著者
大久保 史佳 小笠原 太一 竹林 佐那 野㟢 祐未 吉川 幸雄 難波 美帆
出版者
学校法人 グロービス経営大学院大学
雑誌
グロービス経営大学院紀要 (ISSN:27584046)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-106, 2023-11-30 (Released:2023-12-05)

日本の国立公園では,法的に管理運営を強制することができない中,数多く存在する「ステークホルダー(所有者,事業者,関係当局,地域等)間の合意形成の難しさ」が共通の課題としてある.本研究では,自然を保全しながら国立公園の管理運営がうまくいっている尾瀬国立公園と複数の国立公園を比較し,ステークホルダーの合意形成の難しさという課題をいかに解決することができるかを明らかにしようとした. 尾瀬国立公園は,福島県,栃木県,群馬県及び新潟県の4県にまたがり,本州最大の高層湿原である尾瀬ヶ原(約760ha)を始めとした大小の湿地群(池塘)であり,日本の国立公園全34公園中19番目の広さを誇る. 調査の結果,尾瀬国立公園では,植生回復事業による湿原面積の回復や湿原保護のための木道敷設など自然の保護と人々の観光利用の促進に,民間企業が多大な貢献をしていることが明らかになった.一方,国立公園ごとに地域性や歴史といった特性の違いがあり,それによって生じる課題やステークホルダーの積極的な関わりに向けての動機付けの方法なども多種多様であるので,国立公園毎に適した体制づくりや運営方法が存在すると考えられる.
著者
久保 元芳 赤荻 冴
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.127-141, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
26

目的:小・中学校におけるWBGTの測定状況とそれに応じた熱中症予防の取組,WBGTの活用の利点や課題等を明らかにすること.方法:横断的実態調査研究として,関東地方A県内で無作為抽出した小・中学校の保健主事を対象に質問紙調査を実施し,小学校65校,中学校64校分を分析した.WBGTの測定状況や場所について,校種等によるクロス集計を行った.自由記述項目のWBGTに応じた対応例,WBGT活用の利点と欠点については,その意味を吟味したカテゴリー化を行った.結果:小・中学校ともに約90%でWBGTを測定しており,校庭・グラウンドや体育館が多い一方,教室,プール等は少なかった.WBGTに応じた対応を行っている小学校は81.5%,中学校は64.1%であり,21°C以上から水分補給や休憩の呼びかけがみられ,WBGTの上昇に伴って対応が多様化し,31°C以上では多くの学校で屋外の運動や活動を中止していた.WBGT活用の利点として,各種教育活動の実施程度について妥当な判断ができたり,児童生徒や教職員の熱中症予防への意識向上が図れたりすること,欠点として,WBGTに応じた対応で教育活動の計画的な実施に支障が出る場合があること,児童生徒の観察が疎かになること等が挙げられた.結論:小・中学校の多くでWBGTが測定,活用されているが,教育活動の計画的な実施との調整など,活用上の課題も明らかとなった.
著者
久保 正秋
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.243-256, 2013 (Released:2013-06-08)
参考文献数
29
被引用文献数
3 2

This study examines the temporality of the experience of sports movements. First, it makes a quantitative comparison of sports based on Nakai's argument, and discusses how qualitative objects of sports movements are transformed into quantitative objects through quantitative comparison. Second, this study considers the objective and quantitative time in sports and argues the relationship between the means and the end. Finally, this study discusses the subjective and qualitative recognition of time in sports and the experience of sports movements as “semantic generation.”The results of this examination were as follows: 1)  Sports are indicated as quantitative concepts such as scores and records. These quantitative aspects of sports are compared quantitatively according to the elements of competition in sports. Sports movements are also measured and analyzed quantitatively based on quantitative comparisons. Even qualitative aspects of sports movements such as kinesthesises of players can be transformed into quantitative data. 2)  The tendency for quantitative transformation reflects the recognition of time in sports. Both objective and quantitative time are important. Time proceed continuously in a straight line from the present to the future. The present time becomes the means to an end (the future). Similarly, sports movements become a means to an end. The results of sports movements (i.e. the future) such as scores, records and winning, or health and socialization, are more important than practice of sports movements (the present). 3)  Differences in time recognition exist in sports. The subjective and qualitative recognition of time is called vertical time. For vertical time, the moment of practicing sport (the present) is essential and is not a means to an end (the future). In the moment of sports movements, physical experience as “semantic generation” arises.This study concludes that the physical experience as “semantic generation” in the moment of sports movements (the present) is the essence of sports. However, this qualitative experience of sports movements is likely to be a means to an end (the future). Because qualitative aspects of sports movements are transformed into quantitative aspects, they are at all times dependent on the element of competition in sports.
著者
小久保 英一郎 井田 茂
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.349-356, 2000-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
16

