著者
森永 睦子 古川 聡子 岡本 操 河口 勝憲 辻岡 貴之 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.113-118, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
12

リチウム(以下,Li)は躁うつ病の治療薬として広く利用されており,治療濃度域と中毒濃度域が接近していることから治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring; TDM)の対象薬物である。またLiは腎臓から排泄されるため腎機能が低下すると中毒症状を出現しやすい。今回,当院高度救命救急センターへ意識障害で搬送され,腎機能低下を伴う高Li血症がみられた2症例について報告する。症例1は30歳代,女性で医療に対する精神的不安感から多剤大量服用した患者で,Li推定服用量は12,800 mg/1回である。来院時の血中Li濃度は13.2 mEq/Lと極高値かつ腎機能低下を認めた。持続的血液透析(continuous hemodialysis; CHD)約30時間後の血中Li濃度は1.2 mEq/Lまで低下し,CHD離脱後21時間後の血中Li濃度は0.8 mEq/Lであり,リバウンドを認めることなく第3病日に退院となった。症例2は80歳代,女性でLiの服用に伴い定期的に血中Li濃度を測定し治療域を推移していた患者で,Li服用量は400 mg/dayである。来院時の血中Li濃度は1.8 mEq/Lと高値かつ腎機能低下を認めた。輸液により意識レベルは改善し同日帰宅となった。以降,Liの服用は中止された。当院に意識障害で搬送され,毒劇物解析室に分析依頼があった患者の集計を行った結果,約17年間でLi服用患者は47例でそのうち19例(40.4%)が高値側の中毒域であった。意識障害で搬送された患者にLiの服用歴がある場合,Li中毒,腎機能低下を疑い,さらにLi濃度測定を行うことで診療に貢献できると思われる。
著者
古川 洋和 松岡 紘史 樋町 美華 小林 志保 庄木 晴美 本谷 亮 齊藤 正人 安彦 善裕 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.363-372, 2009-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
33

本研究の目的は,歯科治療恐怖に対する認知行動療法(CBT)の有効性をメタ分析によって検討することであった.(1)研究デザインとして無作為化比較試験(RCT)が用いられている,(2)CBTによる介入が行われている,(3)プラセボ群,あるいは未治療統制群との治療効果の比較検討が行われている,(4)不安・恐怖に関する評価項目の平均値と標準偏差が記載されている,(5)英語で書かれている,という5つの選定基準を満たす論文を対象にメタ分析を行った結果,CBTが実施された群の治療効果は有意に大きかった(d=2.18).したがって,CBTは歯科治療恐怖の改善に有効であることが示された.本研究の結果は,歯科治療恐怖の治療において質の高いエビデンスを示すことができた点で有益である.今後は,わが国においても歯科治療恐怖に対するCBTの効果を検討する必要性が示唆された.
著者
古川園 智樹 井庭 崇
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.29(2006-MPS-058), pp.93-96, 2006-03-17

本稿は,1816 年から2000 年の間において,国家間の同盟のネットワークがどのように変化したのかを明らかにする.分析の結果,第2 次世界大戦以降の米国を中心とする同盟ネットワークは,スモールワールド・ネットワークであることが明らかになった.
著者
古川 哲史
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.72, pp.75-81, 2008-03-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

近年, 日本-アフリカ交渉史に関する研究は, 日本やアフリカ, 欧米諸国などの研究者によって増えつつある。しかし, 歴史学的な観点から見ると, 未開拓な分野, 着手されていないテーマはまだ多い。私は今まで1920年代-30年代の日本とアフリカの交渉史に焦点を当ててきたが, 本稿ではまず私自身のアフリカや本テーマとの係わりを述べる。それは, その事例自体が, 日本人のアフリカへの係わりの時代的諸相の一側面を反映していると思われるからである。次に, 先行研究を概観し, 時代区分の問題や対象地域への視座の問題を論じる。そして, 私自身も未検討な, あるいは推測の域を出ていない事柄も含めて, 今後の研究課題としていくつかの問題を提示する。最後に, 日本-アフリカ交渉史研究における方法論的枠組みのさらなる議論や, 国際的かつ学際的な共同研究の必要性を指摘する。
著者
伊藤 学 古川 浩二郎 岡崎 幸生 大坪 諭 村山 順一 古賀 秀剛 伊藤 翼
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.132-135, 2006-05-15 (Released:2009-08-21)
参考文献数
6

