著者
中村 隆 原 英一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ウッド夫人とメアリー・ブラッドンの長編小説に関して、なお考察が不十分と考えられる3つの視点を提示した。(1)不倫小説としてのセンセーション・ノヴェル(2)探偵小説としてのセンセーション・ノヴェル(3)ウッド夫人、ブラッドン、ディケンズの小説の相互関連。(1)について:センセーション・ノヴェルの中枢に「反逆する娘」(subversive daughter)と「反逆する妻」(subversive wife)がいることを指摘し、彼女たちが「不倫小説」を生み出す原動力となっていることを解明した。(2)について:ドイルの前に位置するセンセーション・ノヴェルの「細部」を重視する探偵たちは、19世紀末葉に興隆する犯罪科学(犯罪人類学、顔写真、指紋、毒物学)を先取りしていることを指摘した。(3)について:ディケンズ、ウッド夫人、ブラッドンの小説との比較検討を通じて、そこに、夫への不信を抱く妻、不倫願望を持つ妻、不倫妻の秘密を暴き出す男の探偵というパタン化された構図があることを解明した。
著者
太田 至 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 曽我 亨 湖中 真哉 内藤 直樹 孫 暁剛 中村 香子 波佐間 逸博 佐川 徹 白石 壮一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、第一に、アフリカの乾燥地域に分布する牧畜社会の人々が歴史的に培ってきた知識や技術、社会関係や文化など(「ローカル・プラクティス(LP)」)を再評価すること、第二には、この社会の開発=発展のためにLP を活用する道を探究することである。東アフリカの4カ国、12民族について現地調査を実施し、人々がLPに基づきながら激動する生態・社会環境に対処している様態を解明し、LPが開発=発展に対してもつ潜在力を総合的に再評価し、それを援用する道に関する考察を深めた。
著者
中村 彰男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.144-148, 2009 (Released:2009-03-13)
参考文献数
18

血管平滑筋の収縮は細胞内Ca2+の上昇に伴い,平滑筋ミオシン軽鎖キナーゼ(SmMLCK)が平滑筋ミオシンの制御軽鎖(MLc20)をリン酸化することにより引き起こされると考えられている.しかしながら,このリン酸化仮説は細胞内Ca2+の上昇を伴わないCa2+非依存性収縮やミオシンが脱リン酸化されているにもかかわらず収縮が維持されるなどこれまでのリン酸化仮説では説明できない多くの問題点を孕んでいる.これらの問題は血管病の薬物治療において一つの壁を作っている.この問題をブレイクスルーするきっかけとなったのはリコンビナントSmMLCKを用いた研究である.リコンビナントSmMLCKには従来のキナーゼ活性に着目した研究では見えてこなかった新たな制御機構の存在が次第に明らかになってきた.それはキナーゼ活性以外にもミオシンやアクチンに直接作用して平滑筋収縮を制御する機構である.このリン酸化によらない制御機構はSmMLCKの非キナーゼ活性と呼ばれる.ここではSmMLCKのもつ非キナーゼ活性に焦点を当てて紹介したい.
著者
中村 明 速水 悟 津田 裕亮 松本 忠博 池田 尚志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.1375-1389, 2009-04-15

単語間の大域的な依存関係をトピック(話題)としてモデル化する言語モデルの1つであるLDA(Latent Dirichlet Allocation)を複数個統合する方式によって,言語モデルを高精度化・安定化できることを示す.新聞記事コーパスを用いた実験の結果,提案方式では単一のLDAからなる同一規模のモデルと比較して,つねに推定精度が向上・安定化することを確認した.単一LDAでは潜在トピック数<i>C</i> = 100前後を境に性能が低下するのに対し,提案方式では過適応が抑制され,はるかに大きい総トピック数(= 各モデルの潜在トピック数の総和)まで性能が向上し続ける.また提案方式によるunigram確率を用いて<i>N</i>-gram確率(<i>N</i>&ge;2)を補間することにより,trigramのパープレキシティを従来方式より大幅に削減できる.さらに本論文では,提案方式を予測入力に基づくテキスト入力支援(predictive text entry)に応用することを想定し,テキスト入力支援に適した言語モデル評価指標i-PPを提案する.この指標はパープレキシティの拡張であり,任意文字数の読み入力時点における平均単語分岐数を表す.この指標を用いた評価の結果,提案手法では入力読み文字数<i>l</i> = 2の時点まで通常のパープレキシティと同程度にi-PPを削減でき,従来方式よりも高精度に予測候補を絞り込めることが確かめられた.
著者
葉柳 和則 中村 靖子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

