著者
成山 謙一 田中 俊一郎 白土 秀樹 小池 浩次 平川 直也 中島 寅彦 小宗 静男 中村 和正 野元 諭 塩山 善之
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.204-213, 2007-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

サイバーナイフは、小型直線加速器、ロボットアームと位置確認システムから構成される定位放射線照射治療装置である。一般的に頭蓋内疾患 (脳腫瘍、動静脈奇形など) に施行されるが、頭頸部疾患として鼻副鼻腔、上中咽頭、口腔底腫瘍、その他に頸椎、頸髄疾患等に施行されている。当科では、T4特に頭蓋底や眼窩浸潤症例、および大血管浸潤などの手術不能例や、手術可能でも機能温存などの点で患者が手術拒否した症例などに対して施行している。今回、われわれは当院にてサイバーナイフ治療を施行した鼻副鼻腔悪性腫瘍症例6例について検討した。全6例の内訳は、男性4例、女性2例。平均年齢は62歳であった。組織別には、嗅神経芽細胞腫が2例、扁平上皮癌、悪性黒色腫、甲状腺乳頭癌転移例、円柱上皮癌が各1例であった。これらの症例に対して、外照射約50Gy施行し、効果について評価した後、本法を施行した。本法のみの照射量は20-30Gy、平均23Gyであった。効果は、CR3例、PR3例であり、奏功率は100%であった。本法はガンマナイフに比べて、固定フレームが不要のため、適応照射範囲が広い。さらに照射線量を均一にでき照射精度も高く、放射線障害の低減が期待できる。今後の鼻副鼻腔悪性腫瘍治療に対して、本法は機能温存やquality of life (QOL) の改善の点で有用な治療法と考えられる。
著者
中村 光良 光田 佳代 松田 秀喜
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.375-382, 2004-11-20
参考文献数
5
被引用文献数
3

水,本みりん,煮切りみりん,ショ糖溶液及びエタノール溶液で小豆を下ゆでし,煮汁の分析を行い,小豆色素の溶出抑制効果の解明を行った。さらに,ショ糖溶液で蜜煮にした小豆のてりつやの測定によりてり・つや付与効果,胴割れ豆,軟化豆,軟化未了豆の割合,テクスチャーの測定を行い,煮崩れ防止効果について解明を行った。1.下ゆで時の煮汁の濁度から,小豆の可溶性成分の溶出抑制効果は,溶液に含有する糖であることが示唆された。豆に含まれる赤色色素の溶出抑制に関しては,加熱30分後までについては,糖を含有する区で溶出抑制効果が認められた。ショ糖,煮切りみりん,本みりんでは,本みりんが最も溶出抑制効果が高かった。エタノール及び水では,30分加熱以後,赤色度は増加しなかった。濁度も同様に本みりん20%溶液,煮切りみりん20%溶液,9.2%ショ糖溶液の糖を含有する溶液は,2.8%エタノール溶液及び水よりも濁度が低く,可溶性成分の溶出を抑制している成分は糖であることが示唆された。2.小豆の蜜煮に対するてり・つや付与効果は,本みりんを使用したものが最も高く,本みりんのてり・つや付与効果が確認された。3.小豆の煮崩れ防止に寄与する成分は,糖であるが,糖は煮崩れ防止に寄与すると共に,軟化を抑制することがわかった。また,エタノールは軟化を促進するため,本みりんのように両成分を含有する調味料が煮崩れを防止し柔らかい豆を得ることが可能であることがわかった。4.小豆蜜煮においては,柔らかさと食慾の好ましさは一致しており,柔らかい小豆蜜煮を作ることがおいしさにつながることがわかった。本みりんを用いた場合,予め水だけで10分間加熱してザルにあげて,渋切りを行い,その後,本みりん溶液で下ゆでをし,加熱調理することによって,柔らかい小豆蜜煮を得ることが可能である。
著者
白羽 英則 小橋 春彦 大西 秀樹 中村 進一郎 山本 和秀 小林 功幸
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Des-gamma carboxy prothrombin (DCP)は、血管内皮細胞のKDRに作用し、細胞移動能(2.2倍)、細胞増殖能(1.5倍)を亢進させた。これら効果はKDR阻害剤により消失した。肝癌細胞のシークエンス解析からexon2の脱落したΔ2-gamma-glutamyl carboxylase(GGCX)を同定し、クローニングした。肝癌細胞においてΔ2-GGCX発現はDCP産生細胞(69%)において非産生細胞(8%)と比較して優位に高く、本来DCP非産生細胞であるHLE, SK-Hep-1は、Δ2-GGCX遺伝子導入によりDCP産生機能を持つようになった。これらの結果より肝癌におけるΔ2-GGCXの発現は、DCP産生の一因であることが解明された。Δ2-GGCX導入Hep3Bは、parental Hep3Bに対して約10倍のDCPを産生し、逆にWT-GGCX導入Hep3Bは、DCPの産生が消失した。それぞれの細胞を、ヌードマウス皮下に接種し8週間飼育した。Δ2-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積632mm^3)においては、WT-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積153mm^3)と比較して4.2倍と大きな腫瘍をヌードマウス皮下に形成し、血管新生も多く認められた。HCC患者組織(手術標本)でもDCP産生、血管新生の検討を行った。免疫組織染色の検討では、DCP発現と血管新生を示すCD31発現の相関が認められた。また、造影CTで評価したHCCのvascularityと、血清DCPの値にも相関が認められた。これらの結果より、DCPは臨床検体においても血管新生と密接な関連を持つことが判明した。
著者
萩原 文子 堀 七湖 中村 さち子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 三枝 南十 上甲 博美 佐藤 幸子 小川 美緒
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G3O1233-G3O1233, 2010

