著者
向山 武彦 平川 直弘 高橋 博 滝塚 貴和 木村 逸郎 小川 徹 小寺 正俊 安俊 弘 若林 利男 原田 秀郎 井上 正 高木 直行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.159-193, 1995-03-30 (Released:2010-03-08)
参考文献数
140
被引用文献数
2

原子力開発の当初から高レベル廃棄物は重要問題の1つであったが,原子力利用の進展に伴いその重要性はますます大きく厳しいものとなってきている。現在,地層処分が多くの国で既定の処分方法となっているが,より優れた方法を目指して消滅処理の研究が進んでいる。特に最近,この方面の研究が盛んになり,しかも日本がその重要な牽引車の役割を担っている。本「特集」では,このような事情に鑑み,消滅処理技術の解説,関連技術の現状,研究開発の経緯,オメガ計画,国際動向,国内における技術開発の現状,地層処分からみた位置付けについて,一般の読者を対象に解説して頂いた。
著者
井上 正純 竹内 裕也 松田 祐子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食道扁平上皮癌切除例における癌組織中のIL-8とCXCR2の発現を検討したところ、IL-8/CXCR2共発現例で有意に術後無再発生存割合及び全生存割合が不良だったことからIL-8/CXCR2シグナルが食道扁平上皮癌細胞動態に関与していることが示唆された。食道扁平上皮癌細胞株を用いた実験ではin vitroにおいてIL-8/CXCR2シグナルを外因的・内因的に刺激すると細胞増殖は亢進し、外因的・内因的に抑制すると細胞増殖が抑制された。ヌードマウスを用いたin vivo実験でも同様の結果を得たことから、IL-8/CXCR2シグナル伝達が食道扁平上皮癌の細胞増殖に関与していることが示唆された。
著者
中澤 愛子 京 哲 中西 一吉 小川 晴幾 笹川 寿之 清水 廣 田中 善章 井上 正樹 上田 外幸 谷澤 修
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.467-472, 1991 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

子宮頸部におけるHuman Papillomavirus 16型, 18型の感染を子宮頸部擦過細胞から得たDNAを用いてPolymerase Chain Reaction (PCR) 法により検出した.さらにHPV感染と組織診, 細胞診との関係を比較検討した.Dot blot法と比較してPCR法は検出感度に優れていた.PCR法にてHPV16型または18型を検出した症例数は, 正常69例中11例, 頸部コンジローマ3例中0例, CIN 67例中17例, 浸潤癌30例中11例であった.Koilocyte, binucleated cell, dyskeratocyteなどのHPV感染細胞所見を検討できた59例中, PCR法にてHPV 16型または18型が陽性となったのは19例, 陰性であったのは40例であった.HPV 16型または18型陽性の19例中, koilocyteは5例 (26%), binucleated cellは4例 (21%), dyskeratocyteは11例 (58%) で, HPV陰性例40例中では, それぞれ1例 (3%), 10例 (25%), 15例 (38%) に認めた.しかし, いずれの所見も特異的でなく, 細胞診のみではHPV感染を検出するのは困難であると思われた.また, 細胞診, 組織診にて正常の症例中, 約16%にHPV DNAを認め, これらの症例の今後のfollow upが重要であると思われた.
著者
三井 誠 大澤 裕 酒巻 匡 長沼 範良 井上 正仁 松尾 浩也
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は、犯罪の捜査および立証の両面における科学技術の利用の実態を明らかにするとともに、比較法的・理論的分析を踏まえて、その適正な限界や条件を検討し、刑事訴訟法上の解釈論的・立法論的提言をおこなおうとするものである。3年間の研究期間を終了し、本年度においては、以下のような成果を得ることができた。1.2回の研究会を開催し、研究分担者が検討中のテーマならびに既に論文を執筆ないし公刊したテーマにつき、報告を行い、全員で討議した。 従前の研究状況を総賢して、刑事手続法上の問題点を抽出して検討を加えた個別テーマとして、次のものがある。「毛髪鑑定とその証拠能力」「強制的な体液の採取に附随する刑事手続法上の問題点」「筆跡鑑定とその証拠能力」「検証としての写真撮影とこれに対する不服申立の可否」「情報の押収」2.内外の関係文献・識料の収集・整理の作業を継続した。内外ともに関係資料・論文の増加が著しいため、文献目録の追補・改訂作業を開始し、進行中である。3.各研究分担者が、担当テーマにつき研究論文を執筆ないし執筆準備作業中である。主要なテーマについては、既に公刊されたものも含め、平成5年度中に発表(大学紀要・法律雑誌等)が完了する予定である。4.研究進行中の最大の問題は、進歩の著しい科学的捜査・立証手段それじたいの正確な理解を得ることに相当の時間を必要とする点であった(例えばDNAによる個人識別法の原理と手法)。現在までの具体的成果は、主として個別的な捜査・立証手段の問題点の分析となっているが、今後は、それらに共通する法律上の問題点の抽出と統一的な視角からの分伏が課題となると思われる。
著者
島谷 智彦 井上 正規
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.979-988, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
69

