著者
谷口 宏充 伊藤 順一
出版者
大阪府教育センター
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では火山噴火によって発生する爆風過剰圧などの物理量を計測し、同時に、付随する火山災害・噴出物の分布を調査し、両者の定量的な関連づけと爆発エネルギー量の決定を行おうとするものである。爆発的な噴火現象によって発生する火山災害や地質学的諸現象の分布は、爆発エネルギー量によって束縛されていると考える。もしこの考えが正しいなら、私たちは爆発エネルギーという只一個のパラメーターを定めることによって、他の全ての災害・地質現象の広がりや強度は数値シミュレションによって求めることができることになる。このことを実証するために、実際の火山噴火における爆発エネルギー計測方法の開発、実施、地質調査そして文献調査にもとづく災害・地質の諸現象と爆発エネルギー量との関連づけを試みる。1.爆発に伴う火砕流の最大到達距離は爆発エネルギー量によって規制されている。2.火口の直径は爆発エネルギー量の1/3乗に比例し、核爆発やTNT爆発などと同一の実験式によって記述される。3.マグマ噴火における熱エネルギーの爆発エネルギーへの変換効率は0.01〜0.4%、マグマ水蒸気爆発の場合には0.4〜7%程度であり、両者の間に明瞭な差がみられた。4.従って、火口直下に蓄積されている熱量や地下の帯水層に関する情報が地磁気学的な手法などによって与えられるなら、可能性のある最大爆発エネルギー量は評価され、数値シミュレションなどによって、火山爆発に伴う災害や噴出物の分布は予測できることになる。また過去の噴出物の地質学的調査を行うことによって、災害や噴出物分布についての統計的な予測をすることが可能になるかも知れない。5.阿蘇火山における1994年9月〜1995年2月までの計測結果によれば、各計測期間内における最大爆発エネルギー量は5×10^<15>erg程度であった。
著者
伊藤 寛子 和田 裕一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.346-353, 1999-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23

本研究では, 非漢字圏日本語学習者の漢字の記憶表象の特性について, 自由放出法を用いて検討した。漢字能力が異なる外国人 (初級者, 中級者, 上級者) および口本人に, 思いついた漢字を15分間できるだけ多く書くように求め, その後, 各々の漢字の想起に用いられた手がかりが何であったかについての質問をした。この手がかりの内容を検討した結果, 初級者の漢字の記憶検索には意味手がかりよりも形態手がかりが多く用いられるが, 漢字能力の向上に伴って形態手がかりより意味手がかりのほうが多く用いられるようになることが明らかになった。この結果は, 第二言語の語彙表象と概念表象との間の直接的な結び付きの程度の変容という点から議論された。また, 日本人よりも外国人の検索において, 部首よりも小さな漢字の構成要素が形態手がかりとして用いられることが多いこと, さらに, 外国人の形態手がかりには, 書き順から考えて不自然な取り出し方をした漢字の部分があることが示された。これらのことは, 外国人の漢字の記憶には日本人とは異なる形態的記憶表象が存在することを示唆するものであると考えられる。
著者
佐野 文子 伊藤 桂子 宮治 誠 香本 頴利 小川 浩也 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第49回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.124, 2005 (Released:2005-09-07)

抗真菌活性をもつ漢方生薬としてオウバク末,キキョウ根末,センキュウ末,クレンピ末,オウゴン末を含む 17 種の漢方生薬配合薬(新中森獣医散®,中森製薬株式会社,宮崎県)は元来動物の消化器疾患の治療を目的とする薬剤であったが,粉末を当量の水とまぜてペースト状にし,Trichophyton verrucosum に感染しているウシの皮膚に連日 4 日間塗布したところ著効し,治療開始後 15 日以内に鱗屑の脱落を観察,1 ヶ月後には発毛し,治癒したという報告がある.そこで今回,人獣共通真菌症原因菌に対するこの配合薬の in vitro での抗真菌作用を調べた.配合薬のエキスは濃い褐色のため液体培地による希釈法が応用できないため,平板培地における集落の直径を測定する方法で検討した.配合薬 0.1,0.3,1.0,3.0,10.0%(V/W)の割合で添加した 1/10 サブロー平板培地に皮膚糸状菌 6 菌種 9 株,日和見真菌症原因菌 7 菌種 9 株を 1 点平板中央に接種して,25℃ もしくは 35℃ で 2 ないし 6 週間培養し,集落の直径を薬剤無添加培地と比較した結果,T. verrucosum, T. mentagrophytes,T. rubrum, T. tonsurans, Microsporum canis, Histoplasma capsulatum, Cryptococcus neoformans, Malassezia pachydermatis には 0.3-1.0% 濃度で発育抑制もしくは発育阻止効果を認めた.一方,Candida albicans, Alternaria alternata, Schizophillum commune, T, mentagrophytes var. erinacei および M. gypseum では 3-10% 薬剤添加培地での発育抑制効果を認めたが,Aspergillus fumigatus には効果を示さなかった.本配合薬は T. verrucosum に対する発育抑制ならびに阻止効果は大であり,外用薬としてウシの皮膚糸状菌症に有効であることが in vitro での活性からも証明できた.また多くの人獣共通真菌症原因菌種にも有効であった.
著者
伊藤 智夫 堀江 保宏 Gottfried FRAENKEL
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.107-113, 1959-06-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1. 5令起蚕の小顋切除後桑葉を与えると, 手術の直接的影響を受けたと思われる個体を除いては, 正常蚕と変りなく食桑し生長する。2. 5令起蚕の小顋切除後キャベツを与えると, 最初は比較的良く食べるが永続せず, 体重増加は僅かで数日後には死亡する。正常蚕も絶食が続くと極めて少量食べる。3. 5令起蚕の小顋切除後桜葉を与えると, 最初若干食べるが永続せず, 体重は反つて著減し遂に死亡する。正常蚕も絶食が続くと少量食べるが, 体重減少はさほど顕著ではない。4. 蚕児の食性に関与する感覚として味覚のようなものが考えられ, 小顋以外の感覚器官の機能によるものと思われる。5. 桜葉はキャベツに較べ蚕児に対し毒性のより強い物質を含有する。6. 5令中期に小顋を切除し桑葉を与えると正常蚕と生長の点で変らない。7. 5令中期に小顋を切除しキャベツを与えると, 最初若干食べるのみであり, 正常蚕も絶食が長びけば極く少量食べる。
著者
松岡 浩 伊藤 明子 佐藤 未怜
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.87-91, 2012-03-31

