著者
新谷 和文 古川 裕子 大川 久美子 宮下 亜衣 本郷 富 瓦林 啓介 古島 悦子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.G0954, 2006

【はじめに】病院等の施設におけるインシデント・アクシデントレポートは、転倒・転落事故が最も多いことが報告されている。<BR>転倒・転落には身体機能・薬物・認知・環境など多様な要因があるといわれている。また、抑制廃止や活動向上などの対策は、リハビリテーションの効果を上げる要因ではあるが、転倒のリスクは向上するといえる。そこで転倒・転落事故減少を目的とした多職種によるチームを作り、会議とカンファレンスを開催したのでその内容を紹介する。<BR>【転倒・転落事故の実態】当院での平成15年10月から平成16年9月の1年間のインシデント・アクシデントレポートは385件で、うち転倒・転落に関するものは134件(34.8%)と最も多く、月別の発生件数件数では新入職員や部署異動の4月が21件と最も多かった。また、リハビリテーション科の転倒・転落事故は55件で、うち担当以外の患者様を受け持った時の事故は12件(21.8%)であった。当院のセラピストが担当以外の患者様を受け持つのは1~2週間に1度でありこの発生率は高率といえる。これらは転倒・転落事故は患者様を正確に把握していないことが大きな原因と考えられた。<BR>【会議・カンファレンスの開催】転倒・転落事故防止を目的とした会議、カンファレンスを平成17年6月より開始した。<BR>会議・カンファレンスとも月に一度行っている。転倒・転落防止会議は看護師およびリハスタッフで行っている。主な議題は、転倒・転落に関する事故報告・環境面の改善策・危険者のスタッフへの周知・予防のための知識についての教育などである。<BR>また、転倒防止カンファレンスは会議のスタッフに薬剤師・管理栄養士を追加した多職種で開催している。主な内容は転倒危険者の正確な把握とその対策である。まず、病棟看護師から転倒危険者をリストアップしてもらい、各部署が評価を行っている。具体的には看護師が転倒スコアのチェックおよび病棟での危険行為状況、理学療法で身体機能(ファンクショナルリーチテスト)および自己管理能力、作業療法・言語聴覚士による認知機能(HDS-R)、薬剤師による転倒関連の薬剤チェック、管理栄養士による栄養面のチェックなどを行い、カンファレンスを開催している。これにより多方面での転倒リスク把握に努めている。また、これらの評価をもとに対策を立てスタッフに周知している。<BR>【考察】転倒防止のための会議・カンファレンスを開催し、センサーマット購入、ベッドのキャスターの固定性向上、ポータブルトイレの正しい使い方の徹底など転倒防止のための成果が徐々に見られてきている。また、各部署による転倒の評価を行うことにより、転倒危険者の正確な把握が向上してきており、転倒発生状況は減少傾向のように思える。今後は、この会議・カンファレンスが転倒・転落事故防止に成果をあげているかどうかを検討する予定である。<BR><BR>
著者
古川 雄嗣
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.54, pp.71-84, 2008