われわれにもっとも身近な天体,月は実は衛星としては特異なものである.その起源のシナリオとして近年有力視されているのは巨大衝突説である.巨大衝突説では,火星くらいの大きさの天体が原始地球に衝突し,その衝突により形成された原始月円盤から月が形成される.この原始月円盤からの月形成の大規模N体シミュレーションを行い,原始月円盤がどのような時間スケールで,どのように進化するのかを調べた.その結果,円盤の赤道面上で円軌道をもつ1個の大きな月が約1ヵ月かけてロッシュ限界のすぐ外側に形成されることがわかった.また,月の質量は初期円盤の単位質量当たりの角運動量によって決まることもわかった.ここでは明らかになった月形成過程の運動学的なフレームワークを紹介する.
著者
久保 敦士 一柳 保 國立 晃成 岡本 潤 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.514-521, 2022-06-20 (Released:2022-06-30)
参考文献数
19

背景:院外心停止(OHCA)の社会復帰率を改善させるため,わが国の蘇生ガイドラインでは,OHCAの胸骨圧迫率(CCF)80%以上を目指すことが示されている。目的と方法:搬送中のCPRが困難な場所における用手CPRと機械式CPRを比較し,その質を評価する。 消防学校の救急科学生を対象に,OHCA想定実習で実施した。結果:狭隘通路および階段におけるCCF 80%以上の割合は,機械式CPR群では40%(11/28)に達しているのに対し,用手CPR群では14%(4/28)であった。現場活動時間も機械式CPR群は用手CPR群と比べて短かった(p<0.05)。結論:搬送中CPRが困難な場所では,機械式CPRが目標値のCCFおよび現場活動時間の短縮に有用であることが示唆された。
著者
佐々木 陽 久保田 史 高橋 亨 梅津 芳雄 成田 榮一 森 邦夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.316-324, 1997-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

硫化水素型合成温泉水 (湯花の抽出溶液) を用い木材を長時間煮沸処理すると, 蒸留水で処理した場合よりも, 重量の減少が大きく, 空隙率の高い木材が得られた. その時の抽出溶液を液体クロマトグラフで分析した結果, 針葉樹ではアラビノース, キシロースが, 広葉樹ではキシロースが確認され, いずれも合成温泉水処理した溶液で顕著に認められた. 抽出された糖類は木材の非晶部分であるヘミセルロースが加水分解されたもので, 合成温泉水処理によりさらに分解が進んだ結果と考えられる. スギの100時間煮沸処理では, ホロセルロースが蒸留水の場合約18%, 温泉水の場合22%減少し, また, リグニンはこれらの処理において, 見かけ上前者で18%, 後者で20%増加していることから, 熱水処理によるリグニンの分解溶出は認められなかった. 合成温泉水処理により, 水溶性の非晶部分が加水分解されるため, 水に対する木材の膨潤性が改善され, 寸法安定に優れた木材が得られることが分かった.
著者
星野 智 大川 真一郎 今井 保 久保木 謙二 千田 宏司 前田 茂 渡辺 千鶴子 嶋田 裕之 大坪 浩一郎 杉浦 昌也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-135, 1992-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
17