鈍的外傷による心破裂の救命率は低い.救命率の向上のためには診断,治療方針を明確にする必要がある.われわれは鈍的外傷による心破裂例8例を経験した.来院時,全例経胸壁心エコーにより心嚢液貯留を認め,心タンポナーデの状態であった.受傷から来院までの平均時間は186±185分,来院から手術室搬入までの平均時間は82±49分.術前に心嚢ドレナージを行ったのは2例,経皮的心肺補助装置を使用したのは2例であった.破裂部位は,右房3例,右房-下大静脈1例,右室2例,左房1例,左室1例であった.4例に体外循環を用い損傷部位を修復した.8例中6例を救命することができた(救命率75%).診断において経胸壁心エコーが簡便かつ有効であった.多発外傷例が多いが,心タンポナーデによるショック状態を呈している場合,早急に手術室へ搬送すべきである.手術までの循環維持が重要であり,心嚢ドレナージ,PCPSが有効である.
著者
古川 英子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.246-251, 1980-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

糖類を吸湿したときの変化について示差熱分析と熱天秤による重量変化を測定した結果次のことがわかった.1) グラニュ糖は150℃付近から部分的な分解に伴う重量減少が始まり, 185℃付近でショ糖分子の分解と考えられる吸熱ピークがみられた.2) 無水ブドウ糖を吸湿させた試料では初め70℃に吸熱ピークがあり, この領域に重量減少もみられた. この段階で吸着水がはなれたと考えられる. さらに165℃に融解に伴うと思われるピークがみられた.3) 結晶ブドウ糖では, 50~80℃の間で急激な重量減少がみられた. この区間に, 含まれている水分のうち, 比較的離脱しやすい水分が蒸発するものと思われる. 次に80~145℃では重量の変化はなく, それ以後急激に重量が減少したのは, 145℃以後結晶水の離脱によると考えられる.
著者
古川 智恵子 中田 明美 フルカワ ナカタ C. FURUKAWA A. NAKATA
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-21, 1985-03-01

"褌は本来表着であり,それを仕事着として受け継いでいるのが力士のまわしである.相撲の歴史は古く,わが国でも「古事記」等に記述が残っている.奈良・平安時代には天皇による節会相撲が行われ,武家時代は武士の心身の鍛練のために盛んであった.江戸時代には力士が職業となり,勧進相撲が行われ,明治末期に風俗や規則が確立されて今日に至っている.初期のまわしは,まわしと化粧まわしの区別がなく,平安時代には白い麻の犢鼻褌,武家時代は白と茜の麻であったが,江戸時代に力士が職業となると,素材として最高の絹が用いられるようになる.そして,デモンストレーション用として豪華な化粧まわしが分離するのである.また,紐衣の呪性も残され,特に横綱の衣装は前面を化粧まおしや横綱,四手等によって,後面は魂を結びこめた綱や化粧まわしの結びによって,幾重にも悪霊から身を守っている.一方,それはまた,力と地位を示すための最高の飾りでもある.以上のように,力士のまわしは形こそシンプルではあるが,紐衣の呪術性,褌の装飾性と機能性,結びの魂等,さまざまな要素が集約された最小にして最高の衣である.最後に,本研究にあたり貴重な資料の写真撮影をさせて頂き,また懇切な御助言を頂きました相撲博物館の方々および,力士の方々に深く感謝申し上げます."
著者
大束 貢生 柴田 和子 富川 拓 古川 秀夫 山田 一隆
出版者
佛教大学社会学研究会
雑誌
佛大社会学 (ISSN:03859592)
巻号頁・発行日
no.44, pp.44-53, 2020-03-20

この小論の目的は,日本においてサービス・ラーニングが「評価」や「道徳教育」,「キャリア教育」との関連においてどのように語られてきたか,先行研究から概観することにある。先行研究を概観したところ,「サービス・ラーニングと評価」に関連する論文では,自己評価ツールの開発やそれを基にした学生の学習効果を明らかにすることが目的とされたが,実例が蓄積された2013年以降は,サービス・ラーニングの評価枠組みを再度振り返り,検討することの必要性や具体的な取り組みのために必要なシステムの構築が検討されつつあった。「サービス・ラーニングと道徳教育」に関連する論文では,サービス・ラーニングと関連させて道徳的理解や道徳的感情,道徳的反省に関する考察がなされていた。また,人格教育の一手法として実施されているサービス・ラーニングについての研究も行われていた。「サービス・ラーニングとキャリア教育」に関連する論文では,キャリア教育におけるボランティア,サービス・ラーニング,インターンシップの位置づけに関する考察等が行なわれていた。サービス・ラーニング評価道徳教育キャリア教育
著者
久木原 健介 和久屋 寛 伊藤 秀昭 福本 尚生 古川 達也
出版者
一般社団法人 産業応用工学会
雑誌
産業応用工学会全国大会講演論文集 2013 (ISSN:2424211X)
巻号頁・発行日
pp.18-19, 2013 (Released:2018-04-10)
参考文献数
5