The subject of this paper is overcoming Nihilism on Shuzo Kuki's philosophy, which is able to be characterized by overcoming contingency through contingency. The fundamental question of Kuki's philosophy was the contingency of being. If it IS a contingency that I am or I am I, our being has no bottom, no sense, and no end. But, Kuki quested for exactly the sense in no-sense and the end in no-end. Kuki's analyses on various aspects of contingency (categorical, hypothetical, and disjunctive) ultimately arrive at the "Primitive Contingency (Urzufall)", but exactly there, we witness the "Metaphysical Absolute necessity, " Kuki terms this the "Metaphysical Absolute, " which can be characterized by "Necessity-Contingency." This means that the contingency recognized empirically is the necessity metaphysically, i.e. contingency is the "Other Being (Anderssein)" of necessity. Furthermore, this metaphysical view reveals that each contingent part and the necessary whole are mutually restricted to each other, therefore, some empirically contingent phenomenon is the reflection of metaphysical necessity. In this way, a contingent being which seems to be no-end appears to be a reflection of the metaphysical necessary end. It comes to be termed "Fate." When we accept the metaphysical necessary end which is revealed on the contingency as our own necessary end, we will hear the commandment "Do not pass a contingency in vain."
著者
古川 竜司 嶌本 樹 鈴木 圭 柳川 久
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;気温が低い冬季にひとつの巣場所に複数の個体が営巣する集団営巣という行動はタイリクモモンガ <i>Pteromys volans</i>やアメリカハタネズミ <i>Microtus pennsylvanicus</i>といった齧歯類の仲間で知られている.これまでヒメネズミ <i>Apodemus argenteus</i>も巣箱で 3頭から 9頭の集団営巣が観察されているが,その詳しい生態は調べられていない.また,タイリクモモンガとヒメネズミは両種とも樹洞を繁殖や休息の場として利用する.しかし樹洞は数少ない資源であるため,これら 2種間で樹洞をめぐる競合が生じる可能性がある.本発表ではヒメネズミの集団営巣とタイリクモモンガとの樹洞を介した干渉について,ビデオカメラによる撮影で確認した事例を報告する.2013年 4月上旬に北海道十勝地方にある6林分(合計 26.3 ha)でヒメネズミの営巣が 3個の樹洞で確認された.それらの樹洞ではそれぞれ,10頭と 5頭の集団営巣と単独営巣が確認された.ヒメネズミの出巣開始時刻は平均で日没後 53分だった.出巣開始時刻が最も早いもので日没前 4分,もっとも遅いもので日没後 93分だった.統計解析の結果,集団営巣を行っている樹洞では,遅くに出巣する個体のほうが出巣前に顔を出して外の様子をうかがっている時間が長かった.出巣順番が臆病さや慎重さに関わっているのかもしれない.4月の間は出巣開始時刻は日没時刻が遅くなるのに同調して遅くなっていたが,5月以降はその傾向が弱まり出巣開始時刻が日没時刻に近づく傾向が見られた.本発表では,さらに出巣開始時刻に関わる環境要因について調べた内容を報告する.また,ヒメネズミが営巣している樹洞を 47回観察した結果,タイリクモモンガによる樹洞への接近が 13回,そのうち樹洞を覗き込む様子が 8回観察された.しかし撮影時間内では樹洞の中に入り込んでヒメネズミを追い出す直接的な排除行動は観察されなかった.
著者
古川 淳二
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1014-1023, 1957-12-15 (Released:2013-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
谷 冴香 三木田 直哉 古川 福実 金澤 伸雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.97-100, 2015-01-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
11

抗精神病薬や抗菌薬にて薬疹の既往がある57歳女性.市販の鼻炎薬Aを内服した翌日より全身に発熱を伴う発疹が出現した.抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用開始後も症状は増悪し,顔面腫脹も出現した.尿と画像所見から尿路感染が疑われ,抗菌薬とステロイドの全身投与により皮疹,尿路所見ともに軽快した.薬剤リンパ球刺激試験とパッチテストにて鼻炎薬Aとその成分のベラドンナ総アルカロイドが陽性を示した.ベラドンナ総アルカロイドは各種市販薬に含まれるが,同様の報告はこれまでになく,注意が必要である.
著者
古川 正紘 安藤 英由樹 前田 太郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp._1A1-M02_1-_1A1-M02_4, 2015
被引用文献数
1

