著者
稲垣 具志 寺内 義典 橘 たか 大倉 元宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_933-I_941, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
6

これまで,通過交通が問題となる生活道路では,抜け道利用者に着目した交通安全対策が多く実施されてきた.本稿は,抜け道利用者ではない地区関係者の走行速度に着目し,抜け道利用者の速度との傾向の違いについて明らかにすることで,地区関係者向けの安全啓発・教育を実施する意義について検討することを目的とする.東京都内の2地域を対象としてナンバープレート調査と走行速度調査を同時に実施し,地区関係者と抜け道利用者別の走行速度分布を取得した.これらを比較したところ,地区関係者には抜け道利用者と比べて低速走行する傾向が一部確認できたが,地区関係者においても生活道路を高速走行する運転者が無視できない程度に存在し,地区関係者を対象とした速度低減対策を構築する必要性が示された.
著者
宍倉 正展
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.245-254, 2003

A tectonic geomorphological study is one of the best methods of evaluating the timing and the crustal deformation of pre-historic earthquake. To reveal the cycle of interplate earthquakes along the Sagami Trough, I investigatedthe emergedshoreline topography andthe fossilizedsessile assemblages in the Miura Peninsula andthe Boso Peninsula. The distribution pattern of coseismic vertical displacement during the 1703 Genroku Kanto Earthquake inferredfrom the height distribution of the paleo-shoreline suggests that the fault source model consists of a dual fault system of the Fault A andB. Fault A is also the source of the 1923 Taisho Kanto Earthquake. The geometry and ages of the emerged shoreline topography divided into several levels indicate that the characteristic earthquake generatedfrom Fault A has occurredabout every 400 years. One of several events, it is accompaniedwith a slip of Fault B, which has a recurrence interval of 2000-2700 years.
著者
久保田 一雄 白倉 卓夫 大類 十三雄 村谷 貢 真木 俊次 田村 遵一 森田 豊穂
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.509-514, 1991-07-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
11
被引用文献数
5 20

我々は次の二つの課題を明らかにする目的で, 20歳から99歳までの2,231名 (男性1,295名, 女性936名) の血球測定値と血清総蛋白 (TP), 総コレステロール (TC), 及び中性脂肪 (TG) 測定値を分析した. (1) 白倉らの1978年の報告以来約10年が経過し, その間に日本人の食生活はさらに改善され, 平均寿命も延長した. そのような改善が老年者の血球測定値に何らかの影響を及ぼしているのだろうか? (2) 日常生活の質, 例えば老人ホームではなくて, 在宅であるとか, 就労しているとか, 旅行もするとかなど, が老年者の血球測定値に影響を及ぼすことが指摘されている. 60歳未満の青壮年者と上述したような質の高い生活をしている60歳以上の老年者とで, 血球の測定値に差異があるのだろうか? 結果は, ヘモグロビン濃度, 赤血球数, ヘマトクリット値のいずれも, 男性では50歳代から, 女性では60歳代から低下し始め, その変化は加齢に伴い, かつ男性でより顕著であった. 白血球数, 血小板数も加齢とともに低下傾向を示した. TP, TC, TGも60歳以上の老年者で加齢に伴って低下した. これらの成績から, 老年者では加齢に伴ってヘモグロビン濃度, 赤血球数, ヘマトクリット値のいずれも低下することが確認され, その原因の一つとして摂取蛋白の低下が推定された.
著者
高倉 伸有 矢嶌 裕義 高山 美歩 川瀬 明子 KAPTCHUK Ted J. JIAN Kong
出版者
東京有明医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

鍼治療の適応として最もよく知られる肩こりに対し、鍼治療は本当に効果があるのかを証明するために、治療者と患者に治療の真偽を知らせずに治療する「ダブルブラインド法(二重盲検法)」を用いた無作為化プラセボ対照臨床研究を実施した。その結果、治療しない場合よりも、鍼治療を施した方が肩こり感は改善したが、鍼が刺さっても刺さらなくても一定の肩こり改善効果が認められた。また肩こりの部位に鍼を刺して治療した場合にのみ、皮下血流に変化が認められた。これらのことは、「鍼治療を受ける」ことによって肩こり感は和らぎ、特に鍼を刺す治療であれば血流改善の効果も期待できることを示唆する。
著者
鎌倉 夏来
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.138-156, 2012-03-01 (Released:2017-02-21)
参考文献数
34
被引用文献数
2 1

