著者
前 晋爾
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.107-113, 1975-09-30 (Released:2009-07-23)
参考文献数
8

純度の高い氷多結晶内に, 局所的照射を行い, 結晶粒内および粒界内に独立の内部融解像, すなわちチンダル像を形成し, その形態を観測した.結晶粒界に形成したチンダル像は, その形態が結晶粒内チンダル像と異なっていた.結晶粒内チンダル像には, perturbationを持たない円盤型チンダル像, あるいはperturbationのwave numberが6のチンダル像が存在するが, この実験で観測された粒界内チンダル像のperturbationのwave numberの最小は12であった.樹枝状になったチンダル像の樹枝間の角度を測定すると, 粒界内チンダル像では15°の倍数であることがわかった.この結果は底面に平行な樹枝間の角度が60°であることとかなり異なっているが, 粒界内チンダル像の形態はHiguchiにょって単結晶内で発見された, 底面に直交するチンダル像の形態と良く似ている.とがった先端をもつ粒界内チンダル像のperturbationの発生について, 粒内チンダル像と比較して論じた.
著者
青山 一真 櫻井 健太 古川 正紘 前田 太郎 安藤 英由樹
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.137-143, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13

Galvanic Tongue Stimulation (GTS) is the technique that can induce electrical taste or metallic taste virtually and inhibit and enhance taste induced by water solution. This technique is expected to use for diet support device. However, conventional GTS required to attached electrodes in the mouth. It causes uncomfortable to use for the purpose. Therefore, we invented Galvanic Jaw Stimulation (GJS) which induces and modulates taste without electrodes in mouth. In this paper, we demonstrated whether GJS can induce virtual taste and modulate salty taste induced by NaCl water solution.
著者
児玉 敏宏 池田 拓洋 法岡 貴子 湯川 彰英 雑賀 博子 高橋 敏夫 北 裕次 前田 明文 阿部 富彌
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-146, 1993

腎性骨異栄養症の補助診断およびその病態の評価をする目的で, 維持透析患者43例に対し2年間にわたり定期的身長測定を実施し, その身長変化と種々の臨床検査, 骨塩量, ビタミンD<sub>3</sub>投与量との比較検討を行った.<br>身長は3か月毎に測定したが, 今回は1988年1月から1990年1月までの2年間における身長の変化を観察し, その身長変化と年齢, 透析歴, 血清Ca, P, ALP, C-PTH, AI, BMG, カルシトニン (CT) 等の血液検査との比較検討を行った.<br>また, Digitallmage Processing Methodにて骨塩量 (ΣGS/D) を測定し, 身長変化と比較した. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長変化との関係も合わせて検討した.<br>身長縮小値と透析歴との間にr=0.307の正の相関傾向が, 血清Ca値との間にr=0.345の正の相関傾向が認められた. 身長縮小値と血清ALP値との間にr=0.670, p<0.01と正の相関が, 血青C-PTH値との間にr=0.701, p<0.01と正の相関が見られた. ΣGS/Dと身長縮小値, 血清ALP, C-PTH値との間に負の相関が認められた. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長縮小値との間には相関は見られなかった.<br>2年間に2cm以上の身長縮小をみた5症例中4症例に, 血清C-PTH値の異常高値が認められた.
著者
前野 哲博
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.7, pp.859-867, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
7

Due to the rapid aging of the population, it has become important to ensure the provision of primary health care services. To respond to this challenge, it will be insufficient to offer services only at medical institutions; indeed, there are extremely high expectations for pharmacists because they work in close contact with the population at drugstores and pharmacies. Moreover, the Japanese government intends to promote family pharmacies (pharmacists) that not only prepare drugs but also give advice on health issues. In this context, pharmacists are expected to play new roles that surpass those in the existing framework, and this will require a new program to facilitate the acquisition of new abilities (skill mix). As an example, we would like to introduce an education program for pharmacists designed to develop clinical reasoning skills for patients' symptoms. To care properly for patients with symptoms and to decide whether to encourage self-medication or to recommend consultation with a doctor, pharmacists need to develop the ability to take a medical history in a systematic and reasonable way, and then to make an adequate assessment. Therefore on the basis of cooperation between doctors and pharmacists, we have developed an education program, as well as a medical interview support tool to assist pharmacists in obtaining necessary and comprehensive medical histories.
著者
前野 澄子 Sumiko MAENO
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.10, pp.159-165, 2003-03-31

