著者
佐藤 壽平
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.277-"373-8", 1938

抑々人體エアリテハ,解剖學上顔面頭蓋骨中ニ,其ノ大サ,位置,形状及ビ數ニ於テ,多少ノ個人的差異ヲ示ストハ雖,略々一定ノ配列ノ下ニ鼻腔ト連絡セル副鼻腔ノ存在スルハ周知ノ事實ナリ.元來此ノ副鼻腔ナルモノハ,胎生學上鼻腔ノ陷凹ニ依リテ發生スルモノナルガ故ニ,鼻粘膜ノ諸種病的變化ハ容易ニ副鼻腔粘膜ニ波及シ得ルモノナリ.之即チ吾人ノ日常最モ屡々副鼻腔疾患ニ遭遇スル所以ノモノニシテ,吾ガ専門領域ニ於テハ,該副鼻腔疾患ハ臨牀上最モ重要ナル位置ヲ占ムルモノノ一ツナリ.然ルニ現今尚該副鼻腔ノ有スル確然タル生理學的作用ノ定義ヲ下シ得ザルハ,吾人ノ最モ遺憾トスル所ナリ.茲ニ於テ各種動物副鼻腔ノ比較解剖學的研究ハ,其ノ生理學的作用ヲ探究シ,或ハ其ノ副鼻腔ニ關スル種々ナル實驗ヲ試ムルニ當リ必要缺ク可カラザルモノナル事ハ今更茲ニ喋々ヲ要セザル所ナリ.然ルニ從來ノ主ナル文獻ヲ渉獵スルニ,哺乳類ニ關シテハ,Paulli,S.,Eller,H.及ビRichter,H.,鳥類ニ於テハ,Beecker,A.,Lurje及ビBleicher,M.,兩棲類ニ於テハBorn,G.,Seydel,O.及ビNemours,P.R.等ノ研究ヲ擧ゲ得レドモ,何レモ本問題ノ核心ニ觸レザルモノノミニシテ今日迄ニ尚動物ノ副鼻腔ニ關スル詳細ナル系統的研究ナルモノハ未ダ發表セラレザルノ現状ナリ.コノ時ニ當リ,本研究ガ聊々ナリトモ學會ニ貢獻スル所アランカト思惟シ,中村教授指導ノ下ニ本問題ニ着手シタル所以ナリ.以下簡單ニ成績ヲ報告シ以テ諸先輩諸賢ノ御批判ヲ仰ガントスルモノナリ.實驗動物ハ哺乳類ヨリ犬,猫,家兎及ビ海〓ヲ,鳥類ヨリ鶏,鳩及ビ雀ヲ,兩棲類ヨリハ蛙及ビ山椒魚ヲ選擇セリ.實驗方法トシテハ,哺乳類及ビ鳥類ニアリテハ先ヅ動物ヲ斷頭,固定後,顔面及ビ頭蓋骨ニテ蔽ハレタル頭部ヲ取リ出シ,夫々基準線ヲ定メ,其ノ上方及ビ左右兩側ヨリ直視シタル圖ヲ描キ,次デ脱灰水洗後一定量ノ白蝋並ニ寒天ニテ該頭部ヲ包裏シタル後,本學解剖學教室島田教授ノ御創案ニ係ル腦截斷器ヲ拜借シ,前額面ニ於テ基準線ニ直角ニ2mm乃至3mmノ厚サヲ有スル連續切片ヲ作成シ,各斷面ヲ直接描寫シテ得タル各斷面圖ヲ基礎トシテ副鼻腔ノ位置ヲ記入セリ.次ニ容積ハ石膏ニテ作リタル頭部全體ト其ノ副鼻腔トノ模型ヲ夫々ぱらぷいんヲ以テ充分浸漬セシメタル後,比重天秤ヲ應用シテ測定セリ.兩棲類ニアリテハ,上述ノ如キ操作困難ナルガ故ニ,之レ等ハ凡テちえろいぢん包裏法ニ從ヒ,前額面ニ於テ切斷シテ得タル標本ヲ以テ觀察セリ.尚各種動物ノ副鼻腔粘膜ハ,ちえろいぢん又ハぱらふいん包裏法ニヨリテ得タル標本ニ就キ比較セリ.以上ノ實驗方法ニ基ヅキテ檢索セシ結果ヲ概略述ブレバ凡ソ次ノ如シ.1.哺乳類ニ於テハ,共ノ副鼻腔ノ種類及ビ數ハ各網目ニ依リ異ナル.即チイ.哺乳類中,食肉類ニ屬スル犬及ビ猫ニアリテハ,完全ナル副鼻腔トシテハ上顎竇及ビ前額竇,不完全ナルモノトシテ蝴蝶竇及ビ篩骨竇ヲ區別シ得.ロ.哺乳類中,噛齒類ニ屬スル家兎及ビ海〓ニアリテハ,完全ナル副鼻腔トシテハ上述食肉類ノ上顎竇ニ一致スルモノ唯々一ツ認メラルルノミナリ.不完全ナルモノトシテハ家兎ニ於テハ蝴蝶竇及ビ篩骨竇ヲ,海〓ニ於テハ篩骨竇ノミヲ列擧シ得.2.鳥類ニ於テハ,其ノ副鼻腔ノ種類及ビ數ハ各網目ニ依リテ著シキ差異ヲ認メズ.即チイ.實驗ニ用ヒタル凡テノ鳥類即チ鶏,鳩及ビ雀ニ於テハ常ニ哺乳類ノ上顎竇ニ一致セル副鼻腔唯々一ツ認メラル.ロ.鳥類ノ副鼻腔ハ特有ニシテ,次ノ諸點ニ於テ哺乳類ノ上顎竇ト區別シ得ラル.