本稿の目的は,首都圏近郊の東海道線沿線における大規模工場用地の利用変化と存続工場における研究開発機能の新展開を分析することである.首都圏に古くから立地してきた大規模工場は,特に都心に近接している場合,その多くがすでに閉鎖し,オフィスビルやマンション,商業施設に変化していた.しかしながら,マザー工場として生産機能を維持することで,あるいはまた研究開発機能を強化することで,存続している拠点も存在している.特に2000年代以降の研究開発機能の変化としては,1)製造機能と研究開発機能との近接性を重視した研究開発機能の強化,2)顧客志向の研究開発拠点の増設,3)シナジー効果の創出を目的とした集約型研究開発拠点の新設といった点があげられる.
著者
秋山 岳 岩倉 成志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.45-56, 2012

近年,わが国ではプロのデザイナーによって鉄道車両が設計され,旅行の付加価値を向上させる事例がみられるが,全国的な展開には至っていない.その理由のひとつに,車両デザインと需要増との関係性が明らかではないため,事業者が鉄道車両のデザイン化に消極的であることがあげられる.本論文では,小田急ロマンスカーを対象とし,鉄道車両の車内デザインを考慮した需要予測モデルの構築を目指す.そのために,1)車内色彩デザインの計測手法,2)色彩快適度関数の構築,3)車内デザインの評価手法,4)需要予測モデルの構築,以上4点を検討する.本論文で構築したモデルを用いた分析の結果,車両をデザインすることで,他交通機関からの利用者の転換が望め,一定の収入増加が見込めることを確認した.
著者
小倉 匡俊 近藤 沙紀 中尾 小百合 河村 あゆみ 福泉 洋樹 岡部 光太
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.8-17, 2020-03-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
23

動物園において複数の動物種を同一空間で飼育展示する混合展示はさまざまなメリットがある。しかし動物福祉を損ないうる状況も存在し、たとえば出産と哺育に対して混合展示が負の影響を与えうることが指摘されている。本研究では日本の動物園における混合展示の代表的な組み合わせであるアミメキリンGiraffa camelopardalis reticulataとグレビーシマウマEquus grevyiを対象に社会関係を評価するとともに、グレビーシマウマの出産が動物福祉に与える影響を調べた。京都市動物園で飼育されていたアミメキリン3個体とグレビーシマウマ1個体(出産後は2個体)を対象に、社会行動と最近接個体、個体間距離を記録し、出産の前後で比較した。その結果、出産前後ともに異種間での親和行動が観察され、一定の良好な関係を築いていることが確認された。しかし個体の組み合わせによっては親和行動が減少し敵対行動が増加するなど、出産によるネガティブな変化も見られた。混合展示により個体数の限られた飼育環境においても社会的な刺激がもたらされることと、出産と哺育に際する攻撃行動の増加に対する注意の重要性が示された。
著者
倉林 敦 大島 一彦 松田 洋一 森 哲 細 将貴 佐藤 宏 長谷川 英男 太田 英利
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、ヘビからカエルに水平伝播した奇妙なLINE転移因子(以降TE-X)を発見した。本研究ではこの水平伝播現象について、(1)水平伝播発生地域の解明、(2)水平伝播の系統学的起源、(3)ベクター生物の特定、を目的とした。世界各地からカエル類29科161種194サンプル、ヘビ類17科125種139サンプル、寄生虫類166サンプルを収集し、各サンプルのTE-XをPCRと次世代シークエンサーを用いて解析した。その結果、TE-Xの水平伝播は、世界各地で複数回生じており、特にマダガスカルでは様々な寄生虫に仲介されて、現在進行形で脊椎動物間TE-X水平伝播が生じている可能性が高いことを明らかにした。
著者
永沼 優一 山本 景子 倉本 到 辻野 嘉宏
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-177, no.4, pp.1-8, 2018-03-09

リアルタイムで状況が変わるゲームをプレイする際に,プレイヤーは変わっていく状況に対してその都度判断を下して行動し,その行動によって現れた状況に対し判断を下して行動するということの繰り返しを行っている.その中でも,判断し行動するまでの時間がきわめて短い判断を瞬間的判断と呼ぶ.プレイ技術の向上のためには,この瞬間的判断の傾向を分析し改善する必要があるが,プレイ動画を見返すだけでは瞬間的判断をした箇所や判断中にある無意識な偏りに気づけないという問題がある.そこで本研究では,イベントとアクションを定義し,その発生時間の差を元に瞬間的判断が行われた箇所を抽出してユーザに判断箇所と傾向を提示する手法を提案する.提案手法を評価するために,提案手法に基づき実装したツールと既存手法でプレイ中の判断の偏りを発見させる比較実験を行った.その結果,提案手法は既存手法に比べて有意に短い時間で判断の偏りを発見することができた.また,提案手法は既存手法と同程度の精度で判断の偏りを探せることがわかった.
著者
小林 和法 倉沢 真澄 丹 美香 工藤 大樹 赤塚 秀貴 大場 愛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.212-217, 2011-09-20 (Released:2013-09-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1

