著者
小池 麻由 大津 史子 榊原 仁作 後藤 伸之
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.134-143, 2013-02-28 (Released:2013-03-06)
参考文献数
20
被引用文献数
12

Objective: Recently, use of health foods and supplements, as well as the amount of information available about them, has been steadily increasing.  Therefore, a noticeable increase in adverse drug reactions caused by health foods and supplements has also been seen.  The purpose of this study was to clarify the current status and backgrounds of patients with health food- or supplement-related adverse health effects.Methods: We selected the cases of health food- or supplement-related adverse health effects from the Case Reports of Adverse Drug Reactions and Poisoning Information System (CARPIS) database, which contains over 57,000 case reports of adverse drug reactions.  We investigated the background, suspected products and adverse events in each case and conducted univariate logistic regression analysis to determine significance.Results: We obtained a total of 327 cases consisting of 103 causative products.  Women comprised 66% of study subjects and had a significant association with dietary supplements.  Patients with a history of liver disease had a significant association with liver damage caused by “Ukon,” a drink made from turmeric root and sold as an anti-hangover remedy in Japan.Conclusion: The causative products had several unique features.  This information should be utilized to prevent health food- and supplement-related adverse health effects in the future.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエルグリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2998-3011, 2002-10-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームおよびゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を演じてきた.認知研究の題材にゲームを用いることの利点は,ゲームが良定義問題で対戦による評価が容易なことである.チェスで最もよく知られた認知実験は局面の記憶に関するものでDe Grootによって行われた.この研究を継いだSimonとChaseはチャンクという概念を用いてエキスパートの認知能力を説明した.チャンクは一種の情報のかたまりで,チェスでいうとチェス盤上の典型的な駒の配置パターンのかたまりをチャンクと呼んでいる.彼らは強いプレイヤは弱いプレイヤよりも広い配置パターンをチャンクとして記憶していることを示した.将棋の認知研究の第1歩として,我々はまずチェスで行われた認知実験を追試してみることにした.チェスと将棋には認識の点からいくつかの違いがあるので,この追試実験を一度は実施することが必要だと考えた.本論文では将棋を対象とした時間無制限と時間制限の記憶実験を行った.強いプレイヤが弱いプレイヤより成績が良いこと,すなわち広い配置パターンをチャンクとして記憶しているというチェスとほぼ同様の結果が得られた.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1481-1492, 2004-05-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームやゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を果たしてきた.なかでもチェスを題材にした認知科学的研究では,エキスパートのプレーヤは,記憶課題において非常に卓越した認識能力を示した.Simon とChase は,このエキスパートの優れた記憶能力をチャンクという概念を用いて説明した.本論文では,将棋を題材に次の一手問題を様々な棋力の被験者に提示して,指し手を決定するまでの思考過程を発話プロトコルとアイカメラデータとして記録する実験を行った.その結果,将棋の上級者以上のプレーヤでは,単に局面に対する駒の配置に関する知識が形成されるだけでなく,局面をその前後関係からとらえられる知識が獲得されることが分かってきた.また,従来の研究から,チェスの上級者では,必ずしも強くなるにつれて量において多く先読みをしないことが知られていたが,将棋では上級者になるにつれ,深く大量に先読みすることが分かった.これらの結果は,従来のチェスの研究で見られたような「空間的チャンク」だけでなく,時間的な前後関係を含んだ「時間的チャンク」の存在の可能性を示唆している.
著者
松原 仁
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.89-95, 2016-05-01 (Released:2016-05-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

ゲーム情報学はゲームを対象とした情報処理の研究分野である。チェスがゲーム情報学の中心のゲームであったが,チェスでコンピューターが世界チャンピオンに勝った後は将棋が注目されていた。将棋はまだ世界チャンピオンに勝ってはいないが,対戦すれば勝つ可能性が高いレベルに達した。囲碁はチェスや将棋と比べて場合の数がはるかに大きいのでまだ世界チャンピオンを倒すまで10年はかかるとみられていたが,深層学習(ディープラーニング)の利用によってすでにトップのプロ棋士に勝ち越すまでになった。今後は「人狼」など不完全情報ゲームがゲーム情報学のテーマになっていくであろう。
著者
棟方 渚 吉田 直史 櫻沢 繁 塚原 保夫 松原 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.243-249, 2005
参考文献数
6
被引用文献数
5 2

