著者
井上 文彦 古川 裕夫 内野 治人
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-36, 1986-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

潰瘍性大腸炎患者大腸粘膜におけるラクトフェリンの分布を,螢光抗体法を用いて検討した.また,同時にペルオキシダーゼ染色を施行し,両者の分布を比較した.患者大腸粘膜の内視鏡的正常部では,ラクトフェリン陽性細胞とペルオキシダーゼ陽性細胞は,ともにほとんどみとめられず,内視鏡的境界部では,両者とも散在性にみられ,内視鏡的病変部では,両者とも多数みとめられた.正常対照者大腸粘膜では,両者ともほとんどみとめられなかった.また,ギムザ染色により,ペルオキシダーゼ陽性細胞は好中球であることが強く示唆された.静菌的,殺菌的作用を有する強力な鉄結合性蛋白の1つであるラクトフェリンは,主要な局所粘膜防御因子であるs-IgA系の減少した潰瘍性大腸炎大腸粘膜で,いわば代償的に出現,増加し,局所粘膜における感染防御機構の面において,何らかの意義を有するものと考えられた.
著者
阿倉 薫 畠中 光恵 向井 みどり 坂井 雅英 綾田 昌弘 岡本 茂 古川 順康 弥生 恵司
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.31-36, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

原発性乳癌119例について, 核DNA量 (DNA index=DI) と癌細胞の核の大きさ, 核の異型度, 細胞診の判定, リンパ節転移, t因子との関連性について検討を行った. DIの測定は新鮮摘出腫瘍を用い, 末梢リンパ節をploidy standardにした. その結果, hypoploid (DI<1) が6例 (5%), diploid (DI=1) が39例 (32.8%), aneuploid (DI>1) が62例 (52.1%), multiploidが12例 (10.1%) であった. 術前穿刺吸引細胞診標本 (Pap. 染色) から癌細胞50個の長径を計測し平均を求めた, 最小は6.3μm, 最大は13.9μmで2倍以上の差が認められた. 核異型が軽度な症例は12例, 中等度は44例, 高度は51例であった. DIと比較してみると軽度異型はdiploidが多く, 異型が高度になるにしたがってaneuploidが増加した.術前の細胞診判定はpositiveが107例, suspiciousが10例, negativeが2例であった. 悪性と判定できなかった12例のうち11例はdiploidであった. 乳癌細胞の核の大きさとDIは正の相関がみられ, DIが大きくなるにつれて核は大きく, 異型も強くなり細胞診の判定は容易であった. しかしhypoploid (DI<1) やdiploid (DI=1) の癌細胞は大部分が小型で異型に乏しく, 細胞診で正確に判定できない症例が多かったが, 倍率1,000倍で詳しく観察することによって正診できる症例が増すと思われた. リンパ節転移はhypoploid (DI<1) とdiploid (DI=1) は少なく, aneuploidとmultiploidは多く, 有意差が認められた (p<0.05). DIとt因子については有意差は認められなかった.
著者
内田 智也 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 中山 良太 武田 雄大 平川 理映子 武藤 貢平 大久保 吏司 古川 裕之 藤田 健司
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.237-242, 2016-04-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1

Recently, the problem of the high incidence of throwing injuries in young people has been gaining attention. Identifying high-risk players before the onset of the throwing injury is important for prevention. One of the most widely used screening tests for sports-related injuries is the Functional Movement Screen (FMS), which assesses the quality of movement; however, its correlation with throwing injuries has not been established. The purpose of this study was to investigate the correlation between the FMS score and throwing injuries. The FMS was used during the medical check for two hundred and thirty junior high school baseball players. We allotted those who had experienced throwing injuries multiple times to the injury group and those who had never experienced throwing injury to the control group. We then calculated the FMS cutoff value using the receiver operating characteristic curve. In addition, we investigated differences in the incidence of throwing injury between above and below the cutoff value using chi-square test. The FMS cutoff score was 17. Players who scored ≤17 had a significantly higher incidence of throwing injuries than those who scored ≥18. Conclusion: We believe that FMS score is correlated to throwing injuries. In addition, the results suggest that throwing injuries might be prevented in junior high school baseball players who scored ≤17 on the FMS if they undergo training in the correct movement patterns.
著者
小林 憲弘 鈴木 俊也 小杉 有希 菱木 麻佑 加登 優樹 金田 智 植田 紘行 河相 暢幸 北本 靖子 土屋 かおり 木村 慎一 古川 浩司 岩間 紀知 中村 弘揮 粕谷 智浩 堀池 秀樹 京野 完 髙原 玲華 馬場 紀幸 佐藤 信武 久保田 領志 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.211-224, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
7

