著者
佐藤 大輔 黒須 正明 高橋 正明 高橋 秀明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.269-281, 2005-10-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
14

本研究では, 業界の機運として高まりつつあるユーザビリティ担当者の人材育成への関心を踏まえ, ユーザビリティ担当者に求められるコンピタンスの明確化を目指し, 現在のユーザビリティ業界で実際に広く要求されている経験的なコンピタンスを実証的に明らかにすることを目的とした. まず, ユーザビリティ業界のマネージメント層を中心に半構造化インタビューによる2度のデータ収集および分析を実施し, コンピタンスリスト (第1版) を作成した. 続いて, 質問紙調査によって検証と分析を行った. その結果, 大きく五つの分類からなり3段階に重要度分けされる, ユーザビリティ担当者に求められる54項目のコンピタンスリスト (第2版) をまとめた. また, マネージャとエンジニアで求められるコンピタンスに違いがあること, 活動している業種や職種などにかかわらず同一のコンピタンスリストを適用できることが明らかにされた.
著者
佐藤 浩輔 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.94-103, 2013-11

The current study investigates the influence of social factors, such as self-interest and involvement, on trust and its determinants, in the context of public decision-making in government, through two scenario experiments. In both experiments, participants'involvement (high/low) and, subsequent interest in the high- involvement condition (agreed/opposed) were manipulated and two trust models were compared: a tradi- tional model, which regards expectation about intention and competence as the component of trust; and an SVS model, which regards perceived salient value similarity as the primary determinant of trust. Two hypotheses were tested: 1)conflict of interest diminishes trust and value similarity; 2) expectation of the government's intention consistently predicts trust in government, regardless of self-interest. The results supported both hypotheses. Implications of value similarity in the context of public decision-making are discussed. 本研究の目的は、公共的意思決定場面における行政主体への信頼とその規定因に対して利害の一致・不一致や当事者性といった社会的要因がもたらす影響を、実験的手法を用いて明らかにすることにある。参加者の当事者性(高低)、および当事者性が高い場合の利害の方向(一致・対立)を操作し、シナリオ実験により、信頼が意図と能力への期待からなるという伝統的な信頼モデルと、主要な価値の類似が信頼の主要な規定因だとする主要価値類似性モデルの知見に立脚しつつ、2つの仮説を検討した:1)政策との利害の方向性は信頼および価値類似性の評価に影響を与える、2)意図への期待は評価者の立場によらず一貫して信頼を説明する。2つの実験結果からはほぼ一貫して仮説が支持される結果が得られ、公共的決定場面における価値類似性の位置づけについて考察した。
著者
佐藤 淳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.31, pp.25-30, 1999-04-22

従来のコンピュータビジョン研究では、画像データから如何にユークリッド幾何的情報を得るかが盛んに議論されてきた。ロボットを誘導したり対象物を認識するためにはユークリッド幾何的な情報が必要であると考えられて来たからである。これに対し、近年のヨーロッパのコンピュータビジョン界においては、アフィン幾何や射影幾何などのより一般化された幾何をもとに視覚研究を見直そうとする動きが出てきている。このようなより抽象的な幾何のもとに視覚を考えることにより、画像から対象物固有の不変量を計算したり、カメラを校正せずに複合現実感やヒューマンインターフェイスを実現する方法などが次々と示されてきた。本稿では、このような視覚の非ユークリッド幾何的な取り扱いについて論じ、これが画像メディアの研究において如何に重要な役割を果たすかについて述べる。In computer vision, the recovery of camera geometry and object shape has traditionally been studied in the Euclidean geometry. This is because the Euclidean geometry is required for object recognition, visual navigation and other computer vision applications. However, it was shown recently that the Euclidean geometry is not always required for many computer vision applications. Furthermore, it was shown that the non-Euclidean geometry can be recovered from images without using camera calibrations. In this paper, we consider the projective and algebraic geometries for computer vision and graphics, and show that they provide new approach in the research of computer vision and image media.
著者
深田 秀実 小林 和恵 佐藤 賢二 川名 英之 増田 智弘
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.3_1-3_20, 2012 (Released:2012-08-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