19世紀におけるイギリスのアジア,アフリカヘの植民地政策,さらに20世紀後半のアメリカ合衆国の世界における政治・経済力の増大という二つの要因により,英語は世界共通語の地位を得たかに見える。英語は世界各地で使用され,それは必然的に地域の言語,社会文化の特性を色濃く反映した数多くの変種英語を生み出すこととなった。変種英語は言語学的にも英語の方言として認められ,世界中でこの分野の研究が盛んに行われている。今,英語は英語圏内外で大きな変容の時にある。英語の未来はいかなるものか,それが日本に及ぼす影響はいかなるものか。本稿では最近の文献を中心に本問題を概観する。The English language gained the status of a global language in the mid 20th century. As English has come to be used in various parts of the world, many modified Englishes have been born. These Englishes strongly reflect the culture of the local people. These varied Englishes, called New Englishes, are recognized as part of the English language family and are being studied by many scholars. English is changing rapidly. What is in store for the future of the English language and what influence will it have in Japan? This paper will provide a brief overview on these issues.
著者
野田 大地 佐藤 尚文 尾形 敏郎 五十嵐 清美 井上 昭彦 良永 康雄 茜部 久美 飯島 広和 前原 康延
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.221-227, 2008-05-01
被引用文献数
1 1

子宮広間膜異常裂孔ヘルニア2例を経験した.【症例1】51歳女性.14歳時,虫垂切除.上腹部痛,嘔気出現し近医受診.症状改善せず,第3病日に当院紹介受診.腹部膨満し腹部全体に圧痛を認めたが反跳痛や筋性防御なし.CT,USで拡張した小腸を認めたが腹水なし.イレウス管を挿入し第4病日に造形した.右骨盤内で小腸の完全閉塞を認め手術適応と判断した.右の子宮広間膜に約1.5cmの裂孔があり,回腸が約20cm陥入,壊死していた.小腸切除と裂孔閉鎖を行い,術後15日目に退院.【症例2】53歳女性.開腹歴なし.朝から腹部違和感,気分不快あり.症状改善せず夕方当院受診.腹部全体の膨隆を認めたが自発痛,圧痛,嘔気なし.CTで拡張した小腸と軽度の腹水を認めた.保存的に経過をみたが嘔吐を繰り返したため第2病日にCT再検.小腸拡張の悪化,腹水増加を認めたため緊急手術を行った.左の子宮広間膜に約2cmの裂孔を認めそこへ回腸が約5cm陥入していた.用手的に整復し,裂孔閉鎖した.術後9日目に退院.
著者
神前 英明 柴山 将之 大脇 成広 清水 猛史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6Supplement2, pp.S162-S166, 2007-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
14

頸椎原発の悪性リンパ腫に対し、プレート併用前方固定術後、遅発性の咽頭穿孔と嚥下性肺炎が生じた1例を経験した。症例は72歳、男性。2002年6月に頸椎原発の悪性リンパ腫に対し、C4-6までプレート併用の前方固定術、放射線治療、化学療法を行い寛解に至っている。2006年3月に嚥下性肺炎にて入院。咽頭後壁より金属プレートが露出、右梨状部に唾液貯留がみられた。VF所見では、右食道入口部開大不全とそれに伴う嚥下運動後誤嚥がみられた。頸椎プレート抜釘、咽頭縫縮を施行した後、瘢痕狭窄と思われる食道入口部開大不全によるバリウム誤嚥が認められた。バルーンカテーテル訓練法を行い、常食摂取可能となった。本例のような瘢痕狭窄による嚥下障害に対してもこの方法は有用であると考えられた。
著者
岩本 明美 岸 清志 竹本 大樹 西江 浩 前田 迪郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.2791-2794, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は75歳,男性.StageIIIa直腸癌と診断され,低位前方切除術を施行した.24病日に術後補助化学療法としてUFT/ユーゼルの内服を開始した.口内炎(Grade3)のため7日目に内服を中止.骨髄抑制が増悪し11日目に入院となった.汎血球減少が急速に増悪し,連日G-CSFと血小板輸血,抗生剤投与をおこなった.22日目より増加に転じ,36日目に退院となった.DPD活性は13mol/min/mg proteinと著しい低値でありDPD低活性と診断した.
著者
蓮尾 裕 上田 一雄 藤井 一朗 梁井 俊郎 清原 裕 輪田 順一 河野 英雄 志方 建 竹下 司恭 廣田 安夫 尾前 照雄 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.65-72, 1986
被引用文献数
1

