著者
曾我 有紀子 中島 久美 川田 亜矢子 市川 哲彦 佐藤 浩史 藤代 一成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.363-364, 1994-03-07

我々の身近に観測される逃げ水現象は、蜃気楼の一種で、温度勾配の激しい空気によって光が屈折し起こる現象である。従来のレイトレーシングは真空が前提であるが、M.Bergerらは、空気の層を、屈折率の違う何枚もの薄いガラスの層を重ね、ゆらぎやノイズを付加することで疑似的に表現し、蜃気楼らしい景観を創成することに成功している。しかし、彼らの方法では空気中の屈折率を固定しているので、より現実的な蜃気楼や陽炎を表現するためには、人為的な視覚効果を加えなければならない。そこで本研究では、空間をボクセルに分割し、空間各点での光の挙動を集積できるボリュームレイトレーシングを用い、与えるボリュームデータを時間依存させることによって、物理的原理に合致した逃げ水の表現と陽炎の生成を同時に試みる。本稿は以下のように構成されている。次節でまず逃げ水現象の物理的原理を述べた後、3節ではボリュームレイトレーシングを用いる理由、4節では具体的な画像生成の手続きを示す。最後に、結果の画像を考察し、今後の展望を述べて本稿を閉じることにする。
著者
土橋 ゆかり 佐藤 友美 佐藤 浩二 大隈 まり 衛藤 宏
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.185, 2008