地方自治体の災害対策本部を対象とした従来の防災情報システムは、キーボードやマウスといった入力デバイスを用いるものがほとんどであり、災害発生時の緊迫した状況下で、正確かつ迅速にシステム操作を行なうためには、情報リテラシーの高い専門職員を配置する必要があった。しかし、自治体における現在の防災体制の中で、情報システムに精通した専門職員の配置を必須とすることは、行財政改革を進める必要がある自治体にとって、容易なことではない。そこで、本研究では、自治体の防災担当職員が災害発生直後の混乱した状況でも、容易に操作することが可能な災害情報管理システムを提案する。本提案システムでは、テーブル型ユーザインタフェースとデジタルペンを用いることにより、被害情報を容易に入力できる操作性を実現している。実装したプロトタイプを用いて想定利用者によるシステム評価を行った結果、デジタルペンでアイコンを入力する操作性や対応履歴閲覧機能について、良好な評価を得た。
著者
佐藤進著
出版者
税務経理協会
巻号頁・発行日
1973
著者
武田 友孝 石上 惠一 青野 晃 高橋 伸尚 星野 浩之 高山 和比古 宮田 正則 月村 直樹 佐藤 武司 島田 淳 早川 譲吉 大木 一三
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.254-267, 1991-11-25 (Released:2010-08-06)
参考文献数
35

顎関節は, 蝸牛, 耳小骨などの聴生感覚器および聴覚伝導路と発生学的, 解剖学的および神経生理学的に関連が深く, 顎関節症など咀嚼系の異常が聴覚系に多大な影響を及ぼしていることが推察される。そこで, 当教室で行っている顎口腔系状態と全身状態との関連に関する研究の一つとして, 外耳への音刺激により, 早期に上行性聴覚路より誘発される活動電位で, その起源が明瞭なところから, 異常の局在診断に有用とされ, 神経学的検査などに用いられている聴性脳幹反応に注目し, 本研究に応用している。今回, 著者らが, 顎関節症患者と健常者の聴性脳幹反応について, 比較検討を行ったところ, 聴関節症患者では, 健常者に比ベピーク潜時の延長およびピーク潜時の左右差が認められた。従って, 顎関節症患者は, 顎口腔系のみならず, 聴覚系および脳幹などにも影響を及ぼしている可能性が大であり, 今後さらに, これらについて詳細に究明していくとともに, 顎関節症の診査, 診断および治療にあたって, これらの領域との関連にも十分な注意を払うことが必要と考えられる。また, 顎口腔系機能の障害と全身機能との関係について, 多方面から検討を加えていくことも必要であると思われる。
著者
佐藤 徹也 櫛田 知志 藤野 幸夫 林 剛一 増尾 光樹 望月 智行
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.114-115, 2003-05-31 (Released:2014-04-03)
参考文献数
4

A 42-year-old woman was consulted to our hospital due to abdominal pain, diarrhea, and hematochezia. Laboratory tests showed leukocytosis, elevated CRP level, and Escheria coli (serum type O-166) was detected. First we diagnosed infectious colitis, so prescribed antibiotics. But her symptoms still continued. Colonoscopy and barium enema study revealed the total colitis type of ulcerative colitis, and it was comfirmed pathologically. We continued medical therapy with total parenteral nutrition, salazosulfapyridine, and prednisolone. After these treatment the patient condition improved. Follow up study by colonoscopy showed that the erosion, and pseudopolyposis remained, but inflammatory findings were improved markedly. The special type of Escheria coli caused infectious enterocolitis including diarrhea and gastroenteritis. It is concluded that emergent colonoscopy and stool culture are important for the diagnosis and treatment of ulceraive colitis.
著者
竹鼻 ゆかり 佐藤 千史
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.225-235, 2013 (Released:2014-09-05)
参考文献数
20

