著者
影浦 峡
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-27, 1998-03

言語における「共時性」と「通時性」の概念の基本的な枠組みは、今世紀前半にソシュールによって示唆された。けれども、それ以来、これらの概念を巡っては、様々な解釈が与えられてきた。本稿では、それらの解釈の代表的なものを参照しつつ、具体的・技術的な言語研究を健全なかたちで進めるために必要な、「共時性」と「通時性」という概念の枠組みを、特に専門用語研究のあり方を想定しながら、整理する。
著者
村舘 靖之
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-12, 2014-08-31

パレートの政治理論・経済理論・社会理論と,ソシュールの言語理論を情報文化という観点から統一的に論ずることが課題である。19世紀末から20世紀初頭にかけてスイスで活躍したパレートとソシュールの理論は,価値のシステムに関する共時的・通時的理論を論じようとした点で共通性がある。言語と貨幣,制度と情報文化という観点からバレートの経済学・社会学に関する著作と,ソシュールの言語学に関する議論を比較検討することを試みる。パレート社会学における不変なるものと可変なるものは,それぞれ残基と派生と呼ばれている。これがソシュールの言語学における語根と派生語の関係に対応していることはよく知られている。本稿は,価値のシステムという観点からパレートの一般均衡理論,エリートの周流論,一般社会学とソシュールの一般言語学を比較し,その共通性を明らかにしたい。
著者
周 大成
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.38-41, 1981-09-20

In 1975, a group of archaeological workers of our country found a male corpse besides more than 500 precius cultural relics when they were unearthing the Tomb No. 168 of the Western Han Dynasty on Phoenix at Jiangling County. According to the attrition of the teeth, it revealed that the dead was over, 60, stalwart and well-developed, 167.8 cm tall and 52.5 kg in weight. From the unearthed bamboo documents' records, it proved that the government post during his life time was "Wu Tai Fu", which is equal to a county magistrate noadays. He was buried on 13 th May, 167 B.C., thus 2142 years before the date of unearthing. When it was unearthed, the corpse had a peaceful expression, looking like an old man in sound sleep. His blood group was of the AB group.; the anthropological characteristics were similar to those of the contemporary Han nationality. All parts of the body was well preserved. The skin remained moist and elastic, and soon returned its original state after finger oppression. As it was soaked in alkaline liquid (pH, 8.4), thecorps' hair was lost. The large and small joints were still movable. 32 Teeth, bluish black in colour, still existed in the oral cavity. All the teeth, except the right upper third molar, which tooth mobility was three grade, still retained tightly in the alveolar bone. The roots of the anterior teeth were exposed apical one-third to one-half approximately, due to the recession of the periodontium. The dead had been affected by parodontosis, but no caries was to be found. There was severe attrition all over tae occlusal surface of the dentition, loss of enamel, exposure of dentine and the crown shortened. Enamel dentine, cementum, root canal and pericementum showed a very distinct appearance under radiographic examination. Electron microscophic examination and chemical elemental analysis revealed that the enamel structure, shape, size and anatomical feature of the teeth were most alike those of modern times. The bones and joints were intact and identical with those of contemporary age. The brain was well conserved, dura intact and blood vesse-s distinct. The total weight of brain and dura was 970 g. The twelve pairs of cranial nerves were intact and clear. Acute diffuse peritonitis due to perforation of gastric ulcer which was the complication of chronic gastric ulcer, followed by extensive bleeding could be the cause of death. Other systemic diseases were also described in this article.
著者
千葉 幸司 宮内 隆 石井 孝子 中川 裕道 杉崎 信彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.495-496, 1997-09-24

データウェアハウス(以下DWHと記す)の提唱者ビル・インモン氏は, その著書において構築や活用の具体的な方法論を述べていない。そこで, 我々富士通LS研「データウェアハウスの構築と活用」分科会では, 実在の企業をモデルに構築と活用の両面からインモン説DWHの実践的な検証を行った。モデル企業は, 幅広い適用範囲の成果が得られるように, 業態・前提条件の異なる流通業A社と製造業B社を選定した。この論文は, 上記2社の現状と今後の方針をもとにしてDWHによる情報系システムの設計を行う過程で発生した様々な課題の中から主要なものについてまとめたものである。
著者
鈴木 尚夫
出版者
一般財団法人林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.p17-29, 1987-05
被引用文献数
3
著者
佐川 賢 清水 豊
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-28, 1995-02-01
被引用文献数
13

CRT画面上に呈示したパターンを用いて色彩パターンに対する人間の心理評価を(1)色彩領域の占有面積, (2)配色数, (3)色彩領域の分布, の点から検討した。全体で7つの色(赤, 緑, 青, 黄, シアン, マジェンタ, 白)が16×16のマトリクスパターン上に種々の面積, 配色数, 色彩領域の分布の規則度を変えながら配分され, 観測者はこれらのパターンについての心理評価をパターンの物理的な特性に関する評価として規則性(色彩配置の周期性), まとまり(色彩配置のかたまり具合)の2評価, さらに視覚心理の高次な判定に関する評価として, 調和, 好み, 快適性, の3評価の合計5つの項目について10点尺度で答える。実験は実験1〜4に分かれ, それぞれ(1)単一色の面積率の効果, (2)配色数の効果, (3)分布の規則度の効果, (4)これら3つの複合効果, の4つ効果を検討した。結果を総合すると, 快適性の評価値は占有面積が増えるとともに, また配色数が多くなるとともに低下するが, 分布の規則度が増すととも上昇することを示した。分布の規則度と快適性評価値との高い相関は, パターンの自己相関係数と観測者の評価値との比較においても確認された。また, 本研究で採用した5つの評価項目は, 主成分分析の結果いずれも快適性と相関が高いことが判明し, 色彩パターンの心理的な快適性の評価に有効であることが判明した。
著者
福澤 太一 西 功太郎 和田 基 佐々木 英之 風間 理郎 田中 拡 工藤 博典 安藤 亮 山木 聡史 石田 和之 仁尾 正記
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.854-859, 2012

