著者
森﨑 雄大 輪島 大介 明田 秀太 米澤 泰司 中川 一郎 中瀬 裕之
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.33-37, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
6

要旨 【はじめに】脳静脈血栓症は脳静脈の閉塞に伴い脳出血や静脈性脳梗塞を発症するが,急性期診断を行い治療経過を報告したものは少ない.今回,我々は連続2 症例の急性期症例を経験し考察を加えて報告する.【症例】1:79 歳女性.突然の意識消失で受診.脳血管撮影検査で左S 状静脈洞とvein of Labbe 閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.2:48 歳男性.突然の左上肢麻痺が出現し受診.脳血管撮影にて上矢状静脈洞閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.【考察】脳静脈血栓症の基礎研究では梗塞病変周囲penumbra 類似病変の救済の可能性があり,急性期での診断と治療が重要である.T2*での閉塞静脈洞の低信号所見が急性期診断に有用であり,急性期に抗凝固療法を行った.【結語】脳静脈洞血栓症においては急性期早期診断と治療を行うことが重要と考えられ,T2*画像での低信号所見は有用と考えられた.
著者
和田 蕗 大田 省一 中川 理
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.88, no.806, pp.1505-1516, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
4

This paper aims to clarify the process of commercial group in the case of markets in after WWⅡ Kyoto city. Here Black-markets and daily-retail-markets are targeted and following two points are found: firstly, in Kyoto city after Black market deported in August 1946, Kyoto prefecture government allow stalls to open under the regulation. New permission places are expansion to sub-urban area than pre-war and choosing site of building evacuation. Secondly, many privately-owned retail markets opened after WWⅡ and managed by association of merchants. Namely, commercial groups located sub-urban area and new commercial foundation by autonomous activities by merchants.
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1173-1180, 2018-09-20 (Released:2018-09-29)
参考文献数
29
被引用文献数
6

背景: ムンプスワクチンは副反応である無菌性髄膜炎が注目を集め, 任意接種となっているため, 接種率は40%近くまで低下し, 周期的に流行が繰り返されている. ムンプス難聴は難治性であり, ワクチンで予防することが唯一の対策であるが, そのことは広く知られていない. そこで, 本調査では近年のムンプス難聴患者の実態を明らかにすることを目的とした. 方法: 2015~2016年の2年間に発症したムンプス難聴症例について全国の耳鼻咽喉科を標榜する5,565施設に対してアンケート調査を行い, 3,906施設より回答を得た (回答率70%). 結果: 少なくとも359人が罹患し, そのうち詳細が明らかな335人について検討した. 発症年齢は特に就学前および学童期と30歳代の子育て世代にピークが認められた. 一側難聴は320人 (95.5%), 両側難聴は15人 (4.5%) であり, そのうち一側難聴では290人 (91%) が高度以上の難聴であり, 両側難聴の12人 (80%) は良聴耳でも高度以上の難聴が残存していた. 初診時と最終聴力の経過を追えた203人中, 55人 (27%) は経過中に聴力の悪化を認め, うち52人 (95%) は重度難聴となっていた. 反対に改善が認められたのは11人 (5.0%) のみであった. 結論: ムンプス流行による難聴発症は調査された以上に多いものと推測され, 治療効果もほぼないことから, 予防接種率を高めるために定期接種化が望まれる.
著者
金子 雄司 草島 邦夫 宮岡 慎一 中川 貴史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.75-77, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
2

医学部低学年に在籍する筆頭著者が,医療機関で多職種業務を実践し,成員となっていく過程を「正統的周辺参加理論」に基づき考察した.学習者と実践共同体の間に互恵的関係が構築される過程で,学習者の学びが促進され,実践共同体の成員として認められた.さらに,実践共同体にも建設的な変化が観察された.本活動は医学生にとって有意義な学習機会であり,転用性の高い活動となりうる.
著者
福江 高志 義基 貴史 石塚 勝 中川 慎二
出版者
社団法人 日本伝熱学会
雑誌
日本伝熱学会論文集 (ISSN:09189963)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.147-156, 2008 (Released:2009-04-23)
参考文献数
14
被引用文献数
2

