著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 中橋 雄 浅井 和行 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-46, 2016 (Released:2017-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
5

本研究は,マンガを読解・解釈・鑑賞する活動を通してメディア・リテラシーを育成する学習プログラム(小学校第5学年対象)を開発し,その有効性を検証したものである。国語科の漫画家を題材にした説明文の学習を通して,マンガの表現技法について学んだ上で,漫画家の作品を読み込み,マンガレポートや本の帯やポップを作成する活動を行った。能力評価尺度を用いた事前調査と事後調査の平均点を比較したところ,全ての項目で事後調査の平均点が高く,有意な差を確認することができた。また,開発した学習プログラムを実施したクラスの平均点は,実施していないクラスの平均点よりも高く,有意な差を確認することができた。評価基準による3者の評価の平均点が3点満点中2.5点以上であったこと,Kendallの一致度係数はすべてW=.7以上であったことから,本論で示した学習プログラムは有効であったことが示唆された。
著者
中澤 洋三 坂 尚憲 山﨑 雅夫 佐藤 広顕
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.476-482, 2017-09-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
20
被引用文献数
2

エミュー肉は,アメリカやオーストラリアにおいて,健康的な食材として流通しているが,その加工特性は不明な点が残されている.本研究は,エミュー肉を使ったフランクフルトソーセージ製造のための化学的および加工特性を明らかにすることを目的とした.豚もも肉と比較し,エミューもも肉は,高タンパク質であるが,コレステロールを含む脂質の量が顕著に低かった.また,エミューもも肉は豚もも肉よりも6倍多くの鉄を含んでいた.エミューのひき肉に塩を加えたところ,塩溶性タンパク質の溶出が低かったが,得られた加熱ゲルは高いゲル強度を示した.発色剤によって発色されたエミュー肉糊の色は,豚肉のそれと比較し,加熱に対し安定性を示した.これらの結果を基に,最適化した方法で調製したフランクフルトソーセージは,良好な物性と色調だけでなく,高タンパク,高鉄分,低脂質,低塩分および低カロリーを示す製品であった.
著者
山本 峻平 髙橋 彰 佐藤 弘隆 河角 直美 矢野 桂司 井上 学 北本 朝展
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

デジタル技術とオープンデータ化の進展によりデータベースの活用が注目されている。近年では、インターネット環境の充実により画像や写真に関するデータベースの制作が多くなってきている。例えば、横浜市図書館や長崎大学図書館における古写真データベースなどがあげられる。これらの写真は明治・大正頃の写真や絵ハガキを中心に構成されるが、当時の都市景観がわかるデータベースとして貴重である。発表者らも立命館大学において戦後の京都市電を主な題材とした『京都の鉄道・バス写真データベース(以下京都市電DB)』を公開している(http://www.dh-jac.net/db1/photodb/search_shiden.php)。京都市電DBの活用策としては市電車両を被写体としながらも当時の都市景観が背景として写りこんでいることから、景観研究や都市研究に活用できること、また、年代が戦後から廃線の1978年までの時代であり、記憶の呼び起こし、まちあるきや観光への応用が期待できる。<br>近年、まちあるきが人気を集め、テレビや雑誌などで特集が組まれ、関連する書籍が多く出版されている。その中で、景観の変化や復原、相違点を探すことが行われているが、過去の景観を示す資料は探しだすことは容易ではない。そのような資料の一つとして京都市電DBを活用することが期待される。<br>写真データベースに収蔵されている写真を現地に赴き照合することで、当時の景観との差異が発見でき、まちあるきのアクティビティとして楽しむことができる。また、まちあるきの利用だけではなく、当時の景観との比較から眠っていた当時の記憶が呼び起こされ、記憶のアーカイブなどの研究へも活用できる。<br>本研究は、写真データベースのまちあるきツールとしての有用性の検証を行うとともに、記憶を呼び起こすツールとしての有効性についても検証を行なう。<br>本研究では、国立情報学研究所の北本氏を中心とした研究グループが開発を行っている、アンドロイド・スマートフォン用アプリ、「メモリーグラフ」をアレンジし、「KYOTOメモリーグラフ」アプリを作成し、使用する。アプリには当時の写真が位置情報を持った形で収蔵されおり、それを基に撮影された場所に赴く。次に、スマートフォンの画面に当時の写真を半透明で表示することが出来るので、今昔の写真を重ね合わせ、当時と現在の同アングルの撮影が可能となる。また、撮影された写真には位置情報が付加され、撮影場所の地図による表示やGISと連動することができる。さらに、撮影した写真にはタグが入力でき、コメントや思い出などを入力することができる。これらのデータはスマートフォン内部だけでなく、サーバーに保存することができ、撮影された今昔の写真データや付加されたコメントなどのメタデータをアーカイブし蓄積することができるようになっている。また、当時の写真を現在の風景と重ねる行為は撮影位置や傾きなど撮影時の条件に近づけなくてはならず、当時の撮影者の追体験が得られる。現在、実証実験と位置づけ、プロジェクトメンバー及び近接の関係者数人を被験者として「KYOTOメモリーグラフ」を利用したまちあるきを数回実施する予定である。被験者にはこちらで用意したスマートフォンを貸与するほか、各自のスマートフォンを用いる。今回の実験は、グループで実施し、機器やアプリへの習熟度、安全性、行動観察などを検証する。
著者
棟朝 雅晴 高井 昌彰 佐藤義治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1815-1827, 1994-09-15
参考文献数
19
被引用文献数
4

