の気象官署資料等を使って検討した.猛暑日の一般風を西寄り(W型), 北寄り(N型), 弱風(C型)の3つに分け, それぞれについて日最高気温や850hPa気温の経年変化を観察した.その結果によると, 著しく高温な気団におおわれる晴天日(850hPa気温≧21℃で日照時間≧8時間)が1980年代以降に高い頻度で現れている.従って, 猛暑日数の増加, とりわけ38℃以上の極端な猛暑の頻発には総観的な要因がかかわっていると考えられる.一方, W型とC型については850hPa気温の変化を除いてもなお, 内陸域の日最高気温には明らかな経年上昇が認められ, これらの型の猛暑日数増加には都市化が影響していると推測される.