This paper describes the effects of frame and inlet sizes of an electronic casing on the cooling fan performance. The performance of air-cooling fans is defined by their P-Q characteristics. Recent studies report that P-Q curves of cooling fans depend considerably on their operational environments. It is impossible for accurate CFD (Computational Fluid Dynamics) analyses to be performed on the thermal design of electronic equipments, including fans. In this study, we measured a fan performance in some frames and explored effects of environment for their P-Q characteristics, especially effects from area of frame and cooling air inlet sizes. From experimental results, it was found that the fan P-Q characteristics, especially flow rate were affected strongly by inlet sizes.
著者
西川 博美 中川 理
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.685, pp.725-733, 2013-03-30 (Released:2013-06-03)

In Taiwan the townscape of shop houses with the arcade (Din-a-ka) is called Lao-jie. Recently, a preservation project for the townscape of Lao-jie has become active. Notably mentioned, the projects developed not in the cultural properties protection system but in the program of Community Based Development Project which began in 1994 aiming in habitant participation. Accordingly, it has appeared more that the aspect of local development in Lao-jie conservation projects. Furthermore, as a result of the work inspection of the concrete content of the preservation projects in five Lao-jie, we understood that the content of the projects shared several characteristics. In all cases, not only buildings and Din-a-ka, the core nucleus element of the townscapes of Lao-jie, are restored, but also the subsidiary facilities such as sideboard and sidewalk are maintained at the same time.
著者
金生 茉莉 藤田 康平 池浦 一裕 加藤 伸 小高 利絵 高森 康次 中川 種昭 角田 和之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.41-45, 2018 (Released:2019-06-30)
参考文献数
14

Laugier-Hunziker-Baran症候群(LHB)は,口腔,指趾の色素沈着と爪甲色素線条を特徴とし,全身症状を伴わない後天性疾患である。今回,経過観察中に症状推移の観察が可能であったLHB症候群の1例を経験した。71歳女性で初診時,下唇,頬粘膜に黒褐色色素斑があった。4年経過時に粘膜色素斑の増悪と指趾,爪甲色素線条が発生した。全身検索の結果LHBの診断となった。口腔粘膜色素斑の診断には全身疾患の精査と慎重な経過観察が重要である。
著者
中川 裕
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.52-62, 1998-12-30

This article provides information on the clicks which characterize the consonantal systems of Khoisan languages and their neighbouring languages. It discusses some issues of the framework for the description of clicks, and presents a brief survey of click systems sampled from a wide range of Khoisan languages in terms of click types and click accompaniments.
著者
中川 敦
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.217-239, 2018-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
34

遠距離介護におけるコミュニケーションは,離れて暮らす家族が親元に帰省した時の対面場面に限られず,彼らが普段暮らしている場所から行われる遠隔コミュニケーションもまた重要性を持っている.そこで,遠距離介護を行う離れて暮らす家族と,高齢の親に関わる介護の専門職者の間の遠隔コミュニケーションについて,カシオ計算機株式会社が開発したDaisy Circle というスマートフォン向けアプリによるSNS への実際の投稿をデータとする,会話分析的研究を行うことで,以下の知見を得た. 離れて暮らす家族は,介護の専門職者からの親についての報告に対して,第2 の報告という形で,自らが知識をすでに持っていることを主張することがあった.また離れて暮らす家族にとって,介護の専門職者から初めてもたらされる情報については,その詳細を介護の専門職に求めるのではなく,まずは家族の内部で直接に把握しようとする試みが行われることがあった.それらは,介護の専門職者から伝えられる情報が,本来的には家族があらかじめ持っているべき種類のものであることを示している.つまり遠距離介護に関わる離れて暮らす家族にとって,親の状況に関して介護の専門職者から報告を受けるということ自体が,親の安否とは異なる水準で,つまり知識の道徳性という次元で,ある種のジレンマを意味しているのである.結論として,こうしたジレンマを解消する一つの可能性が,SNS に高齢者本人を参加させることにあることを指摘した.
著者
山岸 常人 平 雅行 藤井 雅子 坪内 綾子 永村 眞 中川 委紀子 冨島 義幸
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本の密教寺院に関しては、事相中心の古義真言教団と、教相中心の新義教団という図式的区分がある。古義教団の醍醐寺では、灌頂や諸尊法の伝授だけではなく、教相聖教の作成・書写・修学・法会が行われていた。一方の新義教団の寺院の実態は、これまで史料が乏しかったが、既往研究を踏まえつつ、智積院所蔵史料を調査することによって一挙に実態が明瞭となった。これらの史料蒐集の結果、高野山・醍醐寺・根来寺、さらに周辺の多くの地方寺院の間での聖教の書写・貸借を踏まえた修学・伝授のネットワークが確認され、事相・教相を総合的に受容する中世密教寺院の実態が明らかになった。新義・古義の教団理解にも修正を加えることとなった。
著者
中川 博之
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.13-27, 2011-07-30 (Released:2020-11-05)
著者
坂本 忠規 中川 武 中沢 信一郎 林 英昭 レ ヴィンアン
出版者
公益財団法人 竹中大工道具館
雑誌
竹中大工道具館研究紀要 (ISSN:09153685)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.37-76, 2009 (Released:2021-03-22)
参考文献数
26