呼吸困難を呈した巨大後縦隔成熟奇形腫の1例を経験した.症例は生後4か月,女児.周産期,新生児期に異常は指摘されていなかった.4か月時,発熱と不機嫌を主訴に近医を受診したが,翌朝から哺乳不良,傾眠となり,画像上,右巨大縦隔腫瘍を認め精査加療目的に当科に紹介された.入院時,頻呼吸および陥没呼吸を認め,白血球数30,400/μl, CRP 9.7mg/dlと高度の炎症所見を認めた.胸部CTで右胸腔を占め縦隔を左方へ圧排する最大径9cmの内部に粗大な石灰化を伴う巨大充実性腫瘍を認めた.呼吸循環が保たれていたことから炎症のコントロール目的に待機手術の方針とし,入院から5日目に右開胸縦隔腫瘍切除術を施行した.腫瘍は後縦隔原発と思われ,周囲との癒着は軽度で全摘しえた.摘出標本は9×6.5×6cmで病理組織学的に成熟奇形腫と診断された.術後創感染を合併したが,呼吸循環に関しては合併症なく経過し,23病日に退院した.術後2年再発無く外来経過観察中である.
著者
和食 雄一 金子 良則 杉山 稔恵 山田 宜永 祝前 博明
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.57-67, 2014
被引用文献数
3

トキ(<i>Nipponia nippon</i>)は 1981年にわが国の野生下から絶滅し,2003年には最後の日本産個体が死亡した。そこで,わが国は,国家プロジェクトという位置づけのもとに,中国の飼育下個体群由来の 5羽をファウンダーとする飼育下個体群を創設している。本研究では,遺伝的多様性を保持するために必要な収容能力と今後導入すべきファウンダー数を予測する目的から,国内飼育下個体群の人口学的パラメーターを推測した。その結果,著しい個体群成長が認められた一方,世代時間および有効集団サイズには低い値が認められた。したがって,これらのパラメーターの上昇を含めた遺伝的多様性の増加と維持のための努力の必要性が示唆された。また,既存の 5羽のファウンダーが非近交個体で相互間に血縁関係がないと仮定し,収容能力を 200羽とした場合には,今後一切中国から個体を導入しない条件下では遺伝子多様性が 100年後に 60%程度にまで低下すると予測された。より信頼性の高いパラメーター値を得るために人口学的分析の継続が必要であるが,本研究の結果から判断する限り,新たなファウンダーの継続的な導入が必須であると考えられた。
著者
佐藤 民男
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
林學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, pp.1182-1192, 1933-12-10
著者
大澤 朗
出版者
JAPAN BIFIDUS FOUNDATION
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-5, 2011-01-01

緑茶やワインに含まれるカテキン類は強い抗酸化力を持ち,体内で発生する活性酸素を「無害化」して発ガンを抑制したり,コレステロールの酸化を防いで動脈硬化を予防したり,また糖質分解酵素の働きを阻害して過剰な血糖値の上昇を抑える等,ヒトの健康維持・増進・疾病予防に非常に有用な効果をもたらすことが知られている.緑茶に含まれる主なカテキン類は,没食子酸エステル構造をもつ加水分解型タンニン様のエピガロカテキンガレート[EGCg]とエピカテキンガレート[ECg],エステル構造をもたない非タンニン様のエピガロカテキン[EGC],エピカテキン[EC]の4種類である.我々はキムチや糠漬けといった発酵食品より分離された乳酸菌種, <i>Lactobacillus plantrum</i>にEGCgからEGCと没食子酸へと加水分解するタンナーゼ活性があること,さらにこのタンナーゼは構造的にも性状において公知のカビ由来タンナーゼと異なることを明らかにした.他方,我々はEGCgが食品成分(おそらく蛋白質)と速やかに結合し難吸収性の「塩」となるが,EGCは大半が遊離型を維持していること等も明らかにした.そこで「タンナーゼ活性を有する乳酸菌株が腸内に存在すれば,食品成分と結合して難吸収となったタンニン様カテキンから非タンニン様カテキン類が遊離し,速やかに腸管壁から吸収させる,すなわち,緑茶カテキンの抗酸化力を最大限に体内に"届ける"ことができるのでは・・?」と着想した.本稿ではこの着想に基づくタンナーゼ活性を有する乳酸菌を利用した新規プロバイオティクスの開発について,その概略を紹介する.<br>
著者
畔田 暁子 鈴木 佳苗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.85-88, 2012

本研究の目的は,美術科の鑑賞学習の授業において利用できる可能性がある学習コンテンツの1つであるウェブ上の画像に関して,鑑賞学習の授業での現在の利用状況,利用の際に必要な機器や機能・要素,教員の意識と利用の際の課題を明らかにすることである.現職の中学校美術科担当教員を対象として質問紙調査を行った結果,1)ウェブ上の画像は第3学年対象の鑑賞学習の授業において利用頻度が高い傾向があり,2)いずれの学年の授業においても「絵画など平面作品」の画像が利用されることがもっとも多く,3)美術科担当教員は,ウェブ上の画像には画質とともに「歴史・文化的背景」や「素材や技法の説明」などの情報が必要だと考えていることが示された.