目的:本研究の目的は,研究者らが以前に作成した病気の子どもを理解し支援できるようになるための指導法を改訂し,その評価を行うことである.方法:改訂の主たる点は,指導法の内容の精選,指導者の統一,対象の一般化,評価方法の簡素化,介入群・対照群における1カ月後の追跡調査の実施である.準実験研究デザインにより,公立中学校の2年生222名を対象とし,介入群には,授業の1週間前に調査を行った後,授業前日に1型糖尿病を簡単に説明したパンフレットを配布した.翌日に病気の理解を促す授業を行い,その直後と1ヵ月後に事前と同様の調査を行った.対照群には,授業を行わず介入群と同日に調査とパンフレットの配布を行い,すべての調査終了後に倫理的配慮として授業を行った.結果:男子では「病気の理解」(p=0.001),「病気の支援」(p<0.001)において,女子では「病気の理解」(p=0.003)と「病気の支援」(p=0.016)「共感性」(p<0.001)において,事前より事後に有意に得点が上がっていた.また,一ヶ月後は男子の「病気の理解」(p=0.041),女子の「病気の支援」(p=0.047)において,事前より一カ月後に有意に得点が上がっていた.結論:慢性疾患の子どもを支援するための指導法の改訂版は,公立の中学生に対して効果があり,1型糖尿病などに罹患している子どもを支援するための指導法として活用できる可能性が示唆された.
著者
佐藤 正泰 諌山 明彦 稲垣 滋 長山 好夫 稲垣 滋 長山 好夫
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

相対論的効果、放射の伝搬方向、プラズマ閉じ込め装置の磁場構造・トーラス形状・真空容器内壁での反射を考慮し、炉心級プラズマにおけるシンクロトロン放射損失の評価を行った。高速電子の影響、内壁での反射及びモードスクランブルの効果、放射損失のプラズマパラメーター依存性を評価した。放射損失の磁場依存性はトロイダル磁場の2.5乗を示し、放射損失を低減するには磁場を下げる事が有効であり、これは現在の核融合炉の設計が低磁場化している傾向と整合している。
著者
佐藤 修一 大森 みさき 村山 恵子 中村 貴文 斎藤 光博 今井 理江 堀 玲子 長谷川 明
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.195-200, 1999-06-28
被引用文献数
13 6 8

日本歯科大学新潟歯学部の学生および職員から無作為に抽出した101名に対し,口腔内の揮発性硫黄化合物の濃度を測定する口臭測定器Model RH l7 Eハリメーター^<[O!R]> (Interscan社,米国)を用いて口臭測定を行い,口臭の官能試験と比較することにより,その有用性について検討した。また,同意の得られた者13名に対し口腔内診査を行い,口臭と臨床的パラメータの関連についても検討を行った。その結果,1) 官能評価値に対するハリメーター値の範囲に重複が認められるため,ハリメーターのみで口臭の程度を判別することは困難であると思われたが,官能評価値とハリメーター値は対応する傾向があり,本日臭測定器はチェアーサイドにおいて便用しうると考えられた。2)臨床的パラメータとハリメーター値はすべての指標において相関関係は有意ではなかった。
著者
遠藤 敏夫 手塚 七五郎 佐藤 吉永
出版者
日本交通医学会
雑誌
交通医学 (ISSN:00225274)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.p195-204, 1982-05
被引用文献数
6 7
著者
稲本 志良 河村 能夫 小田切 徳美 佐藤 了 横溝 功 鈴木 俊 横溝 功 小田切 徳美 佐藤 了 鈴木 俊
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究における成果は、先に、日本農業普及学会の平成20年度春季シンポジュームで報告した。その報告要旨及び最終報告は、当学会誌『農業普及研究』(平成21年6月刊行予定)に掲載される。本研究において特に重点をおいた理論的研究の内容は、農業普及をめぐる産業組織論的交際比較研究及び歴史的展開に関する研究である。また、本研究においては上記の理論的研究を基礎にした実証的研究を重視しており、その主な内容は、農業普及をめぐる多様な運営・活動主体の実現の把握・分析とその類型化に関する研究である。そこで得られた知見は多いが、その主要な知見は以下の諸点である。1) 公的部門における普及主体の多様化、民間部門における普及主体の多様化の進展。2) 普及主体が展開する普及活動の高度化と多様化の進展。3) 普及事業・普及活動の専門化と高度化と多様化、特に企業次元、地域次元、ここの活動次元における多様化の進展。4) 民営化・多様化、有料化の親展。なお、上記にした多様化の動向は、国の間で、また、特定国内における産業間、地域間において精査し、検討することが重要になってきている。
著者
松浦 勉 一盛 真 佐藤 広美
出版者
八戸工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

