著者
加藤 重広
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
no.27, pp.19-82, 1997

日本語の日常会話では,本来助詞が存在するような位置に助詞が現れない発話が頻繁に見られる。一般に日本語の場合,動詞と意味上関わりを持つ名詞(句) は格助詞を後接させてその意味的関係を明示できる。そして,動詞の意味的特質と関連させて,格助詞の意味や用法の記述をすることも行われている。本論文では,本来助詞が現れてしかるべき位置に助詞が現れない場合について考える。助詞がないという現象も実は単純なものではなく, いくつかのパターンに分けて考えることが可能である。そのうち、助詞が出現しないことが義務的である場合や逆に無助詞では非文となる場合などを検討しながら,その実態を考えていく。本稿では本来格助詞などの助詞があるべきところに助詞を欠くものを一括して〈ゼロ助詞〉と呼ぶことにする。また,本稿は主としてこの〈ゼロ助詞〉の談話における機能を明らかにすることを目的とする。
著者
小松 正史 加藤 徹 桑野 園子 難波 精一郎 近藤 明 井上 義雄 山口 克人
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.268-276, 2000-08-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
26
被引用文献数
2

道路交通騒音の不快感緩和対策として, 本稿では樹木葉擦れ音のマスキング効果に着目し, 高木類6種が発生する葉擦れ音の周波数やレベル分析, 距離減衰に伴うレベル変化などの物理測定を実施した。その結果, 各樹種とも100Hzから1,000Hzにかけて平坦な成分をもち, 1,000Hz以上で樹種間に差が現れた。レベルの高い音を発生する樹種の特性は受風感度の高い形状をもつものであり, 高域の周波数成分を多く含む樹種の特性は葉縁部の硬度が高いことが示された。また, 距離減衰に伴って高域の周波数成分が減少することも確認された。3樹種については風速値とLAeq,10minの間に相関がみられた。最後に葉擦れ音を活かした沿道植栽計画の必要性を論じた。
著者
山元 一晃 浅川 翔子 加藤 林太郎 Kazuaki YAMAMOTO Shoko ASAKAWA Rintaro KATO
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 人文科学編 = Treatises and Studies by the Facalty of Kinjo Gakuin University. Studies in Humanities (ISSN:18800351)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.129-139, 2021-09-30

筆者は,看護師を目指す留学生のためのライティング教材の開発を行った。本稿は,開発に至った背景,開発の過程,その内容,想定される使用方法などについて述べる。まず,開発に至った背景については,看護学生・看護師向けのライティング教材を分析し,留学生の日本語教育にそのまま応用することは難しいことを明らかにした。その後,開発の経緯や内容について述べた。看護師と日本語教師が共同で開発にあたり,看護学科で用いられている課題を分析し,その上で必要なものを選んだ。さらに,実際のテキストを示しながら,本書の特徴を述べた。看護実習の流れにそった内容になっており,大きく「実習前」「実習中」「実習後」に分け,形式に関する説明を加え,電子カルテなど実際に看護実習で情報を得るための資源を入れ,ステップアップできる練習問題を豊富に用意した。最後に,想定される使用法や,今後の課題を述べた。
著者
加藤 寛
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 1977-07-05 (Released:2012-11-27)
参考文献数
34

The costume of the modern Kendo is dressed in the three-quarter sleeves and Umanori-Hakama. Hakama has usually tl. e length to reach an ankle. Because, by having so, we have the merit that our foot posture and foot action cannot be recognized by the others.On seeing the old pictures concerned with Kendo, there is some types. One is a long Hakama in Shinkage-style. The others are a short lengthened Hakama, and playing figure to taking “Momodachi” to have free legs action. These are different from the style of the modern Kendo. Especially, Momodachi-style could be seen in early of Meiji Era. But, method of taking “Momodachi” had various way and that had definite as life pattern of Bushi.As a part of the history of Kendo, I described the process of Momodachi-style, how to take Momodachi, and their historical resource.
著者
東野 哲也 加藤 栄司 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-37, 1995-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