即チi)鳥類ノ副鼻腔ハ外皮ニテ蔽ハレタル軟部組織ニ依リテ副鼻腔外側ノ大部分境界セラル.ii)眼窩底ニ迄擴大シ,所謂Sinus infraorbitalisヲ形成ス.iii)鳥類中特ニ鳩ニアリテハ,所謂Sinus infraorbitalisナルモノハ明ニ區別セラレ,極メテ狭隘ナル間隙ヲ以テ副鼻腔ト連絡ス.即チ先ヅ自然ロヨリSinus infraorbitalisニ開ロシ,然ル後,上顎竇ニ相當スル副鼻腔ニ連絡ス.之レ其ノ他ノ島類即チ鶏及ビ雀ト異ナル點ナリ.iv)鳥類中,鶏ニ在リテハ,哺乳類ニ於ケル前鼻甲介ニ一致スル上甲介ナルモノアリテ,コノ外側ニハ1ツノ腔胴アリ.副鼻腔ハ何等著明ナル限界ナクシテ,コノ腔胴ニ移行ス.之レ即チ鶏ノ副鼻腔ガ噛齒類殊ニ家兎ノ副鼻腔ト相通ズル點ナリ.如何トナレバ,噛齒類ニ於ケル副鼻腔モ亦其ノ前鼻甲介内ニ存在スル袋状ノ腔胴ニ連絡スレバナリ.v)鳥類中,鶏以外ノモノ即チ鳩及ビ雀ニアリテハ,鶏ノ如キ上甲介ヲ有セズ,從ツテ鶏ニ於テ認メラルルガ如キ副鼻腔ノ擴大状況ヲ呈セズ.3.兩棲類ニ於テハ,其ノ副鼻腔ノ種類及ビ數ハ各綱目ニ依リテ著シキ差異ヲ認ム.即チイ.兩棲類中,蛙ニ於テハ,中腔並ニ下腔ト稱スル副鼻腔アリテ,下腔外側ノRecessus lateralisガ哺乳類ノ上顎竇ニ相當スルモノナリ.ロ.兩棲類中,山椒魚ニアリテハ,明ニ完成サレタル副鼻腔ヲ具備セズ.只鼻腔外側ニ,恰モ蛙ノRecessus lateralisヲ想像セシムル如キ裂隙認メラルルノミ.4.實驗ニ供シタル各種動物ニハ,其ノ發育程度種々ナルモ,1ツノ共通ナル副鼻腔即チ上顎竇ニ一致スルモノヲ認ム.5.該上顎竇ト其ノ周圍臟器トノ關係ヲ觀ルニ,哺乳類及ビ鳥類ニアリテハ眼窩ト密接ナル解剖學的關係ヲ有スレ共,兩棲類ニアリテハ然ラズ.又齒列ニ對シテハ,家兎及ビ海〓ニアリテハ,第1乃至第3臼齒之レニ接近スレ共,其ノ他ノ動物ニアリテハ關係僅少ナリ.6.該上顎竇自然孔ノ鼻甲介ニ對スル位置ハ,哺乳類及ビ鳥類ノ間ニ於テ一見著シキ差異アル觀ヲ呈スルモ,比較解剖學的見地ヨリ觀レバ,兩者ノ間ニ甚シキ差異ヲ認メズ.兩棲類ニアリテハ,獨リ,此等ト全ク異ナリタル關係ヲ有ス.即チイ.該上顎竇自然孔ハ,哺乳類ニ於テハ下甲介後端ノ上方ニ,鳥類ニ於テハ,哺乳類ノ下甲介ニ一致スル中甲介後端ノ上方ニ位ス.ロ.兩棲類中,蛙ニ於テハ,該上顎竇ニ相當スルRecessus lateralisハ判然タル境界ナクシテ下腔ニ移行ス.ハ.兩棲類中,山椒魚ニ於テハ,蛙ト同様ニ,自然孔トシテ認メラル可キ境界ナクシテ鼻腔ニ移行セル副鼻腔ヲ想像セシムル裂隙アルノミ.7.該上顎竇自然孔ノ形状ニ關シテハ,哺乳類及ビ鳥類ノ間ニ於テ,何等著シキ差異ヲ認メザルモ,副鼻腔,鼻腔底或ハ竇底ニ對スル位置的關係ハ兩者ノ間ニ於テ著シキ差異ヲ認ム.即チイ.哺乳類及ビ鳥類何レニ於テモ,上顎竇自然孔ハ半月状ノ狭隘ナル裂隙状ヲ呈ス.ロ.家兎ヲ除ク其他ノ哺乳類ニアリテハ,凡テ上顎竇自然孔ハ副鼻腔ノ前端ニテ竇底並ニ鼻腔底ニ近ク,共ノ半月状自然孔ノ彎曲面ヲ前方ニ向ハシメテ存在シ,副鼻腔上顎竇全體ニ比シテ比較的大ナル周圍ヲ有ス.ハ.家兎ニアリテハ,該自然孔ハ副鼻腔ノ稍々中央ニテ竇底並ニ鼻腔底ヨリ遙カ上方ニ位シ,共ノ彎曲面ハ後方ニ向フ.ニ.鳥類ニアリテハ凡テ,家兎ト等シク其ノ自然孔ハ竇底並ニ鼻腔底ヨリ遙カ上方ニ位スルモ,其ノ彎曲面ヲ上方ニ向ハシメ,略々副鼻腔ノ上方ニ開ロス.8.該上顎竇自然孔ノ副鼻腔ニ連絡スル状況ハ動物ノ種類ニヨリ異ナル.即チイ.哺乳類及ビ兩棲類ニ於テハ,直接自然孔ヨリ副鼻腔ニ至ル.ロ.鳥類中,鶏及ビ雀ニ於テハ,先ヅ,前眼窩壁ニ沿ヒ,自然孔ヨリ後下方ニ走行セル極メテ短キ且狭隘ナル裂隙状ノ管ヲ介シテ,眼窩底ニ迄擴大セル上顎竇ニ開ロス.ハ.鳥類中,鳩ニ於テハ特有ニシテ,先ヅ,自然孔ヨリSinus infraorbitalisニ至リ,然ル後上顎竇ニ連結ス.9.