著者
斉藤 功 山内 加奈子 山泉 雅光 加藤 匡宏
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.394-402, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
20

目的 地域集団における18.6年間の前向きコホート研究によりメタボリックシンドローム(MetS)と脳卒中罹患との関連について検討すること。方法 1996~98年の愛媛県旧O市の基本健康診査受診者4,068人(40~74歳)のうち,脳卒中の既往者を除く3,969人を対象とし,2018年12月末までの脳卒中罹患または脳卒中による死亡の有無を調べた。わが国のMetSの診断基準に基づき,ベースライン時のウエスト周囲長高値の有無と血圧高値,脂質異常,血糖高値のリスクの保有個数(0個,1個,2個以上)の組み合わせにより6群に分けた。カプラン・マイヤー法によるMetSの生存曲線の解析,ならびにCox比例ハザードモデルを用いて全脳卒中,出血性脳卒中,脳梗塞別に性年齢調整済みハザード比と人口寄与割合を算出した。結果 追跡期間中,376人の脳卒中罹患を把握した。MetSの割合は,脳卒中罹患ありの群15.2%,なしの群9.4%であり,有意な違いを認めた。ウエスト周囲長正常かつリスク0個の群を基準とした場合,全脳卒中,ならびに脳梗塞に対して,ウエスト周囲長にかかわらずリスク1個,ならびに2個以上の群で性年齢調整済みハザード比が2倍程度の有意な上昇を認めた。全脳卒中に対する人口寄与割合は,ウエスト周囲長正常かつリスク1個の群で最も高かった(18.9%)。結論 脳卒中罹患に対してMetSの寄与は大きくなかった。これまでの知見と同様,非肥満であっても血圧高値などのリスクが少なくとも1個あれば脳卒中罹患リスクは高まった。
著者
小林 美緒 加藤 和生
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.77-95, 2021-03-27 (Released:2021-04-01)
参考文献数
13

This study was conducted to show how 4 types of amae-engagers (Types A: Adaptive, B: Suppressed, C: Hesitant and D: Confused, as identified by Amae-Type Scale (ATS), Kobayashi & Kato (2015)) would differ, in the theoretically predicted ways, on the various aspects of amae processes (amae-related behaviors/cognitions, emotions, and attitudes) in the 3 (pre-, in-, and post-) phases of amae interactions; therefore, so as to demonstrate ATSʼs theoretical validity. 305 college students responded to a questionnaire to self-rate on the theoretically identified various aspects of experiencing processes in the amae interaction which they actually had engaged in. The findings demonstrated that the 4 types differentially had experienced their own amae interaction, as theoretically expected. Implications of the findings and potentials of ATS and its perspective for future amae research were discussed.
著者
加藤 護 日岡 惇
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.151-161, 2016-03-10 (Released:2016-05-19)
参考文献数
34

Stone lanterns in temples and shrines often collapse and suffer damages when these sites are hit by a strong seismic ground motion. There have been several reports in Japan that large numbers of stone lanterns collapse in the direction of strong shaking at large earthquakes. Descriptions that stone lanterns were damaged by strong earthquakes frequently appear in historic Japanese documents. In this report, we examine whether it is possible to retrieve characteristics of historic ground motions from the ages and damages of stone lanterns at Kitano-Tenmangu Shrine and Iwashimizu-Hachimangu Shrine, Kyoto. We assume that if ground motions cause severe damages to stone lanterns, they would be removed from the site and be newly rebuilt thereafter, and occurrence of such events would be imprinted on the age distribution of stone lanterns. If the damages are minor, the damaged parts would be reused when stone lanterns are rebuilt at the site, and the damages of stone lanterns we find today could be used as records of occurrence of historical strong seismic ground motions and the direction of collapses. Scarcity of stone lanterns which were built before 17th century at Iwashimizu-Hachimangu Shrine as well as their increase at Kitano-Tenmangu Shrine in mid 19th century are likely results of strong earthquake and resultant damages at these sites. Ratios between numbers of damaged and undamaged stone lanterns at two sites vary with respect to their ages but they do not correlate with records of historic earthquakes in Kyoto. Damages of stone lanterns we observe today appear to distribute evenly with respect to the cardinal directions, whereas these damages are more often found in the rear of the stone lanterns. While the damages we find today could include those due to the historic earthquakes, stone lanterns at these sites are likely to be so maintained that damaged parts are rotated into the direction which makes the major damages less visible. We conclude that it is very difficult to estimate direction of historic strong motion at these sites from the statistics of damages of stone lanterns which we observe today.
著者
加藤 護
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

