著者
伊藤陽 小濱 真樹 佐々 政孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.46, no.14, pp.30-42, 2005-10-15
被引用文献数
3

SSA 形式(静的単一代入形式)は,φ 関数という仮想的な関数を用いることで,変数の定義を字面上1 カ所だけになるように表した中間表現である.しかし,SSA 形式を用いたプログラム中に現れるφ 関数が仮想的であることから,SSA 形式から直接目的コードを出すことはできない.そこで,目的コードを出す前段階として,φ 関数を消去して通常形式に戻すことが必要である.これをSSA 逆変換と呼ぶ.SSA 逆変換には主なアルゴリズムが2 つある.以前から用いられているBriggs らのアルゴリズム,およびこれとは異なるアプローチによるSreedhar らのアルゴリズムである.SSA 逆変換アルゴリズムはそれぞれ異なった特徴を持つが,これらを実際に比較した研究はほとんどなされていない.このため,SSA 形式を最適化コンパイラに採用するにあたって,どのSSA 逆変換を用いるかの選択の指標となるものがなかった.そこで本研究では,Briggs らとSreedhar らのアルゴリズムの長所と短所を明確にした.また,Briggs らのアルゴリズムに対する改良案を提案した.さらに,Briggsらのアルゴリズムとその改良案,Sreedhar らのアルゴリズムの3 つを実装し,同一のコンパイラ上で,SPEC ベンチマークを用いて種々の条件を変えながら比較した.本研究により,Briggs らの方法ではコアレッシングすることのできないコピー文が数多く挿入されること,実証的にはSreedharらの方法が最も優れていること,が判明した.The SSA form (static single assignment form) is an intermediate representation where the definition of each variable appears only once in the program by using a hypothetical function called φ-function. However, since the φ-functions appearing in the program using the SSA form are non-executable, the target code cannot be directly generated from the SSA form. Therefore, it is necessary to delete the φ-function and put the SSA form back to the normal form before generating the target code. This conversion is called SSA reverse translation'. There are two major SSA reverse translation algorithms. One is the method by Briggs et al., which is used from relatively early times. The other is the method by Sreedhar et al., which is based on a completely different approach. So far, there has been almost no research that actually compares these SSA reverse translation algorithms, although each algorithm has different characteristic features. Therefore, there have been no criteria as to which SSA reverse translation algorithm should be selected when the SSA form is used in an optimizing compiler. In this paper, we clarify merits and weak points of algorithms by Briggs and Sreedhar. We also propose an improvement of the algorithm by Briggs. Then, we implement algorithms by Briggs and its improvement and the algorithm by Sreedhar on the same compiler, and compare the three by changing the various environments using the SPEC benchmarks. The experiment has shown that the method by Briggs inserts a lot of copy statements that cannot be coalesced. Empirically, the method by Sreedhar is the most efficient.
著者
佐藤 昇 柴田 昌弘 安戸 方邦 伊藤 健二朗 Sato Noboru Shibata Masahiro Yasudo Masakuni Ito Kenjiro
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.233-237, 2012-05

外肺葉から分化した神経管において, 中心管近傍の神経上皮細胞から分化した運動ニューロンは前角へと移動しつつ, 標的に向かって軸索を伸長する. 標的と接触した後, 約半数の運動ニューロンは「プログラムされた細胞死」を起こして死ぬ. この過程は, ニューロンがその標的である筋線維からのシグナルによってコントロールされる標的由来因子依存性の生存あるいは死である. さらにアセチルコリン受容体の競合的阻害剤であるクラーレ (d-tubocurarine) の投与によってこの時期の神経筋活動を抑制すると, この細胞死は完全に抑制され, 筋肉の神経分枝が発達し, シナプス (神経筋接合部) が増加する. 従って, 脊髄運動ニューロンの形態形成を考える上で, その標的である筋の形態形成を無視することはできない. すなわち運動ニューロンとその標的である筋は一体として理解することが重要である.
著者
大隅 剛史 伊藤 大雄 岩間 一雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.16, pp.31-36, 2004-04-15

