著者
松原 仁 屋比久 雄斗 西村 伊吹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00328, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
39

短繊維材を土に混合することで土の靭性を高めることができる.短繊維材には,鉱物繊維,人工繊維,天然繊維等があるが,繊維の経年劣化に伴う補強機能の低下が懸念される.したがって,繊維材の効果を持続させるためには,劣化を抑制できる新しい技術が必要である.本研究では,天然由来および人工の繊維を混合した砂試料に微生物を添加し,繊維材の劣化抑制効果について検討した.室内実験の結果,天然由来の繊維材を混合した砂試料において,繊維材表面・内部に多くの炭酸塩が析出し,繊維材を保護することが明らかとなった.また,炭酸塩の析出過程を明確化するために,反応拡散理論に基づく数値解析を実施したところ,天然由来の繊維で見られた保護作用には溶媒中の各種イオンの分散抑制が深く関与していることが明らかとなった.
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.709-721, 2021 (Released:2021-11-24)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.本稿で,総論部分1)脳神経疾患とは,2)脳神経疾患克服研究の現状,3)脳神経疾患克服研究の意義・必要性,4)神経疾患克服に向けた研究推進体制,5)脳・神経・筋疾患克服へのロードマップ,6)提言の要約版を報告する.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
湯田 厚司 小川 由起子 新井 宏幸 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.126-132, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本邦でのスギ花粉とダニが原因のアレルギー性鼻炎合併例は多い. スギ花粉とダニを同時に用いた皮下免疫療法は行えるが, 舌下免疫療法の併用治療 (併用 SLIT) に関する知見は十分ではない. 併用 SLIT が行えれば有用であり, 安全性を検討した. 当院で2017年6月以降にスギ花粉 (シダトレン ®) とダニ (ミティキュア ®) で併用 SLIT を行った53例 (男性31例, 女性22例, 年齢12~53歳, 平均21.7±11.6歳, スギ花粉先行39例) を対象とした. 先行と後行 SLIT の間隔は1カ月以上あけ, 朝夕に分けて開始した後に5分間隔でスギ花粉・ダニの順で行った. 併用 SLIT 後6カ月まで受診毎に副反応を確認した. 完遂率は51/53例 (96.2%) で, 脱落2例の理由は副反応によるものではなかった. 副反応はすべて軽度で, 処置不要であった. 併用 SLIT 期の副反応は, 全副反応で増加せず, 口腔咽頭感覚症状で有意に減少した. 投与間隔による副反応は変わらず, 投与順で副反応は変わらなかったが, ダニ後行 SLIT で維持アレルゲンを減量する例が増えた. 併用 SLIT は1~2カ月以内の短期間間隔で安全に行えた.
著者
中島 秀之 野田 五十樹 松原 仁 平田 圭二 田柳 恵美子 白石 陽 佐野 渉二 小柴 等 金森 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_875-I_888, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
4 5

バスとタクシーの区別を無くした,主として都市部を対象とした新しい公共交通システム(Smart Access Vehicle System)の概念を示す.これは,コンピューターにより全ての車輛の位置と経路を管理し,固定路線やダイヤを持たず,乗合いで,デマンドに即時対応するシステムである.これを交通サービスのクラウド化と呼ぶ.タクシーの利便性とバスの経済性を併せ持つことが可能である上に,渋滞,事故,天候変化,災害などに柔軟に対応できる.筆者らは函館市内において小規模な実験を行い,数日間の完全自動配車に成功している.
著者
湯田 厚司 荻原 仁美 宮本 由起子 佐橋 紀男 竹内 万彦
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.13-18, 2011 (Released:2011-04-28)
参考文献数
9

