著者
下田 卓朗*
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.95-98, 1988-03-15

心因性の場面緘黙(Elective mutism)は,ある特定の場面では貝のように口を閉ざし,人に対しての言語コミュニケーションをいっさい拒否する。その要因は古くから研究され,統計的には母子依存が強く,過敏,臆病,恥ずかしがりの傾向にある子どもなどに多く見られると言われている。最近の出現状況としては村本(1983)が北海道上川管内の小学校・中学校を調査して0.0369%の出現率であったことを報告している。このように数としてはまことに少数であるが,言語発達の著しい幼児期・児童期に言語コミュニケーションを持たないことは,その子の社会性の発達を考える上で憂慮されなければならない。本研究では2人の子どもの事例をとおして,緘黙児を理解するにはどのような方法でアプローチすればよいかを検討することにした。そして,それにはまずなによりも,これまで関わってきた人たちの証言から理解していくという方法と,もうひとつには,対象児との"遊び"というふれあいをとおして理解していくという2つの面から進めていくのが適切であると考えた。そうした方法で対象児をフォローし,形成要因,その理解という形で緘黙児を考察することによって"遊び"の中および"言葉"の中に秘められている子ども理解への鍵をつかむに至った。
著者
山原 條二 松田 久司 下田 博司 割石 紀子 矢木 信博 村上 啓寿 吉川 雅之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.365-379, 1995-05-01
被引用文献数
16 6

ツンベルギノールAのI~IV型アレルギ―に対する作用を検討した.ツンベルギノールAは,I型アレルギーモデルのラットおよびマウスの受身皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)に対し,反応惹起2時間前の300mg/kg以上および50mg/kg以上の経ロ投与で,それぞれ有意に抑制した.また,IgE受動感作ラットの気道狭窄反応に対しても,300mg/kg以上の経ロ投与で有意(P<0.05)な抑制効果を示した.一方,in vitroにおいて,IgE受動感作ラット気管標本およびIgG受動感作モルモット肺切片の,抗原刺激による収縮反応をそれぞれ濃度依存的(10<SUP>-7</SUP>~10<SUP>-4</SUP>および10<SUP>-5</SUP>~10<SUP>-4</SUP>M)に抑制し,さらに感作ラット腹腔滲出細胞からのヒスタミン遊離に対しても,濃度依存的(10<SUP>-5</SUP>~10<SUP>-4</SUP>M)な抑制効果を示した.また,ケミカルメディエーターに対する拮抗作用として,マグヌス法およびマウス耳介血管透過性充進モデルを用いた検討で,シプロヘプタジンの1000分の1程度のごく弱い抗セロトニン様作用が認められた.ツンベルギノールAは,II型アレルギーの逆皮膚アナフィラキシー反応(RCA反応),III型アレルギーのアルサス反応を抑制しなかったが,IV型アレルギーモデルのマウス接触性皮膚炎の一次反応を,免疫翌日から反応惹起までの1日1回(100mg/kg)の経口投与で有意(P<0.01)に抑制した.また,マウス遅延型足浮腫反応に対しては,反応惹起直前と8時間後の2回経口投与(300,500mg/kg)で有意(P<0.01)な抑制効果が認められた.以上の結果より,ツンベルギノールAは,I型アレルギーに対して経口投与で有効で,その作用は肥満細胞からの脱穎粒の抑制と弱い抗セロトニン様作用に基づく可能性が考えられた.また,IV型アレルギーに対しても有効性が示唆された.
著者
下田 正弘
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.283-308, 2007-09-30

神仏習合の裏面の問いとしての神仏分離には、近世から近代にかけて中央集権国家を構築した日本の歴史全体が反映する。仏教の迫害と変容の基点となった明治維新をとりまく暈繝には、権力支配の構造の変容と諸知識体系化の歴史が重なりあう。経世済民の思想、国学の進展、一国史編纂の企図は一体化して明治国家の理念を形成し、仏教を非神話化しながらあらたな神話を完成する。この構造全体を読み解いて未来をみすえるとき、生活世界に基礎をおく解釈学としての仏教学の構築が強く望まれる。
著者
下田 吉之 高原 洋介 鳴海 大典 水野 稔
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
総合論文誌 (ISSN:13476548)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-99, 2003-02-20
参考文献数
7
被引用文献数
6