昭和48・49年及び昭和53年の久山町検診を受診した満60歳以上 (昭和53年検診時) の一般住民で, 両検診の血液生化学値が検討できた男女818名を対象にし, 昭和53年から昭和56年11月30日まで追跡調査した. 両検診時の血液生化学値と, 同一個体の両検診間での変化値について, 追跡期間中に死亡した57名と生存例761名の2群のあいだで年齢補正を加えて, 男女別に比較検討した.<br>昭和53年検診時の血液生化学値18項目中, 男性死亡例ではアルブミン, 尿素窒素の低値とGOT, GPT, TTT, ALP, LAPの高値がみられ, 一方, 女性死亡例ではアルブミン, カルシウムの低値がみられた.<br>生存例の両検診間の生化学値の変化を基準にして, 死亡例についてみると, 男性ではアルブミン (-0.2g/d<i>l</i>), 尿酸 (-0.5mg/d<i>l</i>), Na (-2.2mEq/<i>l</i>), Ca (-0.3mg/d<i>l</i>) の低下, 女性ではアルブミン (-0.2g/d<i>l</i>), Ca (-0.3mg/d<i>l</i>) の低下を認めた. これら死亡例にみられた5年間の生化学値変化は, 生存例に比べて有意であった (p<0.05).<br>死亡例を悪性新生物死亡 (23例), 心血管系疾患死亡 (15例), その他の死因による死亡 (19例) に分類し, 生化学値の個体内変化を生存例のそれと比較した. 前記4項目について, 疾患の種類による特異的な変化はみられなかった. 死亡例を脳卒中後遺症, 寝たきり, 手術の既往歴の有無によって2群にわけ, 各群での生化学値の変化を生存例と比較した. このような後遺症や既往歴を持つ群で, 生化学値の変化が必ずしも大きいとはいえなかった. 以上のことから, 死亡例にみられた血液生化学値変化は, 生前の合併症や疾病の種類に基づくとは考え難く, 死亡例にみられたより進んだ老化過程にむしろ関係があると考えられる.
著者
渡部 俊 松尾 浩一 進武 幹 前山 忠嗣
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.451-455, 1983-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
14

A case of actinomycosis originating in the parotid gland is reported. A 66-year-old woman had complained of a hard mass in the right parotid area. Sialography and CT scan showed a tumor-like lesion in the right parotid gland. The patient was treated with subtotal parotidectomy and penicillin administration. Histological examination showed typical actinomycosis. In this case, infections may be caused by actinomyces carried through Stenon's duct.
著者
前間孝則著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2004
著者
中川 麻衣 山田 秀樹 前田 直樹 齋隠寺 妙美 瀬尾 敏志 蔦本 昌志 奥田 真吾 松島 安幸 渡邊 登
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

当院ではME機器の中央管理を行っているが,返却時の点検においてシリンジポンプのバッテリインジケータが十分に充電しても3個すべて点灯しないものがある.その大半は2000年対策でバッテリの一斉交換を行った機器であり,年数が経過しバッテリが劣化したためと考えられる.現在,バッテリインジケータがあるシリンジポンプ(TE311:テルモ社製)においてインジケータを指標にしたバッテリ劣化評価のためのフローチャートを作成し,それに基づいてバッテリ交換を行っている.今回フローチャートによるバッテリ劣化の判断についての信頼性を調べるためバッテリ運転時間の計測を行った.対象は前回バッテリ交換日より2年以上経過したもので,返却時の点検においてインジケータの表示が3個すべて点灯しないものを対象とした.方法は作成したフローチャートにしたがい,一度バッテリを完全放電させ,24時間以上充電後,メーカによるバッテリ点検の方法にしたがい,点検用シリンジ(50ml,翼状針付)にて流量5ml/hでの運転時間を計測した.バッテリアラーム発報時までの運転時間(分)を充電完了後にインジケータ3個点灯群(以下,BT-OK群)と2個(または1個)点灯群(以下,BT-NG群)とに分けて集計した.集計結果よりBT-OK群とBT-NG群での運転時間比較とBT OK群が60分以上運転可能か否かを判断することで,フローチャートでの判断方法が有用か否かを調べたので報告する.
著者
吉澤 亮 大和田 滋 前波 輝彦
出版者
日本メディカルセンター
雑誌
臨牀透析 (ISSN:09105808)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.1053-1058, 2014-07-10