悪性腫瘍の心転移はまれでないが生前診断は困難なことが多い.今回剖検例にて発見された転移性心腫瘍につき臨床病理学的検討を行った.1980年から1987年の連続剖検2,061例のうち肉眼的に転移性心腫瘍の認められた64例を対象とした.年齢は55歳から93歳(平均76.6歳),男39例,女25例であった.全悪性腫瘍は845例であり,心転移率は7.6%であった.原発巣は肺癌34例が最も多かった.心転移率は肺癌,胃癌などが高かったが,消化器癌では低かった.転移部位は心膜81.3%が最も多く,心内膜へ単独に転移した例はなかった.心膜へはリンパ行性転移が多く,心筋へは血行性転移が多かった.特に肺癌は心膜の転移,心房への転移が多い傾向にあった.心単独の転移はまれで55例は他の臓器へ転移が認められ,肺,肝,胸膜,骨に多かった.心電図異常所見は95%にみられたが,転移部位による特異性は認められなかった.しかし心膜転移例で心膜液量増加に伴い低電位差と洞頻脈が高率に出現してきた.悪性腫瘍を有する患者では常に心転移を念頭におき,注意深い臨床観察が必要である.
著者
大久保 洋子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.161-166, 2017 (Released:2022-06-22)
参考文献数
9

2013年12月に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され,和食や食文化などをキーワードに日本人の食に対して人々の関心が高まっている。そして海外での日本料理レストランは特ににぎりずしが躍進していることが伝えられる昨今である。フランスでは料理に昆布を利用したり食材のグローバル化が行われている一方で日本では江戸に関心が集まり,再現料理なども盛んになっており,それらの現象の中で「煎り酒」なる複合調味料が浮上している。本講はその煎り酒について歴史的に遡って製造・利用方法等について解説いただいた。
著者
藤井 純一郎 大久保 順一 緒方 陸 天方 匡純
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.779-785, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
17

ChatGPTをはじめとして,大規模言語モデル (Large Language Model, 以下 LLM) を用いた文章生成モデルの発展が目覚ましい.土木分野においても,LLMを活用した業務効率化が期待されるが,LLMの学習は主にWebで集めた文書を中心としているため,土木分野の専門知識に対しての学習不足が予測され,正確な文章を生成できない懸念がある.そこで,土木分野において正確な文章生成を実現するための基礎的な研究として,本研究ではLLMを土木ドメインに適応することを試みた.正確性の評価手法を提案した上で,LLMの事前学習済み公開モデルと,ファインチューニングによるドメイン適応を行ったモデルで,土木分野に関する文章生成の正確性を評価し,LLMを土木ドメインに適応するための課題について論じた.
著者
崎尾 均 久保 満佐子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.643, 2005 (Released:2005-03-17)

カツラは冷温帯の渓畔林を構成する林冠木である。埼玉県秩父山地の渓畔林においては林冠木の10%を占めて点在しており、林内には稚樹や実生ははほとんどみられない。このカツラの更新機構を解明するために、繁殖戦略を中心に、生活史特性を明らかにした。 渓流に沿って距離1170m、面積4.71haの調査地を設定し、DBH>4cmの毎木調査を行なった。このときに幹の周りに発生している萌芽数も計測した。この調査地内の0.54haのプロットに20個のシードトラップを設置し、1995年から2004年まで10年間種子生産量を測定した。2000年から5年間は調査地内のすべての個体の開花・結実量を双眼鏡による目視で把握した。 10年間の種子生産には豊凶の差はあるものの、毎年大量の種子生産を行なっていた。雌雄の個体とも林冠木は毎年開花し結実していた。発芽サイトは粒子の細かい無機質の土壌か倒木上に限られており、それらの実生も秋には大部分が消失した。カツラの株は多くが周辺に萌芽を発生させており、主幹が枯死した後はこれらの萌芽が成長することによって長期間個体の維持をはかっていた。カツラの立地環境を把握した結果、かなり大きなサイズの礫上に更新していることが判明した。また、カツラの亜高木は、サワグルミが一斉更新した大規模攪乱サイトのパッチの中に位置し、樹齢もサワグルミとほぼ一致した。 以上の結果から、カツラの更新は毎年大量の種子を散布しながら、非常にまれな大規模攪乱地内のセーフサイトで定着し、萌芽によって長期間その場所を占有し続けることで成立していると考えられた。
著者
久保 慶明
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.53-67, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
73

