著者
中野 眞 青木 優人 山口 英世
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.153, no.2, pp.79-87, 2019 (Released:2019-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

ラブコナゾールは,強力な抗真菌活性に加えて薬物相互作用や肝機能障害の懸念が少ないことを特徴とする第4世代のアゾール系抗真菌薬である.そのプロドラッグとして新たに創薬されたのがホスラブコナゾールl-リシンエタノール付加物(以下 ホスラブコナゾール,製品名:ネイリン®カプセル100 mg)である.ラブコナゾールは,皮膚糸状菌,カンジダ属などを含む様々な病原真菌に対して強い抗真菌活性を有する.加えて,プロドラッグ化することにより薬物動態が向上し,経口投与後の生物学的利用能は約100%に達した.その結果,ラブコナゾールの血漿中濃度は既存の経口爪白癬治療薬に比べて10~35倍も高くなり,皮膚・爪組織への移行性および組織貯留性も良好である.これらの優れた薬効薬理および薬物動態上の特性を背景に,ホスラブコナゾールを日本人爪白癬患者に1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100 mg)12週間経口投与する試験を行った結果,爪中ラブコナゾール濃度は治療終了後も皮膚糸状菌に対するMIC90を超えて長期間維持された.さらにプラセボ対照二重盲検比較試験の成績から,有意に高い治療効果(治療開始48週後の完全治癒率:59.4%,著効率:83.1%,直接鏡検による菌陰性化率:82.0%)が示された.これらの国内臨床試験で認められた副作用は,主に臨床検査値異常と胃腸障害であり,重篤な症状はみられず,忍容性は高いと考えられた.ホスラブコナゾールは,薬物相互作用を引き起こすことが少なく,食事による腸管吸収への影響を受けないことに加えて,服薬期間も12週間と短くパルス療法のような休薬期間もないため,良好な服薬アドヒアランスが保持されると考えられる.このように数々の好適な薬理学的特性をもつことから,ホスラブコナゾールは爪白癬に対する内服治療の新しい選択肢として期待される.
著者
吉識 綾子 的場 洋平 浅川 満彦 高橋 樹史 中野 良宣 菊池 直哉
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.100-105, 2011
被引用文献数
2

北海道では野生化したアライグマが増加しているが,アライグマにおけるレプトスピラ症の浸潤状況は十分に知られていない。今回,北海道中央部で捕獲されたアライグマについてレプトスピラの浸潤調査を行った。<BR>捕獲されたアライグマ259頭中10頭(3.9%)からレプトスピラが分離された。肝臓2例(0.8%),腎臓9例(3.5%),尿1例(0.4%)からレプトスピラが分離された。PCR法により60頭(23.2%)からレプトスピラDNAが検出された。肝臓26例(10%),腎臓33例(12.7%),尿28例(10.8%)からレプトスピラDNAが検出された。11種の血清型のレプトスピラを用いて顕微鏡学的凝集反応(MAT)を行った。255頭中63頭(24.5%)でいずれかの血清型に対しての抗体が確認された。その中でもAutumnalisに対して高く,10%以上の陽性率を示した。PCRおよび抗体調査の結果,幼獣よりも成獣のほうが,また地域的には胆振地方の陽性率が高かった。<BR>以上の結果から,今回捕獲した北海道のアライグマにはレプトスピラが広く浸潤していることが明らかになった。アライグマは急増し,人,犬,家畜などとの接触の機会も増えてきている。したがって,アライグマからの人,犬,家畜へのレプトスピラ感染の可能性が危惧された。
著者
柴田 政彦 寒 重之 大迫 正一 三木 健司 栁澤 琢史 助永 憲比古 恒遠 剛示 新田 一仁 岩下 成人 福井 聖 黒崎 弘倫 中野 直樹 若泉 謙太 上嶋 江利 本山 泰士 高雄 由美子 溝渕 知司
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.189-196, 2016-11-26 (Released:2017-01-27)
参考文献数
37