スギ花粉症の初期療法は有用で, 広く浸透している。薬剤投与開始日は薬剤で異なるが, スギ花粉開始予想日に左右される。適切で効率よい初期療法を行うには, 適確な飛散開始日予測が必要だが, その予想方法は見いだされていない。そこで, 三重県津市におけるスギ花粉飛散開始日の予測方法を検討し, その結果から全国的な予想に応用できるかを検討した。【方法】気象庁ホームページから収集した気象データをもとに三重県津市のスギ花粉飛散開始の予測が可能かを検討した。その結果を基に, 既報で公開された全国のスギ花粉飛散開始日のデータを参照して, 全国の飛散開始日予想を試みた。【結果】津市の飛散開始日は11月中旬平均気温 (p=0.0027, r=0.67), 平均最高気温 (p=0.0011, r=0.70) と有意に正に相関した。11月中旬が寒いと花粉飛散が早まった。全国30都市を調査した結果, 全国的に11月中旬平均気温との相関が良く, 福岡市, 広島市, 徳島市, 西宮市, 東大阪市, 和歌山市, 大垣市, 静岡市, 中央市, 八王子市, 埼玉県坂戸市の各市と東京都が有意に相関した。名古屋市, 水戸市は平均最高気温のみ相関した。岡山市, 米子市, 松山市, 高松市では相関がなかった。また, 関東以北や日本海側の都市でも相関がなかった。九州から関東の太平洋岸都市を中心に11月中旬平均気温から飛散開始日が予想できると考えた。【結論】飛散開始日予想は初期療法開始日決定に有用であり, 誰でも収集可能な気象情報からの予想は有用度が高い。
著者
原 仁司
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.60-73, 1991-05-10 (Released:2017-08-01)

『田園の憂欝』は、当初ブレイクの詩をその巻頭に掲載していたことからもわかるように、絵画的な趣向が全篇に行き亘っていた。この絵画的趣向が作品に与えた意義はじつに種々様々なのであるが、その意義のひとつに『田園の憂欝』特有の"多声的な文体"の形成という点があった。これはポーの文学的心理解剖を作品構造に応用したこととも密接に関連し、またその"多声的な文体"の内実は、当時の春夫の創作主体の微妙な位相を我々に解きあかしてくれるものでもあった。
著者
久冨木原 健二 中原 仁
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.603-609, 2019 (Released:2019-08-09)
参考文献数
34

要約:自己免疫疾患において,血液中のリンパ球が血管内皮に接触・接着し組織内に侵入することで炎症が引き起こされるが,接着分子阻害薬はこの接着の機序であるリンパ球表面のインテグリンと血管内皮細胞のインテグリンリガンドの相互作用を阻害することで効果を発揮する.多発性硬化症には抗α4 インテグリン抗体のnatalizumab が高い治療効果を有し,また消化管特異的に発現しているインテグリンリガンドを標的とした抗α4β7 インテグリン抗体のvedolizumab は炎症性腸疾患に対して有用である.免疫系細胞や炎症性サイトカインの作用自体を抑制するのではなく,リンパ球の組織移行を阻害するというユニークな機序のインテグリン阻害剤について,本稿ではこれまでの知見を概説する.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 荻原 仁美 神前 英明 太田 伸男 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1011-1019, 2018 (Released:2018-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
13

【背景・目的】スギ花粉舌下免疫(SLIT)の開始後4年が経過した.花粉多量飛散年にSLIT1~4年治療例を検討した.【方法】2018年(飛散総数5041個/cm2)飛散ピーク時にSLIT4年目83例,3年目72例,2年目48例,1年目67例と比較対照の初期療法320例,未治療群424例を対象とした.JRQLQ No1の鼻眼症状,薬物・総鼻症状薬物スコア,視覚的症状尺度(VAS)で評価した.【結果】SLIT各治療年は全てで未治療より,総括症状で初期療法より有意に良かった.治療3・4年目は鼻眼症状で初期療法より有意に良かった.併用薬なしで鼻症状スコア1以下の寛解率はSLIT4年目から1年目の順に41.0%,31.9%,18.8%,20.9%で,症状スコア全て0点の例は順に12.0%,12.5%,4.2%,4.5%であった.SLIT全例で処置を要する副反応は無かった.【結語】スギ花粉多量飛散年のSLITは初期療法や未治療より効果的であった.治療は短期よりも4年の長期に行う方が良いと考えた.
著者
多田羅 勝義 石川 悠加 今井 尚志 河原 仁志 神野 進 西間 三馨 福永 秀敏
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.57-62, 2007