近年のよく知られたWebグラフの問題の1つとして、グループ内で密にリンクされているWebページのグループを見つける問題がある。クリークは明らかにそのようなグループの例と言える。しかしクリークを求める問題(最大のものを求める、極大のものを列挙する)のほとんどは難しく、良い近似方法もない。本稿では「孤立した」クリークとその一般化として孤立した部分グラフを紹介する。部分グラフが「孤立している」とは、内部で密にリンクされているだけでなく、その部分グラフと外部とのリンクが少ないことをいう。例えば、サイズだのクリークでは、外部への枝はκ-1本以下しか許されない。このような孤立条件により、多くの問題が簡単になり、孤立したクリークを列挙する問題が多項式時間で解くことができる。また、孤立したクリークよりやや密度の低い準クリークについても、平均次数がκ-logだ以上でかつ最小次数がκ/(logκ)以上である準クリークを多項式時間で列挙できることを示す。さらにこれらの一般化として、連結度を利用して孤立した一般の部分グラフを多項式時間で列挙できることも示す。
著者
片峰 茂 伊藤 敬 西田 教行 桑田 一夫
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

われわれが化合物データベースより見出した新規抗プリオン物質GN8がリコンビナントプリオン蛋白に対して実際に結合するかどうかを,をBIAcoreT100を用いて調べた結果から,GN8が実際にリコンビナントプリオン蛋白に対して結合し,その解離定数は,4μM程度であることが分かった。全長のマウス・リコンビナント・プリオンのNMRスペクトル(HSQC)をGN8の存在下及び非存在下で測定した。その結果,GN8の特異的結合サイトが,N159とE196であることが明らかとなった。これらの部位は,ミリ秒からマイクロ秒の遅いタイムスケールの揺らぎを行っており,遺伝性のヤコブ病における変異部位とも関連していることが確認された。また,GN8の類縁体を複数(60種類),有機合成し,抗プリオン活性を測定した結果,そのいずれにおいても,ほぼ抗プリオン活性が認められた。このことより,GN8の基本骨格を保ちつつ,抗プリオン作用が最大になるようにその化学構造を最適化することが可能であることが分かった。プリオン感染マウスに対し,GN8を脳内投与したところ,特に副作用もなく,優位な寿命延長効果が認められたことから,GN8は,抗プリオン薬のリード化合物として非常に有望であると考えられる。GN8小分子化合物で脳血液関門を通過しやすいことが期待され,実際培養脳血液関門モデルを通過することが判明したが、マウス末梢投与においても有効であることが分かりつつある。以上により,GN8の作用メカニズムは,細胞型プリオンに結合し,その立体構造を安定化させるためであることが明らかとなった。
著者
小幡 拓弥 杉山 卓弥 保木 邦仁 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2009論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.12, pp.51-58, 2009-11-06

本稿では、将棋プログラムの新たな並列処理手法である”合議アルゴリズム”を提案し、その効果について検証した様々な実験を報告する。合議アルゴリズムは複数の思考プログラムの意見を集めて指し手を決定する手法で、疎結合マルチプロセッサにおける動作によく向いている。筆者らは合議アルゴリズムを用いて強豪プログラム同士を連結し、より強いプログラムを作ることに成功した。また、単一の思考プログラムから簡易な方法で複数のプレイヤを作り合議させる手法を提案し、その有効性を示した。
著者
小泉 悠馬 伊藤 克亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.3, pp.492-500, 2015-03-01

連続励起振動楽器の演奏音の音量変化を,音量記号などに起因するベースラインの大局的変化であるダイナミックスと,発想記号などに起因する局所的変化であるアーティキュレーションに分解する手法を提案する.ダイナミックスとアーティキュレーションの生成過程をそれぞれ和分プロセスと遷移型自己回帰モデルで表現し,遷移型線形動的システムを用いて音量軌跡を分解する.評価実験では,MIDIを用いて作成した人工データと,プロ奏者とアマチュア奏者の音量軌跡の分解実験を行った.人工データの分解実験では分解の標準絶対誤差が1.06dBであり,MIDIでのメゾピアノからメゾフォルテの音量差約4dBよりも小さい誤差で分解できることを確認した.また実演奏音の分解実験では,演奏技術による2要素のバリエーションやばらつきなどの演奏/習熟度解析が行えることが示唆された.
著者
前田 一雄 伊藤 隆志
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.1923-1930, 1983-11-01

