著者
中村 源一郎
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、障害者の歩行において、足裏荷重の変化を測定し診断できる機器の試作を行った。足裏荷重を検出するセンサとして、動的な力を加えると力の大きさと速度に比例して電圧が生じる圧電高分子フィルム、東京センサ製ピエゾフィルムFLDT1-028K(以下PVDFフィルム)を使用した。足裏荷重によってPVDFフィルムに良好な変形を生じるように、発泡ゴム製靴中敷きに接着し荷重の集中するつま先、かかとに重点的に配置、片足当り10箇所へ配置し、床面の凹凸の影響が少ない厚底の市販靴に挿入した。PVDFフィルムから出力された電圧は、バッテリー駆動が可能で両足20チャンネルの電圧出力を同時に記録出来るデータロガー(グラフテック株式会社midi LOGGER GL800)を用いて測定した。実験は体育館に設置した直線歩行レーン15mを歩行し、被験者背面に装着したデータロガーでフィルムからの電圧を記録、同時に歩行軌道・状態をビデオカメラで記録した。視覚情報から歩行状態を補正させないために、通常の歩行実験と併せて、アイマスク着用による無視界状態での歩行実験を行ない次のような結果を得た。1)歩行の基本的な動作の中で足裏各部の電圧(荷重)の大小の測定ができた。2)足裏各部の接地タイミングを測定できた。3)アイマスク着用によるデータ上の変化は見られなかったが、軌道の乱れをビデオカメラ記録した。これらの結果から、圧電高分子フィルム(PVDF)フィルムを利用して、自由に歩行しながらデータ採集の出来る足裏荷重測定具を試作し、試作装置を使いた各歩行実験において診断に必要な足裏の荷重の大小、時間的関係、歩行状態を測定・記録することが出来た。今後、本試作装置で測定した電圧を速度、加速度へ変換し歩行映像あわせた定量的評価が行える実用的な装置を目指す。
著者
中村 和利 土屋 康雄 斎藤 トシ子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、閉経後女性の骨密度低下抑制に有効なカルシウム付加量を明らかにすることであった。女性ボランティア450人を1)カルシウム250mg、2)カルシウム500mg、3)プラセボを毎日服用する群、の3群に割付け、2年間の腰椎および大腿骨頸部骨密度の低下を3群間で比較した。カルシウム250mg/日および500mg/日付加群の腰椎骨密度の低下がプラセボ群より有意に小さかった。カルシウム250mg/日の摂取増加は腰椎の骨密度の低下を遅らせる。
著者
中村 三春
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.55-65, 2008

2004年に発足した大学コンソーシアムやまがた(愛称・ゆうキャンパス)は,現在,山形県内すべての大学等11の高等教育機関と山形県とから成り,広報・高大連携・教職員交流・合同入試説明会・単位互換・学生活動・委託事業などを展開している。「ゆうキャンパスリポジトリ」は,山形県内高等教育機関が発行する紀要等の電子化とデータベースの構築・公開を行うプロジェクトである。国立情報学研究所から山形大学への委託事業として整備されたこのプロジェクトを,本コンソーシアムでは,地域大学間連携の重要な契機として位置づけ,参加機関の協力のもとに強力に推進している。<br>
著者
森 英恭 小森 政嗣 藤崎 雅史 中村 晃二 安芸 雅史 桑原 守正 藤崎 伸太 藤崎 大整 米満 伸久
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.711-716, 2009-09-28