粘膜ノ構造ニ就テハ,鳩ヲ除ク上記凡テノ動物ニ於テハ,單層纎毛圓柱上皮ニヨリテ蔽ハル.但シ鳩ハSinus infraorbitalisノ範圍ニ於テハ,他ノ動物ト同様ナレ共,上顎竇部ニ於テハ單層骰子形,纎毛ヲ有セザル上皮ニヨリ蔽ハル.上皮間ノ杯状細胞ハ鳩及ビ雀ヲ除ク凡テノ動物ニハ存在ス.固有膜ニテハ,哺乳類ノ上顎竇ニノミ多數ノ腺ヲ有ス.血管ノ分布状況ハ,犬,鶏及ビ蛙ニ於テハ比較的多ク,其ノ他ノ動物ニ於テハ少數ナリ.10.最後ニ,犬及ビ猫ニアリテハ上顎竇及ビ前額竇,其他ノ哺乳動物及ビ鳥類ニアリテハ,上顎竇ニ相當スル副鼻腔ノ顔面頭蓋全體ニ對スル容積ノ比ヲ求メタルニ,凡テ極ク僅カノ價ヲ示スノミナリ.11.以上ノ實驗殊ニ粘膜並ニ容積ノ比較研究ヨリシテ,副鼻腔ナルモノハ,吸氣殊ニ深呼吸ノ際ニ空氣ヲ温メ、且濕潤ナラシムトノ學説ヲ支持スレ共,頭蓋ヲ輕減ナラシムトノ學説ニ對シテハ寧ロ支持セザルモノナリト思考ス.
著者
佐藤 之彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フライングキャパシタ方式のマルチレベルコンバータは,キャパシタを小型化できる可能性を持つことから,実用化に向けた集積化に適している。本研究では,この方式に関して,キャパシタ電圧の挙動について詳細に解明し,これを安定に保つための条件を明らかにした。さらに,電磁ノイズの発生機構とその低減に向けた指針を明らかにするとともに,集積化に適したゲート回路方式やその絶縁電源の構成法を明らかにし,これらに基づいて試作回路を製作し,最近の2レベルインバータと同等以上のパワー密度(体積あたりの変換器出力)が得られることを実証した。
著者
宮内 清子 望月 好子 石田 貞代 佐藤 千史
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.433-441, 2009-01
被引用文献数
1

目的:中高年女性の就業形態が更年期症状にどのように影響しているかを明らかにし,今後の健康支援において主たる対象とすべき集団の特性とその課題をみつけることを目的とした。方法:対象者は40〜65歳までの女性とし,都内および近郊に在住の某女子大学学生の母親および大学関係者から公募した。調査協力に同意の得られた220名を対象として,自己記入式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,生活習慣,健康情報入手方法,健康相談相手,将来の健康不安,更年期症状とした。更年期症状は簡略更年期指数(SMI)を用いて調査した.また,医学中央雑誌で先行研究を検索し,SMIの得点を比較した。結果:SMI得点は先行研究における一般女性とほぼ同様の結果であった。SMIの得点を就労形態別に5群で比較したところ,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた(p=0.049)。症状別にみると,自営業群は他の群と比較して「怒りやすくいらいらする」「くよくよしたり,憂うつになったりする」「頭痛・眩暈・吐き気がよくある」などの精神的症状が有意に高かった。結論:就業形態別に更年期症状を検討した結果,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた。特に自営業群の精神的な症状が,他の群に比べて有意に高かった。このことから自営業の中高年女性に精神面の支援の必要性が示唆された。
著者
佐藤 幸男
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.241-258, 1974-12-01