The energy flow that consists of inflow, conversion, consumption and discharge of energy is estimated for a central business district of Osaka City by summing up each building's energy flow. The estimated energy flow is evaluated from the viewpoint of environmental impacts such as heat island, global warming and local/global atmospheric environment. Changes of environmental impacts by various measures such as combined heat and power, energy saving of office equipments, insulation and river water source heat pump were also evaluated.
著者
中本 学 関岡 裕明 下田 路子 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.585-590, 2002-03-30
参考文献数
33
被引用文献数
15 15

筆者らは,福井県敦賀市中池見の休耕田において,コナギやアゼナなど小型で一年生の水田雑草を保全するための管理手法を検討した。植生調査は,耕起を再開した1997年に開始し,復田を行った2000年まで継続した。耕起を停止した場合には,サンカクイなど特定の多年生草本が著しく増加するため,耕起の継続は不可欠であった。さらに,耕起を継続しても増加する多年生草本を減少させるには,復田が有効であった。このことから,生物の保全を目的とする休耕田の管理手法として,耕起の継続に加えて数年に一度の復田を組み入れるシステムを提案した。
著者
村上 英樹 木股 三善 下田 右 伊藤 英司 佐々木 聡
出版者
日本岩石鉱物鉱床学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.491-509, 1992-12-05 (Released:2008-03-18)
参考文献数
37
被引用文献数
2 8

合成された純粋な灰長石,それぞれMgO, SiO2に富んだ灰長石を, EPMAと四軸自動X線回折装置を用いて化学組成と格子定数の測定を行い,三宅島産灰長石との比較を行った。複合イオン置換に基づく検討から,天然及び合成の灰長石は, MgをCaMgSi3O8, 過剰のSiは ?? Si4O8端成分として,固溶する可能性が指摘された。さらにMgに対するこの端成分を確認するため, EPMAによるMgの化学シフトを解析した。その結果,合成灰長石に固溶されるMgは,オケルマナイト(Ca2MgSi2O7) 中のMgと同じ四配位席を占有することが示唆された。また, X線単結晶回折法からは, Mgの固溶量が増加するに従って,単位格子の体積が増加する傾向が明らかになった。以上のことから灰長石におけるMgの固溶は,雲母,角閃石,輝石に認められる通常のTschermak置換, Mg+Si ?? ;2Al, とは異なり,四配位席だけでのTschermak置換が,メリライトと同様に灰長石においても成立することを明示している。
著者
谷下田 雄一
巻号頁・発行日
2011

Thesis (Ph. D. in Medical Sciences)--University of Tsukuba, (B), no. 2558, 2011.8.31
著者
下田 芳幸 寺坂 明子
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.347-356, 2012
被引用文献数
4

This study developed the Japanese version of the Multidimensional School Anger Inventory (MSAI; Smith & Furlong, 1998). The MSAI was devised to assess anger in the school context from a multidimensional perspective, which includes Anger Experience (affective component), Cynical Attitude (cognitive component), Destructive Expression and Positive Coping (behavioral component). The responses of 3 443 students from elementary to high school, age 10 to 17 on the Japanese version of the MSAI were used in the analyses. Exploratory and confirmatory factor analysis identified that the four-factor structure of the J-MSAI was the same as for the original MSAI. The reliability of the scale was supported by internal consistency and test-retest stability for the subscales. The construct validity of the scale was supported by cross-instrument correlations. Furthermore, the results showed that junior high and high school students had higher scores for Cynical Attitude than elementary school students, whereas developmental level had little effect on Anger Experience and Destructive Expression.
著者
下田 昌利 塚田 聡
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
計算力学講演会講演論文集 (ISSN:1348026X)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.23, pp.368-370, 2010-09-23