高校地学では地球内部構造を地震波を用いて知ることができることを学ぶ。この中で地球中心核の発見が扱われ、シャドーゾーンなどの概念が扱われる。しかし地球深部を伝播する地震波の挙動を直感的に理解することは簡単ではなく、教えにくい話題の一つとも言える。本発表では簡略化した地球速度構造モデルを用いて地球中心核が地震波伝播に与える影響を整理する。提案するのは三角関数を用いた図解法である。これは地震波形データを用いて地球に核があることを初めて提案したOldhamや内核の存在を示したLehmannが用いた方法に倣ったものである。高校地学では核の存在を地震学史と関連づけて教えることも多いが、この図解法を用いることでその関連を強くすることが可能となる。発表では簡略化した地球速度構造モデルを用いて、中心核がある場合の走時曲線を図示と三角関数を用いて求める。その上で核の影響がどのように観測されるかのエッセンスを整理する。

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著者
加藤武雄 著
出版者
非凡閣
巻号頁・発行日
1943
著者
堀田 千絵 加藤 久恵 多鹿 秀継 十一 元三 八田 武志
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、学習力を支える高次認知機能としてのメタ認知の早期育成が、定型発達児のみならず発達障害児の予後の適応に多大な影響を与えることに鑑み、発達障害児のメタ認知活性化を促すことのできる学習支援法を開発し、当該幼児の小学校入学後までを見据え、その適切性を吟味することであった。その中で、幼児期からのメタ認知育成を可能にする学習支援法の1つとして「検索学習」の有効性を明らかにし現場で活用できる学習支援システムの土台を構築した。特に、食物連鎖に基づく課題を考案する過程で幼児期からのメタ認知の活性化には検索学習の3規定因が重要であることを明らかにした。特に、3規定因としては、第1に初回学習の徹底、第2に検索スケジュールの時間的分散、第3にフィードバックが効果の要となる点を明確にし、これらを組み込んだ学習支援システムを構築した。その成果を堀田・多鹿・加藤・八田(2020)に要約した。加えて申請者らは、検索学習の導入の仕方によっては有効に機能しない一部の発達症児の存在することも特定し、自閉スペクトラム症等の発達症の障害の程度のみならず、それ以外の個人を特定する個人差が影響する可能性を突き止めた。
著者
柴田 知秀 加藤紀雄 黒橋 禎夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1451-1464, 2008-03-15

近年の計算機・ネットワーク環境の進歩により,膨大な映像アーカイブが蓄積されるようになった.本研究では作業教示映像である料理映像を具体的題材とし,料理映像に現れる食材の物体モデルを自動学習し,それを用いて物体認識を行う手法を提案する.まず,物体がアップになっている画像を抽出し,その画像における注目領域を決定する.次に,画像の周辺の発話から重要な単語をキーワードとして抽出し,注目領域と対応付ける.このような注目領域とキーワードのペアを大量に収集することにより,物体モデルを構築する.物体モデルが構築された後,物体モデルの色情報と談話構造に基づく単語の重要度を考慮することにより,物体認識を行う.2 つの料理番組,計約96 時間分の映像から物体モデルを構築したところ,約100 食材の物体モデルが構築でき,その精度は77.8%であった.また,そのモデルを利用して物体の認識を行ったところ,精度はF 値で0.727 であった.
著者
木村 洋 加藤 功 青柳 優 小池 吉郎
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.233-237, 1979 (Released:2010-02-05)
参考文献数
17

A 44-year-old woman noted sudden onset of hearing loss and tinnitus in the left ear after sneezing. This was followed several hours later by acute vertigo. Neurotological examination revealed left sided complete loss of hearing and positional nystagmus with clockwise rotatory components, when in the left lateral position. A left tympanotomy was performed after 11 days. At surgery, perilymph was found to derive from the round window in which there was a large fistula. The fistulous area was grafted with fatty tissue.After two months, the hearing in the left ear was essentially unchanged. ENG revealed no positional and spontaneous nystagmus and the vertigo gradually disappeared.In labyrinthine membrane rupture, surgical treatment is considered to be effective in alleviating vertigo, though hearing impairment remains unchanged.
著者
加藤 哲久 川口 寧
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
18

【要旨】ウイルスは感染伝播の必要性から、ウイルス粒子にゲノムをパッケージングしなければならない。この生存に必須な過程を効率化するため、ウイルスはゲノムサイズを最少化させ、遺伝子重複や選択的スプライシング等の非標準的なエレメントを獲得することで、限られたゲノムに多様な遺伝情報を搭載してきた。近年、大型 DNA ウイルスである単純ヘルペスウイルス1 型(HSV-1)もまた、非標準的遺伝子をコードすることが明らかとなりつつある。本総説では、chemical proteomics を駆使した非標準的ウイルス遺伝子の解読の確立と解読した新規遺伝子産物である piUL49 の HSV-1 神経病原性への関与に関して解説する。
著者
竹下 萌乃 岡澤 悠衣 加藤 啓介
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.84-91, 2022 (Released:2022-05-15)
参考文献数
16

