著者
金田 吉弘 小野寺 拓也 坂下 将 高階 史章 佐藤 孝 伊藤 慶輝 保田 謙太郎
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.681-686, 2012-12-05

我が国の稲作において,代かきは「均平」,「田植え」,「活着」,「肥料混和」,「水もち」,「除草」などのために,古くから不可欠な作業とされてきた。しかし,近年の機械化移植栽培では移植精度が向上したことから「田植え」や「活着」に対する代かきの意義は薄れている。さらに,代かきは土壌を単粒化し,透水性の低下や土壌の還元を促進させることから水稲根の活力維持を阻害する場合があるとされている(熊野ら,1985)。特に,東北の日本海側に広く分布する重粘土水田では,代かきにより作土直下に不透水性の土層が発達し,稲作期間の透水性が低下しやすい。また,近年は機械収穫後の稲わらを春にすき込む事例が多くなり,排水不良水田では,稲わらの分解に伴い土壌は強還元になりやすく根腐れを生じやすい。
著者
伊藤 伸泰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.478-487, 2012
参考文献数
61

物理学が無限大の代名詞として扱ってきたアボガドロ数に,計算機の発達により手が届きはじめている.1秒間に1京演算以上を実行するという10PFLOPS以上の性能を持つ計算機によってである.こうした「アボガドロ級」計算機を活用すれば,ナノスケールからマクロスケールまでをこれまで以上にしっかりとつなぐことができると期待される.比較的簡単な分子模型を多数集めた系の計算機シミュレーションによる研究の結果,熱平衡状態および線形非平衡現象の実現と解析は軌道にのり,さらに1,000^3個程度の系を念頭に非線形非平衡現象へと進んでいる.非線形非平衡状態を解明し飼い慣らした次に期待されているのは,生物のような自律的に機能するシステムをナノスケールの計算で得られた知見に基づいて解明し自在に作り出す技術を確立することである.そのためにはアボガドロ級の計算機で実現する10,000^3個程度の系のシミュレーションが強力な手段となる.この可能性を検討する「アボガドロ数への挑戦」が,現在,進行中である.
著者
伊藤 光雄
出版者
島根大学
雑誌
経済科学論集 (ISSN:03877310)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.39-61, 1997-03-31

はじめに13; アメリカの銀行業は、金融自由化の過程で1980年代を通じて大きな構造変化を遂げるとともに、銀行経営においては商用不動産融資をはじめとするハイリスク・ハイリターン部面への融資に傾倒し、1989年、1990年の「金融不況」において多大な不良債権を発生させ著しい苦境に陥った1)。しかし、1991年以降のァメリカ経済の復調とそれに続く好景気を背景に、米銀は不良資産の整理といわゆる「リストラクチャリング」を断行して復活を遂げ、以後新たな段階の本稿は、この米銀の復活過程を、米銀の収益動向ならびに資産負債構成の変化を分析することで、その内実を明らかにすることを課題としている。
著者
大谷 和大 岡田 涼 中谷 素之 伊藤 崇達
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.477-491, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
48
被引用文献数
11

本研究は, 学級で強調される社会的な目標である, 「学級の社会的目標構造」に焦点をあて, 学級の社会的目標構造が, 児童の学習における動機づけに関連するプロセスを検討することを目的とした。研究1では, 小学5, 6年生, 289名を対象に, 向社会的目標構造と規範遵守目標構造から構成される学級の社会的目標構造尺度を作成することを目的とした。その結果, 本研究で作成された尺度は, 一定の信頼性を有し, 既存の学級環境を測定する尺度と概ね予想される関連を示したことから, 妥当性の一部を有すると考えられた。研究2では, 小学校23校(117学級)に所属する小学5, 6年生合計3,609名を対象に, 学級レベルと児童レベル双方において, 学習動機づけに関連するプロセスを検討した。その結果, 両レベルにおいて, 向社会的目標構造は相互学習を通じ内発的動機づけおよび, 自己効力感と関連することが示された。一方, 規範遵守目標構造は児童レベルにおいてのみ, 有意な媒介効果を示したものの, その値自体は小さなものであった。本研究の研究・教育実践上の意義について論じた。
著者
五十嵐 裕美 伊藤 博 一林 亮 坪田 貴也 吉原 克則 小泉 雅之 佐藤 秀之 山崎 純一 池田 隆徳
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.S2_5-S2_10, 2012