1 本稿は2007年9月および12月に実施したベトナム北部ハナム省・中部トゥアティエンフエ省・中南部ニントゥアン省における伝統木造建築と大工道具に関する調査結果の一部を報告したものである。 2 調査地域の伝統木造建築に代表されるようにベトナムの木造建築は中国の影響下にありつつも登り梁を用いた独自の架構形式や細部意匠を持つ。また北部の梁を重ねる小屋組に対し、中部や南部では真束式とするなど、北部と中・南部で構造技法が大きく異なる。 3 特徴的な架構は設計の道具にも影響を与えており、大矩や腋尺など独特な道具の使用を見ることができる。また木槌やT 字型斧の使用など中国や他の東南アジア地域では見られない独自の道具の使い方が確認された。
著者
中川 健司
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.145, pp.61-71, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2

『留学生のための二漢字語に基づく基礎医学術語学習辞典』は先行研究を基に選定した基礎医学術語(全7073語)の学習を目的としているが,基礎医学術語から抽出した二漢字語(漢字二字からなる熟語)を学ぶことによって基礎医学術語のより効率的な学習が期待できるという考えに基づいている。しかし,医療分野の漢字には難解なものも多く,二漢字語を介して基礎医学術語を学ぶ場合も高い漢字知識が必要とされる。本研究では,二漢字語を介して基礎医学術語を学ぶ場合に優先的に学習すべき漢字を選定することを目的として,二漢字語及び基礎医学術語中の出現漢字の頻度と傾向についての調査を行った。その結果,学習者に日本語能力試験2級までの漢字の知識がある場合,二漢字語中に出現する1級以上の漢字228字に加えて級外の38字及び第1水準削除分の1字を学べば基礎医学術語中の出現漢字の約96%と級外漢字の約90%がカバーできることが明らかとなった。
著者
姫宮 彩子 中川 碧 酒井 大樹 重本 亜純 髙瀬 泉
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2+3, pp.75-81, 2022-08-31 (Released:2022-11-02)
参考文献数
19