水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを迅速・簡便に分析するために, DNPHで誘導体化した試料をLC/UVあるいはLC/MS/MSにより測定する方法を検討した。検討の結果, 水道水に塩化アンモニウムを加えて残留塩素を除去した後, リン酸とDNPHを加えて誘導体化した試料を測定した。いずれの測定機器を用いた場合も両誘導体のピークは短時間で良好に分離し, ホルムアルデヒドの基準値の1/10の濃度 (0.008 mg L-1) まで高精度に分析できた。さらに, 本研究で確立した分析法が全国の水道水質検査に適用できるかどうかを検証するために, 15機関において水道水を用いた添加回収試験を行った結果, いずれの測定機器を用いた場合も両物質について「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たした。以上のことから, 本分析法は水道水の標準検査法として利用可能と考えられる。
著者
古川 恵利 草野 可代子 宮下 弘子 西山 久美子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-81, 2003-12

医療依存度の高い患者とその妻が在宅で療養生活を送る事を強く希望した.患者の状態は不安定であり在宅で療養する事は困難であるように思われた.しかし,患者と妻の思いを尊重し,介護者である妻の介護負担の軽減を考慮しながら,在宅で療養できるよう支援した.その結果,患者は在宅療養に至る事ができた.この事例への関わりの中で,自分自身も高齢であり弱視というハンディキャップを抱えながらも夫を連れて帰りたいという一心で努力する妻の姿から,在宅療養に至るには家族の存在がとても重要である事を学んだ.また,私たち医療従事者は患者だけでなくその家族を支える援助を行う必要性がある事を学ぶ事ができた.
著者
古川 邦之 伊藤 季紗 小谷 沙織
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
日本地質学会学術大会講演要旨 (ISSN:13483935)
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本講演は著者都合により発表キャンセルとなりました.キャンセルされた講演要旨は引用できません.ご注意ください.
著者
古川 康一 升田 俊樹 西山 武繁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第25回全国大会(2011)
巻号頁・発行日
pp.3D2OS89, 2011 (Released:2018-07-30)

チェロのスピッカート奏法は、ブランコ漕ぎやバスケットボールのドリブルのような、周期的に外力を与えて振動を持続させる強制振動の一種であるが、その習得は容易ではない。本論文では、文献のサーベイ、メタ認知、力学モデル、着眼点の発見、あるいは、専門家との意見交換などが本スキルの習得にどのように貢献したかについて論じる。また、その習得過程のビデオによる記録について考察する。
著者
仲宗根 峻也 石津 裕二 池本 憲弘 城間 吉貴 赤田 尚史 田中 将裕 古川 雅英
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-71, 2018
被引用文献数
1

In this study, to estimate the recent tritium concentration and its variation with latitude and time in Japan, environmental water samples were taken monthly from June 2014 to October 2016 in Okinawa Island, subtropical region of Japan. The inland water samples were taken from two springs and the drop water samples were taken in a limestone cave. The samples were distilled to remove impurities and then electrolysed using electrolytic enrichment system. Each of the enrichment samples was mixed with the liquid scintillation cocktail, and the tritium concentration was measured with a low background liquid scintillation counter. Arithmetic mean &plusmn; standard deviation for the tritium concentration of Morinokawa (spring water), Kakinohanahikawa (spring water) and Gyokusendo (cave drop water) samples were estimated to be 0.13 &plusmn; 0.04 Bq L<sup>-1</sup>, 0.12 &plusmn; 0.03 Bq L<sup>-1</sup> and 0.13 &plusmn; 0.03 Bq L<sup>-1</sup>, respectively. The comparison between these results and reported data suggested that the latitude effect is one of factors in the relatively low tritium concentration observed in Okinawa Island.
著者
飯岡 智子 瀬川 真砂子 古川 宇一〔他〕
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-56, 1996-03-15

旭川市愛育センターみどり学園では,TEACCHプログラムを導入して4年目となった。飯岡は自閉症児T君とコミュニケーションを深めることを試みた。学園での関わりの初期は,T君に嫌な存在・邪魔な人という印象を与えないよう,まるで腫れ物に触るかの様な関わり方しかできなかった。関わりの回数を重ね,さらに大学のプレイルームという構造化された環境での抽出指導を通して,手をつなぐこと,愛着行動がみられ,学園でも歯を磨かせるなどの関係の深まりが見られた。自由遊び場面(ラポートを形成する段階)と,プレイルームでの個別学習への取り組み場面の記録から,その変容を,飯岡自身をも対象化しながら報告する。
著者
古川 敬之 圓尾 拓也 杉浦 久裕 信田 卓男 塚田 祐介 鈴木 学 穴澤 哲也 吉原 啓太 前田 菜穂子 林 計道 福田 真平 細川 昭雄
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.121-125, 2012