症例は60歳代の男性, 未治療の高血圧の既往があり, 国内線の飛行機内で心肺停止となった.客室乗務員が自動体外式除細動器(AED)を装着し1回作動後に心拍が再開し, 羽田着陸後, 当センターに緊急搬送された.AEDの記録では心室細動(VF)を呈していた.JCSII-10, GCS E4V2M4, 瞳孔3mm大で左右差なく, 血圧212/mmHg, 脈拍111/分であった.心電図は洞調律で, V<sub>4~6</sub>誘導でstrain T波が認められた.脳保護目的で低体温療法が3日間施行された.復温後に意識状態は回復し, 神経学的後遺症は認められなかった.ACh負荷冠動脈造影で4-AVが完全閉塞となり, 冠攣縮性狭心症と診断された.心臓電気生理学的検査(EPS)でVFが誘発されたこともあり, 植込み型除細動器(ICD)が植え込まれ退院となった.2010年1月より当センターは羽田空港の航空会社と救急医療連絡会を行っている.同年10月に新国際線旅客ターミナルが開設し, 旅客数の増加が見込まれる.迅速な応急処置と救急処置で救急の輪が成立し, 社会復帰が可能となった症例であったので報告する.
著者
齊藤 一幸 吉村 博幸 伊藤 公一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.410-420, 2004-03-01
被引用文献数
2

がんの温熱療法(ハイパサーミア)の一形態であるマイクロ波組織内加温法と放射線療法の一つである組織内照射療法を組み合わせることにより,がん細胞に対して致死効果の高い治療が可能であることが知られている.現在,組織内照射療法単独では多数の治療が行われており,その治療手技はほぼ確立されている.しかしながら,効果的なマイクロ波組織内加温を実現するためには,アレーアプリケータの構造及び給電方法等に関して検討が必要である.そこで本論文では,既存の治療装置(マイクロ波発生器)を活用した臨床応用を念頭におき,比較的大きな腫瘍の均一加温を目指して,マイクロ波組織内加温用アレーアプリケータの給電システムとして,コヒーレント給電システム及びコヒーレント給電システムとインコヒーレント給電システムを組み合わせた給電システム(提案システム)の二つの給電システムを取り上げ,提案システムを用いて腫瘍部分を確実に加温するためのアンテナ素子への入力電力の条件について検討を行った.
著者
石坂 正大 石川 良太 伊藤 詩峰 遠藤 沙紀 君島 未紗 鯉沼 夢 佐藤 克己 関 健吾 田野 勝也 千明 龍太郎 淵田 悟
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.581-584, 2016

〔目的〕コンプレッションウェアの着用が酸素摂取量および心拍数に及ぼす影響を明らかにする.〔対象と方法〕対象は健常男性26名とした.対象者に対しトレッドミルでの心肺運動負荷試験を行い,裸とコンプレッションウェア着用の2つの着衣条件で酸素摂取量,心拍数,呼吸交換比,呼吸数を測定した.〔結果〕心肺運動負荷試験の運動前,中,後の心拍数(回/分)はそれぞれ,裸で84.4±11.8,156.9±12.3,110.2±22.1,着用時で81.2±11.9,151.7±14.7,102.0±10.4となり,後者の着衣条件で有意に低い値を示した.酸素摂取量,呼吸交換比,呼吸数では着衣条件間の有意な差がみられなかった.〔結語〕コンプレッションウェアの着用は酸素摂取量には影響しないが,運動時の心拍数を低下させる. <br>
著者
伊藤 祥江 髙木 聖 小川 優喜 瀧野 皓哉 早藤 亮兵 川出 佳代子 今村 隼 稲垣 潤一 林 由布子 中村 優希 加藤 陽子 森 紀康 鈴木 重行 今村 康宏
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI1176-BbPI1176, 2011

