著者
佐藤 佳州 高橋 大介
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.135-142, 2011-10-28

近年,ゲームプログラミングの分野において機械学習は急速に発展しており,評価関数の重みの決定,探索深さの調整,モンテカルロシミュレーションにおける指し手の予測など,幅広い課題に対して有効であることが示されている.現在のゲームプログラミングにおける機械学習は,あらかじめ評価項目(特徴)を用意し,プロの棋譜などを基にその重みを学習するというものが主流である.このような手法は,人間では調整できないような膨大な数の特徴に対しても,自動的に適切な重みを算出できるという利点がある.一方で,学習に用いる特徴自体は人間が手動で設計する必要があり,性能を決定する大きな要因となっている.現在,特徴の設計に関しては,人手による試行錯誤的な調整が行われているが,機械学習に有効な特徴を手動で生成することは一般的に非常に困難な問題である.本論文では,この問題を解決するため,特徴の自動生成と機械学習の重み付けを組み合わせることにより,有効な特徴を生成する手法を提案する.具体的には,機械学習の反復計算の過程に特徴の生成を組み込むことで,性能の向上を目指す.実験の結果,提案手法が現在ゲームプログラミングの分野で用いられている各学習手法において有効であることを示した.
著者
佐藤 正晃
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、研究代表者が過去に確立した蛍光カルシウムセンサータンパク質発現トランスジェニックマウスや深部脳イメージングなどの技術を用いて、マウスが二光子レーザー顕微鏡周囲に作り出されたバーチャルリアリティ環境下で空間行動を行うときの海馬CA1野の神経回路活動をイメージングした。得られた各細胞の活動の時系列データについて、活動のタイミングとその時点の動物の仮想的な位置を解析したところ、全細胞のうち一部分の細胞集団が場所特異的な活動を示すことが明らかとなった。またイメージング画像中での各細胞の位置から、このような場所細胞群の海馬神経回路内の解剖学的配置を明らかにした。
著者
佐藤 実
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

金天柱が著した『清真釈疑』の内容を分析した結果、以下のことがわかった。イスラーム教徒である金天柱から見ると、漢民族は儒教の教義にしたがっておらず、仏教や道教の習慣に染まっている。それに比べるとイスラーム教徒は日々の礼拝を実践している。神に祈りを捧げることは、儒教の最高神である上帝に祈りを捧げることと同じであり、イスラーム教徒のほうが漢民族よりよっぽど真摯に儒教の教義に忠実ししたがっている。金天柱はそう述べることで、漢民族からイスラーム教徒にむけられた疑いの目を払拭しようとした。
著者
佐藤 瑠威
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.55, pp.189-198, 2014-02

研究ノート哲学と反哲学知識愛神と人間と世界哲学と宗教と科学歴史信仰19世紀における個別諸科学の成立と発展によって、長い間ヨーロッパにおいて学問の中心的位置を占めてきた哲学は、かつての位置を失い、さらにはその存在理由さえ疑われている。本稿では哲学の存在理由を弁証する立場から、哲学に残された重要な主題として「生きる意味」の問題を取り上げ、なぜ哲学が宗教に委ねるのではなく、この問題を自ら考察すべきであるかを論じる。
著者
加藤 正夫 佐藤 乙丸
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.310-316, 1966-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
4

空知川における河川水流下時間測定の実験においてはトレーサー物質の河川水中における損失はそれほど問題とならなかったが, 放射性トレーサーによって河川流量を測定したり, 汚染水の希釈度合を研究する場合には, 放射性トレーサーの損失が大きな問題となる。この意味で前報の実験のうちもっとも損失が多いと推定された区間をえらび, 3Hと82Brまたは24Naを用いて, トレーサーの損失に関する検討, 流量測定法およびトレーサーの横拡散の実験を行なった。また本実験は比較的流量が大きく (30~40t/sec) , しかも河状が複雑な河川への放射性トレーサー法の有効性への1つの試みでもあり, 実験の結果適用しうることを明らかにしている。

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著者
楠田枝里子著 佐藤和宏絵
出版者
PHP研究所
巻号頁・発行日
1983
著者
佐藤 康邦 谷 隆一郎 三嶋 輝夫 壽 卓三 山田 忠彰 勢力 尚雅 高橋 雅人 熊野 純彦 下城 一 船木 享 湯浅 弘
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