これまでに,さまざまな歯ブラシの臨床研究が報告されているが,試験群間で毛先形状以外の歯ブラシの仕様が異なるものが多く,毛先形状のみ異なる歯ブラシを比較した臨床研究は少ない.よって本研究では,毛以外の因子を揃えたうえで,毛先形状の異なる歯ブラシにおけるプラーク除去効果の比較を行い,ブラッシング圧の測定も併せて行った. 成人男女61名を無作為に,研磨処理によるテーパード毛(研磨処理毛),化学処理によるテーパード毛(化学処理毛)および先丸毛をそれぞれ同一のハンドルに植毛した歯ブラシを使用する3群に割り付けた.各群3分間/回,3回/日のブラッシングを3週間実施した.0日目および3週間後の時点で被験者にブラッシングを実施させ,プラーク除去率を算出した.ブラッシング圧は,全員同じ歯ブラシ(ガム・デンタルブラシ#211)を用いた時と,試験品を用いた時の2回測定した. その結果,0日目,3週間後それぞれのプラーク除去率は,研磨処理毛群62.5%/55.4%,化学処理毛群42.8%/40.1%,先丸毛群65.0%/55.9%であり,研磨処理毛群と化学処理毛群の間,先丸毛群と化学処理毛群との間に有意な差が認められた(p<0.01).ブラッシング圧は3群間に有意な差は認められなかった. 以上のことから,研磨処理毛と先丸毛は,化学処理毛よりも高いプラーク除去効果を示す可能性が示唆された.
著者
宮城島 賢二 平光 伸也 木村 央 森 一真 石川 志保 依田 竜二 杉浦 厚司 加藤 靖周 加藤 茂 岩瀬 正嗣 森本 紳一郎 尾崎 行男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.132-139, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
27

背景: 慢性心不全に対するβ1選択性β遮断薬ビソプロロールの有用性は, 複数の無作為化対照比較試験(randomized controlled trial; RCT) によって確立されているが, 国内での臨床使用および臨床成績に関する報告は少ない.目的: 日本人の慢性心不全患者に対するビソプロロールの血行動態ならびに心機能に及ぼす影響について検討する.方法: 左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction; LVEF)40%以下の慢性心不全患者25例に対して, 0.625mgより投与開始し, 1~2週間ごとに漸増し, 24週間追跡した. New York Heart Association(NYHA)心機能分類, 血圧, 心拍数, 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP), 心エコー図検査所見, 胸部X線, 腎機能マーカー, 血中ヘモグロビン(hemoglobin; Hb)濃度の経時的変化を解析した.結果: 全例に対してビソプロロールの導入が可能であった. 経過観察中に3例が本研究から脱落した. 継続投与が可能であった22例では, LVEFをはじめとした心エコー図検査所見ならびにBNP値は, 経時的に改善傾向を示し, NYHA心機能分類も投与前後で改善が認められた. なお, 腎機能マーカーおよび血中Hb濃度は有意な変動を示さなかった.結論: ビソプロロールは, 日本人の収縮機能が低下した慢性心不全患者において, 高い忍容性を示し, 血行動態および心機能を改善することが確認された.
著者
山﨑 喬輔 井上 康之 MHD Yamen Saraiji 加藤 史洋 舘 暲
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.119-127, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Although previous researches have shown that our spatial understanding is determined by the multiple sensory information such as vision and touch, how the effect of visuo-tactile integration works on the sense of body ownership, agency and self-localization has been unrevealed. In this study, we built a telexistence system to investigate the effect of combined visual and tactile information by allowing the participants to see their own back via surrogate robot, while applying stimuli on their hand and back synchronously. The participants' answers on questionnaires revealed that they experienced reality in the position of robot in a remote location, rather than their own bodies, through the experiment. This result provided evidence for the efficient enhancement of visuo-tactile integration on self-localization, body ownership, and the sense of agency in a telexistence settings.
著者
常本 照樹 佐々木 雅寿 山下 竜一 長谷川 晃 辻 康夫 北原 次郎太 山崎 幸治 加藤 博文
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

英米型の先住民族政策とは異なる、日本とアイヌ民族の実状に適合した先住民族政策のあり方を追求した結果、憲法13条の「個人の尊重」に個人としてのアイヌが自らのアイデンティティを選択する自由の根拠を求め、その自由を実質化する責務を国に課すことによって民族文化の復興を目指すことが、第一段階として必要にして合理的であることが明らかになるとともに、文化の伝承・発信の具体的あり方も示すことができた。また文化の復興は、社会的・経済的地位の向上政策に対する国民理解の推進のために必要であるだけでなく、地位の向上に主体的に取り組むアイヌの累増のためにも有効であることが明らかになった。