著者
古川 幸子 鈴木 啓太郎 増村 威宏 田中 國介 若井 芳則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.653-665, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

(1)2007年産の酒造好適米と良食味米を含む11品種11点について,試験米の食味評価とこれらの試験米を掛米とする製成酒の味覚センサーによる呈味評価の関係を検討した。(2)味覚センサーを用いて製成酒の呈味特性を評価した結果,酒造好適米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は有機酸による濃厚感を持つ呈味となり,一方で良食味米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は爽快感のある呈味となることが示唆された。(3)用いる掛米品種により製成酒の呈味に差異が見られる理由について詳細な検討を加えるため,製成酒の遊離アミノ酸含量を測定したところ,良食味米品種で酒造好適米品種よりもAsp,Thr,Ser,Leu,Tyr,Phe,Met,Lys含量が有意に高い値となった。(4)遊離糖含量は,良食味米で酒造好適米品種よりもフルクトース含量が有意に高く,グルコース含量が有意に低い値となった。従って,用いる掛米品種によって製成酒の呈味に違いが生じる原因として,アミノ酸含量や遊離糖含量の影響が示唆された。(5)味覚センサーを用いた製成酒の呈味評価により,掛米品種による酒質の差異を明示できる可能性が示唆された。これを商品開発に応用することで,新規市場の開拓や需要拡大への貢献に期待できるものと思われた。
著者
渡邊 崇 古郡 規雄 下田 和孝 Takashi Watanabe Norio Furukori Kazutaka Shimoda
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.73-78, 2020-07-25

父娘がともに注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)を発症した2症例を経験した.ADHDは児童思春期に診察される場合が多いが,成人後にも症状が残遺することもあり,慢性的な疾患であると考えられる.この症例報告では,家族間であっても,有効な治療薬において差異が認められた.このような家族間での差異を多面発現性と多遺伝子モデルに基づいて考察した.
著者
中谷 丈史 石丸 優 飯田 生穂 古田 裕三
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.17-23, 2008 (Released:2008-01-28)
参考文献数
12
被引用文献数
8 9

木材に対する数種の有機液体の吸着に及ぼすリグニンの寄与について検討を行った。有機液体には分子寸法の異なる3種のアルコール類および前報でリグニンに対して高い親和性が示唆されたDMSOを用い,吸着媒には木粉から段階的な脱リグニン処理を施した乾燥および膨潤状態の試料を用いた。得られた主な結果は以下の通りである。(1)前報1)で示唆された乾燥リグニン中に多く存在する空隙あるいは水素結合の比較的ルーズな吸着サイトはエタノール程度の大きさの液体分子にアクセシブルであることが明らかとなった。(2)DMSOのリグニンに対する親和性は乾燥試料だけでなく膨潤試料でも高いことが明らかとなった。(3)リグニンがセルロースやヘミセルロースの膨潤を抑制させていることが示唆された。
著者
熊本大学文学部考古学研究室
出版者
熊本大学文学部考古学研究室
雑誌
考古学研究室報告
巻号頁・発行日
vol.58, 2023-03-24

立田山南麓古墳(上)調査報告2
著者
平岡 孝之 香川 直己 王 明 和田 修己 古賀 隆治
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.1670-1676, 1997-10-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
8

A tunable diode laser absorption spectrometry (TDLAS) system has been developed in order to apply it to an open atmospheric path which is often suffered from heavy scintillation. A quick scanning of the laser frequency and the digital signal processing architecture are employed to cope with it. The laser frequency is scanned over 4 ms around an absorption line of CH4 in 7μm band every 31ms.Received signal is treated with a DSP system to achieve the best SNR and also to separate the absorption signal from scintillation. Column density of CH4 is produced on every laser frequency scanning. The adjoint spectrum algorithm is employed to achieve the separating capability.
著者
古賀 崇
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.57-73, 2005-03-31 (Released:2017-03-24)

本論文は、政府活動の副産物あるいはその反映としての「政府情報」を「Continuum」ないし統一的なものとして把握し、政府活動の一局面を占める「記録管理」の意義を再確認することを目的とする。研究方法としては、政治学、法学、行政学、記録管理学、図書館情報学、アーカイブズ学といった各々の学問領域において、「政府情報」をめぐる活動がどのように把握され、どのような視点から研究や実践が行われてきたのかを検証する。また、電子的環境における政府情報の「溶解」、すなわち特定のメディア・媒体にとらわれなくなった状態を踏まえ、行政府の情報を中心とした「政府情報論」のモデルを提示する。その上で、記録管理という研究および実践領域が、「Continuumとしての政府情報」を理解する上でどのような貢献ができるか、また他の学問領域とどのような連携が可能なのか、について提言を行う。
著者
古閑 博美 コガ ヒロミ Hiromi KOGA
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.63-73, 2005-10-31