本稿では,地方政治に関わるエリートの地域格差に対する認知,格差是正をめぐる争点態度,それらに応じたネットワークの相互関係を記述する。第一に,現代日本では地域格差があると認知するエリートが多く,その認知は政治参加の機会より結果の格差を感じる人ほど強い。ただし,首長や保守政治家の格差認知は相対的に弱い。第二に,中央の行政官僚に比べて政治家は,国政でも地方でも格差是正に積極的である。ただし,機会格差をめぐる党派的対立と結果格差をめぐる中央地方間の対立が存在する。第三に,エリートの接触パターンは,地域格差全体の是正に消極的な与党ネットワーク,機会格差の是正に積極的な野党ネットワーク,結果格差の是正に積極的な地方ネットワークの3つに整理できる。第四に,格差是正をめぐる争点態度は格差認知に規定される。ただし,結果格差をめぐる争点態度は財政規律の影響を受けている。
著者
水間 久美子 岩部 博子 北久保 佳織 松浦 成志 浅見 暁子 中山 雅博 田川 学 鈴木 浩明 増本 幸二
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-19, 2021 (Released:2021-08-25)
参考文献数
14

【目的】当院では2013年9月より頭頸部がん患者の栄養管理を目的に,病棟担当管理栄養士を配置している.今回,配置前後の対象患者の体重減少率およびエネルギー充足率を比較検討した.【方法】対象は2013年4月1日~2014年3月31日に当院耳鼻咽喉科に14日以上入院した頭頸部がん患者91名(年齢64.6±9.8歳,男性74名,女性17名).病棟担当管理栄養士配置を行っていなかった群(以下,配置前群と略)46名と病棟配置後群(以下,配置後群と略)45名の体重減少率およびエネルギー充足率を比較した.【結果】頭頸部がん患者の入院中の体重減少率は配置前群7.1±4.7%から配置後群4.9±4.7%へと有意に低下した(p=0.029).退院時エネルギー充足率は,配置前群71±30%から配置後群87±27%へと有意に上昇した(p=0.011).【結論】管理栄養士の病棟配置によりエネルギー充足率が高まり,体重減少を抑えることが可能であった.
著者
玉井 勇一 石﨑 順子 大久保 菜穂子
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.74, 2023-10-20 (Released:2023-10-27)
参考文献数
14

【背景】大学生へのBLS教育の機会確保として,オンライン型BLS講習会が有効であると考えられるが,国内の先行研究は見当たらない。【目的】大学生へのオンライン型BLS講習会の教育効果を明らかにした。【対象と方法】49名へオンライン型BLS講習会を行い,受講前,後,1か月後にアンケートを実施した。【結果】胸骨圧迫の速さと構内AED配置場所の2か所以上の認知の正答者が講習会後に有意に増加した。目の前で人が倒れた際にBLSを実施できると回答した者,BLSを行う自信の平均値が講習会後に有意に増加した。【結語】大学生へのオンライン型BLS講習会はBLSの知識,BLSへの意識についての教育効果が認められた。
著者
久保 和也 佐藤 博之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.717-731_3, 1984-10-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
45
被引用文献数
3 1
著者
柴田 浩気 田中 晴之 大谷 惇 久保 政之 長谷川 淳 天野 逸人
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1519-1521, 2021 (Released:2021-11-03)
参考文献数
5