sinusoidal patternの暫定的な基準を以下のように定め症例を集めて検討した.1)連続反復する正弦波様心拍数図で,その周波数は約6cpm以下である.ただしdecelerationやaccelerationは周波数計算の対象にしない.2)最大振幅10bpm以上,3)持続時間10分以上であるが,decelerationやaccelerationで中断されるのはこの時間に含めたい.4)各波の周期や振幅がなるべく良く揃っている.5)本波形に重なるvariabilityが小さく,波形がなめらかにみえる.以上の条件を満たす症例が7例あつた.心拍数基線は140〜170bpmで,波形の周期は11.60±1.68〜27.04±3.88秒,周波数では2,22〜5.17cpmであり,周期の変動係数は6例が10〜30%であった.振幅は6.40±0.84〜17.76±4.76bpmで変動係数は13〜30%であった.各症例の周期と振幅の相関係数は0.14〜0.69であったが4例は0.42以上と大であった.各症例の振幅の平均(x)と周波数の平均(y)の関係はy=4.70-0.14xと逆相関し,r=-0.56と大であった.持続時間は10 数分〜35分であった.7例中2例は分娩時発生で予後は良かった.残り5例は妊娠中発生したもので,22週に発生し1週問後に胎児死亡した1例,34週に発生し胎児水腫があり帝王切開後に新生児死亡した1例,母体白血病で高度貧血時に発生し胎児仮死となり帝王切開した1例,および分娩時に胎児仮死となり吸引分娩した2例で,妊娠中の発生例はすべてに何らかの異常経過が認められた.同様のsinusoidal patternが低酸素状態の未熟児にも認められた.
著者
伊藤 幹子 木村 宏之 尾崎 紀夫 荒尾 宗孝 木村 有希 伊藤 隆子 栗田 賢一
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-22, 2006-06-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

In 1999, the authors organized a medical liaison group composed of dentists and a psychiatrist at the outpatient clinic of the Department of First Oral Surgery, Hospital of the School of Dentistry, Aichi Gakuin University, for the diagnosis and treatment of oral psychosomatic disorders. The practice has been for the dentists of the medical liaison group to examine each patient and diagnose his/her oral somatic disorder in the first stage of the examination, and the psychiatrist to examine each patient and make diagnosis according to DSM-IV or DSM-IV TR in the second stage.The subjects of this study were 13 patients with personality disorders (PD) among 268 patients examined during a 5-year and 4-month period from 2000 to 2004. The diagnoses by the dentists consisted of five cases of atypical facial pain, three of burning mouth syndrome, two of oral malaise, one of dental phobia, one of temporomandibular joint disorder, and one of halitophobia. Those by the psychiatrist consisted of six cases of pain disorder, two of conversion disorder, two of somatization disorder, one of hypochondriasis, one of specific phobia, and one of adjustment disorder. On DSM-IV Axis II, the diagnosis/suspicion results consisted of three cases of paranoid PD, two of avoidant PD, two of obsessive-compulsive PD, two of borderline PD, two of narcissistic PD, one of histrionic PD, and one of dependent PD. It was very difficult for us to manage the patients with borderline PD and narcissistic PD in cases of invasive treatment such as a tooth extraction. It has been found that the comorbidity of not only mental disorders but also personality disorders does need to be diagnosed and dentists ought to plan their therapeutic strategy for patients with personality disorders under the supervision of psychiatrists
著者
山口 直子 伊藤 瑞香 内田 彩子 鈴木 ちひろ 鬘谷 要 NAOKO YAMAGUCHI MIZUKA ITO AYAKO UCHIDA CHIHIRO SUZUKI KANAME KATSURAYA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-12, 2012-03