In this paper, we present a free-form optimization method for designing shell's form in order to control the vibration mode at a prescribed frequency to a target mode. With the free-form optimization method, an optimum shell with smooth free-form surface can be obtained without any shape parameterization. We introduce a squared displacements error norm at the prescribed surface as the objective functional to control the vibration mode to a desired one in a frequency response problem. It is assumed that the shell was varied in the normal direction to the surface and the thickness is constant. A non-parametric shape optimization problem is formulated, and the shape gradient function is theoretically derived using the material derivative method. The shape gradient function is applied to the shell surface as the pseudo traction force to vary the form. The calculated results show the effectiveness of the proposed method for the optimal free-form design of shell structures aiming at mode control.
著者
佐藤 秀隆 下田 義雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.2, 1994-09-26

半導体雷サージ防護素子は、小型・小静電容量かつ優れたサージ防護特性を有することから、局内保安器用としてすでに事業導入されている。しかし局内保安器における雷サージ防護規格は遠距離雷を想定した雷サージであるのに対し、宅内装置においては近傍雷が問題となるため、その雷サージ波形の違いから従来素子はサージ耐量不足で適用できなかった。そこで急峻で大電流高電圧サージの近傍雷に対応する素子の検討を進めた結果、今回宅内装置に適合した高サージ耐量素子を実現したので報告する。
著者
井出 保行 林 治雄 下田 勝久 坂上 清一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.157-162, 1999-07-31
被引用文献数
8

牛糞による種子散布がケンタッキーブルーグラスの繁殖に及ぼす影響を明らかにするため,牛に経口給与されたケンタッキーブルーグラス種子の回収率およびその発芽率を他のイネ料牧草との比較で検討した。さらに,ケンタッキーブルーグラスが優占する放牧草地(草地試験場山地支場)において,糞中種子の種類およびその粒数の季節的な変化を調査した。ケンタッキーブルーグラス,オーチャードグラス,ベレニアルライグラスの種子を体重260-273kgの黒毛和種育成牛に経口給与すると,草種に関係なく,種子は給与後24-48時間に最も多く排出され,72時間までに総排出量の80-90%が排出された。給与種子の回収率は,ケンタッキーブルーグラス>べレニアルライグラス>オーチャードグラスの順に高く,回収された種子の発芽率はケンタッキーブルーグラスが最も高かった。草地試験場山地支場内にあるケンタッキーブルーグラス便占放牧草地では,確認された19草種の内,7草種の種子が翼中から検出され,ケンタッキーブルーグラスの種子が最も多く含まれていた。ケンタッキーブルーグラスの翼中種子は7月上旬から8月中旬にかけて観察され,7月中旬に含有量が最も多かった。
著者
渡邊 恵佑 下田 真吾 久保田 孝 中谷 一郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.38-39, 2002
被引用文献数
1

今後の月探査ミッションでは, サンプル採取や観測機器の設置のために, 月面のレゴリス層を数mの深さにわたって掘削することが要求されている。これには, 全身が埋没してレゴリス中を掘削しながら推進し, かつ探査ローバに搭載可能なサイズの, モグラ型ロボットが適していると考える。このようなロボットを実現するためには, 「レゴリス中に空間を確保する」と「その空間の中を前進する」の, 2つのプロセスが必要となる。ここでは, 両者を一体として推進する手法を提案し, これを用いた簡易実験の結果を報告する。
著者
下田 雄大 石田 貴士 秋山 泰
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.20, pp.1-3, 2012-06-21

タンパク質ドッキング計算では,高速フーリエ変換 (Fast Fourier Transform,FFT) を応用した高速計算法が知られているが,FFT を用いる場合,評価関数が畳込み和の形式に限定され,設計の自由度が低くなるという欠点がある.そこで,本研究ではより複雑な評価関数を用いることを想定し,FFT を用いない実空間上でのドッキング計算を考える.FFT を利用しないことで生じる計算コストの増大に対し,高スコアの複合体構造の偏在を利用してヒューリスティックに高スコアの複合体構造のみを階層的に探索することで計算結果を変えずに計算時間を短縮するための手法を提案する.In protein-protein docking, a fast calculation method using fast Fourier transform (FFT) is well known, but the form of the evaluation function is limited to the sum of convolution. In this study, we developed an efficient docking calculation method without using FFT in order to use various evaluation functions. Against the increase of computational cost, we proposed the heuristic method that hierarchically searches only high-score complex structures using the locality of high-score complex structures.