本論文では集団分割に基づく並列遺伝的アルゴリズムにおいて、効率的な個体交換を行う交換アルゴリズムを提案する。集団分割による並列遺伝的アルゴリズムは、個体からなる集団をいくつかの部分集団に分割し、それぞれを並列計算機のプロセッサに割り当てて遺伝的アルゴリズムを実行することにより、中粒度の並列処理を実現するものである。この手法においては集団の一様化による探索効率の減沙を防ぐために部分集団間で通信ネットワークを介した個体交換を行う必要がある。マルチプロセッサシステムにおいてプロセッサ間通信量を減少させることがその性能を向上させる上で重要であるが、並列遺伝的アルゴリズムに関する従来の研究では、個体の交換がその必要性とは関わりなく一定世代ごとまたは一定確率で行われており、並列処理の効率が悪いと考えられる。本諭文で提案する個体交換アルゴリズムSigma-Exchangeは各部分集団内の適合度分布を観測し、適合度分布の標準偏差の値が一定割合減少した場合にのみ交換の手続きを起動することにより、少ないプロセッサ間通信でより精度の高い解を速く得ることを目的としている。提案する手法の有効性を示すために、非同期のメッセージ受渡しによる中粒度並列計算機であるマルチコンビュータネットワークを前提としたシミュレーション実験を行った。その緒果、代表的な組合せ最適化間題について、提案する手法が有効であることが示された。
著者
小川 剛史 佐藤 博則 狩川 大輔 高橋 信
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.343-354, 2017

The human-centered automation principle, saying that the human should have the final authority over the automation, has been regarded as the essential design requirement of automated systems. However, the reliability of human performance can be decreased by the effects of time pressure, high workload, and so on. Therefore, adaptive automation systems, which are characterized as the dynamic function allocation between the human and the automation, are expected. In order to realize such systems, the estimation of operators' workload are necessary. The present research, therefore, has developed a workload estimation method using the physiological data of an operator. A wearable sensing device called JINS MEME was introduced to obtain operators' electrooculography (EOG), acceleration, and gyro sensor data while they handled a complex simulation task provided by Smart Grid Simulator. A machine learning method, Support Vector Machine, has successfully identified two types of categories of operators' workload conditions, "High" and "Acceptable", over 90% accuracy using 10 parameters based on JINS MEME outputs. In addition, based on the detailed analysis of individual differences including each parameter, the effective utilization method of machine learning in workload estimation for adaptive automation has been discussed.
著者
佐藤 裕二 角田 拓哉 北川 昇
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.448-454, 2019-03-31 (Released:2019-04-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