【目的】2000年に回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病棟)制度が創設され、医療施設の機能分化が進められた。急性期病院における在院日数は短縮され、長期の入院を必要とする脳卒中片麻痺患者はリハ病棟を有する病院への転院を余儀なくされる。脳卒中ガイドラインにおいては早期リハを積極的に行うことが強く勧められており、その内容には下肢装具を用いての早期歩行訓練も含まれている。しかし、装具処方から完成までには通常1~2週間を要することなどから、急性期病院における片麻痺患者に対する積極的な早期装具処方は容易ではなく、装具適応患者に対する装具処方のほとんどが、リハ病棟転院後に行われているのが実情であろう。その結果、歩行能力の改善が遅れ、入院期間が長くなっていることが推測される。当院は人口約14万7千人の医療圏における中核病院で、平成18年にリハ病棟を開設した。現在は当院一般病棟からの転棟患者ならびに近隣の救急病院からの転院患者も広く受け入れている。今回われわれは、当院リハ病棟に入院した脳卒中片麻痺患者において、下肢装具作製時期が発症から退院までの日数におよぼす影響について検討したので若干の考察とともに報告する。<BR>【方法】平成18年12月から平成22年7月までの間に当院リハ病棟に入院し、理学療法を施行した初回発症の脳卒中片麻痺患者のうち、下肢装具を作製した32例を対象とした。内訳は脳梗塞25例、脳出血7例、男性15例、女性17例、右麻痺13例、左麻痺19例、平均年齢69.5±13.3歳であった。当院の一般病棟からリハ病棟に転棟した群(以下、A群)と他院での急性期治療後に当院リハ病棟に入院した群(以下、B群)の2群に分けた。これら2群について(1)作製した装具の内訳ならびに(2)発症から当院リハ病棟退院までの日数について調査した。また、(2)に含まれる1)発症から装具採型までの日数、2)発症からリハ病棟入院までの日数、3)リハ病棟入院から装具採型までの日数、4)リハ病棟入院から退院までの日数の各項目についても合わせて調査した。2群間の比較は対応のないt検定を用いて行い、5%未満を有意な差と判断した。<BR>【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言をもとに実施し、収集した個人情報は当院の個人情報保護方針をもとに取り扱っている。<BR>【結果】(1)A群は長下肢装具(以下、KAFO)3例、金属支柱付短下肢装具(以下、支柱AFO)13例、プラスチック製短下肢装具(以下、P-AFO)1例であった。B群はKAFO2例、支柱AFO6例、P-AFO7例であった。(2)A群で137.2±32.5日、B群では166.8±30.2日でA群の方が有意に短かった。(2)-1)A群で22.5±9.8日、B群では48.2±12.4日でA群の方が有意に短かった。(2)-2)A群で21.9±7.3日、B群では33.8±11.3日でA群の方が有意に短かった。(2)-3)A群で0.65±9.8日、B群では14.5±7.1日でA群の方が有意に短かった。(2)-4)A群で115.2±31.5日、B群では131.5±32.3日でA群の方が短かったが、有意差はみられなかった。<BR>【考察】本研究では、装具作製時期ならびにリハ病棟入院時期に着目し、発症からリハ病棟退院までを4つの期間に分けて入院日数との関連について検討した。その結果、リハ病棟入院日数においては両群間に差はなかったが、A群においてはリハ病棟転棟とほぼ同時期に装具の採型がされており、発症からの日数も有意に短かった。このことから、早期の装具処方によりリハ病棟転棟後もリハが途絶えることなく継続することが可能で、早期に歩行が獲得できたものと思われる。その結果、発症から退院までの期間を短縮したと考えられる。一方、B群においてはリハ病棟入院時期のみならず装具作製時期も有意に遅かった。リハ病棟入院日数にはA群と差がなかったことから、作製時期が発症から退院までの日数に影響をおよぼしたものと考えられる。急性期病院においては在院日数の短縮、作製途中での転院の可能性、また義肢装具士の来院頻度など積極的な装具作製を妨げる多くの要因があることが推測される。近年、急性期病院において装具が作製されることは少なく、リハ病院での作製件数が増加傾向にあること、また、リハ病棟が急性期にシフトしてきていることが報告されている。B群では当院リハ病棟転院から装具採型まで約2週間要していたことから、今後は転院後早期から装具処方について検討する必要があろう。2007年から連携パスが運用され始めている。それが単なる情報提供に留まらず、片麻痺患者に対する早期の装具処方、スムーズなリハの継続、そして早期の在宅復帰につながるよう連携することが必要であろう。<BR>【理学療法学研究としての意義】脳卒中発症後の早期装具作製は早期歩行獲得、在院日数の短縮に結びつく。それを推進するための地域連携について考えるものである。
著者
伊藤 拓
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.15-26, 2011-10-31