Independent component analysis (ICA) is a signal separation technique inspired by the famous psychological phenomenon called cocktail party effect. Various kinds of its applications have been undertaken by a lot of researchers so far, and an alternative method based on a layered neural network with structural pruning was tried in the preceding studies. However, how to develop such a signal separation matrix was the center of attention, so how to apply it after training was not discussed a lot. Then, from the viewpoint of adaptability to untrained signals, some computer simulations are carried out in this study. As a result, it is found experimentaly that a vocal signal separation task with the developed separation matrix is accomplished successfully as we have intended in advance.
著者
内田 智也 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 佃 美智留 土定 寛幸 大久保 吏司 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2020

<p>【目的】投球動作におけるステップ脚膝関節動作と肘外反トルクとの関連から肘関節負荷を増大させる動作を検討する。【方法】中学生投手20 名のFoot Contact(以下,FC)以降のステップ膝動作を膝関節位置の変位が生じない固定群と投球方向へ変位する前方移動群の二群に群分けした。FC・肩関節最大外旋位(以下,MER)・ボールリリースのステップ膝屈曲角度,投球中の肘外反トルク(身長・体重での補正値)および投球効率(肘外反トルク/ 球速)を群間比較した。【結果】固定群は14 名,前方移動群は6 名であり,前方移動群のステップ膝屈曲角度はFC からMER にかけて増大することが示された。また,肘外反トルクおよび投球効率は固定群が前方移動群より有意に低値を示した。【結論】前方移動群はFC 以降に膝の縦割れが生じていることで,肘関節に過度な負荷が加わっていることから,ステップ膝動作の評価は野球肘の理学療法において重要であることが示唆された。</p>
著者
内田 智也 藤田 健司 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.75-81, 2018

<p>【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。</p>
著者
大村 英史 二藤 宏美 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.152-159, 2013-03-01 (Released:2014-11-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

According to Meyer, musical emotion is elicited by deviations from musical expecta-tion. We assume such deviations as a musical complexity. In this study, we focused on the structure of melodies, and created complexities built in either or both types of structures: one made of notes and the other made of grouping hierarchic elements,which we called level 1 structure and level 2 structure. We conducted a psychological experiment revealing relationships between emotion and musical complexities. Par-ticipants assessed musical emotions (GEMS-9) and feeling that something is wrong as sensory psychological quantity of complexities. As the results of ANOVAs, we found that destructions of both level 1 structure and level 2 structure effected feeling that something is wrong. Moreover, destructions of level 2 structure effected tension, sad-ness,andtranscendence of musical emotions. These results indicate that manipulating destructions level of musical structure might control specific musical emotions.
著者
池田 登顕 柴田 昌和 古川 洋高 立壁 大地 神谷 真知子 塩野 浩章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3485, 2009

【目的】<BR>近年,腰部骨盤帯における機能解剖学的知見は増加してきている.特に多裂筋や腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜は腰部骨盤帯への安定性に作用するといわれているが,これらの筋の明確な作用はまだ全て明らかにされていない.また,多様な臨床評価方法や運動療法なども紹介されてきてはいるが,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患の発生機序は明確になっていない.今回,仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を患った症例に対する理学療法を経験した.その際,既存の機能解剖学的知見に基づいて理学療法を展開したが,治療後に症状は軽減したが消失しなかった.この課題を解決し,解剖学的な検証をするために腰部骨盤帯を観察する機会を設けさせていただいた.屍体は大殿筋が中央で切離され,梨状筋下孔が良好に観察できるものであり,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作介入による検討が可能であった.その結果,梨状筋の弛緩および梨状筋下孔の拡大を触診できた.そこで,前述の症例に対して屍体で得られた機能解剖学的所見と同様の操作を加えることで,各症例の症状に変化がみられるかどうかを検討することとした.<BR>【方法】<BR>仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を有し,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患症例10名を対象とした.対象者は男性2名・女性8名であり,平均年齢は69.7歳であった.この10名のうち,症状と画像所見とが明瞭に一致したのは1名であり,症例は全て腰椎の後彎により症状が悪化した.この10名に対して以下の3通りの徒手操作をランダムに加え,操作後の症状の変化を,「消失」・「軽減」・「変化なし」の3通りから回答させた.徒手操作は,既存の臨床評価方法を参考にした,A仙骨のうなずき操作,B腸骨の起き上がり操作,C同時にAおよびBの操作である.なお,各操作は1日以上間隔を設け,操作における効果が消失してから次の操作を加えた.また,症例は本研究内容の説明をし,同意を得られた10名である.<BR>【結果】<BR>Aでは3名が「軽減」,7名が「変化なし」と回答し,Bでは2名が「消失」,2名が「軽減」, 6名が「変化なし」と回答した.Cでは全ての症例が「消失」と回答した.<BR>【考察】<BR>既存の知見では,多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群および横隔膜は,腰部骨盤帯における安定性確保のための機能を1つのユニットを形成することで担っており,股関節周囲筋が補助的に担っているとされている.さらに,仙骨をうなずかせるように作用する筋は多裂筋であり,腸骨を起き上がらせる筋は大殿筋である.今回の症例では,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作により症状が消失した.これより大殿筋のロッキング作用によって,腸骨が固定されている環境下で多裂筋が効率的に働き,両者の相互作用によって,梨状筋下孔が拡大することで仙髄レベルでの神経通路が確保されている可能性を示唆された.
著者
福島 秀晃 森原 徹 三浦 雄一郎 甲斐 義浩 幸田 仁志 古川 龍平 竹島 稔 木田 圭重
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.776-780, 2019

