著者
前田 啓朗 田頭 憲二 三浦 宏昭
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.273-280, 2003-09-30
被引用文献数
3

本研究では,日本の高校生英語学習者による語彙学習方略(以下VLS)の使用に焦点を当て,VLS使用の一般的傾向と異なる学習成果の段階における傾向を明らかにすること,簡便にVLS使用を測定できる質問紙を提供すること,英語学習をより促進できるようなVLS指導への示唆を導くこと,を目的とした。先行研究で示された高校生英語学習者のVLSを用いて調査を行い,15高等学校からの1,177の回答を分析し,先行研究に示される「体制化方略」「反復方略」「イメージ化方略」の3因子を仮定するモデルが確認された。同時に学習成果を測定し,上位・中位・下位に分割して分析を行った結果, VLS使用の強さが上位・中位はあまり異ならないがそれら2群と下位では顕著に異なり,異なるVLS間の相関は中位と下位ではあまり相違ない一方で上位ではイメージ化方略と他の2方略が比較的独立している,という結果が得られた。このことから,VLS指導や語彙指導の際に,学習成果の度合いに応じて効果的なVLSは異なるという点に留意する必要性が示唆された。
著者
田ノ上 智美 奥村 史彦 下桐 猛 片平 清美 廣瀬 潤 伊村 嘉美 岡本 新 前田 芳實
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部農場研究報告 (ISSN:03860132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.17-20, 2006-03-10

本報告は鹿児島大学付属農場の動物飼育棟でトカラ馬の馴致試験を行い,その馴致の過程をまとめたものである.供試馬として,この子馬は,2003年2月21日生まれで,同年4月30日に大学構内の動物飼育棟に導入した.日常管理を通じて基礎的馴致を行い,その過程を観察した.また基礎的馴致は便宜上,(1)人間に対する馴致,(2)運動に対する馴致および(3)手入れに関する馴致と分類した.今回の馴致試験では,人間に対する馴致に1ヶ月,運動に対する馴致に3ヶ月,手入れに対する馴敦に4ヶ月要した.このことから,トカラ馬の場合,子馬の基礎的な馴致は約4ヶ月ほどあれば可能であることが明らかとなった.しかしながら,実験後半から人間に対する咬癖が出始め,この悪癖はその後も矯正することは出来なかった.この原因として,母馬から離す時期が早すぎた,運動時間の不足・パドックに長時間入れられていたことによるストレス,子馬本来の気質,飼育方法に何らかの欠陥があったことなどが考えられた.よって今後は身についてしまった悪癖を矯正し,この後の調教を的確に行えば社会的利用は十分可能であると思われる.また,他のトカラ馬を使用する場合は,母馬から離す時期,飼育方法をさらに検討し,子馬の気質も考慮にいれながら馴致を行い,咬癖,蹴癖など人に害を及ぼす癖のない馬であれば子供が使用することも可能であると思われる.
著者
前田 太郎
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、ウミウシの盗葉緑体現象を通して、遺伝子の水平伝播と複合適応形質の進化の関連を議論することです。盗葉緑体現象とは、嚢舌目ウミウシなどが、餌海藻の葉緑体を細胞内に取り込み、数ヶ月間光合成能を保持し、栄養を得る現象の事です。これには、藻類核からウミウシ核への遺伝子水平伝播が伴うと考えられており、遺伝子の水平伝播によって、光合成という複合適応形質が、生物界を超えて、水平伝播することを示唆しています。しかしウミウシのゲノムは解読されておらず、遺伝子が本当に伝播しているかは不明確でした。本研究では、複数種のウミウシのゲノム解読を行い、遺伝子の水平伝播の有無と過程を明らかにしようとしました。更にパルス変調蛍光定量法を用いて、水平伝播した各遺伝子が実際に光合成能の各段階に関与しているかを明らかにしようとしました。本研究により、盗葉緑体能力が発達した、チドリミドリガイ(Plakobranchus ocellatus)とコノハミドリガイ(Elysia ornata)のゲノム解読に成功しました。また餌藻類であるHalimeda borneensisとBryopsis hypnoidesのトランスクリプトーム解析により藻類の遺伝子情報を獲得しました。これらの比較を行った結果、先行研究と異なり、これらのウミウシ核には、藻類に由来する遺伝子は水平伝播しておらず、本現象が遺伝子の伝播を伴わずに形質が伝播する特殊な進化的現象であることを示唆しました。一方、パルス変調蛍光法などにより、ウミウシ内の葉緑体では、光合成活性が光損傷などで失われても、葉緑体での新規タンパク質合成により活性を回復できることがわかりました。また盗葉緑体を行うウミウシ類だけで特異的に重複し、更に葉緑体蓄積組織で特異的に発現する遺伝子群を発見しました。
著者
前田 敦司 遠藤 匠 山口 喜教
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.83-83, 2004-05-15