胃食道逆流症(GERD)による睡眠障害の治療には,強力な夜間の胃酸分泌抑制が必要である.プロトンポンプ阻害薬(PPI)はヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)より強力に胃酸分泌を抑制することから,ガイドラインでも第一選択薬として推奨されている.しかしながら,常用量のPPIの1日1回投与では夜間の胃酸分泌抑制が十分でない場合があり,PPIの投与のタイミングを変更する,PPIの種類や投与量を変更する,H2RAや消化管運動機能改善薬を併用する,PPIを1日2回投与するなどの工夫が必要となる.食後3時間以内に就寝しない,就寝時に上半身を30°挙上させる,肥満の解消などの生活習慣の改善も並行して行う.
著者
石井 俊史 若杉 正清 長沼 司 温井 郁夫 井口 楓 井上 正晴 神宮寺 禎巳
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.461-465, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
10

症例は89歳男性.54歳頃に2型糖尿病と診断され,レパグリニド1.5 mg/日,テネリグリプチン20 mg/日,ボグリボース0.6 mg/日の内服を行っていた.閉塞性動脈硬化症に対しクロピドグレル75 mg/日の内服開始翌日の夕食後に低血糖昏睡で入院となった.経口血糖降下薬はすべて中止したが,第3病日まで低血糖が遷延した.退院後,再度併用を開始した2日後の夕食後に再び同様の重症低血糖で入院し,第2病日まで低血糖が遷延した.レパグリニドは短時間作用型のインスリン分泌促進薬であり,単独では遷延性低血糖を来しにくい.Tornioらは,クロピドグレルによるCYP2C8の阻害がレパグリニド血中濃度を上げると報告したが,本症例はこの機序による低血糖と推測された.両薬剤は大血管障害を有する糖尿病患者において併用されることも多く,併用の際には相互作用による低血糖に十分注意する必要がある.
著者
佐藤 和則 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.356-359, 2018-07-20 (Released:2019-07-01)
参考文献数
5

加圧を伴わないサリチル酸の合成(コルベ法)の実験教材化を検討した。ナトリウムメトキシドを塩基としてセライト中でナトリウムフェノキシドを調製することで,中和における水の生成を回避しながら二酸化炭素との反応を円滑に進行させた。またセライト中でサリチル酸を遊離させて昇華することで,サリチル酸と残留フェノールとを分離した。得られたサリチル酸は,塩化鉄(Ⅲ)水溶液および炭酸水素ナトリウム水溶液との反応で検出した。
著者
冨田 友貴 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.132-135, 2016-03-20 (Released:2017-06-16)

現行の高等学校「化学」の教科書におけるキサントプロテイン反応に関する記述には,本反応が観察されるタンパク質やアミノ酸の構造,および実験条件の記述に相違がある。今回我々は,芳香族アミノ酸を基質として,濃硝酸および二分の一の濃度に希釈した硝酸水溶液によるキサントプロテイン反応を行い,ニトロ化の進行について調べた。また側鎖に酸性の官能基をもたないフェニルアラニンが,ニトロ化された後に塩基性水溶液中において色調の変化を示す理由を調査した。
著者
川上 裕司 本堂 朋子 米田 麻子 庄子 健一 清水 一郎 井上 正
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.135-143, 2004-12-15
参考文献数
22
被引用文献数
2