肌の「ハリ」は理想の肌の要素のひとつとして挙げられることが多い。従来「ハリ」といえば肌に触れたときの感覚としてとらえられ,真皮にアプローチした改善策がとられてきた。しかしわれわれは,「ハリ」には視覚的要素も含まれていると考え,視覚的なハリという点に着目して検討を行った。健常日本人女性の顔面を対象に行った肌の官能評価スコアを用いてクラスター分析を行ったところ,「目で見て感じるハリ (視覚的ハリ) 」は「視覚的うるおい感」と非常に距離が近く,一方で「触覚的ハリ」とは別のクラスターに分類されることがわかった。また,視覚的ハリは角層水分量や経表皮水分蒸散量と関係することがわかった。この結果から,角層水分状態の改善が視覚的ハリの向上につながるのではないかと考え,化粧料の連用試験を行い,角層水分状態が改善されたときに視覚的ハリスコアがアップするかどうかをみたところ,角層水分量の有意な増加とともに視覚的ハリの有意な向上が確認され,一方で触覚的ハリには有意な変化が認められなかった。これは,視覚的ハリと触覚的ハリには,それぞれに最適な改善アプローチが別々に存在する可能性を示唆している。
著者
有田 真 井 智史 仰木 淳平 高橋 幸祐 門倉 昭 源 泰拓
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:2432079X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-20, 2020-01

南極の昭和基地では,基線値(絶対観測値と連続観測値との差)が特に夏期間において顕著な変化を示す.この変化の要因としては,例えば重機のような磁性体によるノイズや磁力計センサーの傾斜変動や温度変化といった設置環境の変化が考えられる.磁力計センサーの傾斜変動が夏期間の基線値変化に及ぼす影響を調査するために,電子水管傾斜計を用いて傾斜変化を連続観測するとともに,絶対観測を通常より高頻度で実施した(2013 年1 月~2 月,2013 年11 月~2014 年2 月).調査の結果,東西方向で30 秒角から50 秒角程度,南北方向で10秒角程度の顕著な傾斜変化があることが判明した.基線値変化には傾斜変化が大きく寄与していることが分かり,傾斜変化の基線値変化への寄与率は最大で,D成分で60% から100%,H 成分とZ 成分で30% から40% と推定された.At Syowa Station, Antarctica, the baseline values, or the difference between the absolute and continuous measurements, vary relatively significantly in summer. They are possibly due to artificial disturbances from magnetized objects, and/or changes of the instrumental environment such as involving the tilt and temperature of the sensor for continuous observations. To evaluate the effect of the sensor tilt, we continuously monitored its behavior with electronic tiltmeters over two successive summer seasons (Jan.-Feb. 2013, Nov. 2013-Feb. 2014), while also intensifying the frequency of the absolute observation. The variability of the tilt was found such that, its angular changes in the East-West and North-South directions were 30 to 50 and 10 arcseconds, respectively. The observed variations of the baseline values can be attributed primarily to the sensor tilt changes, with its contribution estimated to be up to 60 to 100% for the D component and 30 to 40% for the H and Z components.
著者
永野 伸郎 伊藤 恭子 本多 雅代 須永 悟 田ヶ原 綾香 野原 ともい 野原 惇 星 綾子 溜井 紀子 安藤 哲郎 筒井 貴朗 新田 孝作 佐倉 宏 小川 哲也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.571-580, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2 5

【目的】透析患者に処方される経口薬剤錠数に占めるリン吸着薬の割合を把握し, 錠剤に含まれるマグネシウム (Mg) の影響を検討する. 【方法】血液透析患者520名に処方中の経口薬剤を薬効別に分類後, 総処方錠数に占める割合を算出した. また, 血清Mg値をリン吸着薬の処方有無別, 錠数別に解析するとともに, リン吸着薬のMg含量をICP-MSにより実測した. 【結果】1日に17.8錠/人の経口薬剤が処方されており, このうちリン吸着薬の割合は35% (6.2錠) であった. リン吸着薬処方患者の血清Mg値は非処方患者よりも高値であった. 処方錠数が最多である沈降炭酸カルシウム錠500mg「三和」の単剤処方患者169名において, 血清Mg値は処方錠数と正相関し, 処方錠数五分位は独立した有意な説明変数であった. また, 本剤のMg含量は1.8mg/gであり, 他剤よりも高値であった. 【結語】リン吸着薬は服用錠数が多いため, 一部の製剤に含まれるMgが血清Mg値に影響する可能性が示された.

7 0 0 0 OA 神道百話

著者
小倉鏗爾 著
出版者
金鈴社
巻号頁・発行日
1943