症例は57歳,男性.腎硬化症に伴う末期腎不全にて2000年5月に血液透析が導入された.2008年1月,経過観察中のCTにて左腎に造影効果のある嚢胞性腫瘤を認め,後天性嚢胞腎に発生した腎癌の可能性が高いと診断し,同年2月22日,後腹膜鏡下左腎摘除術を施行した.摘出組織の病理診断はAcquired cystic disease-associated eosinophilic renal cell tumorであり,その組織学的特徴は大型の好酸性細胞が充実性に増殖し,シュウ酸カルシウムの沈着を認めるという従来の腎癌の組織分類に当てはまらないものであった.
著者
中村 僖良 山田 顕 小田川 裕之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、高結合KNbO_3圧電結晶について、ECR酸素ビームとPLD(パルスレーザデポジション)を組み合わせた独自の方法により、高品質な単結晶膜をエピタキシャル成長させることを目指している。本年度の成果概要を以下に示す。1.Nd:YAGレーザ4倍波を用いるPLDにECR酸素ビームを組み合わせた膜成長法を採用して(110)MgOおよびSrTiO_3基板上に膜成長を行い、擬立方晶(001)配向のKNbO_3膜の成長に成功した。2.ECR酸素ビームを導入した場合と単なる酸素ガスを導入した場合について実験を行い、ECR酸素ビームが膜成長に有効であることを明らかにし、酸素圧力、ECRパワー、基板温度などの最適条件を求めた。また、膜の組成比をEDSにより調べた結果、ターゲット組成比K:Nbが1:1よりも2:1の場合の方がK/Nb【approximately equal】1.0の良い膜が得られることがわかった。3.X線ロッキングカーブ測定を行い、半値幅FWHMの膜厚依存性を明らかにした。4.ポールフィギュア測定により、膜がエピ成長していることを検証し、基板との面内方位関係を決定した。5.X線回折用高温アタッチメントを用いてKNbO_3結晶と基板の格子定数の温度による変化を調べるとともに、成長時および冷却する際の相転移点通過時における基板との格子定数の関係で決まる面方位との関係について考察した。6.参考のため、格子定数がほぼ同じBaTiO_3強誘電薄膜を同じ方法で作成・評価して比較検討した。7.膜の導電率を測定し、10^6Ωcmと比較的高いことがわかった。またD-Eヒステリシス曲線を測定し、強誘電性を確認した。8.薄膜の圧電性の評価を行い、超高周波厚み縦振動の電気機械結合係数k_tは約27%であることがわかった。9.相転移点付近でポーリングすることにより2種類の90°ドメインからなる有極性マルチドメインを形成し、その圧電特性などを調べて圧電性がエンハンスされることを明らかにした。
著者
中村 仁彦 今川 洋尚 野地 朱真 岡田 昌史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の成果は以下の4点でまとめられる.・複数のヒューマンフィギュアなど大規模な構造可変リンク系に適用可能な高速順動力学計算法を開発した.この計算法を用いるとN個のリンクからなる系の動力学シミュレーションに必要な計算量がO(N)となり,さらにO(N)個のプロセスで並列計算を行うことにより計算時間をO(logN)に短縮することができる.これは現在提案されている最も高速な順動力学計算法と同じ計算複雑性であるのに加え,構造可変リンク系に適用可能であるという特徴を持つ.これにより,接触を含む複雑な運動を実時間の数倍程度の時間でシミュレートすることができる.・逆運動学計算を用いて,数個のリンクの位置を指定するだけで全身のポーズを決定することのできる計算法を開発し,CGアニメーション生成に応用した.従来のCGアプリケーションと比べて容易に自然なアニメーションを生成することができ,作業効率が大幅に向上することが示された.・上記動力学計算法と逆運動学計算のインタフェースを応用して,力学的整合性を満たすヒューマンフィギュアの運動生成を行う方法を開発した.これにより,簡単なインタフェースで力学的なバランスなどを考慮した運動を自動的に生成できるようになった.・力学計算を用いたゲームなどのアプリケーションに必要なインタフェースを考案した.力学シミュレーションを用いることにより,サーカス,アクロバットなどモーションキャプチャの難しい運動も扱えることを実証した.
著者
中村 紀子 鈴木 康江 田中 政枝 五十嵐 直美 加藤 満利子 金丸 智子 加藤 貞春 中西 祥子 杉野 信博
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.388-388, 1987-05-25

東京女子医科大学学会第269回例会 昭和62年2月19日 東京女子医科大学中央校舎1階会議室
著者
中村 洋介
出版者
公文国際学園中等部・高等部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