戦後スイスは、ヨーロッパの中央部に位置しながら、第二次世界大戦に関与しなかった「無垢」の国として自らのナショナル・アイデンティティを規定しようとしてきた。このことは、スイスの人口比で約70%を占めるドイツ語圏スイスにおいては、まさにその言語ゆえに重要であった。本研究では、戦後スイスを代表する作家であるマックス・ブリッシュの言説の軌跡を、メディアと知識人の作り出す言説の共同体との関連において跡づけることによって、スイスの国民統合の言説戦略と知識人との間の共生と抗争の諸相を明らかにした。
著者
佐藤 寿倫 中村 佑介 有田 五次郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FTS, フォールトトレラントシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.475, pp.107-112, 2000-11-23

スーパースカラプロセッサは命令レベル並列性を得るために実行時に命令を並び替えており, 性能向上のためには命令ウインドウを大きくする必要がある.しかし, 命令ウインドウは連想メモリ(CAM)で構成されており, プロセッサの動作速度を決定する要因の一つであるため, 容易に容量を大きくは出来ない.そこで本稿では, CAMよりも高速動作可能なRAMを用いて命令ウインドウを構成することを提案する.シミュレーションの結果, 提案する機構は従来の命令ウインドウとほぼ同等のレイテンシを維持しつつ, 動作速度を改善できる可能性があることが確認できた.
著者
中村 逸郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、モスクワ市内に発生している住民紛争を調査しました。その内訳は、以下のとおりです。(1)共同アパートの住人の間での紛争(2)アパートを取り囲む鉄柵をめぐるアパート住人と周辺住民の間の紛争(3)高級分譲マンション建設と周辺住民の間の紛争(4)アパート修繕をめぐる住人の間の紛争(5)高層ビジネスビル建設をめぐる政財界と近隣住人の間の対立。以上の5つの住民紛争を具体的に取り上げ、関係者にインタビューし、文書と資料を入手しました。住人たちが身近な自治体に紛争の解決を要請しても、多くの場合自治体は権限がないことを理由に、問題を放置しています。今回の調査で判明したのは、住民たちが日常問題をロシア大統領府住民面会受付所に提出していることです。実際に大統領府を訪問すると、ロシア全土からたくさんの住民たちが直訴状を持参しているのです。そこで、住民たちにインタビューを行いました。人びとは身のまわりの地域社会で発生する社会問題をロシア大統領に直訴し、最終的には大統領に裁定を委ねています。地域社会でコミュニティーが登場し、地域社会の問題に深く関つてきていますが、そうした人びとの自立的な動きは皮肉にも、最高権力者の権力基盤を強化しているのです。本研究の成果は、中村逸郎著『帝政民主主義国家ロシアープーチンの時代-』岩波書店、2005年に収められています。
著者
伊東 正博 中村 稔
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

放射線誘発腫瘍研究の最も大きな課題は放射線特異的な遺伝子異常や形態変化が存在するか否かであり、チェルノブイリ組織バンク症例を用いて解析を行ってきた。事故から20年が経過し周辺地域での甲状腺癌の発生は小児から成人にシフトし依然高い発生率を呈している。チェルノブイリ組織バンクには約2,500症例が登録されて病理組織や遺伝子(DNA, RNA)が保管されている。チェルノブイリ症例では遺伝的・環境的に同じ地域の自然発症例との比較データが欠けていたが、近年、同地域の非被曝小児症例が集債され、放射線被曝特異的な組織型は存在しないことが明らかになってきた。甲状腺癌の約95%は乳頭癌が占め、被曝形態や被曝年齢により様々な形態変化が存在する。乳頭癌の亜型(乳頭状、濾胞状、充実性)頻度に被曝、非被曝群間で差は見られず、手術時年齢により関連していた。そのなかで被曝時年齢と潜伏期によりある程度の形態発現が規定されていた。充実性成分は被曝時年齢よりも短い潜伏期と関連しRET/PTC3変異が高率に観察された。高分化型形態を呈する乳頭癌ではRET/PTC1変異が優位であった。短い潜伏期ほど浸潤性が高く、長い潜伏期ほど腫瘍辺縁の線維化が目立った。BRAF変異は被曝との関係は見られず年齢と強い相関を示し、若年者での変異は低率であった。RET再配列とBRAF変異は相互に排他的であった。乳頭癌の亜型間での細胞増殖指数に有意差は認めなかった。予後は概して良好で5年生存率が98.8%、10年生存率が95.5%であった。組織亜型による差は認めなかった。被曝と甲状腺癌形態の解析には更なる症例集積が必要である。
著者
中村 哲三
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.6, pp.1-6, 2010-09-17