【はじめに】<BR>協調運動障害や仮性球麻痺に加え、発動性低く訓練に対しても消極的な症例に対し病前の生活様式や興味関心を把握した上での活動が有効であった。今回の経験を振り返り発動性を引き出す為の活動提示の視点を報告する。<BR>【作業療法評価】<BR>80歳代、男性、診断名は脳梗塞後遺症、左右不全麻痺、両側仮性球麻痺、Br.Stage右上下肢stageVI、左上下肢stageV。難聴、嚥下・構音障害で著明あり、Yes、No程度の意思疎通は可能。B.I.は25点。であり、セルフケアは車椅子主体で要介助状態。家族構成は妻・娘の3人。<BR>【目標】<BR>3ヶ月で可能な限り妻と娘との在宅生活が継続して行えるよう、セルフケアが見守りから軽介助にて遂行可能となる。併せて、日中は落ち着いて生活できる活動を探り、生活リズムを確立する。<BR>【経過】<BR>更衣・整容の訓練を1週間導入するも訓練を拒否した。そこで、本人の意思が向けば主体的に動くことができる点を生かし、 (1)本人自ら関心を示した活動 (2)生活歴に基づく活動(3)OTが「これは症例が集中してできる」と考えた活動、の3つの視点から活動選択し、これらの活動を通して発動性を引き出し日中落ち着いて生活でき生活機能の改善に結び付ける事を試みた。以下、各活動選択の経過を記す。(1)では活動への関心が高いものを探る際の指標として、日常生活の中で注意が止まる、指を差す、物を手に取って見る、他者を呼んで何らかの主張を示す、の4点を重視した。その結果、「屋上へ行く」、「猫と触れ合う」、「陶芸」に関心を示した。 (2)では、なじみのある活動や手続き記憶を通して発動性を生かす事ができると考え生活歴に基づく活動を提示した。結果、「囲碁」、「新聞を読む」を選択した。 (3)では様々な環境を設定する事で関心を広げる事も必要と考え「パズル」、「棒体操」、「絵画」を実施した。<BR>【その後の経過】<BR>訓練時は、本人の関心を示した屋上にて歩行を行いその後、訓練室にて囲碁を実施する等、内容を組み合わせた。この結果、意欲的に歩行し能動的に軽介助歩行が行えるようになり、自分の意思をジェスチャーにて伝えることや感情表出も多く見られるようになった。日常生活場面では、身体耐久性は向上し介助量の軽減が図れ、約3ヶ月で目標達成となった。最終時、B.I.35点。在宅訪問の際は、仏壇に参る為やトイレに行為に妻との軽介助歩行が可能であった。退院6ヶ月後も、妻と散歩や畑に行く等、日中は離床し本人らしく在宅で過ごしている。<BR>【まとめ】<BR>訓練に対して拒否的で日中落ち着かない患者に対して、セルフケアへの直接的な訓練だけでなく様々な環境で本人の行動を評価し興味や関心を生かした作業活動を選択・提示する事が、活動のきっかけとなり心身機能面や活動面の機能向上には重要であった。
著者
上原 江利香 佐藤 浩二 森 敏雄 森 照明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb1427, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 ギランバレー症候群(以下、GBS)は、自己免疫性機序により急性発症する末梢神経疾患である。比較的予後は良好とされているが、約20%以内が後遺症を残すという報告もある。回復期リハ病棟に入棟するGBS患者は回復遅延例である事が予測されるが、臨床症状は様々であり症例報告に留まる事が多い。今回、過去8年間に当院回復期リハ病棟に入棟したGBS患者のADL経過について整理したので報告する。【方法】 平成15年4月1日~平成23年3月31日の期間にGBSを主病名として当院回復期リハ病棟へ入棟した8症例であり、この内GBSの亜型であるFisher型2例と再燃し転院した1例を除いた5症例を対象とした。5症例の基本情報及び、極期症状、入棟から1カ月ごとのADL能力を症例ごとに整理した。なお、ADL能力はBarthel.Index(以下、B.I.)を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院の倫理委員会の規定に沿って行った。【結果】 症例1は脱髄型の男性39歳、症例2は軸索型の男性67歳、症例3は軸索型の男性75歳、症例4は軸索型の女性80歳、症例5は軸索型の男性41歳であった。平均年齢は60.4±19.2歳、当院入棟までの平均経過日数は55.6±23.4(30~88)日であった。急性期加療では全症例がIVIGを施行し、症例1、5はステロイドパルス療法を併用していた。また、極期に全症例が四肢麻痺を呈し、症例1、2は呼吸筋麻痺により人工呼吸管理を行っていた。入棟時のB.I.は症例1~5それぞれ、60、40、40、40、15点であった。ADLの経過をB.I.の項目別で整理すると、食事は症例1、2は入棟時自立、介助を要した3例の内、症例4、5は入棟から10~20日で自立した。症例3は退院時も介助を要した。椅子とベッド間の移乗は症例4が入棟時自立、介助を要した4症例全例が60~90日で自立した。整容は症例1が入棟時自立、介助を要した4例の内、症例2、4、5は30日~90日で自立した。軸索型の症例3は退院時も介助を要した。トイレ動作は全例が入棟時介助、30~150日で全例自立した。しかし、症例3、5は下衣の操作に補助具の使用、衣服の工夫が必要であった。入浴は入棟時に全例が介助を要し、症例1、4は入棟から120~150日で自立した。症例2、3、5は退院時も介助を要した。移動は入棟時、全例が介助、30~150日で全例が歩行自立した。症例1、3、5はロフストランド杖、症例2は下肢装具とロフストランド杖が必要であった。階段昇降は入棟時全例が介助、症例1、2、4、5は入棟から120~150日で自立、症例3は退院時介助を要した。更衣は入棟時全例が介助、症例1、2、3、4は30~150日で自立したが、症例5は退院時も介助であった。排便・排便コントロールは入棟時、症例3、4が自立、介助を要した症例1、2、5は入棟から14~20日で自立した。退院時B.I.は症例1~5までそれぞれが、100、95、75、100、90点に改善した。なお、5症例の平均在院日数は147日±17.9日であり全症例が自宅退院に至った。【考察】 当院へ入棟した患者5症例は日本神経治療学会/日本神経免疫学会合同の治療ガイドラインで予後不良因子として挙げられている高齢者や呼吸筋麻痺などの重度麻痺、軸索障害などの項目に当てはまった。また、入院時B.I.は脱髄型の症例1を除くと4例が40点以下であり、回復遅延例と考える。ADL能力の経過をB.I.の項目別で整理すると、自立に要した期間や達成度から概ね排便・排尿コントロール、食事、整容、トイレ動作、移動、更衣、階段昇降、入浴の順で難易度が高いと考える。自立しなかった項目を整理すると、整容や食事といった比較的容易な項目で減点となる症例がいた。これは、上肢に麻痺が残存した症例の特徴であり、手指の拘縮を認めた症例では補助具の装着も困難であった。一方、下肢麻痺が残存した場合は下肢装具や歩行補助具の使用により、退院時には全症例が歩行自立した。これらから、上肢麻痺がADL能力獲得の阻害因子となる可能性が高い事が示唆された。その為、GBS患者に対しては、早期より上肢の機能改善を目的とした機能訓練と補助具の活用、上肢装具による拘縮予防に努める事が重要と考える。【理学療法学研究としての意義】 回復期リハ病棟における、GBS患者に対するアプローチの意義は機能回復を促し、ADLを獲得させ、社会復帰に繋げる事であり、円滑な訓練転換のためにはGBS患者の訓練経過を理解しておく必要がある。今回の結果は、適切な訓練展開や目標設定の指標の一助として活用できるものと考える。
著者
八木 恵子 廣瀬 久美子 曽我 哲朗 手束 典子 手束 昭胤 湯浅 哲也 佐藤 浩充 遠藤 雅充 株式会社トーカイ
出版者
徳島医学会
雑誌
四国医学雑誌 = Shikoku acta medica (ISSN:00373699)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.145-150, 2013-08-25