日常生活の中で我々は「選挙」、「就職」、「結婚」とかの決定を迫られたり、定めなけれぽならない状況が数限りなく存在している。この意思決定の問題は人間の社会生活だけに限らず、経営レヴェル、国家レヴェルにおいても複雑な構造をもち、人間一人では解決されない幾多の難問をかかえこんでいる。『三人寄れば文珠の智恵』という諺にもあらわれているように、このような難問を解決する為に、集団や組織が構成される。多段階組織では中井正一氏のいう「正しく考え、それを他に対して正しく主張する」ことが、いかなるメカニズムを通して疎外されたり、行なわれたりして合理的な決定を生みだすのか。筆者の論点はそこにあり、研究対象にもなる。
著者
永田 勝秀 片山 幸太郎 東條 秀太郎 佐藤 泰生 松沢 耕介
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.264-272, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
17

We prepared two types of bone defect fillers (BDFs) which were made from a mixture of α-tricalcium phosphate (α-TCP) with chitosan or alginate in solution. A solidifier was added to the mixtures. These solutions were then kneaded to be solidified. The solid substances, named chitosan-BDF and alginate-BDF, were implanted in femurs of guinea pig to study the effects of the BDFs on the processes of bone formation by EPMA. The alginate-BDF was surrounded with growing bone from all directions at 6 months after the operation and seemed to have an affinity to the tissues. However, no degraded or absorbed form of the BDF was observed. In contrast, most of the chitosan-BDF was replaced by growing bone at 6 months. The adjacent part of the BDF to surrounding cortical bone was especially well-absorbed, probably due to being involved in a reabsorption process after ossification. According to the data, both BDFs were shown to have excellent mechanical properties for filling bone defects. Especially, the chitosan-BDF would be useful as bone defect filler because of its induction of ossification and its smooth absorption.
著者
辛 徳 嶋田 修 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1860-1869, 2004-09-01