十五年戦争とその敗戦に伴うアメリカの対日占領下の日本の教育学の「戦争協力」と、戦争責任についての「反省」についての態様を検討するとともに、当該期の沖縄と水俣の問題を追究した。主要には「講壇教育学」者の海後宗臣の戦争教育学の展開と、戦後に教育科学研究会の委員長になる勝田守一の教育科学の形成過程を対象化した。期せずして、3.11の原発震災は、沖縄問題と水俣病事件の、教育の視点からの考察を不可避とした。
著者
林 力丸 河井 昭治 佐藤 周一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高圧分光学のうち、円偏光二色性(CD)のその場観察を行うための耐高圧セルを開発するため、石英光学セル、サファイヤ光学セル、人工合成ダイヤモンド耐高圧セルによるCD測定を検討した。これを用いてポリアミノ酸、各種タンパク質・酵素の円偏光二色性(CD)測定を高圧下で行った(「その場」観察)。特にαヘリックスやβ構造と共にタンパク質立体構造の耐圧力性を比較し、タンパク質構造形成の原理を解明することを目的にし、以下の結果を得た。1)高圧下(400MPa以下)でのCD測定を行うため、光学窓に石英とサファイヤを用いるセルを組み立て、紫外領域における測定限界の改良と、人工ダイヤモンド窓による光学セルを作成し、ダイヤモンドに含まれる不純物のCD測定に与える影響を検討した。その結果、近紫外CDの測定が可能なことを明らかにした。2)高圧下(500MPa)でポリグルタミン酸とボリリジンのαへリックスとβ構造の崩壊過程を観察するため、pH条件を酸性からアルカリ性に変化させて、pHと圧力の関係を測定した結果、ダイヤモンド窓は220nmに吸収があることがわかり、α、β両構造を明確に分離できなかった。3)リボヌクレアーゼAとカルボキシペプチダーゼYおよびそれらの1残基置換変異型酵素の圧力効果を解析し、タンパク質構造の圧力安定性を測定し、リボヌクレアーゼAのPhe120とカルボキシペプチダーゼYのシステイン残基の構造への寄与を明らかにした。4)ダイヤモンド窓をもつ耐圧セルにより、タンパク質の近紫外CDを測定し、圧力の三次構造に与える影響を解析した。特にリボヌクレーーゼAの280nm付近の高圧下のCDを測定し、この圧力変性が二状態遷移であることを明らかにした。
著者
佐藤 英二
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.231-239, 1997-12-12

Kinnosuke Ogura (1885-1962) was a mathematician, who introduced Perry's movement into Japan in the 1920s. His educational theory became a target for criticism in the 1960s on the grounds that it lacked logical and abstract aspect of mathematics. However this criticism holds true only at his Sugaku kyoiku no Konpon mondai (1924), but not at his later works. In Sugaku Kyoiku no Konpon mondai, he attached great importance on intuition, for it promoted students to think by self and to construct mathematical conception in their own ways, while he regarded mathematical logic as restraint of students'spontaneous thought. But in the 1930s works, he replaced 'intuition'with 'logic for children'. The intuition became no longer incompatible with mathematical logic. In addition he became to accept disciplinary value of mathematics education. What is more, getting powerfull in actual problem-solving, his theory got suitable to the need of militaristic empowerment in time of the Pacific War.
著者
秋元 典子 佐藤 禮子 Akimoto Noriko Sato Reiko アキモト ノリコ サトウ レイコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.26-33, 2003-06-30
被引用文献数
2 1