The review was performed to investigate the functional brain alterations in patients with various kinds of chronic pain including fibromyalgia, chronic low back pain, migraine and the other chronic pain conditions. In these patients functional connectivity was different not only in the sensory–motor system but also in the affective and reward system. New technology have allowed us to identify and understand the neural mechanisms contributing to chronic pain, which provides us novel targets for future research and treatment.
著者
半谷 吾郎 好廣 眞一 YANG Danhe WONG Christopher Chai Thiam 岡 桃子 楊木 萌 佐藤 侑太郎 大坪 卓 櫻井 貴之 川田 美風 F. FAHRI SIWAN Elangkumaran Sagtia HAVERCAMP Kristin 余田 修助 GU Ningxin LOKHANDWALA Seema Sheesh 中野 勝光 瀧 雄渡 七五三木 環 本郷 峻 澤田 晶子 本田 剛章 栗原 洋介
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
pp.36.014, (Released:2020-11-30)
参考文献数
23

We studied the island-wide distribution of wild Japanese macaques in Yakushima (Macaca fuscata yakui) in May 2017 and 2018. We walked 165.4 km along roads and recorded the location of 842 macaque feces. We divided the roads into segments 50 m in length (N=3308) and analyzed the effect of the areas of farms and villages or conifer plantations around the segments and also the presence of hunting for pest control on the presence or absence of feces. We divided the island into three areas based on population trend changes over the past two decades: north and east (hunting present, population decreasing); south (hunting present, no change) and west (hunting absent, no change). According to conditional autoregressive models incorporating spatial autocorrelation, only farms and villages affected the presence of feces negatively in the island-wide data set. The effect of hunting on the presence of feces was present only in the north and east and the effect of conifer plantations was present only in the west. Qualitative comparisons of the census records from the 1990s with the more recent census indicated that feces were no longer found in the private land near the northern villages of Yakushima, where macaques were previously often detected in the 1990s. In other areas, such as near the southern villages or in the highlands, macaques were detected both in the 1990s and in 2017-2018. Our results further strengthen the possibility that the macaques have largely disappeared around the villages in the northern and eastern areas. Since the damage of crops by macaques has recently reduced considerably, we recommend reducing hunting pressure in the north and east areas and putting more effort into alternative measures such as the use of electric fences.
著者
中野 生子 田中 聡 池田 めぐみ 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43098, (Released:2020-03-23)
参考文献数
51

本研究では,国内の中学生を対象としたサマーキャンプを取り上げ,社会情動的スキルに与える効果を,個人特性との関係性に着目しながら検証することを目的とする.UWC ISAK Japanのサマースクールを対象として,基本属性,パーソナリティ特性に関する事前質問紙調査を,社会情動的スキル(Social Emotional Competence Questionnaire)に関する事前事後質問紙調査を実施し,47名の有効回答を分析した.本研究の結果,社会情動的スキルを育成するためのプログラムとしてUWC ISAK Japanのサマースクールは有意な効果が認められたほか,協調性や開放性が低い生徒,また日本人および日本在住者と社会情動的スキルの変化量とに正の相関がみられた.これにより,自由参加型のサマーキャンプにおいては,参加者の個人特性によってプログラム効果の度合いが異なる可能性が示された.
著者
中野 英貴 吉田 有紀 幡野 薫
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.725-728, 2004-10-01 (Released:2007-09-09)
参考文献数
12

Since the weight of the normal prostate is about 20 g in adult males, a prostate weighing estimated to weight more than 20 g by ultrasonography is regarded as prostate swelling in our hospital. However, the weight of the prostate varies with age, and its measurements also vary. In this study, we examined the changes in the weigh) of the prostate with age in the groups with and without symptoms in the prostate. In the healthy males without prostatic symptoms, the estimated weight of the prostate was more than 20 g in males over 50 years old, and there were many patients in whom prostate swelling was observed without significant clinical symptoms. It was considered necessary to be aware of the changes in the prostate weight with age without adhering to a single standard weight, when performing ultrasonographic estimation of the prostate weight.
著者
中野 紀和男 高松 真二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.359-367, 1995-06-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
中野 由章 中山 泰一
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.1-7, 2017-08-10