若者は、着物に対して興味や憧れといった肯定的な意識を持っているが、着物を着るにあたって着心地や着崩れといった様々な障害により着物を着ることが難しい現状にある。本研究では着物を着る上での大きな障害である着崩れのいくつかの要因のうち、主に、素材と着崩れとの関係に着目した。 研究対象とした素材は、綿、絹、ポリエステル、セオα(ポリエステル系新素材)の4種で、まず、顕微鏡による繊維の観察、摩擦測定、KESによる生地の力学特性の測定によって生地の状態を把握した。次に、各種の素材を用いて試験衣を作成し、それを着装し3種の単純動作を行うことで、着崩れの方向並びに量を解析することによって、素材による着崩れ傾向の違いを評価した。また、解析によって"おはしょり"が着崩れの緩衝機構になっていることが示唆されたため、おはしょりの無い試作対丈着物についても製作し比較検討を行った。 その結果、おはしょり有りの着物では、セオαの着崩れが最も少ない一方、綿の着崩れ量が大きいことが分かった。おはしょり有りとおはしょり無しを比較した場合はおはしょり無しの方が着崩れが目立ったが、セオαにおいておはしょり有りでは見られなかった新たな着崩れが生じ、おはしょりが着崩れに与える影響は素材によって異なることも明らかとなった。
著者
磯本 征雄 宮原 一弘 中野 宇宙 伊藤 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.599-609, 2000-06-25
被引用文献数
7

本論文では, ニュートン力学の学習を支援する宇宙旅行シミュレーション教材の構成と教授方略について議論する.ニュートン力学は, 物理学の中でも最も形式の整った理論の一つである.そして, 宇宙旅行は, 物理的概念の定義が明確であり, ストーリーが論理的な上に成功の是非も簡単に判断できる.こうした理由で, 宇宙旅行シミュレーションは, ニュートン力学演習のための個別学習用教材として適切である.本論文のシミュレーションは, 運動方程式, エネルギー保存則, 角運動量保存則など, ニュートン力学の基礎知識を学んだ学生のために, 更に発展した学習のための演習用教材として設計されている.学習者は, 的当てゲーム, 人工衛星の打ち上げ, 人工衛星のドッキング, 月旅行, 火星旅行といったシナリオの中で, ニュートン力学の応用場面を体験できる.この宇宙旅行シミュレーションを使って, 学習者は, 抽象的なニュートン力学と具体的な宇宙旅行の関係を学ぶことができる.

1 0 0 0 OA 憲法資料

著者
伊藤博文 編
出版者
叢文閣
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1936
著者
伊藤 隆 伊藤 格郎 伊藤 冨美雄
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.107-110, 1986

小規模なアンゴラウサギ飼育農家で, くしゃみ, 鼻汁の漏出, 鼻性呼吸を主徴とするスナッフルが発生し, 繁殖および育成用ウサギを問わず, ほぼ全頭に発症が確認された.<BR>この中で最も臨床症状が重い5頭を淘汰し, 病性鑑定を行った.共通した肉眼所見として, 鼻腔および副鼻腔の粘液貯留が認められた.細菌検査では, 鼻腔ぬぐい液から<I>Bordetella bronchisotica (B.bronchisotica) </I> と<I>Pasteurella multocida (P.multocida) </I> が高率に分離された.また, 組織学的に鼻腔粘膜のカタール性炎, 鼻甲介骨の破壊吸収像がみられた.<BR>29頭の鼻腔ぬぐい液の細菌検査で25頭から<I>B.bronchisotica</I>が, 5頭からEmultocidaが多量に分離された.<I>B.bronchisotica</I>の抗体検査では繁殖用ウサギで幾何平均 (GM) 98.8倍, 育成用ウサギで25.2倍と高い抗体価を示し, <I>B.bronchisotica</I>が広く浸潤していた.
著者
福田 冬季子 杉江 秀夫 伊藤 政孝 杉江 陽子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.314-318, 2001-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