口腔機能低下症の評価方法の一つとしてオーラルディアドコキネシス(ODK)が挙げられる。ODKは1秒間に/pa/ /ta/ /ka/をそれぞれ何回発音できるかをカウントする。しかし,高齢者自身が簡便に測定することは困難である。そこで,本研究ではODKの簡便な自己評価方法を考案し,従来法と比較した。 「ぱたか」と10個書かれた用紙を順に指さしながら発音し,自分で秒針のついた時計で時間を測定した(pataka 10回法)。また,同時に測定者がストップウォッチで時間の測定を行った。ODKの測定には口腔機能測定機器を用いた。結果を1秒ごとの発音数に換算した。被験者は高齢者27名で,測定はそれぞれ2回行い,その平均をデータとした。 pataka 10回法はODKの/pa/と/ta/と/ka/に有意な正の相関を示し,pataka 10回法で被験者と測定者の測定結果は有意な正の相関を示した。ODKでいずれかが4回/s未満を舌口唇運動機能障害の閾値とし,pataka 10回法で被験者測定が6秒以上,測定者で5.5秒以上を閾値としたときの感度はともに1.0,特異度はそれぞれ0.90,0.95であった。 新たに考案した方法は,閾値についてはさらなる検討が必要であるものの,患者による自己評価方法として有用である可能性が示唆された。
著者
山口 順也 天谷 直貴 前田 千代 佐藤 岳彦 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 李 鍾大 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_54-S3_60, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
10

発作性房室ブロックは, 心房興奮が予期せず突然に心室に伝導しなくなる病態と定義され, 長時間の心停止を生じるため, 繰り返す失神や突然死の原因となることが知られている. 本例は63歳, 男性. 主訴は眼前暗黒感・意識消失. 2010年 5月に意識消失発作あり近医を受診. 非通常型心房粗動と房室伝導能低下に伴う心室ポーズを認め, 当院に紹介. 心臓超音波検査では軽~中等度の僧帽弁狭窄を認めた. 当院入院後には心房粗動下に最大13秒の心室ポーズがみられ, その際には失神前駆症状を伴っていた. 恒久ペースメーカーの適応と判断したが, まずは心房粗動の治療を優先し心臓電気生理検査を施行. CARTOを用いてマッピングしたところ, 左房天蓋部に瘢痕領域を認めた. Activation mapにて左房天蓋部の瘢痕領域と右上肺静脈の天井との間を後壁側から前壁側に旋回する心房粗動と同定した. 瘢痕領域から右上肺静脈の天井にかけての線状焼灼にて心房粗動は停止し, 以後心房粗動は誘発不能となった. 洞調律に復帰後にはAH・HV時間の延長なく, また, 房室伝導能も正常であった. さらに, 治療後には房室ブロックに伴う心停止は消失した. その後は房室ブロックの再燃なく, ペースメーカーなしで経過している. 僧帽弁狭窄に伴う非通常型心房粗動で, 心房粗動時にのみ発作性房室ブロックした稀有な 1例を経験したので報告する.
著者
佐藤 寧
出版者
埼玉大学社会調査研究センター
雑誌
政策と調査 (ISSN:2186411X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.25-28, 2020

自動音声応答通話(オートコール)調査は、10年以上前から選挙情勢を測るための手法として活用されてきた。選挙情勢を分析するためのデータとして有効だが、回収率も低く確率標本に対する調査ではないため、調査結果の「値(%)」を世論として報道するに値する科学的根拠に乏しく、インターネット調査などと同様、主要マスコミの報道で世論を分析した報道で活用されることはなかった。しかしながら、インターネット調査は市場調査の分野では大いに活用されており、その有用性が確認されている。これには、非確率標本に対する調査の活用方法が確立されていることが背景にある。そして、オートコール調査に対しても同様のノウハウを当てはめることが可能である。本発表では、このノウハウを活用したオートコール調査の世論分析への活用について、「世論観測」の概念と共に解説する。Automated phone surveys have been used for more than 10 years as a method of gauging voter intentions in elections. They are useful in obtaining data for analyzing voter intensions, but the response rate is low and they do not target probability samples. Thus, there is not enough scientific basis for using the “value (in percentage terms)” of the results of such surveys while reporting news on public opinions. For this reason, automated phone surveys, as in the case of internet surveys, are not normally used by major media outlets for analyzing public opinions.However, internet surveys are widely used in market research, and their effectiveness has already been confirmed. The reason being, when it comes to internet surveys, a method has been established for using surveys of non-probability samples. The same know-how could be applied to automated phone surveys.This presentation discusses, along with the concept of “public opinion observation,” how to use this know-how in analyzing public opinions obtained from automated phone surveys.
著者
佐藤 雅彦 中村 豊郎 沼田 正寛 桑原 京子 本間 清一 佐藤 朗好 藤巻 正生
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.274-282, 1995-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