<p>国立病院機構所属施設では,平成17年7月1日時点で89施設に2164名の長期人工呼吸患者が在院しており,昨年度より約100名増加していることが判明した.この内363名は,10年以上人工呼吸を続けている患者で,最長は27年であった.疾患別にみると,筋ジストロフィー1156名,筋萎縮性側策硬化症402名,重症心身障害児者304名であった.使用人工呼吸器は74.5%がポータブル型で,人工呼吸方法は,気管切開が61.3%,非侵襲陽圧人工呼吸が37.1%で,半数以上がアシストコントロールモードであった.人工呼吸下での外出,入浴の実施率から患者QOL向上への配慮が伺われる一方,モニタリング実施率の低さ等,安全管理上の問題点が明らかになった.</p>
著者
田柳 恵美子 中島 秀之 松原 仁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回 (2013)
巻号頁・発行日
pp.2J4OS13a1, 2013 (Released:2018-07-30)

今後の都市の在り方を見直したときに、交通網の再編成は重要課題である.現在,日本を含む世界各地でデマンド交通の試みが始まっている.しかし,これらはすべて低人口密度地域を想定した試みである.我々はコンピュータ集中制御による高人口密度都市部を想定した大規模公共交通システム(スマートアクセスビークルシステム)をデザイン中である.この仕組みと実装計画について述べる.
著者
西村 伊吹 松原 仁
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.59-66, 2022

<p>The soil improvement technique called as microbially induced carbonate precipitation (MICP) is recognized to be more environmentally friendly than traditional techniques using piles or cement milk. The soil particles bind by precipitating calcium carbonate on particles or in pores, depending on microbial activity. Although the binding structures such as active and inactive bonds have been numerically simulated from chemical-based modelling, the simulation of carbonate precipitation taking into account microbial growth has not been carried out. In addition, the relationship between the spatial precipitation pattern and improvement of mechanical properties remains ambiguous. In this study, a novel MICP simulation scheme dealing with microbial growth is proposed, and the impact of carbonate precipitation on the mechanical properties of the MICP-treated materials is discussed. In this scheme, a reaction-diffusion system and a homogenization method are used for microscale bacterial growth and for multiscale stress and strain analysis, respectively. The results of the calcium carbonate precipitation were 4.5 μmol/mm<sup>3</sup> at 10.3 hour, which is slightly higher than the experimental data. Furthermore, the homogenization simulations indicated that soil stabilization could be attributed to the formation of a novel skeleton structure comprising soil particles and calcium carbonate-filled soil pores.</p>
著者
高橋 翔太 松原 仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.98-101, 2021-11-06

人間はタスクを実行する際に,しばしば最適解以外の行動,つまりミスを犯す.言い換えると,行動の中でミスをすることは人間らしい行為と言える.そのため,ある特定のタスクを実行するエージェントに認知バイアスによるミスを実装し,人間らしい AI の設計を試みる.本研究では,タスクを将棋に設定し,将棋で起こりうる認知バイアスを分析した.分析の結果から,直近効果が将棋に作用していることが分かった.今後は直近効果を実装した将棋 AI を用いて,定性的な実験を行う.
著者
榊原 仁作 永井 慎一 森 淳 竹谷 和視 堀田 芳弘
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:00374377)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.p317-324, 1986-09

20R-Dihydroouabain (20R-DHO) and 20S-dihydroouabain (20S-DHO) were synthesized by reduction of ouabain (G-strophanthin) and separated by reversed phase high performance liquid chromatography. The relationships between the stereochemical structures and pharmacological activities of 20R- and 20S-DHO were studied by the use of isolated guinea-pig papillary muscle and renal Na^+, K^+-ATPase. 20S-DHO was more inotropic (pD_2: 5.0, 100% increase in contractile force at 3.0 x 10^<-5> M) and more inhibitory (pIC_<50>: 5.9) than 20R-DHO (pD_2: 4.6, 100% increase in contractile force at 1.0 × 1O^<-4> M, pIC_<50>: 5.5). On the other hand, both R and S compounds inhibited the positive inotropic effect of their parent compound ouabain; the potency of inhibition by 20S-DHO was greater than that by 20R-DHO. These results suggest that the pharmacological differences in 20R- and 20S-DHO may depend on the strength of hydrogen bond between the carbonyl oxygen and Na^+, K^+-ATPase receptor.