マークスイープアルゴリズムに基づくインクリメンタルガーベジコレクタは,停止時間をごく短時間に抑えることが可能であるが,効率が悪く,CPU時間が増加する.この性能低下の原因は,一括型GCと比較してマークする時期が早いことに起因するmark/cons比の悪化,GCルーチンを呼び出す回数の増加,write barrierのオーバヘッドなどによる.一方,世代別ガーベジコレクタは高いCPU効率が得られ,また平均の停止時間は比較的短いため良いレスポンスが得られるが,旧世代領域のGC( メジャーコレクション)の際には長い時間にわたって計算処理が停止してしまい,リアルタイム応用には適さない.本発表では,世代別GCがある意味でインクリメンタルGCの一種と見なせることを指摘する.この観察に基づき,新世代領域のGC(マイナーコレクション)のたびに,インクリメンタルに旧世代領域のガーベジコレクションを行う新しいGCアルゴリズムを提案する.インクリメンタル化のために必要となるライトバリアは,世代別ガーベジコレクタの実装にいずれにせよ必要なライトバリアと同じ仕組みを利用する.このアルゴリズムは,通常の世代別ガーベジコレクタに近い効率を保ちながら,停止時間を短く保ち,ガーベジコレクタのリアルタイム性を向上させることができる.Incremental garbage collectors based on mark-sweep algorithms can minimize the pause time caused by garbage collection at the expense of increased CPU time. The main reasons for this performance degradation include: (1) mark/cons ratio gets worse in incremental collectors because objects are marked earlier than in non-incremental counterparts, (2) increase in number of calls to collector routine and (3) write barrier overhead. Generational collectors, on the other hand, can achieve high efficiency and relatively short average pause time, while occasional long pause for collection of old generation space (major collection) makes these collectors unsuitable for real-time applications. In this presentation we point out that certain class of generational collectors can be viewed as a special case of incremental garbage collection. Based on this observation, we propose a new GC algorithm which incrementally reclaims old generation space every time a minor collection is performed. Write barrier for generational collector is also used for incremental collection. With this algorithm, we can improve real-time response of garbage collector by keeping pause time short, with little overhead added to ordinary generational collectors.
著者
山口 大貴 前田 敦司 山口 喜教
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.63-63, 2012-08-20

多くのスクリプト言語同様,RubyはCやJavaといった従来の言語と比較して非常に複雑な文法を持っている.そのため,構文解析器の作成において現在主流となっている,yacc(またはbison)とlexを用いて構文解析器と字句解析器を生成しそれらを組み合わせる手法では,文法の記述や実装が困難であったり実装が複雑化しメンテナンスが困難となってしまったりする場合がある.たとえばRubyでは,文字列リテラルに任意の式を埋め込み可能な文法を実現するため等の理由で,手書きの字句解析器を含めて8000行以上にもおよぶ巨大な文法定義を行っている.これは,現在用いられている構文解析アルゴリズムが字句解析をベースとしているために,字句解析器に状態を付加する等のアドホックな実装を行わなければこのような文法を実現することができないためである.そこで本研究では,Parsing Expression Grammar(PEG)をベースとした,強力な解析力を持つ構文解析アルゴリズムPackrat ParsingをRuby処理系(JRuby)に導入することを提案する.Packrat Parsingを実際にRuby処理系に用いることで,従来の構文解析アルゴリズムで問題となっていた部分を改善し,文法定義の保守性を向上させることが本研究の目標である.本研究の構文解析器の実装は,PEGをベースとした文法定義をPackrat Parser生成系Rats!に与えることで行い,その文法定義は従来の文法定義を変換することで作成する.また提案手法による処理系と従来手法による処理系に対して実際のスクリプトを使用した比較評価を行い,その結果として,提案手法によって文法定義の保守性が向上することを示す.
著者
前田 真梨子 尾関 基行 岡 夏樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

