著者
加藤 隆弘 松島 敏夫 瀬戸山 大樹
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-12, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
30

うつ病など精神疾患をもつ患者が発症初期から精神医療機関を受診することはまれであり,適切な精神医療の導入は遅れがちである。他方,こうした患者は身体症状のために身体科を受診していることがまれではない。しかるに,筆者らは精神科以外でも実施可能な採血による血液バイオマーカーの開発が,精神疾患の早期発見・早期介入につながることを期待して,血液を用いた精神疾患の客観的バイオマーカー開発を進めている。本稿では,血液メタボローム解析について概説し,うつ病やひきこもりに関連した研究の成果を紹介する。筆者らはこれまで抑うつ重症度と3ヒドロキシ酪酸,自殺とキヌレニン経路代謝物,ひきこもりとアシルカルニチン/アルギニンとの関連を萌芽的に見いだしてきた。こうした研究の発展により精神疾患を採血で客観的に生物学的に評価できるシステムが構築されることで,精神疾患の早期発見・早期介入の実現に加えて精神疾患への偏見解消が期待される。
著者
金生 茉莉 藤田 康平 池浦 一裕 加藤 伸 小高 利絵 高森 康次 中川 種昭 角田 和之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.41-45, 2018 (Released:2019-06-30)
参考文献数
14

Laugier-Hunziker-Baran症候群(LHB)は,口腔,指趾の色素沈着と爪甲色素線条を特徴とし,全身症状を伴わない後天性疾患である。今回,経過観察中に症状推移の観察が可能であったLHB症候群の1例を経験した。71歳女性で初診時,下唇,頬粘膜に黒褐色色素斑があった。4年経過時に粘膜色素斑の増悪と指趾,爪甲色素線条が発生した。全身検索の結果LHBの診断となった。口腔粘膜色素斑の診断には全身疾患の精査と慎重な経過観察が重要である。
著者
大山 力 加藤 哲郎
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.431-437, 2003-09-10 (Released:2008-12-26)
参考文献数
22

ホルモン製剤DDSの代表的薬剤として黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)徐放性注射剤(リュープリン®)があげられる. 本剤は, 高活性LH-RH誘導体の1カ月あるいは3カ月間徐放性薬剤で, 1回の注射で長期間にわたって薬物を放出し, 前立腺癌, 乳癌, 子宮内膜症, 子宮筋腫, 中枢性思春期早発症などのホルモン依存性疾患の治療法として臨床の場で広く用いられている. 本剤の開発から臨床応用までの経緯を当初の対象疾患であった前立腺癌を中心に紹介した.

3 0 0 0 OA 碧巌録大講座

著者
加藤咄堂 著
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
vol.第6巻, 1939
著者
福澤 薫 渡邉 千鶴 加藤 幸一郎
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.17-25, 2023-02-28 (Released:2023-03-08)
参考文献数
19

The fragment molecular orbital(FMO)method is a theoretical method that enables quantum chemical calculations of whole bio-macromolecules, such as proteins and nucleic acids, yielding the energies and electron densities of whole molecules as well as interaction energies between fragments. The FMO calculations of protein complexes that have been structurally analyzed experimentally allow for quantitative analysis and physicochemical interpretation of intra- and intermolecular interactions within the complexes. Here we describe the quantitative analysis of structures and interactions using the FMO method, i.e., the “structure and interaction basis” obtained through the complementary use of experimental structure and the FMO calculations.
著者
内山 裕美子 築舘 香澄 加藤 みゆき 山口 優一 陳 栄剛 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.281-286, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