剣道による聴覚障害 (仮称, 剣道難聴) の実態を明らかにするために一高等学校剣道部員33名を対象として純音聴力検査を行った。その結果33人中10人 (30%) に種々の程度の閾値異常を認め, 男子生徒に, また高学年ほどその頻度が高かった。中でも2kHzまたは4kHzのdip型が「剣道難聴」の初期聴力像と推定され, さらに2, 4kHz障害型や2, 4, 8kHz障害型感音難聴に進行した段階で難聴を自覚するものと考えられた。4kHz-dipよりも2kHz-dip型感音難聴を多数認めたことより, 音響のみでなく打撲による内耳へのより直達的な衝撃がその成因に関与するものと推定された。
著者
神末 武彦 加藤 彰
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.101-118, 2014-03-31

2011 年に宮古空港にスカイマークが低価格運賃戦略を持って就航した。それまで既存の日本トランスオーシャン航空と全日本空輸の2 つの航空会社で高留まり傾向にあった航空運賃がこれを機に下落して低運賃競争に転じ、熾烈な戦いが繰り広げられるところとなった。この地域の入域者はほぼ航空輸送に頼っており、那覇・宮古の航空路線を検証することによって、運賃の低価格化が宮古島への航空需要喚起と観光客を増加させ、それら観光客がもたらす宮古島への経済波及効果が高まり地域経済の活性化をもたらしたのかを検証することができる。スカイマークの参入により航空機を利用する人数は総体で増加したものの、宮古地域に入域者する観光客数と経済波及効果について大きく影響したとはいえない。これらを検証するため、沖縄県、宮古島市や航空会社から集めた実績や予測と担当者へのインタビューを通して、総合的に集約・分析して研究をまとめた。
著者
加藤 直良
雑誌
名古屋学芸大学短期大学部研究紀要 = The research bulletin of Nagoya University of Arts and Sciences Junior College
巻号頁・発行日
no.8, pp.34-42, 2011-03

The purpose of this report is to make clear the history in early Australia and of Australian English. In 1788, many convicts were transported to NSW, which was the first place that Britain decided to send them there. In those days British criminals were transported to colonies in America, but the Americans declared independent. As a result of this, there were no places to imprison them. They were the founders of the English colony and Australian English. The varieties of English spoken by the early British and Irish immigrants promoted development and foundation of Australian English. There was much influence of Irish English upon it.
著者
西山 勇毅 柿野 優衣 中 縁嗣 野田 悠加 羽柴 彩月 山田 佑亮 佐々木 航 大越 匡 中澤 仁 森 将輝 水鳥 寿思 塩田 琴美 永野 智久 東海林 祐子 加藤 貴昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1630-1643, 2021-10-15

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大にともない,多くの大学ではキャンパス内での感染予防のために,キャンパスの封鎖とインターネット越しに授業を配信するオンライン授業が導入され,学生たちは自宅から授業に参加している.このような在宅中心の新しい生活様式は,感染予防効果が見込める一方で,運動不足による二次的な健康被害が懸念される.新しい生活様式における大学生の身体活動の実態,特に学生の属性や時間帯ごとの身体活動量とその内容を明らかにすることは,二次的な健康被害を予防するうえで必要不可欠である.そこで本研究では,日常生活中の身体活動データ(歩数と6種類の行動種別)を大学生が所有するスマートフォンを用いて自動収集し,大学生の身体活動量を明らかにする.身体活動データは,必修の体育授業を履修する大学1年生305名から10週間収集した.その結果,通学(7時から10時)や教室での授業,課外活動(11時から24時)の時間帯における歩数の減少と静止時間の長時間化が明らかになった.本結果は,新しい生活様式における大学生活が平日の身体活動量の低下を招く可能性を示唆する.
著者
加藤 秀一
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

生物学的とジェンダー研究との相互理解を促進する試みは1970年代から繰り返し行われてきたが、現在においても極めて不十分な成果しか挙げ得ていないことが明らかになった。本研究では、この膠着状態を乗り越えるために、両陣営が共に理解すべき理論的方向性を提示した。それは、一方が他方を包摂しうるという幻想を捨て、適切な役割分担をするという(一種の反自然主義的な)方向性である。そのためには、ヒト=人間の精神生活に特有の「規範性」に関する因果的説明と正当化という二つの文脈を区別することが肝要である。
著者
岩渕 慎也 鈴木 康裕 加藤 秀典 田邉 裕基 遠藤 悠介 石川 公久 羽田 康司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11206, (Released:2017-02-06)
参考文献数
25
被引用文献数
4

