著者
加藤 駿一 井谷 修 松本 悠貴 大塚 雄一郎 兼板 佳孝 成田 岳 羽田 泰晃 根木 謙 稲葉 理 松村 穣 八坂 剛一 田口 茂正 清田 和也
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.155-159, 2023-06-01 (Released:2023-08-23)
参考文献数
22

心停止蘇生後患者の中でも,目撃の無いものについて,その予後を規定する要因について行われた先行研究は極めて少ない.そこで,目撃の無い心停止蘇生後患者の予後を規定する要因について調査した.2015 年 1 月~2019 年 5 月に入院した病院外心停止蘇生後患者のうち目撃例のない症例の生命学的・神経学的予後を規定する予測要因について,後ろ向きに調査した.解析対象例は 857 例であった.解析の結果,目撃の無い院外心停止蘇生後患者の生命学的・神経学的予後を良好にする予測因子として,年齢が若いこと,搬送中の心拍再開があること,発見者による胸骨圧迫が行われていること,初期波形ショックの適応があることであった.以上の結果を考慮し,救命率向上のための方策を検討すべきと考える.
著者
川井 謙太朗 舟崎 裕記 林 大輝 加藤 晴康 沼澤 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-43, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23
被引用文献数
5 2

〔目的〕投球障害肩症例における肩関節機能を投球側と非投球側の間で比較した.〔対象と方法〕対象は野球投手の男性44例とした.肩甲上腕関節ならびに肩甲胸郭関節に対する肩関節機能(可動域7項目,筋力13項目)を投球側と非投球側の間で比較した.〔結果〕投球側は非投球側に比べ,上腕骨頭後捻角度,補正外旋角度は有意に大きく,一方,補正内旋角度,Horizontal Flexion Test,Scapular Retraction Test,inner muscle筋力,僧帽筋下部線維筋力は,有意に低い,あるいは小さかった.〔結語〕投球障害肩症例にみられた, 投球側と非投球側間での可動域や筋力に関する肩関節機能の特徴的な相違は,これと投球動作時の肩関節痛との深い関連性を示唆する.
著者
松浦 正孝 保城 広至 空井 護 白鳥 潤一郎 中北 浩爾 浅井 良夫 石川 健治 砂原 庸介 満薗 勇 孫 斉庸 溝口 聡 加藤 聖文 河崎 信樹 小島 庸平 軽部 謙介 小野澤 透 小堀 聡
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「戦後体制」の何が戦前・戦時と異なり、どのような新たな体制を築いたのか。それはその後どのような変遷をたどり、どこでどう変わって現在に至ったのか。本研究は、その解明のために異分野(政治史、外交史、政治学、憲法学、経済史)の若手・中堅の最先端研究者を集めた多分野横断による問題発見型プロジェクトである。初めの2年度は、各メンバーの業績と学問背景をより深く理解し「戦後」についての問題を洗い出すため、毎回2名ずつの主要業績をテキストとする書評会と、その2名が それぞれ自分野における「戦後」をめぐる 時期区分論と構造について報告する研究会を、年4回開くこととした。しかるにコロナ禍の拡大により、第2年度目最後の2019年3月、京都の会議施設を何度も予約しながら対面式研究会のキャンセルを余儀なくされた。しかし20年度に入ると研究会をオンラインで再開することとし、以後、オンライン研究会を中心に共同研究を進めた。コロナ禍による遅れを取り戻すべく、20年7月・8月・9月と毎月研究会を行い、与党連立政権、貿易・為替システム、消費者金融などのテーマについてメンバーの業績を中心に討議を行った。オリジナル・メンバーの間での相互理解と共通認識が深まったため、12月にはゲスト3名をお招きして、戦犯・遺骨収集・旧軍人特権の戦後処理問題を扱うと共に、メンバーによる復員研究の書評会を行った。「家族」という重要テーマの第一人者である倉敷伸子氏にも、新たにプロジェクトに加わって頂いた。この間、メンバーの数名を中心に今後の研究方針案を調整した上で、21年3月には3日間にわたり「編集全体会議」を開催した。後半2年間に行うべき成果のとりまとめ方針を話し合うと共に、憲法・経済史・労働史・現代史の新メンバー加入を決め、各メンバーが取り組むテーマを報告し議論した。また、各メンバーは各自で本プロジェクトの成果を発表した。
著者
加藤 真 岩堀 裕介 佐藤 啓二
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.481-484, 2004-08-30 (Released:2012-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