学生の授業中の私語、着帽、睡眠、携帯電話の操作、飲食、化粧、教科書・ノート・筆記具の不携帯のほか、トイレや電話のための途中退室などが問題となっている。そういった態度に接し、教師はどのように対すればよいのであろうか。教育現場で、このことに悩む教師の姿がある。社会で礼儀・作法は不可欠であり、教育現場で、無作法な態度や傍若無人な振舞いが看過されてよいわけはないのである。大学は躾教育まで担っていない、との考えは排除したいものとなる。知識の教養と行動の教養を身につけた学生を育成するのは、社会のニーズでもある。教師は、教育現場にふさわしい辞儀と魅力行動を実践したい。授業中、飲食、私語、着帽などの学生がいても、注意もせず放置する教師を、心ある学生は評価していない。学生が、知的教養以外にマナーなど行動の教養を身につけることは、彼らの将来にとって重要というだけでなく、わが国の将来と直結する課題となる。魅力行動学という研究分野を、あえて唱える所以である。
著者
古川 浩平 鳴瀬 智史 津田 翔真 片瀬 直樹 柳本 惣市 梅田 正博
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.57-63, 2022 (Released:2022-03-22)
参考文献数
29

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)はランゲルハンス細胞がモノクローナル性に異常増殖する稀な疾患である。今回われわれは,開口障害を伴ったLCHの1例を経験したため報告する。 患者は8歳女児で開口障害を主訴に来院した。造影CTおよびMRIで左側頭骨および頰骨に骨破壊を伴う腫瘍性病変を認め,FDG-PET/CTで左側側頭部および複数の頸部リンパ節にFDGの集積を認めた。全身麻酔下に側頭部腫瘍の生検を施行し,LCHの病理組織学的診断を得て,画像検査と併せLCH(多臓器型)と診断した。診断後より多剤併用化学療法を54週間施行し,完全寛解の効果判定を得た。化学療法終了後3年経過し,再発なく経過良好である。
著者
古川 徹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1329-1337, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
48
被引用文献数
7

膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は浸潤性膵癌の前駆病変に相当する膵管上皮内腫瘍として対比される病変であり,PanINが顕微的で肉眼的には認識不可能な病変で,異型が弱い病変から強い病変に変化して浸潤性膵管癌に至るone pathway上の病変と考えられるのに対し,IPMNは肉眼上認識可能な病変であり,組織学的に種々のバリエーションがあって浸潤像も多様なmultiple pathwaysの病変に相当する.分子異常については少なくとも高異型度病変においてSMAD4の異常の頻度が全く異なる.関連する浸潤癌の予後も異なる.このように,両者は対照的病変であって厳に鑑別される必要がある.PanIN,IPMNの診断能の向上が浸潤性膵癌の早期発見,ひいては予後改善につながることが期待される.
著者
立澤 直子 田島 紘己 佐川 俊世 田中 篤 古井 滋 滝川 一 坂本 哲也
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.113-118, 2014-03-15 (Released:2014-07-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

小腸アニサキス症は強い腹痛および炎症所見を呈し,診断が困難で急性腹症として開腹される例が多く報告されている。今回我々は,①発症前数日以内の鮮魚の生食,②腹部CT上腸閉塞など特徴的所見,によりER受診当日に小腸アニサキスと診断し,保存的加療にて改善した6例を経験した。[症例1]54歳の男性。生秋刀魚を摂食した3日後,上腹部痛が出現した。[症例2]63歳の男性。生鯖を摂食した2日後に臍周囲痛・嘔吐が出現した。[症例3]57歳の男性。ほぼ毎日刺身を摂食していたが,受診前夜よりの腹部全体の間欠痛が出現した。[症例4]36歳の男性。生鰹を摂食した翌日に心窩部痛・嘔吐が出現した。[症例5]63歳の女性。生サンマを摂食した翌日,下腹部痛・嘔気が出現した。[症例6]55歳の男性。しめ鯖を摂食した2日後,心窩部から臍周囲にかけての腹痛出現が出現した。全例において来院時の腹部造影CT上,造影効果を伴う限局性・全周性の小腸壁の肥厚と内腔の狭小化,および口側の小腸の拡張と液面形成,腹水貯留を認めた。小腸アニサキスと診断し,保存的加療にて改善した。後日来院時と発症4-5週とのペア血清で特異的抗アニサキス抗体価の上昇を確認した。発症前数日以内に鮮魚を生食後,強い腹痛を主訴に来院し,特徴的な腹部造影CT所見を呈した患者は,小腸アニサキス症を常に念頭に置き,早期診断,治療をする必要があると考えられた。
著者
豊永 悟史 小原 大翼 宮崎 康平 古澤 尚英
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.28-41, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

