著者
畑野 快 原田 新
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.67-75, 2014 (Released:2016-03-20)
参考文献数
50
被引用文献数
8

本研究の目的は,心理社会的自己同一性が内発的動機づけを媒介して主体的な授業態度に影響を及ぼすモデルを仮説モデルとし,その実証的検討を行うことで,大学生が主体的な学習を効果的に獲得する方策として心理社会的自己同一性,内発的動機づけの果たす役割について示唆を得ることであった。仮説モデルを実証的に検討するために,大学1年生131名,大学2年生264名,3年生279名の合計674名を対象とした質問紙調査を実施した。まず,媒介分析の前提を確認するため,学年ごとに心理社会的自己同一性,内発的動機づけ,主体的な授業態度の相関係数を算出したところ,全ての学年において3変数間に正の関連が見られた。次に,多母集団同時分析によってモデル適合の比較を行ったところ,仮説モデルについて学年を通しての等質性が確認された。最後に,仮説モデルをより正確に検証するため,ブートストラップ法によって内発的動機づけの間接効果を検証したところ,1~3年生全ての学年において内発的動機づけの間接効果の有意性が確認された。これらの結果から,1~3年生全ての学年において仮説モデルが検証され,大学生が主体的な学習を効果的に行う上で心理社会的自己同一性,内発的動機づけが重要な役割を果たす可能性が示された。
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.111_1, 2017

<p> 近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。</p>
著者
藤田 朝彦 横山 良太 加藤 康充 井上 修 原田 守啓
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00021, (Released:2022-03-23)
参考文献数
53
被引用文献数
4

アユ Plecoglossus altivelis は日本の淡水魚として,も っとも重要な水産魚種の 1 つである.河川におけるアユの資源量は,漁業協同組合等の放流による寄与も大きいが,多くの河川では,自然な再生産による資源量維持が主体となっている場合が多い.また,アユは河川内において,河床の付着藻類を摂餌することから,藍藻類やカゲロウ類など特定の生物を増加させる等,河川内の藻類相,底生動物相に強く関わるため,河川生態系において重要な位置を占める種である.アユ産卵場環境や産卵生態についての過去の調査研究の歴史は長く,主に水産試験場や大学等で行われてきた報告が多数存在するが,アユの生態・生活史との関係性も含めた総括的な整理はなされておらず,産卵環境の保全のための指針となる基本的な物理環境条件についての知見の総合化はいまだ不十分であると考える.よって,本研究では,これまでに報告されているアユの産卵環境についての文献を広く収集し,産卵環境の物理環境条件に関するデータを抽出した上で,それらの情報を総括し,豊富な研究事例とアユの生態・生活史の理解に基づく "アユの産卵場" 適地の条件を明らかにすることを目的としたレビューを行った.文献は,アユの産卵に関する記載のある研究についての文献を網羅的に収集し,1895 年~2019 年までに出版された計 339 件の論文から,その産卵環境の物理的条件を整理した.これらの文献は 9 割近くが自然河川の産卵場で得られたデータを使用しているが,人工河川での実験事例や,人工造成箇所のデータも含まれる.物理的条件については,産卵場の流速,水深,河床材,貫入深(河床軟度),卵の埋没深の 5 つの物理的条件を抽出・整理した.今回整理された情報は,過去に一般的な知見として認識されているアユ産卵環境の条件と大きな差異は無かったが,アユの産卵に関わる生理生態情報や土砂水理学的考察を踏まえ,5 つの物理的条件は独立した変数ではなく,浮き石状態の小礫で構成された河床環境を有する早瀬が,アユの産卵場として選好されていることが描き出された.アユの産卵場は,出水による土砂移動によってもたらされた早瀬への土砂の堆積・侵食の過程によって形成され,有限の寿命がある一時的産卵場(temporary spawning habitat) とでもいうべきハビタットであると考えられる.
著者
原田 新
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.187-192, 2019-03-22 (Released:2019-05-04)
参考文献数
19
著者
諏訪 惠信 宮坂 陽子 原田 翔子 仲井 えり 谷口 直樹 塩島 一朗
出版者
日本臨床生理学会
雑誌
日本臨床生理学会雑誌 (ISSN:02867052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.187-192, 2020-12-01 (Released:2021-03-14)
参考文献数
9