哲学的概念としての「形態」に関する問題は古くて新しい。形態という概念は、内容に対して事物の表面に漂う外面的なものを指す一方で、「かたち」という和語からして、かたいもの・確固とした真理という含意もある。西洋思想では、プラトンのイデア、アリストテレスのエイドスなど、古代ギリシアに遡りうる概念である。近世以降、機械論や還元主義を特徴とする自然科学の立場から、形態概念は排斥されがちであったが、美的形態や有機体の形態を扱うカントの『判断力批判』は、近代思想における形態論の先行例といえる。その形態論的発想は、むしろ、現代では、最先端の科学において見出される。構造主義生物学、ゲシュタルト心理学、認知心理学、量子論、熱力学(シナジェティクス)、複雑システムなどの多領域において、形態論の復権の動きが認められ、自然科学と人文科学との積極的対話の可能性が開かれつつある。倫理学においても、この観点から新たに検討されねばならないだろう。本研究では、形態という概念を手がかりに、人文科学としての倫理学の独自の意義と使命とを問い直すことを意図した。倫理思想史上の諸学説を形態論の観点から再考しつつ、応用倫理学や規範学という狭い領域に限定せず、現代の科学論における形態論復権の動向に対応する新しい倫理学の可能性を探究した。(1)古代ギリシア思想(2)古代ユダヤ思想(3)中世キリスト教思想(4)カントの形態論(5)近代思想(ドイツ観念論・イギリス経験論)(6)現代思想(7)科学論(8)藝術・文藝(9)日本近代思想(和辻哲郎・西田幾多郎・三木清)。以上の分野を専門とする研究分担・協力者を(若手研究者の研究発展にも寄与すべく特に留意)組織し、毎年度数回の全体会議において、各々の個別研究をふまえた対話・討論を行った。以上の研究成果は、最終年度に論集(成果報告書)としてまとめられたほか、別項11にある各員の業績を通じて公表された。
著者
市川 晃 佐藤 英哉 島田 哲雄 尾脇 志麻子 西村 義孝 福本 一朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.478, pp.105-110, 2001-11-22

輸血後GVHDとは, 輸血血液中の供血者リンパ球が受血者の体細胞を攻撃する輸血による重篤な副作用である.発症すると有効な治療法が存在せず, ほぼ100%が死亡する.そのため予防措置が重要とされ, 現在血液製剤に対する放射線照射によるリンパ球の不活化が行なわれている.しかし, これは高コスト, 照射直後からの血漿中K+イオン濃度の上昇などの問題点が多い.紫外線にもリンパ球を不活化する効果があり, 放射線の代わりに用いることで, それらの問題を改善できると考えられる.紫外線は低エネルギーであることなどの問題があったが, 水銀キセノンランプを使用し高強度紫外線照射をした場合, 高いリンパ球不活化効果を得られることが分かった.そこで本研究では, 血液製剤に対する保存前, または輸血時紫外線照射を目的とした装置開発と, それにともなった照射条件の検討を行なった.
著者
佐藤 慈 清水 穂高 児守 啓史 青木 直和 小林 裕幸
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Suppliment, pp.66-67, 2007-05-24 (Released:2011-02-17)

With color photos we feel aged from lower color temperature, lower chroma, and faded color. But black-and-white and sepia-toned photos make us feel more aged than any color photos. Here kansei effect of sepia-toned photo is discussed compared with black-and-white photo.
著者
佐藤 俊樹
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.157-181, 2006-03-28

靖国神社(およびその前身の東京招魂社)は,長く「国家神道」の中心施設だと見なされてきた.しかし実際には,第二次大戦以前でも,その宗教的な性格や政治的な位置づけはかなり変化しており,特に1900年代の前と後では大きくことなる.ほとんどの靖国神社論は政治的立場のいかんを問わず,この点を無視されている.それらが1911年に出た『靖国神社誌』の靖国神社像を踏襲しているからである.本論では,『武江年表続編』や東京ガイドブックといった同時代史科をつかって,1900年代以前の靖国神社(東京招魂社)がどんな宗教的・政治的な意味をおびていたかを,政治家でも宗教家でもない,東京のふつうの生活者の視線から描きだす.それによって,戦前前半期の日本における宗教-政治の独特な様相の一端を明らかにする.
著者
天野 和孝 鈴木 政憲 佐藤 時幸
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.299-307, 2000-04-15
被引用文献数
8 15