We verified the coaptaion effect of the subscapuraris muscle when the shoulder was immobilized the external rotation after initial anterior dislocation of the glenohumeral joint, and the practical use of the immobilizer to keep the shoulder in external rotation position. We evaluated twelve shoulders of the 12 patients with traumatic initial anterior dislocation of the shoulder. All of the patients were male, and the in mean age was 22.2 years old(range,17 to 30). Fast-spin-echo T2-weighted axial and sagittal magnetic resonance images were made, with the arm held at the side and positioned first in the maximum internal rotation and then in 15°external rotation within one week after the dislocation. We examined the coaptaion effect of the subscapuralis muscle comparing the images in the both positions. The patients were asked about the compliance and the discomfort of immobilization. Bankart lesions were identified in 11/12 shoulders (91.6%). The coaptaion effect was observed in 10/12shoulders (83.3%). All of the patients put on immobilizers for 3 weeks, and answered that discomfort was within the bounds of their torelance. Better coaptaion of a Bankart lesion was observed in external rotation compared with that in internal rotation. The immobilizer was of practical use.
著者
宮﨑 勇輔 小尾口 邦彦 福井 道彦 加藤 之紀 和田 亨 横峯 辰生 小田 裕太 大手 裕之
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.255-258, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

肺血栓塞栓症による心停止に対し,機械的胸部圧迫装置が有用であったが,外傷性肝・脾損傷を併発し,開腹手術が必要となった症例を経験した。症例は73歳女性で,呼吸困難感を主訴に救急搬送され,来院後に心停止となった。直ちに心肺蘇生を開始,機械的胸部圧迫装置AutoPulse®(旭化成ゾールメディカル)を使用した。気管挿管・アドレナリン投与を行い自己心拍再開が得られた。心停止は肺血栓塞栓症によるものと診断した。ICU入室後は,血行動態は比較的保たれていたが,約15時間後から不安定となり,貧血の進行も認めた。腹部超音波検査・CTを実施し,多発肋骨骨折に伴う外傷性肝・脾損傷による出血性ショックと診断した。開腹し,脾臓摘出術と肝裂創部凝固止血術を実施した。症例は肥満(BMI 38 kg/m2)だったこともあり,AutoPulse®のバンド位置が尾側にずれ,合併症を生じたものと推測された。機械的胸部圧迫装置の使用では特性を十分理解し,合併症に注意する必要がある。
著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.63-80, 2022-07-31

本稿は,前号掲載論文の続編であり,占領下で,1947年5月の憲法施行に間に合わせるべく家族法改正を推進した日本政府や我妻らが草案をGHQに提出したにもかかわらず,なにゆえにGHQの承認が下りず,「応急措置法」での処理がなされたのか,当時の日本政府や我妻らが知らなかった“裏事情”に焦点を合わせた論稿である。 我妻らの家族法草案起草委員会には川島武宜も参加していたが,GHQ側の立法作業の責任者であったオプラーは,川島武宜と民法改正の全期間を通して何度となく日本側には秘密の非公式会合を重ねていた。この会合で,川島は日本側の最終草案には“家制度の残滓,女性に不利な点が存続している”旨を述べ,その4日後には,我妻が民法改正草案の民主性と女性平等性を説明したが,受け入れられずに,国会提出の延期が決定された。背景事情を知らなかった日本側の起草委員は,GHQには検討の時間的な余裕がないものと理解したのであった……。
著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.241-279, 2022-03-31

本稿は,日本民法が過去1世紀半にわたっていかなる国内政治と国際政治のなかで形成されてきたのかを考察する筆者の一連の研究の一部をなすもので,家族法に焦点をあてている。 かつて日本の家族法の中核をなしていた「家制度」は,民法典制定時に華族が反対し天皇制官僚も消極姿勢を示すなかで,「水戸学」以来の伝統を受け継ぐ「世論」のもとで形成された「創られた伝統」であった。戦後の家族法改正は,この家制度を廃絶した。我妻はこれが日本側「起草委員の独自の発案」であったことを強調するが,実はアメリカの初期占領政策―日本の軍事的弱体化・産業的弱体化・精神的弱体化―の一環であった。「日本を生糸・お茶・おもちゃ等の生産国」にするという産業力弱体化政策とともに,“天皇陛下,万歳!”と叫びながら兵士が死地におもむいた歴史を根絶させるべく,天皇を頂点とする「家族主義的国体」観を破壊する一環としての家族法改正だったのである。
著者
加藤 榮司 東野 哲也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.842-848, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
18
被引用文献数
1