被引用文献数
12 3

これまで,人腕のインピーダンスは,マニピュランダムにより摂動を与えることで計測されてきた.これらの実験結果はいずれも摂動区間の平均値なので,時間に対して連続的に変化するスティフネスは測定不可能であり,その摂動区間以外には測定できない.更に,このような摂動実験環境では運動中や接触作業中の変化するスティフネス特性を解析することは難しい.そこで,本研究では表面筋電信号を運動指令とする筋肉骨格系のモデルを作成して,このモデルから直接スティフネスを推定する方法を提案する.このモデルは筋肉の長さの変化項及び筋肉の硬さの変化項を線形関数で表現し,関節トルクを運動指令に関して2次まで表現した.そして,このモデルのパラメータは,筋電信号と力センサから計測した関節トルクを用いて最小二乗法により求めた.その結果,パラメータの推定に使用していないデータに関しても関節トルクを推定できるようになり,スティフネスの連続的な変化値やスティフネス楕円体を推定することができた.
著者
佐藤 正明
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.941, pp.72-75, 1998-05-18

家庭用ビデオ「ベータマックス」の図面とカセットを携え、ソニーの副社長、岩間和夫と専務の大賀典雄が、ビクターの本社を訪ねてきた。それを見た高野鎭雄は、ソニーの技術力の高さを思い知らされる。水面下でVHSの開発を続けてきたものの、明らかにソニーに水をあけられてしまった。このままVHSの開発を続けるべきか、ソニーの方式を受け入れるべきか思い悩む。
著者
大塚 耕太郎 鈴木 友理子 藤澤 大介 米本 直裕 加藤 隆弘 橋本 直樹 岩戸 清香 青山 久美 佐藤 玲子 鈴木 志麻子 黒澤 美枝 神先 真
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療、精神保健、および家族、社会的支援制度に該当する領域(法律、生活相談)、教育など幅広い領域におけるゲートキーパー養成プログラムを内閣府と協力して作成した。また、内閣府との共同で全国へ研修会やITを通じた普及を図り、ファシリテーター養成のためのプログラムを提供した。うつ病、統合失調症、不安障害、物質依存という4つの精神疾患の危機対応法プログラムとファシリテーター養成プログラムの開発を地域の精神保健に関する関係機関と共同で行い、有効性や妥当性を検証した。
著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1655-1664, 2014-07-15

ビデオゲームエージェント(ノンプレイヤキャラクタ:NPC)の振舞いの自動獲得において,「人間の熟達者に勝利する」という長年の目標を達成する日もそう遠くない.一方で,ユーザエクスペリエンスの向上策として,『人間らしい』NPCをどう構成するかが,ゲームAI領域の課題になりつつある.本研究では,人間らしい振舞いを表出するNPCを,開発者の経験に基づいて実現するのではなく,『人間の生物学的制約』を課した機械学習により,自動的に獲得することを目指す.人間の生物学的制約としては「身体的な制約:“ゆらぎ”,“遅れ”,“疲れ”」,「生き延びるために必要な欲求:“訓練と挑戦のバランス”」を定義する.人間の生物学的制約の導入対象として,アクションゲームの“Infinite Mario Bros.”を採用し,本研究で獲得されたNPCが人間らしい振舞いを表出できているか検討する.最後に,獲得されたNPCの振舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証する.