近年, コンピュータシステムの急速な普及により, 老若男女, 多様なユーザ層がコンピュータを利用している.このようなIT技術の進展の中で, ユーザがコンピュータを道具として使用するばかりではなく, コンピュータがユーザの身体情報に基づいてユーザと相互作用することにより, 人と機械の間にコミュニケーションを生み出すような新しいインタフェースを開発する試みがある[1].しかし, 人の身体情報の意味が十分に理解されつくしてはいないこと, また, 相互のコミュニケーションを可能とするには両者が能動的であることが要求されるため, そこに新しいコミュニケーションを生み出すことは困難である.本研究では, 人の生体信号をゲームに取り入れることで人とコンピュータの新しいインタラクションの実現を試みた.数ある生体信号の中でも皮膚表面抵抗に着目した.実験では, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動から心理状態の変化を読み取り, それをプレイヤに提示する一種のバイオフィードバック系を利用したゲームを作成した.このゲームは, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動を測定し, その変動が大きいほど敵が多く現れ, ゲーム画面上のオシロスコープやインジケータにリアルタイムに皮膚表面抵抗の変動をプレイヤ自身へ提示する仕組みとした.実験はこのゲームのバイオフィードバックの構成法やゲーム画面等の状態を変え, プレイヤの皮膚表面抵抗の変動を測定しそれらを比較した.比較は二通りの実験により行い, 一方はバイオフィードバックの有無によって皮膚表面抵抗の変動に与える効果を比較した.もう一方の実験では, ゲーム画面上に設けたオシロスコープやインジケータに, プレイヤの皮膚表面抵抗の信号を遅延させて表示し, リアルタイム表示の場合との変動の仕方を比較した.実験の結果では, バイオフィードバックがあるゲームと無いゲームではバイオフィードバックを使用したゲームの方がプレイヤの皮膚表面抵抗の変動が大きかった.また, バイオフィードバックを遅延させた表示のゲームよりもリアルタイムに表示させたゲームのプレイヤの方が, ゲーム中の皮膚表面抵抗の変動が大きかった.これらの結果から生体信号を用いたゲームにおいて, 生体信号をゲームの進行に反映させることの他に, ゲーム画面上のバイオフィードバックの表示を行うことが重要な要素であることがわかった.特に, 遅延表示の実験では, 表示を遅延したことに気付いた者はいなかったが, 変動量にはそれぞれ差がでたことから, リアルタイムにゲームの進行に反映させることや, バイオフィードバックの表示を行うことも重要であることがわかった.このような結果となったのは, ゲームを通じて無意識の自分自身を意識することが, 更に皮膚表面抵抗の変動を生じさせたからであると推測される.
著者
松原 仁 半田 剣一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.83, pp.21-30, 1994-10-04
被引用文献数
2

チェスにおいては分岐因子などのゲームとしての性質が調べられているが、将棋については広く公表されたものが存在しなかった。ゲームをプレイするためのアルゴリズムを考える際に、あるいは将棋をチェスや囲碁など他のゲームと比較する際にこれらの情報は重要である。現在プロの棋譜を収集して分析している。そこで得られたいくつかの知見を報告する。将棋の平均分岐因子は、これまで一般に信じられてきた値よりはかなり小さく80前後(母集団の取り方によって90程度から70程度までばらつきがある)。しかしこの結果はコンピュータ将棋がこれまで信じられてきたよりやさしいということは必ずしも意味しない。最も勝負に影響する中盤から終盤にかけては平均百数十手の分岐因子が存在するので、チェスと同じ方法でコンピュータ将棋を強くすることはできないものと思われる。
著者
伊藤 毅志 松原 仁
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.64(2004-GI-012), pp.9-15, 2004-06-18

将棋の熟達者は、どのように将棋を捉えているのだろうか?我々は、これまで、将棋を題材にして、伝統的な認知科学的手法で研究を行ってきた。その結果、棋力の違う被験者間で、認知的な違いが明らかになってきた。しかし、熟達者が具体的にどのようにその卓越したパフォーマンスを示すことができるのかは不明な点が多い。本研究では、将棋トッププロ棋士である羽生善治氏に対して行ったインタビューの発話データから、将棋の熟達者の思考過程、認知過程、学習過程について新しい知見を得ることができた。本稿では、その詳細について述べる。
著者
桝井 文人 柳 等 伊藤 毅志 山本 雅人 松原 仁 竹川 佳成 河村 隆 宮越 勝美
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は,戦術要素の収集・解析と戦術推論手法開発の継続,ストーントラッキング手法の実証実験,人工知能アルゴリズムの応用,スウィーピング計測システムのモデル化と実験に取り組んだ.以下,各項目別に報告する.(1)戦術要素の収集と解析については,新たに日本代表決定戦,平昌オリンピックの試合情報を追加して分析し,チームショット率と得点の関係,ポジション別ショット率と得点の関係,さらに,先攻後攻におけるショット率と得点の関係についての知見を得た.さらに,得点機会と失点機会に注目した分析を行い,チーム固有の発生確率パターンが存在することを発見した.(2)人間判断要素の収集と解析については,昨年度に実施した認知心理学実験結果を分析し,戦術の思考過程の考察を行なった.戦略書に基づいたデジタルカーリングAIにおける序盤定石の構築も引き続き行なった.(3)ストーン挙動要素の収集については,実際のカーリングホールにて氷上での動作検証実験を行なった.シートの氷の下にキャリブレーション用モジュールを埋め込むことで,昨年度の課題を解消した.シーズンを通しての耐久性と,キャリブレーション時の誤差について検証を行い,概ね陸上と同じ結果が得られることが確認できた.(4)戦術推論手法の開発では,昨年度実装した離散化座標と評価値の期待値に基づいてショット選択を行う人工知能アルゴリズムを用いて平昌オリンピックの試合を人工知能アルゴリズムで再現した.また,デジタルカーリング環境における戦術学習支援システムを構築した.(5)スウィーピング計測については,計測システムに加わる力のモデル化と,スウィープ時の力とモーメントの計測結果の検討を行なった.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル・グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.27(2001-GI-007), pp.41-47, 2002-03-15