友人など親しい人からの「どっちがいいと思う?」という類の相談は,こちらにとってはどうでもいい内容でも無下にはできない.そんなときに代わりに相手になってくれる意思決定支援システムとして,本研究では,遅延視覚フィードバックを利用した占い型相談システムを提案する.本システムの特徴は,「誰かに相談している」という相談者の気持ちを損ねず,且つ,相談者の本当の気持ちをある程度察することができることである.
著者
前田 健一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

防波堤等の防災の構造物は海底や大きな石を積み上げたマウンドなどの地盤で支えられていることから,津波の押し波や引き波が構造物に作用する圧力だけでなく,地盤に波が浸透することにも着目した.その結果,地盤がゆるんで弱くなる液状化が被害を大きくするとともに,いったん構造物を超えた波が再び海面に落ち込む越流によっても,地盤の表面に液状化が発生し,大きく削る洗掘が発生することを明らかにした.さらに,津波襲来前の地震動による液状化の影響を調べ,巨大地震では以上のような液状化の負の連鎖が被害を大きくすることを示すとともに,被害を減らすための対策方法について,地盤工学の立場から提案している.
著者
岸田 崇志 前田 香織 河野英太郎 近堂徹 相原玲ニ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.517-225, 2004-02-15
被引用文献数
5

広帯域ネットワークやQoS保証のあるネットワークなど多様なネットワークが利用できるようになり,狭帯域ネットワークでは難しかったリアルタイム性の高い,また信頼性の高い音声伝送の実現が可能になってきた.そして,より品質の高い音声伝送への要求も高まっている.こうした変化にあわせ,音声伝送の利用場面も多岐にわたり,各場面で音声伝送システムに要求される条件も様々に異なる.本論文では,広帯域ネットワークで利用される様々な音声伝送場面をリアルタイム性,ロバスト性などの観点から分類した.これに基づき,各場面で要求度の高いパラメータを調整することにより,あらゆる利用場面に対応できる多目的な音声伝送システム``MRAT(Multipurpose RAT)''の設計と開発を行った.MRATは音声会議システムの1つであるRAT(Robust Audio Tool)を広帯域ネットワーク上で使用することを想定して拡張し,低遅延音声伝送機能やReed-Solomon符号を用いたFECによるエラー回復機構などを実装している.MRATの評価としてはエンド--エンド間の低遅延化とロバスト性向上の検証を行い,その有用性を示す.また,MRATの実証実験として1年間にわたって行った多地点での遠隔合唱や遠隔講義などについて記述し,多様な場面での実用性を示す.It is becoming easy to use various networks such as broadband networks and QoS guaranteed networks.Also, it is possible to realize high robustness and high real-time audio transmission.Moreover, high quality audio transmission is required.The most required condition for audio transmission differs depending on various scenes.In our study, we classify conditions of audio communications required in various situations from the viewpoints like real-time and robustness and design a multipurpose audio transmission system called as ``MRAT (Multipurpose RAT)''.We enhance RAT (Robust Audio Tool) that is one of audio communication tools, and add two new options. One is to keep shorter delays between end-nodes.Another is an error recovery using a Forward Error Correction with Reed-Solomon code to recover packet losses.By using these options, MRAT has three modes; a Chorus mode, a Conversation mode, and a Broadcast mode.Therefore, MRAT can correspond to various scenes.We show some evaluations of MRAT like measurements of end-to-end delays and effects of an error recovery.We also show practicality of MRAT by practical experiments such as distance chorus at multi-locations and distance lectures.
著者
前田 康成 後藤 文太朗 升井 洋志 桝井 文人 鈴木 正清 松嶋 敏泰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.572-581, 2013-08-01