法医学講座では,主な業務の一つとして遺体の解剖・検案を実施し,死因等の鑑定を行っている.法医解剖が実施される事例は,医学的に死因が不明であるだけでなく,多くがその背景に社会的課題をもつため,死因究明に加えて死亡状況を検証することは,生きている者に重要な示唆を与える.よって,法医解剖によって得られた情報を関係各所と共有し,現場に携わる関係者同士が再発予防策について検討することの意義は高い.本稿では,山口大学医学系研究科法医学講座の法医解剖における死因究明の現状について2021年実施例の報告というかたちで示し,今後の法医解剖情報の活用について考察する.解剖数は157件で,男性が女性の2倍強を占めた.年齢階級別では10代が最も少なく,成人以降では年齢が上がるとともに漸増し,70代以上が約4割を占めた.死因の種類では内因死が3割,外因死が6割,不詳の死が1割で,内因死の約7割は循環器系疾患,外因死は外傷および溺没で約7割を占めた.全体の約2割が救急搬送され,その一部で臨床科医師による死因の言及がみられた.また,全体の約3割で画像検査データが死因判断に活用された.その他,世代別の外因死,自殺(疑い),医療関連死の事例の特徴を報告する.今後は個々の事例・課題について,関連する臨床科や医療,保健,福祉,行政,さらには医学系研究者の勉強会あるいは検討会等に参加しながら,近い将来の『死因究明により得られた情報を相互に共有・活用できる体制の構築』の実現をめざし,試行していきたい.
著者
相良 友哉 村山 洋史 高橋 知也 西中川 まき 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-119, (Released:2022-06-30)
参考文献数
41

目的 急速な高齢化の進展や人口減少によって,様々な業界で働き手が不足しており,とくに,介護や保育などの福祉業界において深刻な問題となっている。その対応策のひとつとして,自立した日常生活を送れているいわゆる「元気高齢者(アクティブシニア)」を補助人材として雇用し,施設の非専門的な周辺業務を担ってもらう取組みが散見される。しかし,これらの業務への就労意向を持つ者の割合や,その要件は十分に整理されていない。そこで,本研究は,介護補助や保育補助としての就労意向を持つ高齢者の特性を明らかにすることを目的とした。方法 「NPO法人りぷりんと・ネットワーク(りぷりんと)」に加盟している首都圏の絵本読み聞かせボランティア団体の会員で60歳以上の者374人を対象とした自記式アンケート調査を実施し,有効回答295票を得た(回収率78.9%)。調査期間は2019年10月~11月であった。本研究では,介護補助と保育補助のそれぞれについて,「就労意向の有無」を目的変数,「就労関連項目」「健康状態」「社会関係・社会参加状況」を説明変数,「人口統計学的変数」を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。分析に際して,欠測値を多重代入法により補った(10ファイルを作成)。結果 補助人材として就労意向を持っている高齢者は,介護補助で72人(24.4%),保育補助で107人(36.3%)見られた。二項ロジスティック分析の結果,日頃から生涯学習活動に参加している人ほど介護補助へ就労意向を持っており(オッズ比[OR]:2.98,95%信頼区間[95%CI]:1.40-6.34),主観的健康感が高い人ほど保育補助へ就労意向を持っている傾向が見られた(OR:2.41,95%CI:1.01-5.76)結論 補助人材として就労意向を持ちそうな高齢者として,介護補助では生涯学習活動の参加者,保育補助では主観的健康感が高い人という特性が見られた。これらの特性を持った高齢者に的を絞ったリクルートをすることで,補助人材として就労する高齢者の掘り起こしに寄与できる可能性がある。
著者
中川 康弘
出版者
言語文化教育研究学会
雑誌
言語文化教育研究
巻号頁・発行日
vol.16, pp.84-95, 2018

<p>語り手の多くが日本語非母語話者である日本語教育のナラティブ研究には,語り手に対する「虫のよさ」がつきまとう。本稿では好井裕明が『語りが拓く地平』(2013)において示した「虫のよさ」を再定義し,規範を批判的に問い直す運動過程を「生成変化」としたドゥルーズ/ガタリ(2010)の『千のプラトー』を手掛かりに,留学生 1名へのインタビューから聞き手である私の「構え」の省察を試みた。それにより,語り手に対峙する日本語教育研究者に,自らの立ち位置の再考の契機を与えるナラティブの可能性を示すことを目的とした。結果,留学生の語りに表れた葛藤をかわし,「構え」に固執することで,私自身が相手から気づきを得る生成変化の機会を逸していた。ここから,日本語教育研究者が陥りやすい「虫のよさ」の問題には,語り手の葛藤や疑問に自己を投影しながら共に解決に向かう過程に,生成変化をもたらす可能性を秘めていることがわかり,そこにナラティブ研究,実践の意義が導き出された。</p>