1992年から2010年までの18年間に高等学校剣道部員を対象にして行った聴覚健診成績を集計した. 純音聴力検査で一つ以上の周波数に聴力閾値30dB以上の閾値上昇を認めた聴覚障害例は225名中45名 (19.7%) 69耳であり, 障害程度は2000Hzと4000Hzで大きかった. 聴力型としては, 2000Hz-dip型, 4000Hz-dip型, 2000-4000Hz障害型感音難聴の頻度が高く, 初年度の健診では正常聴力を示した例も含まれていた. また, 聴力閾値25dB以内の小dipについても2000Hzと4000Hzのみに観察され, 剣道難聴の初期聴力像と考えられた. すべての学年で右耳よりも左耳の聴力閾値が有意に高いことがわかった (p<0.01). 18年間にわたる聴覚健診活動の結果, 聴覚障害の発症頻度減少が認められた.
著者
玉置 勝司 石垣 尚一 小川 匠 尾口 仁志 加藤 隆史 菅沼 岳史 島田 淳 貞森 紳丞 築山 能大 西川 洋二 鱒見 進一 山口 泰彦 會田 英紀 小野 高裕 近藤 尚知 塚崎 弘明 笛木 賢治 藤澤 政紀 松香 芳三 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.369-386, 2013 (Released:2013-11-14)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

難症例の1つに咬み合わせ異常感や違和感があり,その訴えに対応する客観的所見が確認できない症例に遭遇することがある.通常,咬合紙,ワックス,シリコーンなどを用いて確認はするものの,咬合接触状態に特に異常は見つからない.さらに,患者の咬合に関する執拗な訴えに対して歯科医師が患者に問題の部位を確認してもらい,患者の指示により咬合調整を行ってしまうといった患者の感覚主導型治療に陥ってしまうことがある.その結果,患者の訴えは改善しないばかりか,逆に悪化することもさえもある.そして,患者と歯科医師の信頼関係が壊れ,思わぬ方向に陥ってしまうことも珍しくない. このような患者が訴える咬合に関する違和感に対して,社団法人日本補綴歯科学会,診療ガイドライン委員会において,平成23年度「咬合感覚異常(症)」に関する診療ガイドラインの策定が検討された.診療ガイドラインの策定に際し,委員会の作成パネルによるガイドライン策定を試みたが,咬合感覚異常(症)に関する十分に質の高い論文は少なく,診療ガイドラインの作成には至らなかった.そこで,本委員会のパネルで協議した結果,「咬合感覚異常(症)」に対する日本補綴歯科学会としてのコンセンサス・ミーティングを開催して本疾患の適切な呼称の検討を行った.また事前のアンケート調査結果から,このような病態を「咬合違和感症候群(occlusal discomfort syndrome)」とした. 今回のポジションペーパーは,今後の診療ガイドラインの作成とそれに対する研究活動の方向性を示す目的で,過去の文献と咬合違和感症候群患者のこれまでの歯科治療の経過や現在の状況について実施した多施設による患者の調査結果をもとに作成された.
著者
宮脇 梨奈 加藤 美生 河村 洋子 石川 ひろの 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-021, (Released:2023-09-05)
参考文献数
24

目的 近年,インターネットは,情報を検索し取得するだけでなく,情報発信や共有も可能となっている。それに伴い医療・健康分野でも,健康情報を収集する能力だけでなく,双方向性に対応した多様な能力も必要とされるようになっている。しかし,両方の能力を評価する尺度は見当たらない。そのため,本研究では欧米で開発されたDigital Health Literacy Instrument (DHLI)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性について検討した。またデジタル・ヘルスリテラシー(DHL)の程度と対象者の特徴との関連を明らかにした。方法 尺度翻訳に関する基本指針を参考にDHLI日本語版を作成した。社会調査会社にモニター登録している20~64歳男女2,000人(男性:50%,年齢:40.7±12.0歳)にインターネット調査を実施した。DHLI日本語版,社会人口統計学的属性,健康状態,インターネットの利用状況,eヘルスリテラシー(eHEALS)を調査した。構成概念妥当性は,確証的因子分析による適合度の確認,基準関連妥当性は,eHEALSとの相関により検討した。内部一貫性および再検査による尺度得点の相関により信頼性を検証した。DHLと各変数との関連は,t検定,一元配置分散分析および多重比較検定を用いた。結果 確証的因子分析では,GFI=.946,CFI=.969,RMSEA=.054と良好な適合値が得られ,日本語版も原版同様に7因子構造であることを確認した。またeHEALS得点との相関(r=.40,P<.001)を示し妥当性が確認された。信頼性では,Cronbachのα係数は.92であり,再検査による尺度得点の級内相関係数はr=.88(P<.001)であった。尺度得点は,主に性,世帯収入,健康状態,インターネットでの情報検索頻度および使用端末が関連していた。また信頼性の評価,適応可能性の判断,コンテンツ投稿の下位尺度得点が低い傾向にあった。結論 DHLI日本語版は,日本語を介する成人のDHLを評価するために十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。DHLの低さが健康情報格差につながる可能性もあるため,DHLの向上が必要な者や強化が必要なスキルの特定をし,それに合わせた支援策を検討する必要がある。
著者
加藤 博和
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.071, 2018-03-23 (Released:2018-04-23)