Our aim is to produce ethanol efficiently by enzymatic saccharification coupled with ethanol fermentation using bamboo plant as a biomass. For this purpose, we examined pretreatment conditions of biomass for saccharification. At first bamboo plants were made into chips and then powders. When a distilled water with bamboo powder was 60-min autoclaved at 121 ℃, 0.75 M NaOH-alkalization treatment was performed at 80 ℃ , and saccharification was carried out by 0.33 g/ ℓ Acremonium cellulose at 45 ℃ , glucose was released at 5.7 g/ℓ after 96-h saccharification, which corresponded to 22.8 % on the basis of the the bamboo plant. When fermentation was carried out at 30 ℃ following 96-h saccharification of the pretreated bamboo plant using Acremonium cellulase, the inhibitory effect of glucose was considered to be reduced and ethanol was produced at 4.2 g/ℓ after 72-h fermentation, which corresponded to 50.8 % yield on the basis of the total amount of bamboo.
著者
伊藤 泰広 今井 和憲 鈴木 淳一郎 西田 卓 加藤 隆士 安田 武司
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.275-278, 2011 (Released:2011-04-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は29歳の男性である.左眼周囲の間欠的な頭痛で発症し,当初は自律神経症状がなく三叉神経痛と診断したが,6日後に流涙,結膜充血といった自律神経症状が出現し,結膜充血と流涙をともなう短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)と診断した.ガバペンチンを開始し,800mg/日に増量したところ,頭痛発作と自律神経症状はすみやかに消退した.3カ月後に400mg/日に減量した時点で,僅かに頭痛発作が生じた.SUNCTでは頭痛が自律神経症状に先行して出現するばあいがあることが示唆された.SUNCTの長期経過や治療は未解決な点が多く,本邦での症例の蓄積と治療方針の確立が望まれる.
著者
山田 忠史 伊藤 祥展
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.665-671, 2002
被引用文献数
1

本研究では, 空港旅客ターミナルの窓口施設に注目し, 旅客流動シミュレーションを用いて窓口施設を最適化する方法を提示した. この手法により, 最適な窓口数が時間帯ごとに算定されるとともに, 窓口数に応じて最適なフロア面積が算出される. 旅客流動シミュレーションにおいては, 既存空港での観測から得られた利用施設選択率などに基づいて旅客流動を再現し, 待ち行列シミュレーションによって旅客の滞留現象を表現した. 既存空港のチェックインカウンターとセキュリティチェックに, この手法を適用した結果, 旅客流動の再現性が確認されるとともに, 計算対象日の各窓口施設の利用実態に即した, 適正な施設規模が算出されることが示された.
著者
福山 正文 上村 知雄 伊藤 武 村田 元秀 光崎 研一 原 元宣 田淵 清
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.565-574, 1989
被引用文献数
2