自閉性障害の病態として, セロトニン系の関与が示唆されている.自閉性障害児における選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (selective serotonin reuptake inhibitor: SSRI) の有用性を検討するため, 保護者の同意が得られた自閉性障害児に対しfluvoxamineを投与し, crossoverdesignによる二重盲検法で検討した.行動評価表の項目別評価では, 視線と言語においてfluvoxamine投与による有意な改善が見られた (p<0.05).特に言語における効果は保護者の観察を裏付ける結果となった.Clinical Global Impression Scale (CGI) では約半数の症例で何らかの改善が見られたと考えられた.試験期間中重篤な副作用は見られなかった.小児自閉性障害においてSSRIは治療薬として試みる価値があると考えられた.
著者
一瀬 哲夫 小島 諭 宮崎 彩記子 宮崎 忠史 林 英守 伊藤 誠悟 川村 正樹 諏訪 哲 櫻井 秀彦 住吉 正孝
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.806-810, 2008

症例は64歳,男性.数日前に左上肢を枕にして昼寝をしていたところ,突然の左上肢浮腫を認めたため来院.明らかな血栓性素因,悪性疾患を認めなかったが,左上肢の静脈造影,造影CTで左腋窩静脈の高度狭窄と,左鎖骨下静脈の遠位部の完全閉塞と近位部に浮遊血栓を認めた.肺動脈血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)の予防のため上大静脈に一時留置型静脈フィルター(ニューハウスプロテクト)を留置し,7日間のウロキナーゼ投与,およびヘパリン療法を開始した.線溶療法後の静脈造影では浮遊血栓は消失し,左鎖骨下静脈に器質化した血栓を認めた.フィルターは10日目に合併症なく抜去した.原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)によるPTE予防に一時留置型フィルターは有用であると思われた.
著者
伊藤 健二 高口 直明 大川 恭矩 赤坂 忠義 井村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.14, pp.2014-2018, 1974

左右肺静脈は共通幹を形成するものの,右肺静脈と左下肺静脈は主として冠状静脈洞へ,左上肺静脈は垂直静脈を経て左腕頭静脈へ還流する混合型総肺静脈還流異常症の11ヵ月女児に対する二期的根治手術例を報告した.<BR>第一期手術は,冠状静脈洞入口部を拡大し,肺静脈血が左房へ還流するように,ダクロンパヅチによる心房中隔脈成を,第二期手術は3年後,肺静脈一左房吻合,垂直静脈結築を行ない,血行動態は正常化した.<BR>混合型総肺静脈還流異常症の中,最も頻度の多い,冠状静脈洞と左腕頭静脈へ還流する型につき,共通肺静脈幹形成の有無,左右肺静脈間の交通の程度によって,分類を試み.おのおのの型に対する根治手術術式を検討した.
著者
伊藤 綾子 渡辺 康 中島 正博
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.7-13, 2008-01-31
被引用文献数
1

チョコレート中のアフラトキシン(アフラトキシンB<sub>1</sub>, B<sub>2</sub>, G<sub>1</sub>, G<sub>2</sub>;AFs)分析法を確立し、室内再現精度の確認を実施した。チョコレート中のAFsは、アセトニトリル-メタノール-水(60+10+40, v/v/v)で抽出し、イムノアフィニティカラムにより精製後、蛍光検出HPLCにて定量を行った。試料にAFs標準液を0.1および10.0 μg/kgの濃度となるように添加し、日内および日間における繰り返し試験を行った結果、全てのAFsにおける回収率は90-97 %、併行再現性の相対標準偏差は1.7-3.3 %、日間再現性の相対標準偏差は0-4.1 %、異日分析における室内再現性の相対標準偏差に対するHorRatは、全て0.2以内であった。以上の結果から、チョコレート中のAFsは本法により精度良く分析できる事が確認された。
著者
伊藤 一雄 ITO Kazuo
出版者
名古屋大学教育学部技術職業教育学研究室
雑誌
職業と技術の教育学 (ISSN:13442627)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.19-31, 2001-03-30

The purpose of this study is to clarify some factors connected with careers and works of technical high school teachers. What is made clear are as follows. 1) We investigated how many careers had technical high school teachers experienced. Technical course teachers have experience in many works than general course teachers. Also most of them graduated technical high schools. 2) We defined a concept of technical high school teacher from a viewpoint of teacher's career. 3) We analyzed some subjects which are tought at technical high schools. What is important is how technical high school teachers teach practical exercise to their students. From mentioned above, we proposed improvements of technical teacher's training.