【目的】育児休業(以下、育休)が男性も取得可能な制度である中で実際の取得率は大変低くなっている(平成19年度育休取得率:女性89.7%、男性1.56%)。当部では育児経験のある男性理学療法士(以下、PT)に育児に関する意識や環境についてアンケート調査を行い、実際に育休の取得経験があるパパPT及び作業療法士(以下、OT)より経験談や意見を聴取した。今回はパパPTの実態を踏まえ、育休取得パパPT・OTの経験談と比較し問題点や改善点を見出すことを目的とした。<BR>【方法】2008年12月の1ヶ月間に20~40代のパパPT107名にアンケート用紙を使用し、家庭環境・職場環境や育児支援制度の認知度などの実態調査を行った。回答は無記名・多選択方式で得た。また、育休の取得経験があるパパPT3名・OT1名(平均年齢34歳)に調査票を使用し、家庭環境・職場環境・育休取得について面接又はメールにて調査をした。<BR>【説明と同意】調査依頼文にて目的や学会での公表を明記、もしくは口頭にて説明を行い、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。<BR>【結果】家庭環境は共働き家庭が67%、育児援助者がいない家庭が72%と半数以上であった。子供と接する時間は平日で毎日30分以上が63%、また何らかの家事を行っている人が97%であった。職場は総合病院が最も多く43%、職場のPT数は1~56名、職場での育休の有無は「なし・わからない」が20%、育休取得環境の有無は「わからない」が43%であった。育休取得率は0.93%で、取得しなかった理由は「妻が取得した」という意見が多く、次いで「職場の環境」「仕事への影響」「必要なし」「制度不明」が挙げられた。パパになってからの変化としては経済的な責任や家庭を持つことで仕事以外にも役割が増え、休まざるを得ないことが増えたり、自分の時間が少なくなったと感じている人が多いが、同時に仕事のやりがいが向上し、PTとしての広がりや生活の充実を感じている人も多かった。パパPTの39%は出来れば育児支援制度を利用したいと思っていた。<BR>育休を取得したパパPT・OTの家庭環境は妻が出産を機に退職1名・共働き3名であり、育児援助者がいる1名、いない3名であった。職場は公的・準公的施設でPT・OT数は2名~28名、休業中の代替者の確保は「あり」2施設・「なし」2施設。職場での女性の育児休業取得は「取り易い」3施設・「退職圧力なし」1施設、リハビリテーション部門の対応は4施設とも協力的であり、そのうち3施設では代替者の募集が行われた。事務の対応・反応は「権利なので可能」「制度はあるが事務職員の認識がなく、自分で制度を調査し担当者の上司へ説明を求めるなどの対応を必要とした」「事情に詳しい他職種の上司が直属の上司や事務方への対応をしてくれた」が挙げられた。育休取得期間は2~12カ月で3名は妻の育休取得後、1名は妻の出産直後に取得した。困ったことは全員が「特になし」、良かったこととして「子供や家族との関係の向上」「人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上」を挙げており育休取得によるメリットが大きいことがわかった。<BR>【考察】両調査において共働き・育児援助者なしが多く、夫婦が助け合って仕事と育児を両立していく必要性が高い家庭が多かった。その中でも日本人男性が家事や育児に関与する時間は約1時間という報告がある中が、パパPTは家事や育児に協力している傾向が見られ、さらにパパが育児に関与することは仕事面・家庭面において親として・人として・職業人としての向上などのメリットが挙げられた。しかし、育児支援制度に関してはパパPTの39%が出来れば利用したいと思っているが、実際に育休を取得した人は0.93%であり、育児・介護休業法にて取得権利が認められているといっても制度の利用には課題があることがわかった。パパの育休取得に関してはまず、今回の結果からパパの育休に関する情報不足を感じ、さらに職場の環境としては代替え要員の雇用支援や人材バンクの整備、上司や事務職への制度に関する理解と啓発の必要性を感じた。また、公的・準公的施設や女性が取得しやすい職場などの環境も育休取得に影響していることがわかった。今後は会員のみならず職場への育児支援制度の情報提供・支援サービスの整備などを進めていく必要性を感じ、今後の活動へ生かしていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】ライフワークの中で就業が継続できる働きやすい環境を支援することでPTの質の向上にもつながると思われる。
著者
中村 敏夫
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.95-103, 1983