グレート・ピレニーズ,去勢雄,6歳齢が左側鼻腔内からの出血を主訴に来院した。頭部単純X線検査にて左側鼻腔内の不透過性亢進を認めたことから,第1病日に頭部CT 検査および生検を行った。病理組織学的検査結果は骨肉腫であった。 進行度はWHO のTNM分類に基づき,T1N0M0と診断した。第24 病日に鼻腔内骨肉腫の減量手術を行った後,第29病日より高エネルギー放射線治療装置による放射線療法を36Gy/6 回/3週にて行った。第416病日,腐骨となった鼻骨片除去を行い,同時に鼻腔内粘膜の生検を行ったところ,骨肉腫の再発が認められた。第969病日,肺腫瘤および脾臓腫瘤を認め,第1012病日自宅にて死亡した。鼻腔内骨肉腫の犬に対して,減量手術および術後小分割放射線療法を行い,死亡までの2年9カ月良好な経過を得ることができた。
著者
古川 充 中沢 次夫 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.760-764,779, 1974-11-30 (Released:2017-02-10)

毛垢アレルギーに起因する気管支喘息については職業との関連性から検討されているが, その報告は比較的少ない.今回, われわれは愛玩用にハムスターを飼育し気管支喘息の発症をみた1例を経験したので報告する.症例は23才, 男性, 会社員.下宿の8畳一間でハムスターを数匹飼育していたが, 5ヶ月後に咳嗽・喀痰を伴う呼吸困難発作が発現した.この発作は下宿にいなければみられなかった.実験用ハムスターからその毛およびフケを採取し, 生食水にて抽出した抗原液を用い各種アレルギー反応を行った.皮内反応, 眼反応, Prausnitz-Kustner反応, 吸入誘発反応はいずれも陽性反応を示した.皮内反応と吸入誘発試験は即時型および遅発型反応に陽性で, これらのいわゆる dual reaction について前述のハムスター抗原を用いて沈降反応やリンパ球の blast-like formation などを行って遅延型反応などを行い, その機序について検討を行ったが, 明確な結論はみいだせなかった.
著者
古川 和稔
出版者
厚生労働統計協会
雑誌
厚生の指標 = Journal of health and welfare statistics (ISSN:04526104)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.8-14, 2017-09

目的 介護保険法において指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム;以下,特養)は,入所者の在宅復帰を検討することと明記されている。また,地域包括ケアシステムでは,特養には入所施設としての機能だけでなく在宅で暮らす要介護者の在宅生活継続を支援するという機能も期待されている。そこで,特養に勤務する職員の在宅復帰に関する意識と,在宅復帰の可否に影響を与える要因を明らかにすることを目的に調査を実施した。方法 A県内に所在する特養のうち,事前の調査協力要請に対して承諾が得られた47施設に勤務するケアに関わる全職員を対象に無記名自記式質問紙調査を郵送法によって実施した。2015年7月,調査票2,535通を郵送した。調査内容は,回答者の基本属性,在宅復帰に関する職員の意識14項目,在宅復帰を実践する上で必要な支援20項目とした。結果 回収数は929名(回収率36.6%)であった。職種は介護職員が最も多く74.0%,次いで看護職員(11.2%)であった。「特養からの在宅復帰は可能だと思う」という設問には58.9%が肯定的回答を示した。「利用者は在宅復帰を望んでいると思う」という設問には87.9%が肯定的回答を示したが,「家族は在宅復帰を望んでいると思う」に対する肯定的回答は52.4%であり,35.5ポイントの差があった。「特養からの在宅復帰は可能だと思う」に対する回答を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,「高齢者は在宅で暮らした方が良い」「自主的に在宅復帰について学んでいる」という職員の意欲面と,「現在の職場は在宅復帰に取り組んでいる」「直属の上司は在宅復帰を意識している」という職場環境が関連する結果を示した。また,「在宅復帰を実践する上で必要な支援」では、家族支援に関する項目が有意な結果を示した。結論 特養と地域密着型特養の合計数は9,452施設で,今後も増加すると見込まれていることから,これらの施設が在宅復帰や在宅生活継続に取り組むか否かは,地域包括ケアシステムの完成に向けて非常に大きな影響を与えるであろう。「在宅復帰は可能だと思う」という職員の意識に,職員の意欲面と職場環境が関連する結果を示したことから,在宅復帰に向けた職員の意欲の高まりと,在宅復帰に取り組む職場環境の改善が相まって進めば,その相乗効果により,特養からの在宅復帰の可能性が高まることが示唆されたと考える。また,家族支援の方法と位置づけを明確にする必要があると考える。
著者
青山 一真 櫻井 健太 古川 正紘 前田 太郎 安藤 英由樹
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.137-143, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13

Galvanic Tongue Stimulation (GTS) is the technique that can induce electrical taste or metallic taste virtually and inhibit and enhance taste induced by water solution. This technique is expected to use for diet support device. However, conventional GTS required to attached electrodes in the mouth. It causes uncomfortable to use for the purpose. Therefore, we invented Galvanic Jaw Stimulation (GJS) which induces and modulates taste without electrodes in mouth. In this paper, we demonstrated whether GJS can induce virtual taste and modulate salty taste induced by NaCl water solution.