著者
小関 友宏 佐藤 剛 國家 全
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.37, 2008 (Released:2008-12-01)

【目的】 当院では,2004年より大腿骨頚部骨折クリニカルパス(以下CP)を導入し,一般病棟から回復期病棟入棟後も継続して運用している。また,医療機関の連携体制が評価されるようになった2006年からは地域連携パスも導入しており,他院から継続してCPを使用する頻度も増している。そこで今回,CP適応患者の現状を調査し,CP運用に影響する因子を検討したので報告する。【方法】 平成19年6月から平成20年3月までに当院に入院した大腿骨頚部骨折者で,当院で手術施行した35例,他院で手術施行した33例計68例のうち,受傷前ADLが車椅子レベルであった者、術後免荷期間が与えられた者,合併症により転科及び転棟した者を除く35例を対象とし,アウトカム達成した群19例(以下達成群)と,アウトカム達成できなかった逸脱群16例(以下逸脱群)に分類した。 当院CPは,後期高齢者が多い現状を考慮し,手術から回復期病棟入棟までを約1週,入棟から退院までを約12週と仮定し,アウトカムを約100日と設定している。 2群間で,年齢,手術から日中座位3時間の獲得日,手術から排泄動作自立日(ポータブル含む),手術から各歩行練習開始日までの平均日数の関係を比較検討した。統計的分析はt-検定を行い,危険率5%未満を有意水準とした。 【結果】 達成群・逸脱群の平均値をそれぞれ比較すると,年齢79歳・84歳(P<0.05),手術~平行棒内歩行9日・20日(P<0.01)手術~日中座位3時間獲得11日・22日(P<0.01),手術~排泄動作自立(ポータブル含む)26日・40日(P<0.05)であり,年齢,平行棒内歩行開始日,日中座位3時間獲得日,排泄動作自立日に関しては,2群間に有意差を認めた。 相関関係については,日中座位3時間獲得日が早ければ在院日数が短い(r=0.72),平行棒内歩行開始日が早ければ在院日数が短い(r=0.70),退院時の歩行が自立する日が早くなれば在院日数が短くなるという相関(r=0.81)をそれぞれ認めた。【考察】 今回の結果より,CPを予定通り実施していくためには,早期の日中座位保持時間の獲得と平行棒内歩行の開始の関与が示唆された。また,排泄動作の自立日の影響も認め,早期離床と早期荷重が,その後の歩行器歩行実施,排泄動作自立,病棟移動手段を車椅子から歩行へ移行,退院時歩行開始,というスムースな流れを作ることになり,結果として,在院日数の短縮へ結びつけると考える。今回の調査により,早期日中座位時間の獲得は,回復期病棟へのスムースなリハビリテーションの展開に寄与することが示唆された。回復期病棟入棟までの一般病棟において,日中座位時間3時間獲得し,平行棒内歩行を開始することは,重要な達成項目になってくるといえる。そのためには,一般病棟においても積極的な看護師との連携が不可欠であり,認識や理解の溝を埋める必要性は高く,チームのコンセンサスを得るためのツールとしても,パスは有用と思われる。
著者
佐藤 倫正 木村 敏夫 松田 修 向 伊知郎 村田 英治 小西 範幸 角ケ谷 典幸 田代 樹彦 齊野 純子 中野 貴之 中山 重穂 西海 学 平賀 正剛 浅野 敬志 西舘 司 眞鍋 和弘 石井 康彦
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

IASBが現在取り組んでいる新概念フレームワークを「会計の大転換」という仮説にもとづいて追究した。それは、現行のIFRSを要約したものではなく、将来を見据えたビジョン型のフレームワークである。その知見をもとにIASBの「討議資料」と「公開草案」の持分の定義の矛盾に関してコメントレターを送った。大転換する会計の有用性の実証的検証は一般に困難であるが、資金法形式の利益分解の有用性を確認した。また、会計と文化の観点から多様な国々の大転換の許容度を検討した。現在、世界的に進行している「格差」は慣習的会計に起因する可能性があり、新しい会計による新しい資本主義に向けて、日本の貢献が期待されている。