ミラクル・クエスチョンはソリューション・フォーカスト・アプローチで用いられる有益な技法である.しかし,この技法に好反応を示さないクライエントがいる.本研究ではミラクル・クエスチョンの用い方に関する研究を展望し,ミラクル・クエスチョンを効果的に用いるための要点について考察した.ミラクル・クエスチョンを効果的に用いるためには,SFAの哲学の十分な理解と高度な面接スキルに基づいて,面接の過程において様々な取り組みを総合的に行わなければならないことが,本展望で示唆された.行うべきことには,特に,ミラクル・クエスチョンを尋ねる前に,それがクライエントに受け入れられやすくなるように慎重に準備することや,ミラクル・クエスチョンに対するクライエントの全ての応答をコンプリメントすることが含まれる.
著者
千葉 宏毅 伊藤 道哉 池崎 澄江 伊藤 弘人 日本医療 ・ 病院管理学会 学術情報委員会
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.227-237, 2016 (Released:2016-12-10)
参考文献数
13

目的:日本医療・病院管理学会の学術用語選定の基礎資料とするために,過去10年間に用いられた学術的用語と付帯情報を客観的に分析し,傾向を把握することが本研究の目的である。方法:学会誌で2005年1月から2014年12月に公開された学術用語を計量テキスト分析し,種別,年別に用語の出現数を比較した。またクラスター化によって得た用語のグループ(分野)を多重対応分析した。結果:看護,システム,管理の3語は,複数の指定順にまたがる中心的なキーワードであった。2010-14年ではDPCやレセプトのビッグデータの活用,在宅医療や訪問看護,分析に基づく経営,外国人の受療対応に関連する用語が2005-09年より多く出現する傾向があった。考察:種別および年別によって使用される学術用語の変化や特徴は,わが国の情勢にも関連すると推測できることから,新たな用語選定や分類,解説の必要性を示唆するものである。
著者
伊藤 一成 福崎 智司 産本 弘之 三宅 剛史
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.687-693, 2011-10 (Released:2012-12-06)

我々は,生もとの小仕込み試験を行い, そこに含まれるオリゴペプチド成分について速醸もとと比較し解析を行った。その結果,生もとでは苦味ペプチドを含む全オリゴペプチドが速やかに減少するのに対し,速醸もとでは多くの苦味ペプチドが残存することを見いだした。こうしたオリゴペプチド成分の動向には酵母は関与しておらず,完成時の苦味ペプチド含量が麹歩合による顕著な影響を受けたことから,麹由来の酵素による苦味ペプチドの分解様式が生もとと速醸もとで異なっていると思われた。
著者
伊藤 壽啓 喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