大学入試センター試験において,数学 ② の選択科目として 「情報関係基礎」 が長く出題されている.これは,数学 Ⅱ ・ B を履修していない専門学科の生徒も大学入試で不利にならないよう配慮されたものである.高等学校 2003 年度入学生から学年進行で普通教科 (現 ・ 共通教科) 情報科が必履修となったが,専門学科の生徒は専門教科の学習でそれを代替する特例措置があり,殆どの専門学科ではその特例を利用して,共通教科情報科を開設していない.そこで,現行学習指導要領における専門教科の情報関係基礎科目の目標と内容について分析し,その類型化を試みる.
著者
中野 峰生 五十嵐 敦 李 俊〓 大橋 一之 門脇 淳
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.82-86, 2003-02-28 (Released:2009-08-13)
参考文献数
10

当院に受診した騎手候補生の馬による外傷を集計し, 受傷機転・部位・原因などとその事故防止対策について検討した。当院を受診した騎手候補生は43名で, 提示した2症例以外は外来治療が可能な軽症例だった。受傷原因は落馬 (55%) が最も多かったが, 次いで乗馬中以外での馬の取り扱い時の事故 (31%) であった。受傷部位は下肢 (41%) および頭部・顔面 (20%) が多く, 乗馬外傷を繰り返して起こす者 (21%) も比較的多かった。また, 騎手候補生は入校後6カ月以内に受傷していることが圧倒的に多かったことから, 馬に関する安全教育を入校直後から指導徹底し, 防護用の服や靴を使用すべきであると考えられた。
著者
中野 哲平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

医療ミスというのはヒューマンエラーであり、更に多くのミスは単純な確認ミスである。例えば動脈の位置や患者情報の誤認、1桁違いの薬物投与量などがミスの原因である。このような問題に対して異常検知という意味で機械学習というのは非常に有効である。高齢化社会になるにつれ、ますます医師への負担は増えるだろう。その状況下でも絶対にミスが起こらない医療を提供できるようなシステムを構築したい。
著者
内藤 翔平 入口 豊 井上 功一 中野 尊志 大西 史晃
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.31-42, 2013-09

本研究は,サッカー発祥の地であり,世界最高峰のプレミアリーグを有するイングランドの地域サッカークラブにおけるユース育成の実情を検証するため,筆者(内藤)自身がスタッフとして所属したセミプロリーグレベルのクラブ(5部リーグ)「AFCウィンブルドン」に焦点を当て,そのクラブがどのように誕生し,地域に根付いてきたのか,また実際の運営はどのように行われているのかを明らかにし,特にそのユースチームの指導体制や運営実態を筆者(内藤)自身の体験を交えながら明らかにすることによって,イングランドのサッカークラブにおけるユース育成の内情を実証的に検証することを目的とする研究の第II報である。特に,本稿ではイングランド・セミプロリーグレベルのクラブ(5部リーグ)「AFCウィンブルドン」に焦点を当て,そのクラブがどのように誕生し,地域に根付いてきたのか,また実際の運営はどのように行われているのかを明らかにする。The purpose of this study is to make the actual conditions of the Youth Training System of Football Club in England clear through the experience of the AFC Wimbledon in Wimbledon, England. This is the continued study from the previous reports with the same title "A Case Study of the Youth Training System of Football Club in England (I)- An Outline of the Youth Training System in England -" (Memoirs of Osaka Kyoiku University, Ser IV. Vol.61-2., 2013.2., pp.11-24.). Especially, the purpose of the present study is to examine the following topics about the "AFC Wimbledon Football Club". The finding and discussions on the following topics are presented in this paper: 1.The Wimbledon FC (1)History of the Wimbledon FC(2)wining of the championship of FA Cup 2.Two Wimbledon FC "MK Dons" and "AFC Wimbledon" 3.About the first team of AFC Wimbledon
著者
根本 哲也 島本 聡 野方 文雄 松浦 弘幸 野田 信雄 中野 正博
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.137-142, 2005-10-20

生物の機能に学ぶバイオミメティクスは,従来の技術では解決できなかった問題をブレークスルーする方法として近年注目されている.クマムシ(Tardigrada)は極限状態下での生息が確認されており,その機能発現には,トレハロースによる組織安定化等の化学的な作用と体の構造を変化させる等の物理的な作用によると考えられている.本報ではクマムシを極限状態下に晒した場合に見られるtun状態とよばれる特殊な収縮状態へ移行する過程を観察した結果を報告する.その結果,クマムシがtun状態に至る過程で見られる外殻の構造変化,粒状の内容物の変化等の諸現象について観察することができた.