2000年8月~9月に,東京都所在の一般住宅6軒と病院1軒を対象として,フェロモントラップを使ってタバコシバンムシを捕獲した.捕獲した個体から2つの方法で細菌と酵母菌を分離した.一方の個体群は1頭ずつ解剖して消化管を取り出し,滅菌チユーブに移した.もう一方の個体群は1頭ずつ翅を外した腹部のみを滅菌チユーブに移した.検体を入れた滅菌チューブに1mlのリン酸緩衝生理食塩水を加え,タッチミキサーを使って振とうした.この洗浄液を6種類の培地を用いて,好気性または嫌気性培養して細菌と酵母菌を分離した.分離された細菌と酵母菌からDNAを抽出した.そして,SSUrDNAの塩基配列を調べることによって細菌と酵母菌の同定を行った.この結果,14種29株を同定した.この内訳は,グラム陽性菌8種20株,グラム陰性菌4種7株,酵母菌2種2株であった.細菌は7属が分離された.この内訳は,Bacillus cereusを含むBacillus属が4種,Enterobacter agglomeransを含むEnterobacter属が3種で,他の5属は1種ずつだった。病院で採集した個体から抗生物質耐性菌として知られているEnterococcus faecalisが分離されたことは注目すべき結果だった.また,酵母菌はCandida kruseiとRhodotorula rubraであった。
著者
佐々木 実 根岸 寛 井上 正
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究では,申請者らの研究室で開発したパルスレーザー光を用いた過渡熱起電力効果(TTE)測定法の一層の発展を目指し,試料に静電場や磁場を印加することにより,過渡熱磁気効果,過渡ホール効果測定などを総合した新しい動的測定法として伝導キャリア分光装置を開発し,これを用いて高温超伝導体や種々のマルチ伝導キャリア系の伝導機構を解明する。本年度に以下のことを明らかにした。1.分光装置の改良を行うため,パルスレーザーとして波長可変(690-1,320nm)かつ繰返し発振可能な,Nd : YAGレーザーを励起光とするTi:サファイア・フォレステライト・レーザー光源,光学系,クライオスタット,検出系・制御系などを整備した。この測定系を用いて,現在テスト試料としてGaAs結晶のTTE測定を行い,波長を可変することによる興味ある新しい情報が得られつつある。2.1.nsまでの高速微弱信号を検出するためのデジタルオシロスコープ(購入)を導入して検出系の改良を行うとともに,ビームスプリッターを用いてレーザー強度を従来1/10以下に下げた。これらの改良により,p型GaAs結晶のTTE信号の数ns-数10nsにわたる高速過程が精度よく測定可能となった。3.最近注目されている種々の分子性導体のうち,DMe-DCNQI分子のシアノ基が銅金属イオンと配位結合して架橋したDCNQI-Cu錯体について,広い温度範囲にわたりTTE測定を行った結果,いくつかの緩和過程が観測され,フェルミ面等に関する興味ある情報が得られつつある。ただし,このTTE電圧は極めて微弱なため,デジタル・ストレージコープで200-500回積算操作を行った。4.更に,ターボ分子ポンプを用いた現有の高真空装置に電子銃を組込んだ電子ビーム蒸着装置を改良・整備し,現在これを用いてGaAsの基板上にテスト試料としてモリブデン酸化物の蒸着実験を試みている。
著者
平塚 乃梨 渡邉 修 井上 正雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2048-A3P2048, 2009