インフルエンザウイルスは人の他に多くの鳥類および哺乳動物に感染する。ニワトリ、ウマ、ブタ、ミンク、アザラシ等に致死的な流行を起こし、その被害は甚大である。最近、これらのインフルエンザウイルスの遺伝子はすべて野生水禽のウイルスに由来することが明らかとなった。また、渡りガモのウイルスが中国南部でアヒルを介してブタに伝播し、ブタの呼吸器でヒトのウイルスと遺伝子再集合体を形成することによってヒトに導入されたという新型ウイルスの出現機構が明らかにされた。しかし、ウイルスが異なる動物種間を伝播するメカニズムが解明されていない。我々はインフルエンザウイルスの宿主域とレセプター特異性が関連する成績を得た。本研究はレセプター特異性を分子レベルで解析することにより、インフルエンザウイルスの異動物種間伝播のメカニズムを明らかにすることを目的として企画された。まずインフルエンザウイルスの代表的な宿主であるカモ、ウマおよびブタの標的細胞表面のレセプターの糖鎖構造をシアル酸の結合様式の違いを認識するレクチンを用いて解析した。これにより、ウイルスのレセプター結合特異性と宿主細胞表面の糖鎖構造が宿主域を決定する重要な要因であることを証明した。一方、シアル酸の分子種の違い(Neu5Ac,Neu5Gc等)を認識する特異抗体を用いて、N-グリコリル型シアル酸(Neu5Gc)の分布がカモのウイルスの腸管での増殖部位と相関する成績を得た。さらに、このNeu5Gcを認識するヒト由来ウイルス変異株のヘマグルチニンを持ち、他の遺伝子は全てカモのウイルス由来である遺伝子再集合体を得た。このウイルスがカモの腸管で増殖するか否かを現在検討中である。これによりインフルエンザウイルスのカモの腸管における増殖に関わる因子が明らかになるであろう。また、この研究過程で各種動物由来赤血球を用いた凝集試験により、インフルエンザウイルスのレセプター特異性を調べる簡便法を確立した。古くから知られるこのインフルエンザウイルスの血球凝集の機構をウイルスのレセプター結合特異性と血球表面に存在する糖鎖構造という観点から究明することが出来た。今後はヘマグルチニン以外のウイルス構成蛋白に関してインフルエンザウイルスの宿主域に関わる因子を明らかにし、インフルエンザウイルスの異動物種間伝播のメカニズムをさらに解明したい。
著者
中路 純子 ナカジ ジュンコ Nakaji Junko 沖 高司 オキ タカシ Oki Takashi 粥川 早苗 カユカワ サナエ Kayukawa Sanae 宮本 靖義 ミヤモト ヤスノリ Miyamoto Yasunori 伊藤 玲子 イトウ レイコ Ito Reiko 井戸 尚則 イド ナオノリ Ido Naonori
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.68-75, 2012-03

小児期より比較的重度の身体障害がある在宅障害児・者に対する支援を具体化し、地域での生活を豊かにすることを研究目的とした調査の結果、リハビリテーション関係者による専門的な指導の不足が課題の一つであること明らかになった。本人・家族の幸福感や満足感を伴ったリハビリテーション関係者による支援とは、どのような要件が求められているのかを明らかにする事を目的とし、3組の家族の協力を得て現状評価を行い、若干の介入を開始した。結果、3症例ともに本人・家族が改善を希望している項目はICFによる「活動」の領域であり、「心身機能」との因果関係が深いことが分かった。しかし実際の介入は、心身機能に深く介入を必要とする者、生活環境を変化させ、好ましい日常活動の継続によって改善の期待が出来る者、適切な福祉機器やヘルパーの導入が必要と思われる者と、異なる対応が求められた。そして、3家族ともに温度差はあるものの、家庭への介入に対する抵抗感があり、育ててきたプロセスを否定されることへの恐れを感じとることが出来た。リハビリテーション関係者の専門的な評価と介入は、対象家族の生活スタイルを尊重する事から始まる。小児期から障害のある在宅障害者への介入は、それまでの経過をよく聞き取り、家族の思いに耳を傾けねばいけない。時間をかけて互いに協力関係を結びつつ、方向性を見定める態度が重要である。それらの事を前提条件として、専門家による適切な評価と介入が求められるのである。対象家族の人生を肯定し、共感し、専門的知識を持って具体的に生活環境への介入・支援を行うことが、リハビリテーション関係者に求められる支援の要件であることが分かった。
著者
伊藤 亮一 玖村 敦彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.109-114, 1987-03-05

