著者
大野 浩史 菊池 雅彦 久保田 尚 小嶋 文 加藤 哲平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00064, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
10

東京一極集中緩和のため,地域との繋がりを構築する取り組みが重視されている.地域との繋がりの構築において注目される「関係人口」は,人々の地縁・血縁との関連があり,その地域との所縁がある住民意識を表す際に「故郷」がよく用いられる.しかし,「故郷」に対する住民意識の実態は十分には明らかになっていない.以上から本研究では,埼玉県在住者を対象にアンケート調査を実施し,居住履歴の分類から,「故郷」に関する意識,「故郷」のまちづくりへの参加意欲等を検証した. その結果,埼玉県で生まれ育った人々は,自身が生まれ育った埼玉県を「故郷」と意識する傾向があり,「明確な「故郷」を持たない」という人は少数であった.また,地方出身の1代目は現住所以外を「故郷」と意識し,まちづくりへの参加意欲が高い傾向が確認できた.
著者
河江 敏広 加藤 哲也 高木 隆司 松岡 立也 中山 誠子 服部 順和
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0627, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】近年、肥満症に対する有効な治療法としてVery Low Caloric Diet(VLCD)がある。これは総摂取エネルギーを420kcal/dayに制限し短期の減量を可能とするものである。先行研究によればVLCD中に運動を実施した報告は散見するが運動効果に関する報告は少ない。今回、糖尿病を合併した単純性肥満一症例に対しVLCD中にAmerican College of Sports Medicine(ACSM)の推奨する減量プログラムを実施しAerobic Exercise(AE)とResistance Training(RT)が体重(BW)、脂肪量(FM)、除脂肪量(LBM)に与える効果を文献的考察を交えて検討した。【症例】43歳、男性、身長162cm、体重104.5kg、BMI39.8、糖尿病、高度肥満指摘されるも放置。1ヶ月後、空腹時血糖268mg/dlとなり、controlおよびdiet目的にて入院となる。入院中の食事量は当初1200kcal/dayから開始し、3日後にoptifast70によるVLCDを15日間実施した。その後は漸次1200kcal/dayとした。運動指導日数は19日であった。【方法】 TANITA社製BC‐118によるインピーダンス法を用い午前、午後に身体組成を測定。数値に誤差の無いよう衣服は同一の物とした。運動プログラムはACSMに準じた内容でAE、RTを行った。【結果および考察】BWは治療前104.5kgから99.5kg(5kg減)、FMは45.3kgから41.5kg(3.8kg減)、LBMは59.3kgから57.4kg(1.9kg減)となった。先行研究によれば減量時のAEは体脂肪減少の相乗効果、RTはLBM維持効果があることを明確にしている。今回得られた結果もAEによる総消費量増加によりBW、FMの減少効果を相乗させたと考えられた。また本研究において、RTの実施にも関わらずLBMの減少が認められた。先行研究においてVLCD後のLBMの変化をみると増加または維持を認めた報告は少ない。長澤によれば絶食時の筋量減少は摂取エネルギー制限によるタンパク質不足によりアミノ酸合成が制限されることや、それによる恒常性維持の為、骨格筋タンパクが利用分解されることを原因として挙げており、VLCD中はRTによるLBM維持は困難であることが示唆された。しかしながら本症例のように肥満症は元来インスリン抵抗性を来しやすいことや糖尿病、高脂血症を合併することが多く、これらに対するRTの効果はインスリン感受性の亢進、VLDLの異化亢進による血中TGの低下など動脈硬化病変の進展防止に有効であるとの報告が多く見受けられる。VLCDにおけるRTのLBM維持効果は明確ではないがAEのみではなくRTを取り入れることはインスリン抵抗性改善の面では有用であると考えられた。
著者
梅森 直之 坪井 善明 田中 ひかる 土屋 礼子 小林 聡明 鈴木 恵美 鶴見 太郎 加藤 哲郎 李 成市 野口 真広 毛里 和子 山田 満 若林 正丈 篠田 徹 齋藤 純一 浅野 豊美 安井 清峰 最上 敏樹 土佐 弘之 山崎 眞次 八尾 祥平
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東アジア諸国間の対話と交流は、歴史に由来する論争により妨げられており、そのため東アジアの歴史和解の試みは「失敗」であると総括されることが多い。しかしながら、東アジアにおける歴史認識には、単に戦争責任だけでなく植民地責任をめぐる問題が主題化されており、世界的に重要な先駆的実践として評価されるべきものがある。東アジアの各地域は、民主化と経済発展を、異なる時期に異なるプロセスとして経験し、そのため現在の歴史に関する国民感情にも、大きなズレが生じている。東アジア諸国がこのズレを認識し、既存の国際法体系の批判的に検討しつつ歴史共同研究を推進することで、東アジアの歴史和解を推進することが可能となる。
著者
加藤 哲久 川口 寧
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
18