地方環境研究所(以下,「地環研」)は,都道府県及び指定都市(以下,「都道府県等」)の出先機関として環境行政を推進するための調査や研究を担っており,その研究成果は都道府県等の行政施策へ活用されること(以下,「行政活用」)が求められる。そこで,研究成果の行政活用の実態とそれに影響する要因を把握することを目的としたアンケート調査を行った。全国的な政策課題であるPM2.5に関する研究を対象として,関連業務を担当する地環研と行政部署に対して,それぞれ個別にアンケートを送付し回答を得た。個別の研究単位では,「活用有」と回答された研究は25%(n=36),「活用無」と回答された研究が72%(n=104),「無回答」が3%(n=5)であり,「活用無」の研究が大半を占めた。都道府県等単位では,「活用有」の研究がある地環研では,「活用有」の研究がない地環研に比べて実施した研究の数が多いという関係が認められた(p<0.05)。この結果から,研究の数が多く「活用有」の研究がある地環研(n=12),研究の数が多く「活用有」の研究がない地環研(n=13),研究の数が少なく「活用有」の研究がない地環研(n=22)の3タイプに地環研を分類することができた。個別の研究の行政活用の有無及び地環研のタイプごとに,各回答項目を集計した結果に統計検定を適用し,研究成果の行政活用に影響を与える主な要素を評価した。その結果,研究単位では研究の「立案・計画」及び「取組体制」の二つの要素が,都道府県等単位では「専門性」と「行政部署との連携」の二つの要素が影響していると推測された。これらの要素は相互に関連しており,行政活用を推進していくためにはバランスを維持しながら各要素を強化していくことが重要であると考えられた。
著者
吉田 悠 青山 久枝 井上 諭 菅野 太郎 古田 一雄
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.125-134, 2018-02-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2

This paper reports positive and negative effects of salience on air traffic control (ATC) task performance and propose a screen design policy based on the effects. The ATC task has widely been known as multiple and complicated tasks of a high cognitive demand. We aim to develop screen design policy considering human perception to reduce controllers’ workloads and improve task performances. This research focuses on salience which is one of the user interface elements causing a high-impact perception in accurate and efficient ATC tasks. We carried out an experiment with ten participants in order to clarify positive and negative effects of salience on the ATC task performance. In this experiment, we defined giving heading instructions as the main tasks, and hand-in and hand-off operations as the sub tasks. Experimental conditions provided four patterns of screen designs with (a) no, (b) small, (c) middle, and (d) large gap of salience between important and the other airplanes. We controlled salience using the color salience model that we developed in our previous works. Results of the experiment showed (1) larger salience gaps among displayed information improved novices’ instruction timing to the airplanes, (2) larger salience gaps according to the importance in main tasks degrades the performance of sub tasks, (3) larger salience gaps among displayed information slightly improved novices’ situation awareness (SA). Based on these results, we proposed the screen design policy considering salience of displayed information.
著者
古和 久典
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.200-203, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
13

The trigeminovascular theory is currently widely accepted as a pathological hypothesis for migraine. Cortical spreading depression (CSD) evoked by unidentified cause may stimulate the trigeminal nerves distributed in the dural and cerebral pial arteries. Inflammatory neurotransmitters such as calcitonin gene–related protein (CGRP) and substance P are released from the trigeminal nerve endings, causing local aseptic inflammation. This local condition propagates to the periphery via axons and further spreads aseptic inflammation, and is transmitted from the trigeminal nerve to the cerebral cortical sensory area via the brain stem, causing pain and various symptoms. Furthermore, it has been suggested that the sensitization phenomenon and the descending pain modulatory pathways are involved in the headache attacks, and that the hypothalamus is involved in the prodrome stage of headache.In addition to triptans and analgesics, empirical medication for the prophylaxis have been used to treat migraine. CGRP has been shown to play a major role in the pathophysiology of migraine in recent years. Studies have suggested that blocking CGRP signaling is an effective preventive and therapeutic strategy in patients with migraine. In Japan, two anti–CGRP antibody drugs and one anti–CGRP receptor antibody drug were launched in 2021, and their usefulness has been shown in clinical practice.
著者
古屋 聖児 高橋 謙之祐
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.183-189, 2003-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