鮮新世における日本海への暖流の流入した層準を明らかにすべく, 秋田県の天徳寺層産の軟体動物群を検討した.天徳寺層は岩相的に下部, 中部, 上部に細分される.本層の時代は本層中部から抽出された石灰質ナンノ化石より鮮新世中期のNN16帯下部から中部と判断される.天徳寺層から産出した軟体動物群中には鮮新世〜更新世前期に日本海側で生息した大桑・万願寺動物群の特徴種と中新世塩原型動物群の残存種2種が含まれる.また, 多くの寒流系種に加え, 天徳寺層の基底部および中部から15種もの暖流系種が新たに認められた.暖流系種の産出状況から, 天徳寺層基底部および中部堆積時には, 薄い暖流が冷水塊上を流れていたと思われる.
著者
佐藤 美理 山縣 然太朗 鈴木 孝太
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、小児における抑うつ症状の罹患率が上がっている。我々は、コミュニティベースのコホート研究により、思春期における抑うつ症状と他のメンタルヘルスに関する要因の検討を行った。起立性調節障害は思春期特有の症状である。我々は、女子において、抑うつ症状とこの起立性調節障害に因果関係があることを明らかにした。また、歪んだボディイメージは抑うつ症状と関連があることが示唆されており、検討した結果、思春期の早い段階で体型に関する不満足があることが後の抑うつ症状の増加に関連していた。
著者
佐藤 元彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_187-613_206, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
16

2010年7月にIASBから公表されたED『保険契約』では,保険負債の測定および表示について重要な提案がなされている。本稿は2007年5月に公表されたDP『保険契約に関する予備的見解』からEDに至るまでのIASBにおける保険負債の測定および表示についての検討を跡付け,保険負債の測定において初期利益を認めるべきではないこと,保険負債の測定に際し不履行リスクを含めて考えるべきではないこと,OCIを活用して保険負債の変動を2つの利益に分けて表示すべきこと等を考察するものである。
著者
天野 雅郎 小関 彩子 佐藤 和正 永井 邦彦
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

21世紀は、大学の激動の時代である。この研究は、そのような大学の激動の時代において、大学の再生の可能性を教養教育の視点から考察したものである。そのために、この研究では日本の近代の教養教育が、これまで辿って来た歴史を振り返り、それをヨーロッパの教養教育の理念と比較しながら、その影響関係や齟齬について吟味し、さらに加えて、21世紀の新しい教養教育の可能性について、理論と実践の双方向から、教育哲学による提言を行なったものである。
著者
佐藤 文明
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.98-99, 2013-12-15
著者
安田 朝子 佐藤 徳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.203-214, 2000-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

Taylor (1989) は, 自己報酬的なバイアスは精神的健康や適応と結びついていると主張している。しかし, それは本当だろうか。自己報告式の尺度のみによって健常者を抽出すると, 「抑圧型」のような過度に肯定的なバイアスを示す群がそこに混入するため, 結果が大きく歪む危険性がある。しかし, 「抑圧型」は身体疾患の罹病率が高く, 必ずしも健康であるとは言い難い。「抑圧型」は, 特性不安尺度の低得点者かつMarlowe-Crowne社会的望ましさ尺度の高得点者と操作的に定義される。他方,「真の低不安群」は両尺度の低得点者である。研究1では, 過度に肯定的な自己評価傾向および非現実的な楽観傾向は「抑圧型」において顕著であり,「真の低不安群」はそれほど楽観的ではないことが示された。また,「抑圧型」では, 当人にとって重要なゴールと現状との不一致が小さく, それゆえ陰性情動の自己報告が低いことが示唆された。研究2の結果から,「抑圧型」において観察された非現実的な楽観傾向は, 実際にゴールと現状との不一致がないことによるのではなく, 現状に関するフィードバック情報が無視されているためであることが示唆された。すなわち,「抑圧型」では, 定期試験前になされた成績予測得点は最も高く, 実際の成績は最も悪かった。また, 予測に比して成績が悪かった場合, 他群では結果のフィードバックを受けて予測が下方修正されたのに対し,「抑圧型」では予測が変わらないか上方修正される場合さえあった。本研究では,「抑圧型」ではそもそも負の結果のフィードバックが適切に評価されないためにこうした楽観傾向が維持されており, それゆえ状況に応じた対処方略の選択と修正が妨げられていることが示唆された。こうした結果から,「真の適応」とは, 状況に応じた適切な対応をなし得る認知構造の柔軟性にあるのではないかと考えられる。
著者
出川 洋介 勝山 輝男 田中 徳久 山岡 裕一 細矢 剛 佐久間 大輔 廣瀬 大 升屋 勇人 大坪 奏 城川 四郎 小林 享夫 原田 幸雄 松本 淳 勝本 謙 稲葉 重樹 佐藤 豊三 川上 新一 WALTER Gams
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

労力と時間を要すために研究が遅れてきた菌類のインベントリー調査を、博物館を介して専門研究者と市民とを繋ぐ3者連携体制を構築して実施した。多様な世代の70名以上の市民により5千点を超す標本が収蔵された10年に及ぶ事前調査を踏まえ、約50種の菌類を選定し、研究者の指導のもとに市民が正確な記載、図版を作成し菌類誌を刊行、デジタルデータを公表した。本研究事例は今後の生物相調査の推進に有効な指針を示すと期待される。