【はじめに】従来の脳血流評価にはfMRIやPETが利用されてきたが,近年,低拘束性,安全性が高い,身体活動の制限が少ない,頻回の計測が可能な機器として,近赤外光分光法(near infra-red spectroscopy :NIRS)が注目されている.本研究では習熟度の異なる3名の被験者が100マス計算を行っている際の脳血流増加部位の相違について,NIRSを用いて前頭前野および頭頂側頭葉の血流変化の比較を行った.<BR>【対象と方法】対象は100マス計算に熟練した健常な右利きの小学生,100マス計算を練習している左利きの小学生,100マス計算未経験の右利き成人男性それぞれ1名とした.測定には近赤外光イメージング装置NIRstation OMM-3000シリーズ(島津製作所製)を用いた.血流測定部位は,国際10-20法に基づき決定し,前頭部測定のために21箇所,頭頂側頭部測定のため40箇所を測定した.実験は,始めに対象を閉眼・安静とし,NIRS信号が定常状態になった時点から15秒間の脳血流を測定した(前レスト).次に,100マス計算を30秒間実施した際の脳血流を測定した(タスク).その後,再度15秒間の閉眼・安静時の脳血流を測定した(後レスト).上記の行程を1セットとし,連続して2セット実施した.実験には小学生が日常学校にて使用しているパソコンソフトを用い,数字の打ち込みは利き手にてテンキーを,非利き手にてenterキーを使用した.なお,実験は説明と同意を得て実施し,倫理的配慮に基づきデータを取り扱った.<BR>【結果と考察】100マス計算施行中の脳血流の増加は,未経験成人では左前頭前野が,練習している小学生は両側前頭前野が,一方,熟練した小学生では前頭前野での血流の増加はあまりみられず,頭頂側頭葉(右側優位)で血流の増加を見た.以上より,未経験成人における左前頭前野の血流増加は,計算や数字などの操作によるワーキングメモリの負荷が主因と考えられた.一方,練習している小学生では,両側前頭前野での血流が著明に増加したが,パソコン上での100マス計算の習熟過程において,数字や計算を空間的に捉えていることの反映ではないかと考えられた.さらに,熟練した小学生では両側前頭前野の血流増加はほとんどみられず,むしろ頭頂側頭葉(右側優位)で血流増加をみた.これは,学習の初期過程における前頭前野の役割および習熟による頭頂連合野の役割(習熟動作の固定)を示唆するのではないか推察された.<BR>【まとめ】100マス計算の習熟度の異なる3名について,100マス計算施行中の脳血流変化をNIRSを用いて比較した.その結果,新規学習においては前頭前野が活動し,習熟に伴い活動は,頭頂側頭葉へとシフトしていくことが示唆された.しかし本推論は,3例のみの比較に留まるので,今後例数を増やしてさらに検討をしていく必要がある.
著者
薬師寺 克行 井上 正也 王 雪萍
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1993年の自民党政権の下野から22年が経過し、「55年体制」末期の日本政治も漸く歴史研究の対象に入りつつある。しかし、同時代を政治史的に考察する上には未だに分析上の課題を抱えている。第一は、信頼できる一次史料の不足である。第二に、政界再編に関するこれらの二次文献の多くも、自民党経世会を中心とした記述に偏重している点である。ゆえに、同時代に自民党の派閥政治を担っていた安倍派清和会や宮沢派宏池会の派閥の実態については殆ど解明されていない。とりわけ、安倍晋太郎から三塚博へと継承された清和会は、派内に新党さきがけを率いた武村正義、石原慎太郎や党内「右派」を多く擁していた亀井グループ、小泉純一郎といった政界再編後に重要な役割を示す多くの人材が所属しており、清和会内部に存在した政治改革構想や派閥観を検証することなしに、90年代前半の政界再編の描くことには大きな限界があろう。本研究では、研究代表者が政治部の清和会担当記者であった1989年から94年までの記録を活用した。同記録には安倍晋太郎、安倍派幹部であった三塚博や塩川正十郎、小泉純一郎、武村正義の肉声が残されており、55年体制末期から政界再編期にかけての清和会内部の政治改革に対する議論や、政界再編に対する見通しなどをうかがい知ることができる。本研究は、ジャーナリストの経験を積んだ研究代表者と、戦後政治外交史を専門とする研究分担者(井上)と共同作業で、取材メモの本格的な調査分析を実施している。この作業とは別に研究代表者の薬師寺は、村山富市元首相に対するインタビューと資料の再チェックをしたうえで、単行本として2012年に出版された「村山富市回顧録」(岩波書店)の解説部分など加筆修正したうえで、同書を文庫本化し「岩波現代文庫」から出版した。