近年,心房細動患者の塞栓症予防に直接経口抗凝固薬が使用可能となったが,添付文書に従っていない不適切な減量(“off-label”under-dose)投与が及ぼす影響についての報告は少ない.そこで本研究は,2012 年から2015 年に当院で新規にリバーロキサバンが投与された非弁膜症性心房細動患者で,腎機能が保たれた連続患者を対象とし,塞栓症と心血管死の複合イベントと出血イベントを調査した.リバーロキサバン10 mg 投与患者を“off-label”under-dose 群(N =65)とし,15 mg の適正使用群(N = 235)と比較検討した.対象患者300 例の平均観察期間13 カ月中に,複合心血管イベント13 例,出血イベント22 例を認めた.Cox 比例ハザード解析で,“off-label”under-dose 群は複合心血管イベントの有意な危険因子であったが(ハザード比=3.86, P=0.03),出血イベントでは有意ではなかった.つまり,リバーロキサバンの“off-label”under-dose 投与患者は塞栓症と心血管死のイベントが有意に増加したが,出血の抑制は認められなかった.
著者
杉山 寿美 原田 良子 平岡 美紀 大重 友佳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.192-200, 2010 (Released:2014-11-21)
参考文献数
28
被引用文献数
2

コラーゲンに対する生姜プロテアーゼの作用は,酸性条件下でのテロペプタイドに対するものであり,三重らせん部位に対しては作用しない。一方,生姜プロテアーゼはコラーゲンの熱分解物であるゼラチンには作用する。我々は,コラーゲンに対する生姜プロテアーゼの作用に基づき,加熱・温蔵過程における鶏肉のコラーゲンの変化と軟化を検討した。その結果,加熱により,鶏肉の酸可溶性コラーゲン(ASC),ペプシン可溶化コラーゲン(PSC)は減少したが,不溶性コラーゲン量(ISC)は増加した。加熱調理した鶏肉の温蔵は,ゼラチン化を促し,コラーゲン総量を減少させた。生姜搾汁の添加ではコラーゲン総量が減少し,加熱後に生姜搾汁を添加した場合に著しいものだった。これは,加熱調理および温蔵過程で不均一な構造となったコラーゲンの熱変性部位に生姜プロテアーゼが作用したためと考えられた。また,生姜搾汁を添加し温蔵した鶏肉は,生姜搾汁を添加していない鶏肉と比較して剪断強度が低かった。
著者
井上 淳詞 原田 和樹 原 浩一郎 木下 芳一 加藤 範久
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.57, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】ごぼうは、一般野菜の中でも特に食物繊維とポリフェノールを豊富に含む野菜である。我々は、このごぼうに注目し、焙煎することで、さらに抗酸化能を高めた「ごぼう茶」を開発した。ごぼう茶の腸内環境への影響を、動物実験により調べ、さらに健康な成人45名による摂取試験の結果についても併せて報告する。 【方法】国内産ごぼうを、蒸気加熱(ブランチング)後にカットし、乾燥した。さらに130~180℃で焙煎を行った。これを2.75%の濃度で熱水抽出したものを供試サンプルとし、高脂肪食を与えたSD系ラットに水の代わりに与え、腸内細菌叢と糞中の二次胆汁酸、IgA、ムチンについて調べた。また、健康な成人45名に、同じ条件で抽出したごぼう茶抽出液(500ml/日)を2週間摂取し、1週間のwash-out期間後に、ごぼう茶粉末(20g/日)を2週間摂取してもらい、便通と血液成分、血圧について調べた。 【結果】動物実験では、高脂肪食のみを与えた群で、糞中の二次胆汁酸が増加したが、ごぼう茶摂取群は、有意に二次胆汁酸が減少し、また腸管免疫の指標となるIgAおよびムチンが増加した。ヒトに対しては、排便回数に差異は認められなかったものの、最高血圧が約10mmHg減少した。さらにごぼう茶粉末を摂取することで白血球数と肌水分の増加が認められた。以上の結果から, ごぼうを焙煎することで、美味な機能性飲料としての利用が可能であり、さらにごぼう茶中にはリグニン等の不溶性食物繊維も含まれることから、粉末化による加工食品の素材としても可能性を得た。
著者
原田 悦子
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.107-118, 2000-11-25 (Released:2009-05-29)
参考文献数
18