著者
高橋 泰嗣 佐藤 亮太郎 川畑 洋昭 高橋 浩光 加藤 幹雄 高橋 眞映
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

バナッハ空間の構造を調べるには、空間のもつ様々な性質及びそれら諸性質の相互の関係を詳細に考察することが必要である。本研究では、古典的なノルム不等式及びその一般化を用いて、空間の様々な性質を特徴づけ、諸性質の相互の関係を明らかにした。以下に、得られた結果の概要を示す。1.Clarkson型不等式とバナッハ空間の幾何学:Clarkson不等式(CI)の一般化として、多次元版及び重みつきを考察した。また、これらの不等式を用いて、空間の様々な性質(type-cotype,一様凸性など)を特徴づけた。更に、ランダムClarkson不等式の一般化も考察した。2.Von Neumann-Jordan(NJ-),James(J-)定数とバナッハ空間の幾何学:バナッハ空間のNJ-定数をJ-定数を用いて評価した。また、空間の正規構造係数をNJ-定数で評価した。更に、J-定数の一般化としてJames型定数を導入し、これらの定数との関連で空間の様々な性質を考察した。3.Hlawka型不等式とその拡張:空間のtype-cotypeとの関連でHlawka不等式の一般化を考察した。また、Hlawka不等式の拡張を積分形で与え、その応用としてDjokovic不等式を重みつきで与えた。これらの逆不等式の考察、及び、新たな解釈なども与えた。4.Absolute normについて:空間の幾何学的性質の多くが2次元的であることから、C^2上のabsolute normに着目し、その基本的な性質を対応する凸関数との関連で調査した。また、一般のバナッハ空間の直和にabsolute normを導入し、この空間の一様凸性や狭義の凸性を対応する凸関数との関連で調べた。更に、C^n上のabsolute normについても考察した。その他、種々のノルム不等式の拡張、エルゴード定理の拡張、ウェーブレット解析の応用などについて成果を得た。これらは、学会誌及び各種のシンポジウム等で発表した。
著者
中村 彰宏 衣笠 斗基子 陣門 泰輔 谷口 伸二 佐藤 治雄 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.79-84, 2002-08-31
被引用文献数
12 15 17

関西地方の18箇所の森林から表土を採取し,撒き出し施工および実験を行った。多くの森林に生育していたコナラ,アベマキの実生出現頻度は小さかったが,ヒサカキの群落および実生出現頻度はともに大きかった。群落での出現頻度の小さかったアカメガシワ,ヌルデなどの実生出現頻度は大きく,平均埋土種子密度も7個/m^2以上と大きく,表土撒き出し緑化によって,これらの先駆種からなる群落形成の可能性が示された。複数のサブプロットの組み合わせで算出した種数,多様度指数-面積曲線によって,異なる面積のプロット間での多様性の比較が可能となった。低密度出現種の多いプロットでは,出現種数は面積の影響を大きく受けるため,種多様性評価を行う場合には大面積の調査が必要であることが明らかとなった。
著者
原島 秀人 神田 明延 佐藤 慎一 山内 真理 ローソン トム
出版者
前橋工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

複数のオンライン学習管理システム(LMS)をつなぎ合わせることによって,異なる大学に学ぶ学生達がそれぞれのeラーニング環境を離れることなく交流や恊働学習活動ができる環境を模索して来たが,本研究ではそこにマルチメディアプラグインを組み合わせ,音声やビデオを含んだプレゼンテーションの交換と相互評価の実践を試みた.また,学習ツール相互運用性(LTI)の応用を試み,LMS間で学習成果を自動的に共有する仕組みを作り,オンライン教材やプロジェクトの共有可能性を広げることができた.本研究の成果は2014年度の日本e-Learning大賞「ニューテクノロジー賞」の受賞という評価を受けた.