経尿道的前立腺切除 (TURP) 術後の疼痛・不快感 (Post-TURP pain/discomfort, PTPD) に対する竜胆瀉肝湯の有効性を, The National Institutes of Health Chronic Prostatitis Symptom ndex (NIH-CPSI) 日本語版 (案) を用いて検討した。対象症例は15例で, 年令は57~77歳 (平均69.8歳), TURP術後経過年数は0.8~10年 (平均3.4年) であった。竜胆瀉肝湯 (7.5g/日) の投与前と投与後2週毎, 患者にNIH-CPSI日本語版 (案) に記入してもらった。竜胆瀉肝湯の投与終了までの期間は, 2~16週 (平均6.4週) であった。PTPDに対する竜胆瀉肝湯の効果は, 有効症例が11例 (73%), 無効症例が4例 (27%) であった。竜胆瀉肝湯投与前と投与終了時の疼痛の重症度, 疼痛の頻度およびQOLの各スコアの平均±標準偏差は, それぞれ5.8±1.5と2.6±1.9 (p=0.0014), 3.4±0.9と2.0±1.5 (p=0.0096), 4.5±0.7と2.6±1.4 (p=0.0033) で, 有意の低下を認めた。従って, 竜胆瀉肝湯はPTPDの治療薬の選択肢の一つとして有用であると考える。
著者
古矢 篤史
出版者
日本近代文学会 関西支部
雑誌
関西近代文学 (ISSN:27584097)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-42, 2023-03-20 (Released:2023-03-24)

本稿では、日中開戦期の婦人雑誌『主婦之友』と、これに掲載された横光利一の「春園」をとりあげ、この時期に形成された「銃後」の言説のなかで文学がどのように位置づけられるのかを考察する。従来、「春園」は複数の男性登場人物が一人の女性を「教育」していくピグマリオン物語の構造を有することが指摘され、男性に支配され隷属する時局のジェンダー規範に沿うものとして捉えられてきた。しかし、「銃後」は女性が旧来の家族制度から解き放たれうる社会参加の契機ともなったのであり、その複雑な言説構造を読み解かねばならない。「春園」が複数のジェンダー規範が錯綜し衝突しあうテクストであることを明らかにする。
著者
古澤 龍 柳川 智之 大原 崇嘉 大原 崇嘉
出版者
東京藝術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

今まで感性として扱われてきた絵画用語であるヴァルール(鑑賞環境を含めた相対的な見えの強さ)の定量化を試みた。まずはビットマップ化した画像データの位置や色差による定量化アルゴリズムの基礎を考案し、作品発表等を通してその妥当性の検証を行った。また鑑賞環境によるバイアスを補正する必要があるため、環境要素の一つとして照明が絵画の見えにどのような影響を及ぼすのか、実験によって関係性の一端を明らかにした。画面の質感性(素材感)が比較的見えにくい低い照度環境においてはバイアスがかかりづらく、明るい環境においては画面の素材によって大きくバイアスを受ける可能性があることがわかった。
著者
古川 哲史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.375-383, 2003 (Released:2003-10-21)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

Na+チャネル·Ca2+チャネルなどの陽イオンチャネルに比べて,Cl−チャネルの細胞機能に果たす役割は今まであまり注目されていなかった.近年,数多くのCl−チャネルcDNAのクローニング,ヒト遺伝性疾患の原因遺伝子として複数のCl−チャネル遺伝子の同定,ノックアウトマウスの解析,Cl−チャネルタンパク質結晶のX線構造解析,タンパク質相互作用によるCl−チャネル制御など,Cl−チャネルに関して画期的な研究成果が相次いで発表された.細胞内膜Cl−チャネルは細胞内小胞の酸性化に重要であり,ClC-5は腎尿細管で低分子タンパク質の再吸収に関与し,ClC-7は破骨細胞osteoclastの骨基質吸収に関与する.これらの異常はそれぞれタンパク尿と腎結石を主徴とするDent病·骨過形成を主徴とする骨化石症osteopetrosisをもたらす.細胞表面膜Cl−チャネルのClC-K1,ClC-K2,ClC-3Bは上皮細胞に特異的に発現し,一方向性Cl−輸送に関与する.これらの異常もヒト疾患と関連しており,ClC-K1の異常は尿崩症,ClC-K2の異常はBartter症候群をもたらす.