河川水やその泥土および淡水魚などの自然環境における運動性<I>Aerornonas</I>の分布を明らかにするため, 相模川7ヵ所, 多摩川8ヵ所, 津久井湖5ヵ所を対象に本菌の検索を定量的に実施した.また両河川で捕獲した淡水魚の腸管内容物, 鯉, 体表からの菌検索を行った結果以下の成績を得た.<BR>1.相模川の泥土208件中134件 (64.4%) から運動性<I>Aerornonas</I>が検出された.多摩川の泥土では186件中101件 (54.3%), 津久井湖の泥土120件中68件 (56.7%) が本菌陽性であった.これらの泥土から分離された運動性<I>Aerornonas</I>176株について同定したところ, 21.6%が<I>A. hydrophila</I>, 13.1%が<I>A. sobria</I>, 24.4%が<I>A.caviae</I>であった.なおPopoffの分類で同定出来ない菌株が74株 (42.0%) 認められた.<BR>2.泥土を採取した同一地点について水からの運動性<I>Aerornonas</I>の検索を行ったところ, 相模川河川水48件, 多摩川河川水44件および津久井湖の湖水40件全例から本菌が検出された.分離菌株120株の内14.2%がA. hydrophila, 27.5%がA. sobria, 29.2%がA. oaviaeであり, 末同定株が29.2%みられた.<BR>3.河川泥土や湖泥土中の運動性Aerormnas菌数は前者平均が2.5×105個/g, 後者が平均8.8×105個/gであった.河川泥土の一部の定点において菌数が大きくばらついたが全体的には4月に減少し, 7月と10月に増加する傾向がみられた.津久井湖の泥土では採取地点により菌数の変動が著しかったが, 河川泥土と同様に7月と10月に高くなる傾向がみられた.<BR>河川水と湖水については前者が平均1L当たり1.4×10<SUP>3</SUP>個, 後者が約3.3×10<SUP>2</SUP>個であった.各定点での菌数に一部の例外以外それほどの大きな変動はみられず, 季節により菌数に与える影響もみられなかった.<BR>4.相模川と多摩川で捕獲した淡水魚511件中462件 (90.4%) から運動性Aeronzonasが検出された.分離菌株1,056株の内17.2%がA. hydrophila, 31.4%がA. sobriaおよび19.5%がA. caviaeであった.
著者
伊藤 裕子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.84-87, 1981

本研究は女子青年の性役割意識を多次元的に捉え, その構造を明らかにすることが目的であった。取り上げた指標は, 性度, 性役割観, 職経歴選択, 性の受容の4変数で, 136名の女子学生を被調査者として数量化理論III 類による検討を試みた。結果は以下の3点にまとめられる。<BR>1. 得られた軸は第2根までで, 第1軸は〈男性的-女性的価値〉の次元, 第2軸は〈両価的因子内在〉の次元であった。<BR>2. 第2根の第1根への回帰はきれいなU字型を示し, 尺度構成上有益な示唆を得た。<BR>3. 反応カテゴリーのパターンから3類型が導き出され, それらは男性的価値指向型, 女性的価値指向型, 個人内価値指向型であった。<BR>本研究で得られた基本次元および3類型は, 別の側面から検討された既婚男女の結果と基本的に通じるものであり, その存在の普遍性の一部を裏付けていた。
著者
伊藤 明弘 後藤 孝彦 藤本 成明
出版者
JAPANESE SOCIETY OF TOXICOLOGIC PATHOLOGY
雑誌
Journal of toxicologic pathology (ISSN:09149198)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.79-84, 1998-06-01
被引用文献数
2 5

Cancer is a genetic disease and numerous genetic changes have been disclosed in its developmental stages. Corresponding to those endogenous events, environmental factors including chemicals, oncogenic viruses, and radiation participate in the initiation, promotion, and progression stages. Furthermore, development of cancer is greatly influenced by nutritional factors such as from daily food consumption and the additives in these foods. Retinoids, vitamins, essence of tea, and vegetables are believed to be highly effective in chemoprevention of cancer. In this mini review, miso, a fermented soy product, and the purported active chemopreventative component of soybeans, isoflavones, were examined for their biological activity; 1) during recovery from radiation induced damage, and 2) as a possible chemopreventor of cancers. Thus far, promising results have been obtained for prevention of liver tumors in mice, breast tumors in rats, and intestinal tract tumors in rats. Since chemopreventors derived from natural foods are not cytotoxic, they need not be given to the recipients intermittently. Furthermore, we have found that a combination of tamoxifen with miso greatly reduced occurrence of mammary tumors in rats and therefore might be applicable to human cancers.
著者
大河原 清 伊藤 一彦 苅間澤 勇人
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.10, pp.163-168, 2011

首都圏で観察実習をすることが、首都圏での教員志望を促すか、ということを実証する。首都圏の一つ、千葉県の公立学校(小・中)において、観察実習を2009年に続いて、2010年に2回目を実施した。その目的は、地元岩手県の教員採用状況が厳しいために、学生に首都圏での受験を勧めるためである。他県での観察実習であり、千葉県教育庁の協力を得られたことも幸いして、2009年の反省を踏まえて、学生の要望に配慮して、特別支援学校を加えるなど、本格的な校種別実習を実施することができた。 本研究は、2010年の観察実習についての実施前後のアンケート調査結果を中心に、首都圏就職に対する不安や、地元岩手県を離れることの不安、さらに首都圏受験に対する意識変容を、2009年実施のデータとの比較を織りまぜながら、述べることとする。
著者
伊藤 一彦
出版者
愛知大学現代中国学会
雑誌
中国21 = China21 (ISSN:13428241)
巻号頁・発行日
no.22, pp.37-56, 2005-06-20