"Industrial policy" is a general term for policies that enable the government to intervene in the activities of individual industries or enterprises. However, its concept, content and forms differ in every country. On this regard, it is AM13generally accepted that US industrial policy is no less interventionist than that of other countries. This paper, therfore, examines the scope, characteristics and effectiveness of US industrial policy in the historical perspectives. Since both political parties have the industrial policy as their main issue for the forthcoming presidential campaign, the emphasis of my research is made on the analysis of positive relationship between an industrial policy and a presidential election.
著者
柳澤 慧 高橋 陸 中村 文彦 住谷 陽輔 飯田 良 新田 明央 倉 千晴 戸口 侑 小島 遼人 藤吉 隆雄
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.145-154, 2015-12

記者発表による市民への情報伝達過程では,情報はおおむね研究者,広報担当者,ジャーナリスト,市民の順で伝わる.そこで,記者発表に関与する専門職と考えられる研究者,広報担当者,ジャーナリストの役割を考え,情報伝達過程における課題と解決策を博士後期課程1 年次の大学院生の視点から考察した.市民に研究成果を届ける記者発表をする理由は二つある.税金を原資として運営する研究の市民に対する説明と,「トランス−専門知」が関わる領域での社会の意思決定のための情 報提供である.ここで記者発表をめぐる課題は六つ挙げられるだろう.研究成果の間違った理解と伝搬,研究成果の強調,社会からの関心の研究成果以外への集中,研究者個人と組織の立場の相反,研究不正や倫理的問題の発覚,そして,市民・ジャーナリスト・科学者の態度の違いである.これらの課題の解決策はおおむね,それぞれの専門職としての役割の認識と倫理教育,情報のフィードバック回路の形成に大別できる.ここから,記者発表に関わる三者の役割の違いを認識したうえで, 規範と現実の食い違いは生じるとの前提でシステムの設計をするのが重要である.そして,その設計において大事なことは認識のずれを許容し吸収する仕組みの準備である.そのためには,バッファーとしての役割を担う中間的専門家が活動できる基盤が必要である.
著者
礒崎 総一郎 中村 宏 鈴木 智郎 植村 俊郎 若菜 弘之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.277-282, 1993

A new type of traffic terminal has been constructed at Yokohama bay recently. It is composed of 2-storied house on a floating pontoon and moored by pile-fender system. There are ticket counter and waiting lounge on the first floor and restaurant on the second floor. Since the floating type was applied to the passengers terminal station for the first time in Japan, We examined the relation between comfortability and motion of the terminal. Several interesting results, such as people who are easy to get seasick have tendency to estimate the motion of the structure excessively, are obtained.

1 0 0 0 学界五十年

著者
中村吉治著
出版者
刀水書房
巻号頁・発行日
1988
著者
中村 仁志 中野 真志
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2017-03-31

本稿では、教科横断的なカリキュラムに関する議論の源流について論じるにあたり、ジョン・デューイ(Johon Dewey)を取り上げ、彼の学際的カリキュラムの思想形成に影響を与えたシカゴ大学付属小学校、通称「デューイ実験学校」での教育実践に着目する。デューイの学際的教育学の検討から導出される、断片化された知識の再接続と諸学問分野間の接続という二つの主題を分析視角とし、先行研究では十分に焦点が当てられていなかった「総合的な歴史」の具体的な学習および活動に検討を加え、その実態を明らかにする。その際、1900~1901年度のグループ8とグループ9の「実験学校ワークリポート」を分析対象とする。本稿の結論は次の2点である。第一に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は、知識の起源の諸発見の再創造および諸学問分野とそれらが対象とする歴史的・社会的事象との関係から「相関」を問い直すことによる各教科内容の選択・組織化という点で意義をもっていることである。第二に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は知識の起源の諸発見の再創造が強調された結果として自民族中心主義的な側面をかかえてしまっているという課題を指摘できることである。これらの結論が持つ含意は、知識の起源の諸発見の再創造と自民族中心主義的な側面の克服の両立を図りつつ、教科横断的なカリキュラム全体の知識の構造化の基盤となる歴史学習のカリキュラムをいかに創造するかを問うことである。
著者
中村 史
出版者
立命館大学人文学会
雑誌
立命館文學 (ISSN:02877015)
巻号頁・発行日
no.552, pp.1005-1020, 1998-01
著者
松川 智義 中村 順一 長尾 真
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.40(1989-NL-072), pp.1-8, 1989-05-19