After 100 years of experimental researches, two aspects of human memory are now treated separately in cognitive psychology; one is memory as conscious experiences, and the other is memory as information. In this paper, historical accounts are described with experimental researches on (a) implicit memory, i.e., memory without conscious recollection, (b) process dissociation procedures (PDP), i.e., a theoretical model and also a methodology to dissociate parallel cognitive processes, particularly conscious and automatic mental processes, and (c) false memory phenomena.
著者
小峯 敦 藤田 菜々子 牧野 邦昭 古家 弘幸 橋本 努 原田 太津男 堂目 卓生
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、3つの時代と2つの国(および全世界)という特徴的な時期・国に焦点を当て、「戦争・平和と経済学」の複雑な関係を歴史的・思想的に精査することで、「経済学は戦争を回避し平和を構築することに貢献できるのか」という根源的な問いに回答する。初年度に続き、二年目はこの共同研究を軌道に乗せ、特に、(a))学術雑誌(英語)の「戦争と平和の経済思想」シリーズを特集させること、(b)近隣の社会科学者や政策担当者に開かれた形で、日本語による専門書・啓蒙書を編纂すること、という二点を推進した。その具体例として、(a)学術雑誌History of Economic Thoughtにおいて、War and Economicsというシリーズを2017年度中に3回連載し、研究分担者・連携研究者による3本の英語論文を掲載した。また、(b)いくつかの出版社と交渉し、『戦争と平和の経済思想』(晃洋書房、2018年度後期に出版予定)として出版するべく、11人による原稿を集め、草稿を検討する研究会も行った。2017年度における最大の実績は、Fabio Masini (the University of Roma Tre, Italy) とMaria Paganelli (Trinity University, USA)という研究者を招き、2日間に渡り、広島修道大学で国際会議を開催したことである(2017.9.4-5)。平和記念館の資料にもアクセスできたことは大きな収穫であった。二番目の実績は、経済学史学会・全国大会で、スミス研究の世界的権威Nicholoas Phillipsonの招待講演を実現したことである。特に、現実主義的な側面をスコットランド啓蒙研究の立場から、一般会員にも平易に講演された。
著者
田中 眞奈子 原田 一敏 星野 真人
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、研究代表者らがこれまで確立してきた放射光X線を用いた鉄鋼文化財の非破壊分析技術を日本刀の作刀技法の解明のために応用し、刀剣の専門家や博物館、放射光分析の専門家他と学際的な研究グループを組織し、作者や流派、時代に焦点を絞り5年間で120振を超える価値ある日本刀を体系的に分析することで最終的に日本刀の黄金時代と言われる鎌倉中期の作刀技術を解明する。
著者
原田勝正
出版者
国際交通安全学会
雑誌
IATSS review
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, 2000-05
著者
原田 幸明 島田 正典 井島 清
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.831-839, 2007 (Released:2007-10-01)
参考文献数
8
被引用文献数
11 12

Forecasting are made regarding the consumption up to 2050 of following metals: Fe, Al, Cu, Mn, Zn, Cr, Pb, Ni, Si, Sn, rare earths, Mo, Li, Sb, W, Ag, Co, In, Au, Ga, Pt and Pd. The forecasts are based on the liniar decoupling model of the relation between per capita metal consumption and per capita GDP. The models of each metal are applied to the economic development model of BRICs and G6 countries. According these forecasts, the overall consumption of metals in 2050 will be five times greater than the current levels, and demand for metals, such as Au, Ag, Cu, Ni, Sn, Zn, Pb, and Sb, is expected to be several times greater than the amount of their respective reserves. Demand for iron and platinum, which is considered to be optimistic about the resource exhaustion, will also exceed the current reserves. Urgent measures are needed to find alternatives from common resources and to shift into materials circulation society.
著者
加藤 大晴 牛久 祥孝 原田 達也
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

既発表論文 Neural 3D Mesh Renderer [Kato et al. CVPR 2018] について紹介する。3次元モデルから2次元画像を生成するレンダリング処理を深層学習のパイプラインへと組み込むため、我々はレンダリングに対して新規な『逆伝播』を提案した。また、このレンダラーを用いて (a) 単一画像からの3Dメッシュの再構成 (b) 画像から3Dへのスタイル転移と3D版ディープドリームを行い、その性能を検証した。