We report on a new mat experimentally developed by us for changing the position of the body (named i-mat), based on an idea of a floating body. [Method] At first,4, approximately 70cm long, belts were attached to both the right and left side of the pad for tying to the beds. For a lateral position with a 30-degree tilt to the right side, the belt attached on the left side is fixed to the right bed fence and the length of the belt is adjusted so that the patient's position becomes lateral with a 30-degree tilt. The body pressure levels (mmHg) at sites of bone were measured after position changes by using a simple body pressure-measuring device (PREDIA®) in 10 patients with an independence degree of daily living rating of C2 (group i) in whom the i-mat was used, and compared with the levels measured after position changes in patients where a mat made of urethane (Nasentpat®) was used (group N). [Results] The pressure levels in the sacral region and occipital region could be significantly lowered in group i as compared with that in group N. We also measured and compared the pressures at the major trochanter, acrominon, and iliac regions, because the high-pressure loaded region shifted to these regions on the side facing the bed in the lateral position. No significant differences in the pressure levels at the major trochanter and acrominon were found between the i and N groups. The pressure level in the iliac region in the i group was significantly higher than that that in the N group. [Conclusion] Use of this experimentally produced i-mat can significantly lower the pressure load at the sacral and occipital regions when the patient is placed in the lateral position of either side with a 30-degree tilt, as compared to that of Nasentpat®. But it appears that caution should be exercised to prevent the occurrence of bedsores in the iliac region.
著者
伊豆 裕一 佐藤 浩一郎 加藤 健郎 氏家 良樹 松岡 由幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.4_61-4_70, 2012 (Released:2013-01-17)
参考文献数
14

デザイン発想におけるスケッチの活用には,多くの効果が確認されている.しかしながら,従来の研究では,それらの効果に対して,透視図法や陰影表現などのスケッチスキルがどのように影響するかは明らかにされていない.本稿では,プロダクトデザインにおけるデザイン発想に対するスケッチスキルの効果や役割の解明を目的に,スケッチスキルを構成する要因とその関係性を明確化した.具体的には,スケッチ教育におけるスケッチスキルの習得プロセスの観察を行い,同教育の受講生が描いたスケッチの評価を行った.その評価結果を,ISM,数量化III類,およびクラスター分析を用いて分析することで,スケッチスキルを構成する要因間の関係を明らかにし,スケッチスキルの構造モデルを提案した.これにより,スケッチスキルの合目的な活用・習得方法の解明が可能となり,スケッチスキルの効果や役割の明確化の一助とした.
著者
河村 哲也 林 農 佐藤 浩史
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では砂丘移動現象の解明と植生利用による制御を目的として数値シミュレーションによる研究を行い以下のような成果を得た。はじめに以下に示すような3段階の計算法を提案し実際にプログラム開発を行った。(1)砂丘など複雑な地形上を吹く風による風速場の計算,(2)風速場による砂面上の表面摩擦と砂の輸送量の推定,(3)砂の輸送による砂面形状の変化の計算そして、断面が二等辺三角形の砂丘に稜線に垂直に風があたっている場合を想定し、そのひとつの断面内での2次元計算を上述の手法で計算した。この研究により砂丘の移動が計算できることが確かめられ、また砂丘の風下側の傾斜が安息角になることがわかった。次に、二等辺三角形の底辺の長さを共通にして、高さをいろいろ変化させて計算を行い、砂丘の高さが移動速度に及ぼす影響を調べた。そして高さが低いほど移動速度が大きいことが明らかになった。さらに植生がある場合の影響も調べた。計算結果から、植生がある場合には、ない場合に比べ砂丘の移動速度が小さくなることも確かめられた。また植生の広さや配置場所を変化させその影響も調べた。また乱流の効果を入れるため、もっとも単純なモデルとして混合距離モデルを用いた計算も行った。以上の結果、基本的には計算法の妥当性が確認されたため、計算法を3次元に拡張した。そして、実際の砂丘地帯に多くみられるバルハン砂丘の成因をシミュレーションにより調べた。また砂の輸送と構造物との相互作用の計算も行った。具体的には、砂面上に鉛直または傾斜して立てられた円柱まわりの流れの計算を砂の移動を考慮して行った。この研究と平行して、現実の砂丘地形に対応させるため、鳥取砂丘まわりの流れのシミュレーションを植生を考慮して行い、実際の観測結果と比較して定性的によい結果を得た。
著者
佐藤 浩 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.207, 2011