Giant experience allows us to perceive our body as if extended taller than usual. The concept is expected to be implemented with multi rotor based on telexistence theory. Previous papers have proposed the basic concept and gimbal design. So in this paper, we propose an immersion procedure to induce extending their height as a introducing part of the giant experience. The procedure design defines the theoretical requirement of the distance adjustment module in terms of maximum velocity and acceleration of two binocular cameras on the gimbal. Experimental result reveled that the requirement was satisfied.
著者
信迫 悟志 坂井 理美 辻本 多恵子 首藤 隆志 西 勇樹 浅野 大喜 古川 恵美 大住 倫弘 嶋田 総太郎 森岡 周 中井 昭夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)の約50%に併存し(McLeod, 2016),自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)にも合併することが報告されている(Sumner, 2016)。一方,DCDの病態として,内部モデル障害(Adams, 2014)やmirror neuron systemの機能不全(Reynolds, 2015)が示唆されているが,それらを示す直接的な証拠は乏しい。そこで本研究では,視覚フィードバック遅延検出課題(Shimada, 2010)を用いた内部モデルの定量的評価と運動観察干渉課題(Kilner, 2003)を用いた自動模倣機能の定量的評価を横断的に実施し,DCDに関わる因子を分析した。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は公立保育所・小・中学校で募集された神経筋障害のない4歳から15歳までの64名(男児52名,平均年齢±標準偏差:9.7歳±2.7)であった。測定項目として,Movement-ABC2(M-ABC2)のManual dexterity,視覚フィードバック遅延検出課題,運動観察干渉課題,バールソン児童用抑うつ性尺度(DSRS-C)を実施し,保護者に対するアンケート調査として,Social Communication Questionnaire(SCQ),ADHD-Rating Scale-IV(ADHD-RS-IV),DCD Questionaire(DCDQ)を実施した。MATLAB R2014b(MathWorks)を用いて,内部モデルにおける多感覚統合機能の定量的指標として,視覚フィードバック遅延検出課題の結果から遅延検出閾値(delay detection threshold:DDT)と遅延検出確率曲線の勾配を算出し,自動模倣機能の定量的指標として,運動観察干渉課題の結果から干渉効果(Interference Effect:IE)を算出した。M-ABC2の結果より,16 percentile未満をDCD群(26名),以上を定型発達(Typical Development:TD)群(38名)に分類し,統計学的に各測定項目での群間比較,相関分析,重回帰分析を実施した。全ての統計学的検討は,SPSS Statistics 24(IBM)を用いて実施し,有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】DCD群とTD群の比較において,年齢(p=0.418),性別(p=0.061),利き手(p=0.511),IE(p=0.637)に有意差は認めなかった。一方で,DCD群ではTD群と比較して,有意にSCQ(p=0.004),ADHD-RS-IV(p=0.001),DSRS-C(p=0.018)が高く,DCDQが低く(p=0.006),DDTの延長(p=0.000)と勾配の低下(p=0.003)を認めた。またM-ABC2のpercentileとSCQ(r=-0.361,p=0.007),ADHD-RS-IV(r=-0.364,p=0.006),DCDQ(r=0.415,p=0.002),DDT(r=-0.614,p=0.000),勾配(r=0.403,p=0.001)との間には,それぞれ有意な相関関係を認めた。そこで,percentileを従属変数,これらの変数を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した結果,DDTが最も重要な独立変数であった(β=-0.491,p=0.002)。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究では,内部モデルにおける運動の予測情報(運動の意図,遠心性コピー)も含めた多感覚統合機能不全(DDTの延長)が,DCDに最も重要な因子の一つであることが示された。</p>
著者
新正 裕尚 古川 邦之 折橋 裕二 外西 奈津美 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.533-538, 2018-07-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
13
被引用文献数
6

岐阜県南部に分布する可児層群の最下部を占める蜂屋層は第一瀬戸内累層群東部で最も古い地層であり,主に非海成の火砕岩類からなる.蜂屋層最下部の栃洞溶結凝灰岩部層の溶結凝灰岩から分離したジルコンのレーザーアブレーションICP-MSによるU-Pb年代測定を行ったところ,238U-206Pb年代の加重平均として22.38±0.17Ma(2σ)が得られた.この年代は蜂屋層の堆積開始時期を拘束する.分析を行った溶結凝灰岩試料の蛍光X線分析による全岩主成分・微量元素組成を併せて報告する.
著者
佐﨑 元 サルバドール· ゼペダ 中坪 俊一 古川 義純
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.445-449, 2013-08-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
13