丹沢山地の標高1,000m以上に分布するブナ林の衰退状況を把握し、その要因について地形学的、気候学的に明らかにすることを目的に調査した。調査は現地踏査、植生調査および1960年代から現在までの空中写真の判読である。調査対象地域はおもに丹沢山地の畔ケ丸-大室山-蛭ケ岳-丹沢山-塔ノ岳の主稜線部である。調査の結果、おもに西向き・南向き斜面でブナの枯損・枯死が多く、風の通り道となる鞍部でも顕著であった。この西向き・南向き斜面には主稜線部でササ草原が多いことが判読され、この周辺においてもブナの枯損・枯死が多くみられた。冬季の踏査では、ブナの枯損・枯死がまとまってみられる場所や西向き・南向きのササ草原で相対的に積雪量が少ない、または積雪がほとんどないことが明らかになった。空中写真により1960年代から現在までのブナ林周辺の植生変化を判読すると、かつてはブナ林であったと推測される落葉広葉樹林が西向き・南向き斜面で減少し、ササ草原が拡大していることが明らかとなった。丹沢山地玄倉川流域の主稜線部では、現在でも崩壊地が多く分布し、崩壊地の谷頭はササ草原になっていることが多かった。このような崩壊地の谷頭でブナの枯損・枯死がみられる。崩壊地の谷頭では風が集まるため相対的に強風になることが多かった。丹沢山地の風向分布は、冬季は季節風由来の西風が多く、ササ草原上の偏形樹も西風を示していた。夏季は南風が卓越していた。現在、主稜線部でブナが立ち枯れている南西向き斜面と健全なブナ林が広がる北東向き斜面において年間の気温をデータロガーによって観測中である。現地踏査では、ブナハバチによるブナの葉の食害が5月を中心に多く見られ、この食害が西向き・南向きの風衝地側で多いことが認められた。食害に遭っているブナでも風上側の北または東側のブナの葉は健全である。
著者
竹野 忠夫 中村 祐二 朱 学雷 西岡 牧人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

現在,大きな環境問題の原因として挙げられるすすに関して,その生成機構および抑制方法は見つかっておらず,未だ不明な点が多い.すすはNOxと並ぶ2大燃焼排出物であり,火炎中のその生成機構を理解することは我々人類にとって重要な課題である.これまでの研究報告によれば,すすはその前駆物質であるPAH(多環芳香族炭化水素)からできるとされているが,PAHの生成機構さえも十分に理解されていない部分が多い.そこで本研究では,対向流拡散火炎中を対象として,数値計算および実験を通じてPAHの生成機構を理解することを目的とする.まず平成10年度においては,約100種の成分と正逆500組の素反応を考慮したHai-Wangにより開発された化学反応機構を用いた数値計算により,PAHの中で最も重要な働きを示すベンゼン生成に関する知見を得た.その結果,C3系の反応物がPAHの基であるベンゼン環の生成に最も顕著であることがわかった.平成11年度においては,対向流拡散火炎中のベンゼンおよびその生成に関わると言われているC3系およびC4系の成分に着目し,それらの濃度測定をGC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析計)を用いて行った.また得られた実験結果と数値計算で得た知見との比較・検証を行った.その結果,数値計算ではベンゼンおよびC3,C4系炭化水素の量を約半分以下にしか見積もらないことがわかった.また,ベンゼン生成領域は数値計算よりも定温領域に移り,それがすす発生に関係した影響であることも指摘できた.しかしGC/MSで得られる情報もまだ十分ではないので,上記で推測されたすす生成に関する物理を確実に述べるには,実験装置の工夫,または数値計算において別の反応モデルを用い,より総合的な評価をする必要がある.
著者
本田 明治 山根 省三 高谷 康太郎 中村 尚
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

:「冷える海洋-暖まる大陸」パターン、いわゆるCOWLパターンの空間構造の特徴やその力学的メカニズムの解明に取り組んだ。再解析データを用いた解析でCOWLは対流圏循環場ではアリューシャン・アイスランド低気圧シーソーに続いて2番目に卓越するモードとして抽出され、長期的なユーラシア及び北米大陸上の昇温傾向に伴って近年の両低気圧の強化傾向を伴っていることが確認された。一方近年の北半球雪氷圏の急変に伴ってCOWLの変動特性にも影響が現れていることが分かった。
著者
大島 久雄 勝山 貴之 古屋 靖二 中村 未樹 高森 暁子 道行 千枝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