【目的】姿勢安定度評価指標(index of postural stability:以下,IPS),修正IPS(modified index of postural stability:以下,MIPS)を測定し,MIPS,MIPS/IPS の再現性,MIPS の有用性を検討すること。【方法】若年健常者80 名を対象にMIPS,MIPS/IPS の再現性を系統誤差,偶然誤差より検討した。MIPS の有用性はShapiro-Wilk 検定にて閉眼片脚立位検査との比較を行った。【結果】再現性についてMIPS,MIPS/IPS は加算誤差を認めた。MIPS,MIPS/IPS のICC(1.1)は0.725,0.616 であった。また,有用性についてMIPS はp = 0.859 であり,有意に正規分布にしたがう結果となった。【考察】MIPS は臨床応用可能な評価指標であり,幅広い対象者の動的バランス評価に有効な手段であると考える。
著者
山内 俊久 加藤 康紀 Toshihisa YAMAUCHI Yasunori KATO
出版者
創価大学教育学部・教職大学院
雑誌
教育学論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.69, pp.207-224, 2017-09-30

青鳥特別支援学校は、わが国の「養護学校」制度がスタートする以前の1947 年に創立された知的障害教育の実験学校であり、今日までの特別支援教育における中等教育を担う中心的学校である。 本研究では、戦後から1974 年の養護学校義務制実施にいたるまでの法整備等の動きを整理し、青鳥特別支援学校の前身である青鳥中学校、青鳥養護学校における希望者全入の歴史を振り返り、その理念と教育方法の変遷について考察を加えた。その結果、戦後のわが国の知的障害教育の流れには、その法的整備等も含めインクルーシブ教育への底流があったことは間違いない。 筆者は、これからの特別支援教育の先に、生涯教育化の理念が重要であると捉える。「特別支援教育は特別でない」との言葉もあるが、これからの特別支援教育は、「障害」「障害者」「支援」等というキーワードではなく、「人間」「人権」「連続性」「幸福」等を念頭においた人間教育の視点から考えることが必要であると考える。その趣旨から、創価教育学体系の著者でもあり、本学の理念の礎である牧口常三郎の考えを通して、これからの特別支援教育の考察を試みた。Seicho Special Support School is an experimental school of education for the intellectually disabled established in 1947 before the system of "Yogo school" (school for handicapped children) started in Japan. Since its foundation, it has been a central school in charge of secondary education in the special needs education. In this article, we outline the major trends in the legislation from the end of WWII to the implementation of compulsory system of Yogo schools in 1974. Then we look back on the history of the open admission of all applicants at Seicho Middle School and Seicho Yogo School, the predecessors of Seicho Special School, and examine the transition of its philosophy and teaching methods. As a result, we feel certain that the tide toward inclusive education as well as its legislation has always lain beneath the education for the intellectually disabled in Japan after WWII. The authors consider that the idea of making special education into lifelong education is important beyond the special needs education in the future. As implied by the words "Special needs education is not special", we think it necessary to see the special needs education in the future from the viewpoint of human education bearing in mind the words like "human", "human rights", "continuity", "happiness" and so on, not the keywords like "disability", "disabled person", "support" and so forth. To that effect, we make an attempt to look at special needs education through the thought of Tsunesaburo Makiguchi, the author of "The Theory of Value-Creating Pedagogy" and the founder of the philosophy of Soka University.
著者
目叶 裕史 江口 直人 加藤 たつ郎 中村 中
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-52, 2016 (Released:2016-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

血液透析の分野は生命予後の改善や生活の質 (quality of life : QOL) の向上のため, 浄化法や管理方法の検討がされており, 当院では内部濾過を踏まえた透析量増大を考え, 現在350mL/min以上の高血液流量で治療を行っている. 日常的な制限を極力設けない高血液流量透析のQOLを含む生命予後への影響について当院のデータと日本透析医学会やほかの研究データと比較した. 高血液流量透析は透析効率や透析量, 栄養指標, QOL評価が高い傾向にあり, 粗死亡率は5.2%と十分に低く, 透析歴20年以上の長期透析患者は21.9%と高い割合を占めた. 高い血液流量により内部濾過が増えれば予後不良因子を多く除去できる大きな透析量が得られ, その大きな透析量が食事制限を必要としない栄養状態の良好な生活が維持できてQOLの向上に貢献していると考える. 高血液流量透析は生命予後の改善, QOLの向上のため重要な基本条件である.