自然言語処理のシステムを構築する際に用いられる単語の分類を客観的なデータ解析から得る方法がいろいろと提案されている.その中には,単語の共起に関する実例データ(共起データ)を用いて単語を分類するというアプローチがある.ところが,それらの多くが前提としている単語間の「距離」(意味的な遠さ)だけで,多様な単語の意味を表現することには限界がある.また,実際の共起データには様々な「雑音」が混ざっている.本研究では,共起データに基づいた,「距離」という考え方を用いない,「雑音」に強い,単語のクラスタリング・アルゴリズムを作成した.
著者
矢野 育子 井関 健 東海林 徹 青山 隆夫 木津 純子 中村 均 藤井 俊志 渡邊 美智留 野田 幸裕 脇屋 義文 森田 邦彦 手嶋 大輔 二神 幸次郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-49, 2009 (Released:2010-02-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

With the introduction of 6-year pharmacy educational program in 2006,a provision was made to assign pharmacist faculties having working experience as pharmacists in pharmacy schools.In October 2007,we conducted a survey to investigate the situation of pharmacist faculties.We sent a questionnaire to 247 pharmacist faculties in 66 pharmacy schools and the response rate was 84.9%.The faculties consisted of professors (43%),associate professors (23%) and lecturers (23%),and 77% of them had a Ph.D.degree.In a typical week,the major activities they engaged in were educational activities (20.6 hrs),research (12.2 hrs) and management (9.6 hrs).While the average time they were occupied by clinical practice was 3.5 hrs,67% of them did not do any.Half of the faculties did not conduct any research with students or graduate students in their own schools,and in 2007 only 55% applied for Grant-in-aid for Scientific Research from the Ministry of Education,Culture,Sports,Science and Technology of Japan.Twenty-six percent said they were very satisfied or satisfied with their work on a five-point scale,and 44% rated their degree of satisfaction as fair.In conclusion,our survey showed that most pharmacy faculties are not sufficiently engaged in clinical practice and do not spend much time in clinical research.We hope that its results will promote discussions among pharmacy personnel concerning the role of pharmacist faculties so that even better clinical pharmacy education may be provided to students in pharmacy schools.
著者
中村 美里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.283-283, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)

日々図書館サービスに携わっていると,時々思いもかけず遠く海外から所蔵資料についての問い合わせが届くことがあり,一瞬驚かされることがあります。あるいは,目録も公開されていない特殊文庫資料についての照会が外国の図書館から届き,その探索に四苦八苦するということもありました。そして,そのようなことがあると,海外では日本に関する様々な研究が行われていて,多種多様な資料が求められているのだなと,当たり前のことを痛感させられます。(日本の研究者や学生が,いろいろな国で刊行された資料を求めて図書館に相談に来ることを考えると,それは当たり前のことではありますが。)一方で,海外で日本研究を志す研究者は減少傾向にある,日本と比べ中国や韓国の資料(電子コンテンツ)は入手しやすい(=日本資料は入手しづらい)といった話を聞くことも最近は多くなりました。ただ,そういった危機感を感じつつも,問題が大きなものであるだけに具体的な対応策や改善方法については茫洋としていると感じている人も多いのではないでしょうか。そこで,海外における日本研究の最新動向を中心として,海外の日本研究あるいは日本研究支援に様々な立場で携わっている方の“いま”を捉えることにより,日本研究に従事する人への支援の在り方を考えられる特集を企画しました。総論には,『本棚の中のニッポン』の著者でもある国際日本文化研究センターの江上敏哲氏に,海外における日本研究の現状等について的確にまとめていただきました。それに続き,チューリッヒ大学の神谷信武氏にはチューリッヒ大学アジア・オリエント研究所図書館における日本研究支援の実際について,(株)ネットアドバンスの田中政司氏には,「ジャパンナレッジ」の海外販売戦略を中心とした日本資料の海外受容について,北海道大学附属図書館の相原雪乃氏には,グローバルなILL/DDサービスを実現するためのGIF(Global ILL Framework)プロジェクトについて,国際交流基金ライブラリーの栗田淳子氏には,海外の日本研究支援等を事業の中心とする国際交流基金の取り組み及びライブラリーでの研究支援について,東京国立近代美術館の水谷長志氏には,海外日本美術資料専門家(司書)の招へい事業であるJAL プロジェクトについて,それぞれ執筆いただきました。今回の特集で,海外における日本研究の現状をお伝えでき,そして日本研究支援において自分にできることは何か?ということを考えるきっかけになりましたら,委員一同大変嬉しく思います。(会誌編集担当委員:中村美里(主査),長屋俊,久松薫子,水野翔彦)