和牛がなぜおいしいかを解明する一助のために,銘柄牛とされる5種類の和牛の香気および呈味成分について検討した.理化学的分析の結果は以下のとおりである.(1) 赤肉部の分析では,ペプチドの分子量分布,ヒスチジン関連ジペプチドおよび核酸関連物質に銘柄による顕著な差は認められなかった.全アミノ酸量およびグルタミンは飛騨牛で多く,松阪牛で少なかった.(2) 脂質の分析では,いずれの銘柄牛もほとんどHPLCにおける保持時間(Rt)55分以降にピークが存在し,そのピークパターンは類似していた.脂質の融点は,神戸牛,米沢牛および松阪牛で低く,前沢牛および飛騨牛で高かった.(3) 加熱香気分析では,加熱後の牛肉試料中の脂質含量に差はないが,回収された香気画分の量,香気画分中の窒素化合物において前沢牛が多く,香ばしいことが予想された.また,官能基別分類では,酸類,アルコール類,アルデヒド類,ケトン類に銘柄による相違が認められ,これらは脂質に由来する化合物の差が現れていると考えられた.
著者
横田 純子 佐藤 淳子 荒川 敦 栗﨑 愛子 大村 千恵 金澤 昭雄 弘世 貴久 藤谷 与士夫 綿田 裕孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.699-705, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は58歳の女性.右眼瞼下垂を主訴に近所の脳神経内科専門医を受診し2型糖尿病と糖尿病による動眼神経麻痺と診断され内服加療が開始された.その後,右眼の視力低下がありMRIで眼窩内の腫瘍を認めたが生検を拒否したため経過観察となった.3か月後,視力低下により食事摂取量が低下,全身状態不良で当院に緊急入院した.入院時のMRIで眼窩内の腫瘍の頭蓋内浸潤を認めたため入院直後は脳浮腫や,肉芽腫などの炎症性疾患を考慮しステロイドが使用された.しかし,生検で侵襲型アスペルギルス症が疑われステロイドは中止となりボリコナゾールが開始された.ボリコナゾール開始半年後より病巣の縮小を認め,視力は改善しないものの頭痛などの症状は改善した.糖尿病患者で視力低下や眼球運動障害,眼臉下垂を認めた場合,真菌による眼窩先端症候群の存在を念頭におくべきことを示唆する症例であった.
著者
藤島 昭宏 竹内 健一郎 佐藤 充羽 佐藤 康太郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.241-250, 2012
参考文献数
15

研磨したチタンに4種類の表面処理(サンドブラスト,プライマー,2種類のトライボケミカル)を施し,7種類のレジンセメントを用いてチタン接着体を接着させ,せん断接着強さ(SBS)の測定を行った.チタン研磨面における接着強さは,機能性モノマーを含有するアンフィルド系レジンセメントでは,コンポジット系レジンセメントよりも顕著に高いSBSを示したが,表面処理を施しても接着強さには影響しなかった.サンドブラスト処理面へのプライマー(B-MDP)処理では,機能性モノマーを含有しないコンポジット系レジンセメントは,顕著に高いSBSを示した.また,トライボケミカル(TRB)処理においても,B-MDP処理面とほぼ同等の高いSBSを示した.以上の結果から,チタンに対する接着強さの増加には,B-MDP処理やTRB処理を施した後,機能性モノマーを含有しないレジンセメントを用いた場合,最も効果的であった.