Molecular-level understanding of ice crystal surfaces holds the key to unlocking the secrets of various fields. To observe ice crystal surfaces at the molecular level, we developed an advanced optical microscope, and succeeded in visualizing individual elementary steps of 0.37nm in height on ice basal faces. Utilizing this microscope, we also attempted to visualize the surface melting processes of ice crystals. We found the presence of two types of surface liquid phases (quasi-liquid layer phases) that exhibit different morphologies and dynamics on ice basal faces.
著者
周 莉新 佃 守 古川 政樹 池間 陽子 澤木 修二
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 補冊 (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.Supplement92, pp.61-63, 1997-06-27 (Released:2012-11-27)

There are more patients with vocal cord nodules in China than in Japan. The occupation of these patients consists mainly of female singers or teachers. On the basis of the etiology and pathology of Chinese traditional medicine, there are three different treatment modalities for this disease. Shikunshi-to, Toninsibutsu-to and Zoueki-to. These Chinese traditional medicine treatment modalities have been characterized by the combined use of Chinese medical herbs according to each individual patient's status.
著者
新田 收 俵 紀行 妹尾 淳史 来間 弘展 古川 順光 中俣 修
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A1269, 2007
被引用文献数
2

【目的】腰痛を予防する方法として姿勢の改善が重要とされ,近年体幹深部の筋が姿勢保持に重要な役割を果たしているとする研究成果が多く報告されている.これらの報告で姿勢の保持に重要な役割を果たす筋として大腰筋が取り上げられている.現在様々な大腰筋強化トレーニング方法が提案されている.しかし体幹深部筋活動評価を体表面から行なうことは困難であるために,どのようなトレーニングが有効であるかの実証がなされてない.本研究では不安定板を用いたトレーニング方法を採用し,トレーニング前後のMR(MAGNETIC RESONANCE信号の変化を指標として,大腰筋に対するトレーニングの影響を検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象者は腰痛等既往のない男性14名,女性3名,平均年齢20.9歳(20-22)とした.本研究は首都大学東京倫理審査委員会の承認を得て行った.分析対象とした筋は大腰筋とし,対照として表在筋である腹直筋と脊柱起立筋を取り上げた.トレーニングは背臥位にて骨盤下に直径320mmの不安定板(専用器具)を置き,骨盤の肢位を保持したまま下肢を左右交互に各20秒,約20mm挙上する動作を20分行うこととした.なお股関節・膝関節は30度程度屈曲位とした.使用装置は1.5T Magnetom Symphony(SIEMENS社製)で,撮像法はTrue FISP(TR=4.30ms,TE=2.15ms,NEX=1,FA=50°,Scan Time=10sec,FOV=400mm)を用いた.なお分析部位は第4腰椎位としSlice厚=10mm,gap=2mmとした.専用器具は全て非磁性体であり,信号変化のみで筋の活動様相を評価するため,被検者と専用器具とをMR装置内に配置させた状態で実験の全てを施行した.信号強度の計測は画像分析ソフトウエアー(OSIRIS)を用いた.分析は左右の大腰筋,腹直筋,脊柱起立筋内に関心領域(ROI)を設定し,ROI内の信号強度平均値をMR信号とした.統計処理はトレーニング前後の平均MR信号を,対応のあるt検定にて比較した.有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果】トレーニング前後のMR信号は,前平均111.1(SD13.6),後平均119.0(SD16.4)であり有意差が認められた.これに対して腹直筋では前平均291.7(SD64.9),後平均281.5(SD58.2),脊柱起立筋では前平均98.7(SD11.6),後平均94.5(SD11.2)であり差はなかった.<BR><BR>【考察】今回の撮影条件では比較的撮影時間が短いため腹部など動きの抑制が困難な部位の撮影に適している.また画像はT2*強調となり水分が白く強信号となる.このことから信号が強く変化することは筋活動直後の変化を示すとされている.今回の結果から本トレーニングにより大腰筋が選択的に活動することが示唆された.<BR>
著者
富田 真雄 新宮 徹朗 冨士谷 憲徳 古川 宏
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.13, no.8, pp.921-926, 1965-08-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
25 32