マニュアルなど製品付属ドキュメントのローカリゼーション (多言語展開) をスムーズに進めるために、そのローカリゼーションのマスターとなる英語版を世界中の読者に対してわかりやすくする方策を検討する。世界中の読者を対象とした英文ライティングを検討することで、「世界共通語」 としての 「グローバルイングリッシュ」 を目指していく。The purpose of this report is to find out and employ appropriate methods to make English documents easy-to-understand for readers and translators around the world, which facilitate localisation†2 process of documents bundled with products, accordingly, since the English versions are usually used for the source of localization. Writing and pursuing easy-to-understand English documents for the audience of the world leads us to form "Global English" as a Lingua Franca in the modern world.
著者
斎藤 和志 SAITO Kazushi 中村 雅彦 NAKAMURA Masahiko
出版者
名古屋大学教育学部
雑誌
名古屋大學教育學部紀要 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.97-109, 1987-12-24 (Released:2006-01-06)

This study attempted to construct the Interpersonal Orientation Scale (ISO) based on the concept proposed by Rubin & Brown (1975). High IOs are interested in and reactive to other people, whereas low IOs are less interested and responsive to others and more concerned with economic features of interpersonal relationships. The scale for Japanese based on Swap & Rubin (1983) was revised to the new scale (ISO-V) which was constructed by eighteen items. Factor analysis of ISO-V yielded three factors : human relation directedness, interpersonal interest and reactivity, and individualistic tendency. This scale had reasonable internal consistency. Correlations between ISO-V and other personality scales indicated expected relations. Then, the validity of IO construct and the usefulness of ISO-V were examined by two experiments. First experiment was aimed to examine the influences of evaluator's IO on attraction toward the self-disclosing other. By this experiment, it was found that high IOs showed greater responsiveness to variations in other's disclosures than did low IOs. Second experiment aimed at exploring the effects of subjects' IO on their opinions about reward allocation and cognition of it. This experiment indicated that high IO individuals liked equality and low IOs took a serious view of own contribution. These results suggested that this scale was useful in understanding behavior in certain social situations.
著者
森 芳樹 吉本 啓 稲葉 治朗 小林 昌博 田中 慎 吉田 光演 沼田 善子 稲葉 治朗 小林 昌博 高橋 亮介 田中 愼 沼田 善子 吉田 光演 中村 裕昭
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

文法理論の拡張にあたって実用論を援用しようとする試みは少なくない。本プロジェクトでは意味論を諸インターフェイスの中心に据えて、コンテクストと文法の相互関係についての研究を進めた。記述上の対象領域としては情報構造とアスペクト, 時制, モダリティー(ATM)を選択し、一方では, パージングを基盤に置いた構文解析を言語運用の分析と見なすDynamic Syntax(DS)の統語理論的な可能性を検討した。他方では、形式意味論・実用論と認知意味論・実用論の双方の成果を取り入れながらテクスト・ディスコースとコンテクストの分析を進めた。 なお本プロジェクト期間中に、当研究グループから4本の博士論文が提出された。
著者
坂元 眞由美 松本 大輔 川又 敏男 山崎 郁子 中村 美優 安藤 啓司 傳 秋光 川又 敏男 安藤 啓司 山崎 郁子 傳 秋光 中村 美優
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は重度認知症高齢者の自律神経に音楽がどのような影響をもたらすのかを明らかにすることにある。方法はCDRにて分類した重度認知症高齢者に対し、好きな音楽を用いた介入を個別に週1回、能動的参加群と受動的参加群、コントロール群に分けて行なった。評価方法は加速度脈派測定システム・フェーススケールを使用した。その結果、好きな音楽の受動的聴取または能動的歌唱の両者共に精神安定効果があることを確認した。
著者
前田 耕作 中村 忠男 松枝 到
出版者
和光大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