近年,遊び手である人間の負荷を軽減することを目的に,遊び手が操作するキャラクタであるプレイヤキャラクタ(PC)以外にコンピュータが操作するキャラクタであるノンプレイヤキャラクタ(NPC)が導入されたロールプレイングゲーム(RPG)が増えてきた.従来からマルコフ決定過程(MDP)を用いたRPGのモデル化が行われているが,NPCを伴うRPGのMDPを用いたモデル化はまだ行われていない.そこで,本研究では,MDPを用いてNPCを伴うRPGのモデル化を行う.更に,MDPの真のパラメータ未知の場合に相当するNPCを伴うRPGについて,報酬の期待値をベイズ基準のもとで最大にする攻略法を算出するアルゴリズムを提案する.
著者
前田 稔
出版者
生涯教育学講座紀要編集委員会事務局
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.213-216, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
前田 淑
出版者
福岡女子大学
雑誌
香椎潟 (ISSN:02874113)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.44-52, 1957-12-25
著者
高橋 聡子 岩井 輝男 田中 良夫 前田 敦司 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.1050-1057, 1997-05-15
参考文献数
14

リスト処理プロセスとGCプロセスを同時に複数動作させることによって,リスト処理を並列化することによる処理時間の短縮が可能になった.しかし,セルの消費のペースはアプリケーションによって異なり,CPUの数も計算機によって異なるので,リスト処理プロセスの最適な数はアプリケーション,計算機によって異なると考えられる.本稿では,セルの消費速度やフリーセルの残量によってリスト処理プロセスとGCプロセスのCPU割当てを動的に決定する機能により,Lispの代表的なアプリケーションに対し,処理速度と実時間性とのバランスのとれた処理を行うことを可能とする並列Lispシステムの報告を行う.本システムの実装にあたっては,できるだけリスト処理の中断が生じることがなく,リスト処理に最大数のCPUが割り当てられるようCPU割当てのパラメータを設定し,CPU割当てを動的に決定した.その結果,リスト処理の中断がなくなり実行時間が短縮された.Parallel lisp system with parallel garbage collection(GC)can produce improvements in throughput by executing list processing in parallel.But,the optimal number of list processes and GC processes depends on machines and applications because the number of processors on a machine and cells which are consumed by various applications is different.In this paper,we report parallel lisp system which makes it possible to balance throughput and real time performance by dynamic allocation of CPU depending on speed of consuming cells and the number of remaining free cells.We dynamically changed CPU allocation according to the parameter which was set to avoid a disruption of list processing and allocateas many CPU as possible to list processing.Consequently,our system yielded improvements in throughput without any disruption of list processing.
著者
前田 直大 伊佐治 麻里子 直江 可奈子 四藤 理佳 尾崎 裕之 橋本 哲郎 入山 美知 松原 浩司 下沢 みづえ 小田 貴実子 作田 典夫 新岡 正法 小林 道也
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.179-183, 2013-02-28 (Released:2013-03-06)
参考文献数
11

Objective: Doping is strongly prohibited in sports.  Sports pharmacist was born in 2010 in Japan, and the anti-doping activity is expected.  On the other hand, doping by arising from a lack of knowledge about prohibited substances in athletes, so-called “unwilling doping” is developing into a social issue.  In this study, we investigated the percentage of prohibited substances in all drugs and prescriptions in a general hospital, to collect information to prevent an unwilling doping.Methods: We constructed system to extract the drugs corresponding to prohibited substances in the prescription order entry system in Otaru Municipal Hospital, and we analyzed 3,306 prescriptions of 10 to 59 years old patients, from July to September 2010.Results: Thirteen point five percent of our hospital drugs met definition of the prohibited substance.  The number of prescriptions including prohibited substance(s) was 350 (10.6%), and its category was different from each age-group and clinical department.Consideration: Because prohibited substances are included in approximately 10% of prescriptions, athletes are exposed to danger of becoming an unwilling doping.  Pharmacist should be well informed about prohibited substances to prevent athletes from unwilling doping.  And they should provide information promptly and adequately for athletes.