The proton magnetic resonance spectra of N-methylcoclaurine type bases were examined and assignment of the alkoxyl groups and aromatic protons was presented. Correlations of the Chemical shifts with stereochemistry of the molecule were discussed.
著者
大塚 匠 新田 收 信太 奈美 古川 順光
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p><b>【はじめに】</b></p><p></p><p>脊髄損傷者では損傷レベル以下の交感神経障害により血管運動や発汗による熱放散がうまくできず,熱が体内に蓄積し,hyperthermiaの危険性が高いことが知られている。しかし実際のスポーツ現場や,損傷レベルによる体温の変化についての報告は少ない。そこで本研究では,実際の車いすスポーツ現場での体表温度の変化を損傷レベルの異なる被験者間で比較検討することを目的とした。</p><p></p><p><b>【方法】</b></p><p></p><p>対象はそれぞれ車いすバスケットボール,車いすラグビーを行っている男性の頸髄損傷者8名(上位群),胸髄損傷者9名(下位群)を対象とした。上位群・下位群にそれぞれの競技の1時間程度の試合形式の練習を行わせ,運動前,運動後の体表温度[℃]を日本アビオニクス社のInfReC R300を用いて撮影した。その後同社製のInfReC Analyzerにて画像解析を行った。体表温度は顔面の最大値を採用した。運動は空調設備のない体育館内にて行い,運動中の飲水や冷風機を使用してのクーリングは自由に行わせた。運動を行わせた時の体育館内の温度,湿度[%]は乾湿計にて記録した。統計解析は,体表温度を従属変数,上位群・下位群の2群を対応の無い要因,運動前後を対応のある要因とした,二元配置分散分析を行った。また単純主効果の検定を行った。データ処理はIBM SPSSver22を用いて行い,有意水準は5%とした。</p><p></p><p><b>【結果】</b></p><p></p><p>運動中の体育館内の温度・湿度の平均値(SD)は,上位群運動時,温度27.7℃(0.4)・湿度65.3%(1.7),下位群運動時,温度30.7℃(0.3)・湿度64.2%(1.6)であった。体表温の平均値(SD)は上位群で運動前35.6℃(0.90),運動後37.0℃(0.99)であった。一方下位群は運動前35.5(0.90),運動後35.9℃(0.96)であった。二元配置分散分析の結果,運動前-後で交互作用は有意であった。単純主効果検定の結果,上位群の運動前-後と,運動後の上位-下位群間で有意な差が示された。運動前の2群間や下位群の運動前後では有意な差は認められなかった。</p><p></p><p><b>【結論</b><b>】</b></p><p></p><p>先行研究において,高温下で頸髄損傷者の体温が,胸髄・腰髄損傷者や,健常者に比してより大きく上昇するとの報告がある。今回の研究でも同様に上位群で優位に上昇していた。この要因は,先行研究と同様に自律神経の障害によって皮膚血流の調節障害,発汗調節障害により体温調節能力が低下していたためと考えた。一方下位群では,体育館内温度が30.7℃と,上位群測定時よりも過酷な環境下での測定となったが,優位な上昇は認められなかった。この要因として,損傷部位がより下位であり,交感神経の残存領域が大きい事があげられるのではないかと考えた。また,今回障害歴の長い者が対象となっていたため,損傷部より上位の血管運動や発汗作用等の利用による,温度変化に対する適応能力が向上していたためではないかと考えた。今回の研究の結果,スポーツ現場において頸髄損傷者では体温が上昇しやすく,hyperthermiaの危険性が高い事が示された。</p>
著者
須藤 信行 吉原 一文 古賀 泰裕 古川 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、オープンフィールド法とビー玉埋没テストを用いて、人工菌叢マウスの行動特性を、アイソレーター内測定法を用いて厳密に測定した。無菌マウス(GF)は、SPFマウスの糞便を移植した無菌マウス(EX-GF)と比較し、多動で不安レベルが高かった。GFマウスにBifidobacterium infantisを移植すると運動能が、Blautia coccoidesの移植によって不安関連行動が減弱した。このように腸内微生物は宿主の行動特性やストレス応答の発現に関わっていることがわかった。
著者
久保 千春 高倉 修 古賀 泰裕 須藤 信行 河合 啓介 森田 千尋 古川 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、定量的PCR法に基づいたYakult Intestinal Flora-Scanを用いて、神経性食欲不振症(AN)女性患者の腸内細菌叢を年齢を一致させた健常女性と比較した。AN患者では健常群と比較し、総細菌数、Clostridium coccoides group、Clostridium leptum subgroup、Bacteroides fragilis group、およびStreptococcusの細菌数が有意に減少していた。AN群では健常者と比べ糞便中の酢酸、プロピオン酸濃度が有意に低かった。以上の結果は、AN患者では腸内細菌叢の異常が存在することを示している。
著者
福田 和子 権藤 理恵 古川 由紀子
出版者
医学書院
雑誌
保健婦雑誌 (ISSN:00471844)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.304-309, 1998-04
著者
加藤 禎人 小畑 あずさ 加藤 知帆 古川 陽輝 多田 豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.139-143, 2012-05-20 (Released:2012-05-20)
参考文献数
7
被引用文献数
10 16