北部を含むジャラーワーン地区では州都クエッタ、カラート周辺域、フズダール周辺域が主たる調査域である。この地域にはイスラーム教以前、ゾロアスター教、仏教、ヒンドゥー教が存在していたと考えられてきた。ゾロアスター教の祠堂があるのはクエッタであるが、イランにおけるように古来からの残存を裏づけるものはなにもない。カラチにある祠堂とともに英領インド時代、商人のパルシー教徒の移住とのつながりで考えられるべきものと思われる。ジャラーワーン地区へのヒンドゥー教の流伝はイスラーム教をともなったアラブの侵入より早いが、それを裏づけるものは、その根強い信仰の存続とイスラーム教聖者伝説と交錯するヒンドゥー教の伝説のほかにはない。しかし、ジャラーワーン地域とラス・ベーラ地域の古道沿いには、ヒンドゥー寺院が点在し、それらは互いに繋がりをもっており孤立していない。クエッタ、カラート、フズダール、ベーラ、カラチと残存するヒンドゥー教の細い糸をたぐっていったとき、それらを繋ぐ一つの結び目にヒンゴール河畔に存在するヒンドゥー教の巡礼聖地ヒングラージに行きあたり、この聖地の具体的な調査をおこなうことができたことが、二年にわたる調査の最大の成果であった。ヒングラージの聖域の実測および女神の聖像等の詳細は、平成11年度に予定される補足調査の後、本報告で公表される。ラス・ベーラ地域の西端、マクラーン地域の東端に位置するヒングラージ聖跡の踏査によって調査域をマクラーン地域にまで広げる必要が生じ、平成9年度の調査では、トゥルバットおよびグワーダルを訪れ、ついにヒンドゥー教流伝の西限を突きとめることができた。
著者
羽田 明子 中村 アツコ 岩見 哲夫 伊元 光代
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.180-185, 1990-05-20

1.RHビーフは官能検査の結果、外観、舌ざわりに関する全項目と、味に関する好ましい味という項目に関して高い評価を得た。2.RHビーフに含まれるα-アミノ酸の量は生肉の約1.3倍、CVビーフの約1.7倍であった。加熱調理中の肉の温度が、60℃以下に保たれているため、酵素によるタンパク質の異化作用により増加したものと推察された。3.^1H-NMRによる水の^1H緩和時間から見たRHビーフの水分存在状態は、外側から中心部までのどの位置でも均一であり加熱が均一に及んでいることを示した。4.RHビーフ、CVビーフ共に重量から見た歩留まりは殆んど同じであったが、肉の可食部からみた歩留まりはRHビーフが100%、CVビーフでは85%であった。5.RHビーフの筋肉組織の変化は、結合組織の呈色の変化、アゾカルミンG呈色顆粒の存在という点で、表層部では多少の組織の変性が認められたが、中心部においては、その変性は比較的軽微であった。
著者
堀内 茂木 入倉 孝次郎 中村 洋光 青井 真 山田 真澄 干場 充之 正木 和明 香川 敬生 正木 和明 倉橋 奨 香川 敬生 大堀 道広 福島 美光 山本 俊六 赤澤 隆士 松崎 伸一 呉 長江 ZHAO Jhon
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

東南海、南海、東海等の巨大地震発生時に、面的震源をリアルタイムで推定するための開発を行なった。P波部分の震度の距離減衰式を調べ、P波部分も震源域で飽和することが示された。震度の観測データやシミュレーションデータを使い、震源域の広がりをリアルタイムで推定する手法を開発した。また、速度や加速度の最大値から、断層近傍であるかを判定し、震源域を推定する方法も開発し、リアルタイムでの巨大地震情報配信の目処がたった。
著者
中村 希明
出版者
南山堂
雑誌
治療 (ISSN:00225207)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.p1519-1522, 1994-05