ネパール東部では1934年にM8.2の地震が発生したが,地震空白域に当たる西部では,今後の地震による斜面崩壊の多発と住民への被害が懸念されている.そこで,先行研究の活断層図を用いてネパール西部における地震時の斜面崩壊の脆弱性をマッピングした。その結果を報告する。
著者
山口 弘悦 松下 恭子 佐藤 浩介 中島 真也 佐々木 亨 Simionescu Aurora Bautz Marshall Loewenstein Michael 「ひとみ」コラボレーション
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.485, 2017

<p>Fe, Mn, Niなどの鉄族元素は、白色矮星の爆発的核融合による「Ia型超新星」を主要起源とする。したがってその組成は、過去に起こったIa型超新星の物理的性質を知る重要な手がかりとなる。「ひとみ」は打ち上げ直後に観測したペルセウス座銀河団からSXSの優れたスペクトルを取得した。分析の結果、鉄族元素の相対組成はいずれも太陽近傍の星の組成と一致することが初めて示された。講演ではその宇宙物理学的意義について解説する。</p>
著者
佐藤 浩司 竹内 正雄 竹ノ谷 文子
出版者
上智大学
雑誌
上智大学体育 (ISSN:02870568)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-8, 2001-03-31

本多浩二教授退任記念号
著者
佐藤 浩昭 中村 清香
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.281-291, 2018-05-05 (Released:2018-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
4

MALDI-TOF-MSは高分子材料の化学構造解析に有力な手法であるが,ポリエチレンオキシド(PEO)系界面活性剤などのイオン化効率が高い成分が共存していると目的成分のピークが観測されにくくなるという課題があった.そこで水に難溶のトリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスに用いて試料/マトリックス混合結晶を調製し,その上に水/メタノール混合液を滴下して速やかに吸引することにより,PEO系成分を選択的に除去できる簡便な前処理法を開発した.この方法を洗髪剤の成分分析に応用し,妨害成分であるPEO系アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を除去して,配合成分のピークが観測できるようになった.得られたマススペクトルをKendrick mass defect(KMD)プロットに変換して成分分布を二次元展開したところ,様々なPEO系非イオン性界面活性剤の組成分布やPEO-水添ヒマシ油の共重合組成分布を明らかにすることができた.また,紫外線硬化塗料に含まれるPEO系界面活性剤を除去して,ウレタンアクリル系成分の化学構造情報を得ることができた.本法は,工業製品の配合情報を簡便かつ詳細に得ることができるスクリーニング手法として有効であると思われる.
著者
高野 修治 佐藤 浩一郎 松岡 由幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第58回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2011 (Released:2011-06-15)

サステナブルな社会の実現や新たな価値の創生に向けて,21世紀のデザインには,多様な場や価値観の時間軸変動への対応が望まれている.しかし,従来のデザインは,時間軸変動を考慮する方法論を有さないことから,結果として,多くの人工物が使用時間の経過に伴い価値を衰退させるに至っている.この現状を打破する方策として,場や価値観の多様性およびそれらの時間軸変動に対応する新たなデザインのパラダイムとして,タイムアクシス・デザインが提唱されている.本研究は,タイムアクシス・デザインを具現化する価値成長デザイン方法論の構築を目的とし, 本報では,包括的な視点からデザインを捉えることができる多空間デザインモデルに基づいた価値成長デザインのためのタイムアクシス・デザインモデルを提案する.
著者
伊豆 裕一 加藤 健郎 佐藤 浩一郎 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.2_55-2_64, 2017-09-30 (Released:2017-12-22)
参考文献数
19

多くのデザイナーはデザイン案の発想にスケッチを活用する.一方,デザインの造形教育において,対象物を観察し表現するデッサンが重視される.両者の目的は異なるものの,透視図法や陰影法など,使用される表現スキルには共通点も見られる. 本研究は,デッサンとスケッチの描画スキルと描画過程を比較することにより,両者の関係について知見を得ることを目的とした.まず,10 名の対象者のデッサンとスケッチを描画スキルにより評価し分類した結果,対象者はデッサンスキル高,スケッチスキル高,およびその他の3つのグループに分けられた.つぎに,各グループのデッサンとスケッチの描画過程を分析し比較した結果,線や陰影と言った要素の描写時間や描画手順にグループによる違いが確認された.以上について分析した結果,デッサンとスケッチの描画には,表現スキルに加えて立体形状の認識方法の違いが影響することが示唆された.
著者
大和大峯研究グループ 岩橋 豊彦 奥田 尚 佐藤 浩一 竹内 靖夫 南浦 育弘 八尾 昭
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-26, 2002-01-25
参考文献数
31
被引用文献数
11