将棋の次の一手を決めるとき、人間はどのように読みを進め、指し手を決定していくのだろうか?本研究では、アマチュア初級者からプロ棋士までの棋力の違う被験者に対して同じ問題を与え、特にその読みの広さと深さを発話データから調べ、比較した。その結果、上級者ほど深く読むことがわかった。また、中級者(アマチュア初段前後)が一番広く読むことが示され、上級者になるほど、狭く深く読むことが可能になることが示唆された。
著者
松原 仁
出版者
公立はこだて未来大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

コンピュータ将棋はなかなか強くならなかったが、2000年代に保木邦仁が棋譜から評価関数を自動学習する方法(ボナンザメソッドと呼ばれる)を提案してその後ほとんどのシステムがこの方法を採用した結果とても強くなった。最近ではトッププロ棋士に勝つまでになった。本研究はコンピュータ将棋における評価関数の自動学習にヒントを得て小説の星新一らしさを表す評価関数をコンピュータによって構築することを目標とした。本研究の結果、評価関数としては残念ながらあまり精度のよいものはできなかったが、小説のあらすじを生成するための貴重な知見を得ることができた。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1493-1498, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

スギ花粉はトマトと共通抗原を有する. 口腔内に抗原投与する舌下免疫療法 (SLIT) ではトマト抗原陽性例への影響も考えられる. スギ花粉 SLIT 220例でトマト IgE 抗体 (s-IgE) 陽性例の1年目副反応を検討した. 107例の s-IgE 変化を2年間追跡した. 2例のトマト口腔アレルギー症候群 (OAS) の経過を観察した. 治療前トマト s-IgE でクラス2 (20例) と1 (18例) では, クラス0 (182例) と比べて副反応の増加がなかった. トマト s-IgE は治療前0.29±1.08, 1年後0.34±0.89, 2年後0.27±0.87UA/mL であった. 治療前クラス0 (92例) は1年後に10例でクラス1に, 4例でクラス2になった. クラス0でも55例中12例で検出閾値未満から検出可能になり, 37%に多少の変化を認めた. トマトとスギ s-IgE 変化は連動し, 交叉抗原の影響を示唆した. トマト OAS の2例は問題なく治療を継続できた. トマトアレルゲン陽性例でも安全に SLIT を行えた.
著者
松原 仁
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.933-936, 2013-08-15

コンピュータ将棋の実力はプロ棋士に追いついた.トッププロ棋士に勝つのも時間の問題である.ここではそういう状況でコンピュータ将棋が今後何をしていくべきかについて考えたい.コンピュータがプロ棋士に追いついたことは第二回電王戦でわかったので,同じようなことを繰り返しても意味はない.対戦する意味があるのはトッププロ棋士だけである.それもかなり対戦を急ぐ必要がある.我々はトッププロ棋士に勝つXディがもうすぐ来ることを前提として,将棋における人間とコンピュータの対決は終わりにして人間とコンピュータの協力を進めつつある.
著者
掛谷 雅之 大津 史子 矢野 玲子 榊原 仁作 後藤 伸之
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.70-80, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
23

Objective: The present study investigated risk factors and subjective symptoms associated with drug-induced thrombocytopenia.Methods: We selected 361 patients with drug-induced thrombocytopenia from the Case Reports of Adverse Drug Reactions and Poisoning Information System (CARPIS) database of over 65,000 case reports of adverse drug reactions and assigned these patients to a case group.  We also randomly selected 794 cases of adverse drug reactions not associated with thrombocytopenia as a control group.Results: Data were compared between the case and control groups, and results were analyzed using logistic regression analysis.  We identified type of infection (non-viral) and renal failure as risk factors for drug-induced thrombocytopenia.  In addition, administration of carbamazepine, methotrexate, interferon alpha, ticlopidine or valproic acid significantly increased the risk of drug-induced thrombocytopenia.  Significant associations were also found between drug-induced thrombocytopenia and purpura, fever, and mucosal bleeding.Conclusion: These findings provide helpful information for early detection and prevention of thrombocytopenia as a serious adverse drug reaction.