【要旨】ウイルスは感染伝播の必要性から、ウイルス粒子にゲノムをパッケージングしなければならない。この生存に必須な過程を効率化するため、ウイルスはゲノムサイズを最少化させ、遺伝子重複や選択的スプライシング等の非標準的なエレメントを獲得することで、限られたゲノムに多様な遺伝情報を搭載してきた。近年、大型 DNA ウイルスである単純ヘルペスウイルス1 型(HSV-1)もまた、非標準的遺伝子をコードすることが明らかとなりつつある。本総説では、chemical proteomics を駆使した非標準的ウイルス遺伝子の解読の確立と解読した新規遺伝子産物である piUL49 の HSV-1 神経病原性への関与に関して解説する。
著者
加藤 哲郎 渡辺 泱 島 正美 海法 裕男
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.704-707, 1971-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

Transsection of the hypogastric nerves and/or pelvic nerves was performed on 18 adult male dogs. Prostates were removed on the 7th, 14th and 21st postoperative day to examine histologically.The denervation caused severe structural changes on the dogs prostate, which could be summarized as follows.1. Atrophy of the epithelium as well as myxomatous degeneration resulting in proliferation of collagenous fibers in the stroma was the most prominent finding commonly seen in the various denervating groups. Since cystic dilations of the prostatic gland or capillaries were indefinitely observed in some cases, these findings could not be confirmed as typical changes caused by the denervation.2. The degenerative changes were recognized on the 7th day and more conspicuous on the 14th day after denervations. On the 21st postoperative day, however, the degeneration of prostatic tissue became considerably slight.
著者
越智 文香 越智 彩帆 樫木 暢子 苅田 知則 加藤 哲則
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.10-26, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
8

本研究は肢体不自由児のキャリア教育で取り上げられる指導内容について整理し、実態に応じた指導内容について検討することを目的とした。全国の肢体不自由特別支援学校25校に、キャリア教育で取り上げられる指導内容についてのアンケートを実施し、因子分析や重回帰分析を行い、学部や実態等で比較を行った。因子分析の結果、キャリア教育で取り上げられる指導内容として、「健康の維持増進と心理的充実」「学力・認識力の育成」「社会性の育成」「家庭生活力の向上」「基本的生活習慣の確立」の5つの因子が抽出された。「健康の維持増進と心理的充実」が抽出されたことより、教員がキャリア発達と心身の発達との関連を意識していることが示唆された。重回帰分析の結果、各因子について学部や実態において有意差が確認された。近年は障害が重度化・重複化・多様化しており、各教員が児童生徒個々の実態を丁寧にとらえ、個に応じた指導をしていることが示唆された。指導内容が自立活動とも関連があったことから、自立活動とキャリア教育を関連付けて指導することにより、肢体不自由児童生徒のキャリア発達を促そうとしていることが推測された。
著者
吉野 裕顕 田村 真通 蛇口 達造 加藤 哲夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

[方法]正常羊胎仔群(N=6):胎令125〜140日の羊胎仔に対し、頸動静脈を介し、膜型肺を用いたV-A ECMOを施行、臍帯を遮断後、胎仔を人工羊水槽へ移し、6〜24時間保育した。横隔膜ヘルニアモデル群(N=3):胎令75〜80日に横隔膜ヘルニアを作成、胎令135日にV-A ECMO下に横隔膜ヘルニアを修復後、正常羊胎仔と同様に人工子宮にて6〜24時間保育した。上記2群について、ECMO前、臍帯遮断後人工子宮内保育時、肺呼吸開始さらにECMOからの離脱時と経時的に血液ガスの変化を測定するとともにドップラーエコーにて動脈管径と肺動脈の血流量を測定し、正常羊胎仔群ならびに横隔膜ヘルニアモデル群について胎児循環より新生児循環への適応状況について検討した。[結果]1、頸動静脈V-A ECMOを用いた人工子宮内保育では正常羊胎仔、横隔膜ヘルニアモデルとも動脈管の径は減少し両方向性のシャントを呈したが、胎仔の循環動態は良く保たれていた。2、肺呼吸により、正常羊胎仔では動脈管の右-左シャントは、左-右優位となり、肺動脈の血流量は増加したが、横隔膜ヘルニアモデルでは有意な肺動脈血流量の増加は認めなっかった。3、胎令135日以上の胎仔では肺呼吸後の循環動態の適応は良く、人工子宮からの離脱が可能であったが、135日未満の胎仔および横隔膜ヘルニアモデルではPaO_2の上昇は不良でECMOフローを低下させると容易に胎児循環遺残へと移行し、早期のECMOからの離脱は困難であった。4、人工子宮内保育羊胎仔の肺組織には出血、無気肺、肺硝子膜症などの所見はなく、人工子宮内保育による明らかな傷害は認めなかった。[まとめ]V-A ECMOによる人工子宮内保育は胎児期の動脈管の変化の影響が少なく、肺呼吸後は胎児ECMOから新生児ECMO管理へと速やかに移行でき胎児治療の上で有用と思われた。また横隔膜ヘルニアモデルでは今後、修復後の人工子宮内保育による肺の発育、成熟に関する検討が必要である。
著者
加藤 哲夫
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.129-144, 2018 (Released:2018-03-06)
参考文献数
28
被引用文献数
3