入之波地域の地質は,構造的に上位から下位に向かって秩父帯の三之公層(ジュラ紀中世前期頃)・北股川層(ジュラ紀中世中期-後期)・奥玉谷層(ジュラ紀新世前期)・黒石層(ジュラ紀新世中期-後期)・大普賢岳層(ジュラ紀新世中期-後期)・山葵谷層(ジュラ紀新世後期)・高原層(白亜紀古世前期)・,四万十帯の伯母谷川層(Albian-Cenomanian)・赤滝層(Turonian-Campanian?)と重なり,各地質体はスラストで境される.今回新たに報告した三之公層・北股川層・奥玉谷層・黒石層はメランジュからなる地質体であり,付加コンプレックスの特徴を示す.当地域の秩父帯は,ジュラ紀中世から白亜紀古世に至る付加過程で形成された一連の地質体で構成される.秩父帯の各地質体は低角度のスラストで境され,地帯を境するような高角度の断層はない.また,黒瀬川帯の存在を示すような地質体や岩石も見いだされない.秩父帯は,大峯-大台スラストを境してナップとして四万十帯の上に衝上している.南北性の高角度断層である入之波断層を境して,西側の地質体が上昇している.
著者
丹羽 浩一郎 佐藤 浩一 杉本 起一 伊藤 智彰 折田 創 櫛田 知志 櫻田 睦 前川 博 坂本 一博
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1005-1011, 2013-09-30 (Released:2014-01-10)
参考文献数
14

要旨:大腸穿孔の成因と治療成績,および予後予測因子について検討を行った。過去17年間に当院で緊急手術を施行した大腸穿孔182例を対象とした。死亡例は38例(死亡率:20.8%)であった。穿孔原因別に救命群と死亡群の2群に分けて検討した。大腸穿孔の原因として憩室(44.0%),大腸癌(30.2%),特発性(8.2%)の順に多かった。憩室,大腸癌を原因とする大腸穿孔では,多変量解析でAPACHIIscoreが独立した予後予測因子であった(それぞれp=0.002,p=0.038)。憩室を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが20点以上で死亡率85.7%と有意に高く(p<0.0001),また大腸癌を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが18点以上で死亡率75.0%と有意に高くなった(p<0.0001)。各症例の重症度を評価し,治療戦略を立てる際には,APACHEIIscoreが指標になる可能性が示唆された。
著者
邨田 裕子 佐藤 浩 山田 一貴 今井 更衣子 川原村 加奈子 濱西 正三 廣瀬 雅哉
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.367-375, 2014

重症母児間輸血症候群の3例について,転帰良好であった2例と,児が死亡した1例を報告し,予後に関与する要因等について検討した.症例1は29歳初産婦で,37週5日に2日前からの胎動消失,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.緊急帝王切開術にて2962g,Apgar score 2点/5点(1分後/5分後)の男児を娩出した.児は血中ヘモグロビン(Hb)3.5g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.Kleihauer-Betke法(KB法)での母体血中胎児赤血球比率9%から推定出血量409ml,血液喪失率(失血量/胎児全血量)110.6%と算出した.症例2は,34歳の4回経産婦で,妊娠35週6日に前日からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングで基線細変動の減少と遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.胎児超音波所見で中大脳動脈収縮期最大血流速度(MCA-PSV)120.7cm/sec(2.36MoM),心拡大,心嚢液貯留を認め,帝王切開術にて2245g,Apgar score 2点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.胎児赤血球比率3.2%から推定出血量90ml,血液喪失率32.1%と算出した.症例3は28歳の1回経産婦で,妊娠33週より軽度胎児発育不全があり,妊娠35週6日に2,3日前からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと基線細変動の減少を認め,当院へ母体搬送された.胎児MCA-PSVは95.1cm/sec(1.86MoM)で,帝王切開術にて2196g,Apgar score 4点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで,輸血,アシドーシス補正などの治療が施されたが,多臓器不全のため生後8日目に死亡した.胎児赤血球比率4.7%から推定出血量172ml,血液喪失率62.8%と算出した.各症例の臨床所見・検査結果の比較では,出生直後の児の血中LDH,CPK,D-ダイマーが症例の予後と関連する可能性があると思われた.〔産婦の進歩66(4):367-375,2014(平成26年10月)〕