Because the coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic is still rampant, vaccination is being promoted worldwide. However, the safety of various COVID-19 vaccines remains poorly understood. We herein report the case of a 37-year-old woman who experienced thrombocytopenia following BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccination. The patient presented with purpura on the extremities 10 days after the first vaccination. She had marked thrombocytopenia and no thrombosis. Thrombocytopenia resolved spontaneously. Given the possibility of occurrence of post-vaccination thrombocytopenia, vaccinated persons should be instructed to consult a medical institution if they experience bleeding symptoms.
著者
高山 好弘 安田 康晴 豊国 義樹 久保田 勝明 米川 力 山下 圭輔 鈴川 正之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.88-90, 2013-04-30 (Released:2022-11-18)
参考文献数
15

背景:バイスタンダーCPR(BCPR)の実施率は年々増加しているが,その質と生存率については評価されていない。目的:BCPR(胸骨圧迫)の質と生存率について検討すること。対象:栃木県小山・芳賀地域MC協議会管内で発生した救急隊員目撃を除く心肺停止症例440件。方法:救急隊が傷病者接触時にBCPRの胸骨圧迫について,姿勢・深さ・テンポが適切に行われていたことが確認できた症例を有効群,不適切症例を無効群とし,1か月生存率を比較した。結果:BCPRの実施率は227/440件(51.6%)で,有効群は85/227件(37.4%)であった。1か月生存率は有効群7/85件(8.2%),無効群2/127件(1.6%)と有効群が有意に高かった(p<0.05)。結論:質の高いBCPR(胸骨圧迫)の実施率は50%未満であった。質の高い胸骨圧迫を行うことにより生存率が向上する可能性があることから,BCPRの質について正しく評価し,教育することが必要である。
著者
大須賀 崇裕 宮西 浩嗣 伊藤 亮 田中 信悟 久保 智洋 濱口 孝太 大沼 啓之 村瀬 和幸 高田 弘一 山本 彬広 眞部 建郎 久原 真 加藤 淳二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.559-566, 2023-11-01 (Released:2023-11-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

68歳,男性.右背部痛を主訴に近医受診,肝腫瘤を指摘され当院紹介.肝細胞癌,多発リンパ節・骨転移と診断し,アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(ATZ+BV)を開始した.投与開始14日目に辻褄の合わない言動と傾眠,16日目にJCS10の意識障害を認めた.血中アンモニア値,頭部MRIに異常なく,髄液検査では僅かな細胞数上昇と蛋白細胞解離を認めた.自己免疫性脳炎を疑い,同日よりステロイドパルス療法を開始した.意識障害は著明に改善し,内服ステロイドに移行後,38日目に後遺症なく自宅退院となった.脳炎の再燃はなく,ATZ+BV開始60日目に2次治療としてレンバチニブを導入した.肝細胞癌に対するATZ+BV後の自己免疫性脳炎は,自験例を含め4例のみ報告されており,初発症状や意識障害出現時期がほぼ一致していた.早期の診断とステロイドパルス療法施行により2次治療へ移行できた症例であると考えられた.
著者
中沢 宣明 明尾 誠 佐藤 真士 大久保 悌二
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.348-352, 1985 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

蒸発法による海水淡水化において, 原料海水がアンモニアで汚染されている場合, 生成淡水中にアンモニアの一部が混入し, その水質を損う. 混入の割合は気液平衡によって決まるが, これには水相におけるアンモニアの化学平衡を考慮しなければならない.著者らは, この化学平衡を考慮したアンモニア-塩水系の気液平衡式を導いた. そして, この式を用いてアンモニアの挙動を予測するために, 海水淡水化蒸発装置の操作条件にみあう温度, 塩分濃度に対して, pHを変えて気液平衡値を求め, 考察を加えた.その結果, 化学平衡を考慮することにより, 温度, pH, 塩分濃度の気液平衡に対する影響が明らかになり, この式を用いれば, 海水淡水化蒸発装置内でのアンモニアの挙動を正確に知ることができることがわかった. また, この結果から, アンモニアと同様に, 水相でイオンや錯体を生成する物質の気液平衡を求める場合には, 化学平衡を考慮しなければならないこと, その場合式 (12) をその物質にみあって修正するだけで, この式はそのまま適用できることを明らかにした.