2000年頃まで先進国では、「基本技術開発→応用開発→製品化のシーケンシャルな開発スタイル」をとってきた。しかし、多くのモノ造り技術が海外に行き渡り、「水平分散型」を推進する新興国と比べ先進国の価格競争力は弱くなった。これにより、先進国のモノ造りは利用シーンを想定して本来の機能と使いやすさを追求し、これを具現化するデザイン・設計した上で、商品、サービスを実現するに必要な技術やデバイスを集約する開発スタイルに変化した。「ありたい姿の想定→具体的商品の機能デザイン定義→実現に必要な技術集約統合というスタイル」が2010年以降、徐々に広まってきた。 本論文では、第4次産業革命の波に乗って、どのようなイノベーションが起こるのか想起することにより、3つのイノベーション・レイヤーとして①Process Innovation、②Product Innovation、③Social Innovation という分類を新たに提案し、いくつかの事例で示した。 提案した3つのイノベーションを推進・実現化するためには、P2M理論の更なる発展と研究が重要な役割を果たすとことと確信する。
著者
加藤 哲郎
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、ソ連崩壊で明るみに出た秘密文書を発掘・解読しながら、旧ソ連在住日本人に対するスターリン粛清の規模とメカニズムを探求することであった。その基礎は、申請者が『モスクワで粛清された日本人』(青木書店、1994年)及び『国民国家のエルゴロジー』(平凡社、1994年)で挙げた、約80名の粛清候補者リストであった。初年度の95年秋には、代表的犠牲者である元東京大学医学部助教授国崎定洞について、川上武と共著で『人間 国崎定洞』(勁草書房)を刊行し、以後も犠牲者遺族・関係者から聞き取り調査を進めてきた。その間、研究費で購入したパソコン・スキャナー等を用い、インターネットの専用ホームページを立ち上げ、「現代史の謎解き」ページと題して、これまでの研究成果をもとにしたデータベースをそのまま掲載した。その結果広く関係者の情報を集めることとなり、重要な関連情報が電子メール等で寄せられた。その経過と概要は、『読売新聞」1998年2月5日に大きく報道されたが、この3年間で、1920年代・30年代にソ連に在住した86人の日本人について探求し、(1)旧ソ連秘密文書など記録による粛清確認者32名(内銃殺15名、強制収容所6名、国外追放4名、逮捕後行方不明6名、逮捕後釈放1名)、(2)資料・証言で逮捕・粛清の可能性濃厚16名、(3)1936-38年在ソ連が確認され以後行方不明2名、(4)ソ連側資料で当時在ソ連が推定され行方不明約10名、(5)日本側資料で当時在ソ連が推定され行方不明約20名、(6)大粛清期前後の日本人推定犠牲者6名をデータベース化できた。また、そこに、日本人共産主義者同士の疑心暗鬼による密告・告発と、ソ連秘密警察による拷問・強制自白の結合による、明瞭な粛清連鎖のメカニズムを発見して、相関図に仕上げた。98年3月には、モスクワで収集した秘密資料をも用いて、本研究の総括を英文論文にまとめた。この英文論文は、スターリン粛清研究の国際的センターとなっているドイツ・マンハイム大学社会史研究所ヘルマン・ヴェーバー教授の要請により、同研究所編『歴史的共産主義研究年報 1998年版』に寄稿したものであるが、同時にこれをインターネット上にも公開し、広く世界から情報収集するシステムが確立した。また本研究の副産物として、安保由五郎・勝野金政・片山千代・箱守平造らの粛清資料と遺族を発掘して名誉回復をはかり、3年間で10回以上も新聞で取り上げられた。世界でも初めての研究として、所期の目的を達成し得たと結論づけることができる。
著者
岡西 尚人 上川 慎太郎 加藤 哲弘
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.405-409, 2019-04-15

要旨 膝関節周辺には,大腿前脂肪体,膝蓋上脂肪体,膝蓋下脂肪体などがあり,膝関節運動時における筋腱と周囲組織との摩擦の緩衝に寄与している.膝蓋上脂肪体の動態については,屈曲時に関しての報告はあるが伸展時に関しては散見されない.今回われわれは,外側半月板損傷後の膝関節可動域練習中における最終伸展時に,膝蓋骨上部に疼痛が出現した症例を治療した.超音波画像診断装置を用いて観察すると,健側の膝関節最終伸展時では,四頭筋腱下縁と膝蓋骨底の間が広がり,生じた隙間に膝蓋上脂肪体が移動していた.一方患側は,四頭筋腱下縁と膝蓋骨底の拡がりが乏しい状態で膝蓋上脂肪体が移動しようとしていた.運動療法として,四頭筋腱の持ち上げ操作を実施し,疼痛は消失して完全伸展が可能となった.本症例の治療経過を通じて,膝蓋上脂肪体の動態異常による膝伸展時痛と伸展可動域制限の可能性について言及した.