ポット栽培したダイズ(品種農林2号)を用いて, 葉の生長を葉の"伸長性"(葉片に錘りをかけたときの, 葉片の単位時間あたりの伸び量, Ex)と, 圧ポテンシャル(P)との両面から検討した. 得られた結果の大要は, 以下の通りである. 1) 給水を停止すると, 土壌水分含量は低下し, それに伴ない葉の生長速度は低下して, 土壌水分レベルが45%(対圃場容水量)に達したとき, 葉の生長は完全に停止した. その後, 土壌水分レベルを45%に保ったところ, 葉は再び生長を始めた. このことから, 葉の生長において乾燥への馴化がおこると考えられた. しかし, 生長再開後の葉の生長速度は十分に給水した対照区(土壌水分レベル80%)の葉と比べて, 小さかった. 2) 給水停止後, 葉の生長速度が低下したときには, PとExの両者が共に減少した. その後Pは, 対照区のレベルにまで回復し, このことが葉の生長の再開を可能にしたと考えられた. Pの回復は, 浸透ポテンシャルの低下, すなわち浸透調節によりもたらされた. いっぽう, Exは, 低い値にとどまり, 回復しなかった. 低水分状態が維持されたときに, Pが完全に回復するにもかかわらず, 生長の回復が不完全な程度にとどまるのは, Exが低い値にとどまることによると考えられた. 3) 植物体を低水分下に置いた後, 十分給水すると葉の生長は回復するが, 対照区にはおよばなかった. 乾燥処理後の再給水により, Pは十分回復したが, Exの回復は不十分であり, このことが, 生長回復の不十分さの基礎となっていると考えられた. またこのことから, Pはその時々の条件に応じすみやかに変化しうるが, Exは低水分条件により, かなり不可逆的な減少をきたすようであった. 4) 本実験の結果の全体をみると, 葉の生長速度は, P, Exの両者と正の相関を示したが, 後者との間の相関のほうがより密接であった.
著者
伊藤 駒夫
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山醫學會雜誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.487-512, 1928-03-31 (Released:2009-03-31)
参考文献数
54

Das Wesen des Kältehämolysins ist noch nicht völlig aufgeklärt. Der Verfasser hat an 2 Fällen der paroxysmalen Hämolobinurie (die eine gehört nach Dungern und Hirschfeld der O-Blutgruppe, die andere der B-Gruppe an) verschiedene Versuche angestellt, von deren Resultaten die folgenden hier besonders hervor zu heben sind.Nachdem bei Ausführung des Donath-Landsteiner'schen Versuchs als Erythrozytensuspension ausser den eigenen Erythrozyten der Kranken je auch die der A-, B-, AB- und O-Blutgruppe, und als Hämolysin ausser dem nativen Krankenserum auch das in der Kälte vorher mit den roten Blutkörperchen der obigen verschiedenen Gruppen behandelte, sog. Restserum zur Anwendung gebracht worden waren, haben wir gefunden, dass das Autokältehämolysin jedes Kranken am stärksten auf das rote Körperchen der AB-Gruppe, weniger stark auf das der A-Gruppe, viel schwächer auf das der B-Gruppe und ganz schwach oder sogar kaum auf das der O-Gruppe hämolytisch wirkte.Die unnötig lang dauernde Wirkung der Kälte hemmte den Ausfall des D.-L.'schen Versuchs; das rote Blutkörperchen der AB-Gruppe war dabei am stärksten und das der O-Gruppe am schwächsten gegen die Kälte empfindlich.Die 3-malige Vorbehandlung des Serums mit den roten Blutzellen der AB-Gruppe übte keinen Einfluss auf den Ausfall der Wassermann'schen Reaktion des Serums aus.Das Komplement scheint manchmal durch die mehrmaligen Salvarsaninjektionen zum Verschwinden gebracht zu werden, weil danach die sonst positiv ausfallenden D.-L.'schen Versuchsresultate ohne Hinzufügen des Meerschweinchenserums ausblieben. Demzufolge mag es solche Fälle geben, die für klinisch geheilt gehalten werden, wenn auch dort noch das Kältehämolysin nachzuweisen ist.In der Lumbalflüssigkeit der Kranken konnten wir das Auto- wie auch Isolysin nachweisen und durch die subkutane Pituitrininjektion wurden sie sogar vermehrt, und zwar das letztere in erheblicherer Weise, gefunden.