『テンペスト』受容におけるテキストと言説の関係性とその役割を受容事例分析により明らかにし、受容におけるインターテキスチュアリティの重要性を検討し、インターテキ・スチュアリティ受容批評理論の構築を目指した。特に植民地主義・労働、記憶・歴史、モンスター・異常出産、所有・支配、階級・衣服、メタシアター、王政復古期性・政治等の諸言説とのインターテキスチュアリティの受容に意味機能を具体的に検討し、原作上演当時から現代の翻案『プロスペロの本』や『蜷川テンペスト』に至るまでの個々の『テンペスト』受容について、その歴史性・地域性を重視した事例研究を行った。研究成果としては、The VIII World Shakespeare Congress(Brisbane,2006)において"The Discourse of Master-Servant Relationships in The Tempest"(大島)、第46回シェイクスピア学会(早稲田大学,2007)において「『テンペスト』における衣服」(高森)等、研究発表を行い、各分担研究は報告書兼論集『「テンペスト」受容研究:テキストと言説とインターテキスチュアリティ』(2008)に論文としてまとめ、国内外関連研究機関・研究者に配布した。各時代・地域でのテキストと言説が織り成す多様なインターテキスチュアリティの中、近年のシェイクスピア国際化の加速により、『テンペスト』は、多岐に分化するシェイクスピア受容の典型であり、受容研究におけるインターテキスチュアリティの重要性は益々高まっている。The 7th Triennial Shakespeare Congress(Rhodes University,2007)での"Location and Intertextuality in Ninagawa Tempest:Zeami/Prospero on a Sado Noh Stage"、シェイクスピア協会主催マクラスキー教授セミナー(同志社大学,2006)での"The Throne of Blood and Kurosawa's Intertextual and Crosscultural Transplantation of Macbeth"等のシェイクスピア受容事例研究を行い、受容研究へのインターテキスチュアリティ批評理論の有効性を検証した。
著者
新井 宏朋 中村 洋一 生地 新
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

従来の成人病検診における眼底検査は働き盛りの脳卒中予知を主たる目的としていたが、高齢化社会においてはこれに加えて脳卒中による寝たきりや動脈硬化によるぼけ老人の予知が重要な課題となる。本研究では、まず最初に山形県F町における70〜75歳の在宅高齢者の眼底所見の有病率を検討した。Keith,Wagener分類O群は男39.3%、女39.8%、I群は男39.3%、女42.0%、IIa群は男18.9%、女12.7%、さらにK、WIIb群に相当する典型的な動脈硬化性網膜症が男2.5%、女5.5%に見られた。同時に実施したBenton視覚記銘検査との関連性を検討した結果、Keith,Wagener分類とBenton検査の正確数の間には統計的に有意の関連性は認められなかった。次に眼底所見を中心に血圧、心電図の循環器検査所見及びBenton検査の正確数、誤謬数等との関連について林の数量化III類を用いて検討した。第1軸は循環器所見の有無と解釈できたが、第2軸については解釈できなかった。また眼底所見はBenton検査の正確数、誤謬数と近接した関係は見られなかった。次いで、Y町で65〜74歳の在宅高齢者を対象に循環器検診5年後の日常生活動作、ぼけに関する症状等19項目の質問調査を実施した。Keith,Wagener分類と日常生活動作との関連では、全体的な傾向としてKeith、Wagener分類O,I群がIIa以上群に比較して良好な比率が高く複数の項目で有意差が認められた。ぼけに関する症状等については、各項目とも有意差は認められなかった。次に、この調査から精神科医のスクリーニングで痴呆の可能性が疑われた者(症例群と略)と対照群に柄沢式及び長谷川式簡易知能評価スケールを実施した。柄沢式では「ぼけあり)が症例群4.8%対照群0.01%であったが、長谷川式では症例群(平均26.3点、標準偏差6.4点)と対照群(28.0点、4.1点)に有意差は認めなかった。また両群の眼底K、WIIa以上出現率にも有意差を認めなかった。