まさに時宜を得た出版である.「低迷と混乱,そして変革」の時期にタクシー産業はあり,それをコントロールするべき政策も「迷走」を続けてきたと,本書は冒頭で指摘する.これらの原因として,タクシー産業・政策に関する「正確な情報」が利害関係者に共有されていないことを挙げる.身近にあるがゆえに分かった気になっているが,実際のところタクシー産業を俯瞰的かつ十分に理解している人はほとんどおらず,それが「タクシー政策が歪む」原因であると主張する.
著者
福本 雅之 加藤 博和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.554-567, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

財政悪化・少子高齢化社会を迎えた日本における地域公共交通維持スキームとして,コミュニティバス等の公的補助方式に加え,地域住民・企業が自らのニーズに合った公共交通を創り出す「地域参画型運営方式」が出現している.本研究では,全国の地区内乗合バスサービス代表事例を横断的に調査し,関係主体間の役割分担の視点から類型化する.各類型の有効性と成立・持続可能性の地域特性による違いを,クラブ理論および組織論の観点から検討した結果,a) 成立の可否を主に左右するのは事業採算性と運動の組織化であること,b) 運動の組織化は地縁組織やキーパーソンの有無により大きな影響を受けること,を明らかにしている.その上で,地域の特性や資源に応じた運営方式を類型化している.
著者
加藤 明日香
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.197-206, 2016-08-10 (Released:2016-09-02)
参考文献数
41
被引用文献数
2 1

目的:国内外の2型糖尿病患者が経験するスティグマに関して,実践的な医療分野の視点から,今日までどのような研究が進められているのかを把握することを目的として,文献レビューを行う。方法:PubMed,MEDLINE,PsycINFO,CINAHL,医中誌,CiNiiの検索エンジンを用いた。文献検索に用いたキーワードは,PubMedとMEDLINE,PsycINFO,CINAHLでは“type 2 diabetes AND stigma”,医中誌とCiNiiでは「2型糖尿病ANDスティグマ」とした。選択論文は,1963年1月~2015年7月に発行された査読付き原著論文とした。結果:分析対象となる研究論文は合計15本であった。2型糖尿病患者が経験しているスティグマを主題として取り組んだ研究論文が2本,他に研究主題があり,その分析結果として2型糖尿病患者のスティグマが検出された研究論文が13本であった。研究デザインは,質的研究13本,量的研究2本であった。2型糖尿病患者におけるスティグマの影響は,診断前・診断直後の健康行動からすでに始まっており,その影響は治療開始後の自己管理行動に及び,長年にわたる闘病生活において,2型糖尿病患者が社会的サポートを受けることを難しくしていることが明らかとなった。考察:今後,2型糖尿病患者の自己管理行動を支援する介入研究に発展させていくためには,現在「スティグマ」という広い概念として研究されているところを,「実際のスティグマ」「感じられたスティグマ」「内在化されたスティグマ」の3つの概念に分け,それらを定量的に測定する2型糖尿病患者のための尺度を開発し,まず,その影響の大きさと分布を正確に明らかにした上で,最も有効な介入ポイントを特定していく必要があると考える。
著者
加藤 博文
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

研究実績:平成22年度は、日本文化人類学会、アメリカ考古学会において先住民族の文化遺産と知的財産権に関する報告を行う一方、研究アソシエートとして参画するカナダの研究プロジェクト「文化遺産における知的財産権問題(IPinCH)」(研究代表者ジョージ・ニコラス、サイモン・フレーザー大学教授)のワークショップにおいて北海道におけるアイヌ民族の手による文化遺産および景観保全の取り組みについて報告をおこなった。また2011年1月には,北海道阿寒において先住民族の文化遺産と知的財産権をめぐる国際会議をアイヌ・先住民研究センターとIPinCHとの共同で組織し、今日的課題についての協議をおこなった。意義および重要性:研究年度2年目にあたる今年度は、国内学会および国際学会において今日的課題と日本における現状についての報告を行うとともに、海外の研究グループとの将来的な研究ネットワークの構築をおこなった。このような取り組みを通じて加藤は、研究アソシエートとしてIPinCHへの参画が求められ、また世界国際会議(WAC)中間会議(2011年開催)のセッション「先住民族と博物館」の国際委員会メンバーへ招待され、本研究課題を国際的な研究組織の中で議論できる環境が構築できた。先住民族とその文化遺産をとりまく課題は、国際的に注目されており、その解決には国際的な連携が不可欠である。この意味において本研究の実施によって海外の研究組織と恒常的な研究協力体制が構築できたことは、今後の当該課題の解決にむけて大きな成果を挙げたと評価でき、日本における研究展開も国際的な場での議論も可能になると思われる。