不眠を訴える血液透析患者に対するメラトニン受容体アゴニストラメルテオンの有用性について検討した。通院中の血液透析(HD)患者152例を対象とした。アテネ不眠尺度の合計点が6点以上で不眠症の可能性の高い患者は75例であった。また、ラメルテオン以外の睡眠導入薬をすでに服用している患者は36.2%(55例)であった。睡眠導入薬をすでに服用している患者または不眠症の可能性が高い54例を対象として、ラメルテオンを開始し、10例が脱落した。アテネ不眠尺度は、投与後有意な改善を認めた。他の睡眠導入薬が併用されていた36例中27例が減量もしくは中止が可能となった。午前、午後、夜間透析ともにアテネ不眠尺度は有意に改善した。
著者
前川 宏一 福浦 尚之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.634, pp.209-225, 1999-11-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究は, 著者らが提案し, 既にRC要素レベルでの検証を経た多方向ひび割れを有する鉄筋コンクリート構成モデルの, 部材レベルでの検証を行なったものである. 静載荷耐震壁実験との比較解析, 5層耐震壁の動的載荷実験と国際 blind ベンチマーク解析, 実構造物の縮小模型実験との比較解析, さらに, 構造物レベルで3方向以上の多方向ひび割れ状態が生じるケースについての試解析を行い, 本RCモデルが構造物の高非線形領域での挙動を求めるに必要な実用性を有していることを示した. あわせて, 使用したRCモデルの適用領域と, これが組み込まれた非線形応答解析の実用範囲を示し, なおもって技術的に不十分な点を明らかにすることで, 今後の課題を示した.
著者
今橋 朋樹 狩野 秀之 前田 幸嗣 Imahashi Tomoki Kano Hideyuki Maeda Koshi
出版者
九州大学大学院農学研究院
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:13470159)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.241-250, 2008-10

Recently, food mileage is remarkable as the index that unites the production of food and environmental problems or the safety and the anxiety problems of food. The food mileage shows the size of the energy spent on transportation, and it can be said that the larger this value becomes, the larger environmental load grows. Moreover, it suggests that the risk and the anxiety to food increase. As mentioned above, measuring the food mileage plays an important role in analyzing various problems of food. However, in the past paper, the food mileage was calculated at certain point of the past time, so it was not simulated how this value changes under the various policies change. Therefore, in this paper, by applying the spatial equilibrium model developed by Maeda and Kano (2008), we analyze the influence to the food mileage of the shift in policy. Concretely, we measure the each food mileage about the international rice trade under the situation that the present foreign trade policy is maintained and the situation that the trade liberalization progresses and the tariff and the tariff quota are abolished completely in all countries. As a result, when thinking all countries, the food mileage increases about 4.451 times under the situation of the trade liberalization. Moreover, by analyzing the factors of an increase of the food mileage, it became clear that the influence in each country is different. The left problem includes that how to build the value of the food mileage into the policy. Moreover, when the policy is executed, it is important to calculate other environmental indicators by applying the spatial equilibrium model similarly.本稿では,コメに関する貿易の自由化という政策の変更によるフード・マイレージの変化を計測し,さらにその変化の要因から,各国に現れる影響を明らかにした.その結果,フード・マイレージは,一部の国(アメリカ,ブ ラジル,インド)においてわずかに減少するものの,分析対象国全体でみると約4.451倍になることが明らかとなった.また,各国に現れる影響は,環境に関する負荷の増大,食料に関わるリスク・不安感の増大など,様々に異なることが明らかとなった. 最後に,残された課題を提示することによって本稿を結びたい.第1の課題は,フード・マイレージと施すべき政策との関係である.つまり,分析により得られた値をいかに環境あるいは食の安全性に関する政策に結びつけるかといった具体的な手段の開発が挙げられる. 第2の課題は,他の環境指標への空間均衡分析の応用可能性の検討である.貿易に関連して利用される主な環境指標には,中田(2003)によると,以下のものが挙げられる.輸出国側に対する環境負荷としては,輸入国が本来自国で消費すべき水資源を奪っているという仮想水(バーチャル・ウオーター),同じく,それを持続的な食料消費を行う場である資源としての土地の面積の収奪に置き換えたエコロジカル・フットプリントの概念が挙げられる. また,輸入国側に対する環境負荷としては,輸入作物を窒素で置き換え,これが蓄積した土地で育った作物が人体に悪影響を及ぼすという窒素の供給過多の問題が挙げられる.