日本の撹拌機メーカーによって開発された多目的に使用可能な種々の大型2枚パドル翼について,撹拌所要動力を測定し動力相関を試みた.その結果,亀井・平岡らの相関式の係数を若干変更するのみで,検討したすべての大型翼の動力が,同一の式を用いて相関された.
著者
笠井 章次 唐崎 秀則 前本 篤男 古川 滋 伊藤 貴博 河野 透
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.91-96, 2018 (Released:2018-01-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

急性感染性電撃性紫斑病(acute infectious purpura fulminans:AIPF)は感染に惹起され急速に進行拡大する末梢の紫斑,皮膚壊死を特徴とする疾患である.死亡率は30%以上と高率で,救命し得た例でも最終的に四肢切断を要することが多い重篤な病態である.われわれはクローン病腸管切除手術後の重篤な麻痺性イレウス治療中にCitrobacter freundii菌血症からAIPFを発症したが,複数科の協力による集中治療で救命し得た40歳代女性の1例を経験したので報告する.クローン病患者は易感染状態であり,また血栓性イベントの高リスク状態でもあることから,AIPFを発症しやすい条件下にあるといえる.現時点で自験例以外にAIPFを合併した症例の報告はないが,クローン病の管理において知悉すべき病態であり,その治療においては複数科との協力の下,集学的に行うことが重要であると考えられた.
著者
鶴谷 広一 中川 雅夫 木曽 英滋 古川 恵太
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.986-990, 2005
被引用文献数
4

鉄鋼スラグと浚渫土砂の干潟材料への適用性を調べるため, 水槽を用いて実験を行った. 水槽に鉄鋼スラグと底泥を適当な割合で混合して敷き詰め, ポンプで海水をくみ上げて, 底質の上に常時かけ流した. 底質の状況を調べるため, 表層の強度を貫入式強度計で測定し, 底質の間隙水を採取してそのpH, 全窒素, 全りん, 全鉄, COD, TOCについて測定を行った. 底質中の生物の生息状況を把握するため, メイオベントスとマクロベントスの分析を行った. 製鋼スラグを用いた底質では, 間隙水のpHが海水より若干高めであったが, 生息するベントスは自然材料と比べて特に大きな差は見られず, 干潟への適用に可能性が開けた.