腱板広範囲断裂(Massive Rotator Cuff Tears: MRCT)における上肢自動挙上可能例と不能例の三角筋・肩甲帯周囲筋群の筋活動を比較検討した.対象は健常者12名12肩(健常群),MRCT36名を上肢自動挙上可能な21名25肩(挙上可能群)と挙上不能な15名16肩(挙上不能群)とした.被験筋は三角筋前部・中部・後部線維,僧帽筋上部・中部・下部線維,前鋸筋とした.測定課題は肩関節屈曲0&deg;,30&deg;位を各5秒間保持し,分析は0-30&deg;間のR-muscle値を算出した.<BR> 三角筋各線維のR-muscle値は,挙上可能群と挙上不能群間において有意差を認めなかった.僧帽筋上部線維のR-muscle値は,健常群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.05).また僧帽筋中部線維のR-muscle値は,挙上可能群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.01).<BR> MRCTにおける三角筋各線維の筋活動は,上肢自動挙上の可否に影響しないことが示された.一方,僧帽筋中部線維の筋活動特性がMRCTにおける上肢自動挙上の可否に影響する可能性が示された.
著者
金崎 雅史 古川 菜々美 太田垣 沙和 沖中 郁美 海老原 覚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【背景】咳嗽は主要な呼吸器症状であり,継続的で過剰な咳嗽はQOLを著しく低下させる。また強いcough epochは運動療法の進行の阻害因子になる。しかし,咳嗽に対する十分な治療選択はなく,使用頻度の高いOTC医薬品はnon effctiveとされている。呼吸困難はそれ自体が不快な呼吸感覚であるが,咳は咳刺激に対するmotor actionを指している。この概念と一致して,古くから咳は延髄孤束核を中枢とする反射弓をもつと考えられてきたが,近年,咳が生じる前にUrge-to-cough(筆者らは咳衝動と呼んでいる)と呼ばれる不快な呼吸感覚が先行して,咳のmotor actionを修飾することが知られている。また,fMRIによる解析では,咳反射は脳幹より上位の脳機能による修飾を受けることが示されている。従って,過剰な咳・咳衝動の制御において,咳反射の神経経路上の上位脳機能への介入は効果的な咳嗽治療となるかもしれない。そこで,咳衝動における不快感の責任主座のひとつと考えられている島皮質にて処理が行われる聴覚刺激に着目し,そのクエン酸誘発性咳反射閾値及び咳衝動への有用性を検討することとした。</p><p></p><p>【方法】非喫煙若年者10名に対して咳反射閾値,咳衝動を測定した。咳反射閾値は咳が誘発された最小クエン酸濃度(C<sub>2</sub>およびC<sub>5</sub>)を,咳衝動は咳衝動log-log slope及びLog咳衝動閾値により評価を行った。聴覚刺激は,被験者が好む曲を自由に選択させ,イヤホンを介して行った。</p><p></p><p>【結果】クエン酸誘発性咳反射閾値(C<sub>2</sub>およびC<sub>5</sub>)は聴覚刺激条件にて統計学的有意に高値を示した。クエン酸誘発性の咳衝動log-log slpeは聴覚刺激条件にて統計学的有意に低値を示した。一方で,Log咳衝動閾値は両条件において統計学的有意差は見られなかった。</p><p></p><p>【結語】聴覚刺激は,咳反射感受性および咳衝動を低下させることが明らかになった。咳反射は脳幹と上位脳機能によって制御されている。本研究において,Log咳衝動閾値に変化が見られなかったことから,聴覚刺激が上位脳機能に影響を及ぼすことで,その効果を示したことが考えられた。</p>
著者
古川 章
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.852, pp.23-25, 2020-03