著者
佐藤 政良 NIYAMAPA Tan BAHALAYODHIN バンショー 佐久間 泰一 真板 秀二 小池 正之 BANSHAW Bahalayodhin TANYA Niyamapa NIVAMAPA Ton VUDHIVANICH バラウト PONGSATORN S TANYA Niyama VARAWOOT Vud JESDA Kaewku BANSHAW Baha 杉山 博信
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

戦後に建設されたタイ中央平原における近代的灌漑システムの現状を末端農村レベルまで調査し、独立的といわれるタイ農民の協同的水管理行動について検討した。チャオブラヤ川流域における乾期の絶対的水不足環境の下で、政府の努力に関わらず、Water Users′Group(WUG)が十分に機能せず、とくに乾期の水配分が政府の意図通り計画的に実施できていないことを明らかにした。末端レベルでは、圃場条件に応じた水管理が行われ、用水配分は一般に上流有利になっていて、水条件のよい農民だけが3期作を実現できる。用水確保のため、必要な限りではあるが協同で水路維持事業を実施している。圃場整備実施に対しても、村としての事業参加が見られ、大半の農民が参加している。しかし道水路密度,換地方法,不賛同者地区除外の仕方などに日本との違いがあることが指摘された。補助金等の政策技術によって、WUG活動へのインセンティブを高めることが必要である。中央平原稲作地帯における大型トラクタ走行の阻害要因であるBangkok clayey soilに対する動力学的試験を行い、繰り返しねじりせん断試験における繰返し回数の増加につれて、ねじりせん断ひずみと間隙水圧が増加することを見いだした。乾燥密度と載加周波数がねじりせん断応力に及ぼす影響も明確になった。流域保全に関しては,メクロン川流域における土壌侵食および浮遊土砂流出と流域特性を解明するため、(1)流域および降雨特性、(2)タイの他諸河川との比較によるメクロン川の浮遊土砂流出特性、(3)浮遊土砂流出量推定式、(4)支流のクワイ・ヤイ川、クワイ・ノイ川およびランパチ川の浮遊土砂流出特性,の検討を行い、流域上流部に対して下流部の方が浮遊土砂のより大きな供給源になっていることを明らかにした。流域の長期的・持続的利用にとって、開発農地における土壌流亡対策の実施が重要であることを指摘した。
著者
宮原 強 小杉 寿文 仁田 亜由美 濱田 献 日浦 あつ子 森 直美 八谷 由貴 平川 奈緒美 佐藤 英俊 松永 尚
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.125-130, 2014 (Released:2014-11-11)
参考文献数
18

【目的】当院ではオキファスト®注(OXJ)の換算比として簡便な 「OXJ:モルヒネ注射剤:フェンタニル注射剤=1:1:1/50」 を用いているが, 妥当性を検討した報告はない. 【方法】OXJに切り替えたがん疼痛患者18例を対象に臨床的検討を行った. 【結果】OXJへの切り替え理由としては, 鎮痛効果不十分11例, 内服困難6例, 傾眠1例であった. 疼痛コントロール達成までの投与量調節に要した日数は平均0.6日であった. 鎮痛効果不十分例ではOXJ変更前後のnumeric rating scaleは3.3から1.1と有意な改善効果が認められ(p=0.007), 内服困難例では変更前後で同等の疼痛管理が得られた. OXJ変更による有害事象の悪化は認められなかった. 【結論】OXJへのオピオイオド・スイッチングに対し, 簡便な換算比を用いても, 臨床での疼痛コントロールや有害事象における問題は特に認められなかった.