本研究の目的は,広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者が,がんと共に安寧に生きるための強靱さを獲得していくことを促進する看護援助を検討することである。研究対象は,癌専門病院で広汎子宮全摘出術を経験する初発の子宮がん患者19名で,対象者の術前から術後6ヶ月間にわたり面接法および参加観察法を用いたデータ収集を行い,質的帰納的分析により,対象者の安寧に生きるための取り組みの様相と,関連する看護援助を明らかにし,以下を得た。1.広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者は,【元気になりたい】という願いを原動力として,安寧に生きるためには【おしっこのコツをつかむ】【余計な消耗を避ける】【求めた情報を自分流に解釈して自らを救う】【生きるために懸命に食べる】【新しい価値観を獲得する】ことに取り組み,この取り組みの過程で【つまるところは自分次第】という意識を形成し,全ての問題解決に立ち向かう強靱な特性を培う。2.強靱さ獲得の源泉は,己の再生に欠かせない【おしっこのコツをつかむ】という必然的欠乏欲求であると言える。3.広汎子宮全摘出術を経験する子宮がん患者が,がんを抱えながら安寧に生きるための強靱さを獲得していくことを促進する看護援助は,【共有】【共感】【肯定】【支持】【強化】【尊重】を援助の基幹とし,(1)面接する(2)生活環境を快適に整える(3)食事を整える(4)身体の不快感や苦痛を緩和する,である。The purpose of this study was to identify how nursing care facilitated the efforts of cervical cancer patients who wanted to get well and to cultivate hardiness after a radical hysterectomy. Subjects were 19 patients with newly diagnosed cervical cancer who faced radical hysterectomy in a hospital specializing in cancer treatment. Data were collected by interviewing the patients and through a participant observation before and for 6 months after the operation. The following results were obtained by qualitative inductive analysis to reveal how the subjects faced the challenges of getting well and to clarify how nursing care was related to this effort. 1. Cervical cancer patients who experienced radical hysterectomy were motivated by the desire to be well and challenged the tasks of learning the technique of urination, avoiding unnecessary fatigue, acquiring and understanding information and using it to help themselves, eating well to build strength, and acquiring new values. During the process of those challenges to maintain well-being, they realized that "in the end, it is up to myself and cultivated the hardiness to face all problems. 2. The source of cultivating hardiness comes from maintaining ones' natural functions, such as learning the technique of urination. 3. Nursing care for cervical cancer patients with radical hysterectomy involved: a) interviewing patients, b) making their living environment comfortable, c) preparing meals and d) decreasing physical discomfort and pain. Such care was based on "Sharing," "Sympathy," "Affirmation," "Support," "Enhancement" and "Respect."
著者
佐藤 加代子
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

<研究目的>抗がん剤を含む細胞毒性薬剤の取り扱いの危険性に関しては、医療従事者の抗がん剤曝露を最低限に抑えるために、曝露防止に関して様々な検討がなされており、世界的にガイドラインが作成されている。本邦でも抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針として「抗がん剤調製マニュアル」が出され、医療従事者における抗がん剤曝露に関する注意喚起がなされている。しかし、マニュアルやガイドライン、様々な曝露防止に対する検討がなされているのは、ほぼ注射剤の抗がん剤調製に関する事であり、同様に曝露の危険性が高い散剤についての詳細な検討はない。そこで今回、同じ分包機を使用することによる他剤への汚染、また、汚染された散剤を服用することによる他の患者への影響を最小に抑えることを目的とした。<研究方法>6-メルカプトプリン製剤を自動散剤分包機で分包後、洗浄剤として重曹、酸化マグネシウム、乳糖で洗浄を行った。それぞれの洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量した。<研究成果>洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量は重曹で3回目には検出限界以下、酸化マグネシウムで4回目には検出限界以下、乳糖では5回目でも6-メルカプトプリンが検出された。以上の結果より、洗浄剤として炭酸水素ナトリウムを使用し3回以上洗浄することが最も確実に抗がん剤を洗浄できる方法であることが明らかとなった。当院では、抗がん剤を分包する際は、他の散剤の分包が無い時に行っており、分包後清掃を行っている。効果的な洗浄剤の種類と使用法を明らかにできたことで清掃作業者への影響を最小に抑えることが出来ると考えられる。