茶の淹れ方による味の変化については,今までにも多数報告されている。今回は,味覚センサーを用いて茶の味を測定し,淹れ方の違いによる茶の味の評価を行った。 茶の淹れ方において煎じ回数,浸出時間,茶葉量の違いにおいては,それらの変動とともにアミノ酸,カテキン含量も変化し,また,味覚センサーによる測定値である味強度も同様に変化した。 浸出温度の違いによるうま味強度と渋味強度の変化については,渋味強度は同じ茶葉を5°C,40°C,100°Cと順次温度を変えて反復浸出しても,また,5°C,40°C,100°Cで浸出する際に新しい茶葉を用いて浸出しても,温度とともに増加傾向として示された。しかしながらうま味強度においては,同一茶葉を用いて反復浸出した場合には,5°Cで浸出した場合に比べ,40°Cで浸出した場合には減少し,以後,熱湯で浸出しても,うま味強度に変動は認められなかった。
著者
大賀 涼 田久保 宣晃 寺島 孝明 野口 祐輔 木戸 浩太郎 加藤 憲史郎
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.1269-1274, 2013 (Released:2018-01-25)
参考文献数
5
被引用文献数
3

超小型モビリティは,1~2人乗りの小型車で,新しい高齢者向けモビリティとして高い期待を受けている.本研究では一人乗りの超小型モビリティであるミニカーを扱う.ミニカーは1980年代から販売されており,すでに多くの利用実績がある.そこで交通事故統計データを基に,現在の事故の状況について調査した.
著者
加藤 隆文
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.49-60, 2019 (Released:2021-05-08)

This paper proposes an extended understanding of the discipline called ‘analytic aesthetics’, with reference to analytic pragmatism proposed by a prominent neo- pragmatist, R. Brandom. It is therefore argued that analytic aesthetics should be reconsidered in terms of ‘analytic pragmatist aesthetics’. N. Carroll’s philosophy of criticism is expected to offer an appropriate picture illustrating how the analytic pragmatist aesthetics can be embodied in the actual scene. Carroll argues that (1) ‘reasoned evaluation’ comprises the essential part of criticism, and that (2) ‘success value’ should be considered as more privileged than ‘reception value’. This paper assents to (1): the framework of analytic pragmatism, according to which semantics of certain aspects of natural language is understood in terms of their pragmatics, can be aptly applied into the philosophy of criticism. The claim (2), however, may be in tension with pragmatists’ theory of art. Once the pragmatist concept of experience is accepted, the privileged status of success value over reception value is no longer hard and fast: they are two sides of the same coin. This paper thus revises the philosophy of criticism and represents it as a promising illustration of analytic pragmatism implemented in the context of aesthetics independently of Carroll’s argument.
著者
加藤 隆雄
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.5-24, 2014

「ポストモダン」論によって影響を受けた1980年代後半の日本の教育社会学を「ポストモダン教育社会学」と呼ぶことにする。それは,「モダン」としての教育・学校制度の異化に向かったが,アリエス,ブルデューと並んでインスピレーションの供給源となったのが,『監獄の誕生』におけるフーコーの「規律訓練」の視点であった。しかし,1990年代以降の教育システムの変動によって,異化の手法で捉えられた教育・学校制度の理解は不十分なものとなり,ポストモダン教育社会学の訴求力も低下していく。他方,フーコー研究においては,2000年代以降,規律訓練の概念が「生政治」論の一部であることが明らかになるのだが,1990年代以降の教育システムは,まさにこの生政治論的視点からよりよく捉えうることをフーコー理論を概略しながら論じた。
著者
加藤 直子 山岡 昌之 一條 智康 森下 勇
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.609-615, 2003-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
5

多彩な解離症状を呈した15歳女子に対し,本人へのカウンセリングおよび薬物療法,さらに親へのガイダンスを行い,症状の改善が認められたので報告した.思春期の解離症状に対しては,退行的側面と前進発達的側面の理解が必要である.家族および治療者は,行動化や外傷体験の背後にある情緒に共感し,解離した体験をつなぐ補助自我的な役割を果たす一方で,発達阻害的な退行を助長しないことが肝要であると思われた.解離症状に伴う強い不安や興奮,身体化症状には薬物療法が有効であった.