著者
吉田 眞理
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.419-427, 2004-06-10

Argyrophilic grain(AG)は,大脳辺縁系領域の灰白質のneuropilに出現する嗜銀性顆粒状の構造物で,Gallyas-Braak染色やタウ免疫染色に陽性を示す。痴呆を伴いAGが出現する病態は,argyrophilic grain dementia(AGD)あるいはargyrophilic grain diseaseと呼ばれ,タウ蛋白が神経細胞体とその樹状突起およびグリアに蓄積する4リピートタウオパチーである。AGは海馬CA1から嗅内野,経嗅内野に好発して,白質にはcoiled bodyが出現し,皮質にはリン酸化タウ陽性のpretangleがAGの出現領域を越えて広がり,ballooned neuronが観察される。AGDは加齢とともに頻度が増加し,高齢者の非アルツハイマー型痴呆の重要な疾患として認識されつつあり,その臨床病理学的スペクトラムの解析は今後の課題である。
著者
楢村 友隆 佐藤 和弘 堀内 賢一 吉田 周理 井出 孝夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.85-90, 2009-01-28
参考文献数
17
被引用文献数
1

透析液の製造工程管理において,細菌の汚染状態を把握し対策を講じることが,透析患者への悪影響を防ぐために重要である.細菌検出の手段として,高感度に細菌の汚染状態を把握するためにはメンブレンフィルター法(以下,MF法)を用いて検査することが必要である.今回われわれは,MF法製品である日本ポール社製37mmクオリティモニターおよびマイクロファンネルを,R2A/TGE寒天および液体培地使用下にて用いた.標準菌2菌種(<I>Pseudomonas fluorescence, Methylobacterium extorquens</I>)と臨床現場の透析液中から単離された1菌種(Wild type)のそれぞれを透析液中に播種した試験液を用いて,各種MF法における細菌の測定精度を,細菌コロニー数の計測結果を基にして,平板塗抹法(R2A寒天培地)と比較した.その結果,今回用いたMF法製品と培養方法との組み合わせの全てが,基準となるR2A寒天培地上のコロニー数(<I>Pseudomonas fluorescence</I>(59.3cfu/枚),<I>Methylobacterium extorquens</I>(62.5cfu/枚),Wild type(38.6cfu/枚))に対して,細菌回収率に必要な70%以上を上回っており,良好な回収率を得ることが可能であった.今回評価したMF法製品は,各工程の細菌管理に有効なツールとして十分に活用できるものと考えられた.
著者
伊與田 浩志 小西 洋太郎 吉田 香梨 西村 伸也 野邑 奉弘 吉田 正道
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.94-99, 2003-01-20
参考文献数
6
被引用文献数
4 6

大気圧の過熱水蒸気雰囲気下で食品を乾燥あるいは加工処理する方法は,食品が水蒸気の凝縮により処理直後に急速加熱されること,殺菌効果が期待できること,また,空気を用いた処理と比して高温でも製品が酸化されにくいことなど,さまざまな特徴を有している.そのため,過熱水蒸気は乾燥分野のみならず,製品の高品質化・高機能化のために食品加工分野への適用が期待されている.<br>本研究では,代表的な炭水化物系の食材であるジャガイモの生スライスを試料とし,170℃および240℃の過熱水蒸気ならびに高温空気気流中で乾燥実験を行い,特に表面の色の変化とその原因について調べた.その結果,過熱水蒸気乾燥では表面近傍においても澱粉が糊化されることにより,空気乾燥時よりも表面の色味が強くなり,また,光沢を有することが明らかになった.また,試料全体の成分定量結果から,過熱水蒸気乾燥の方が糊化澱粉(水溶性多糖)量の増加がはやく,また,着色に寄与すると思われる低分子糖と遊離アミノ酸の増加量も空気乾燥のものより多くなる傾向が得られた.
著者
二階堂 満 吉田 祐希 古関 健一 福村 卓也 渡邊 崇 戸谷 一英
出版者
一般社団法人 粉体工学会
雑誌
粉体工学会誌 (ISSN:03866157)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.483-491, 2018-09-10 (Released:2018-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

This study is aimed to develop a beneficial use of disposed seashells. Sanriku region in Iwate prefecture has an issue of disposals of seashells. In this study, we mechanochemically ground seashells under dry or wet conditions. We used a planetary ball mill, a tumbling ball mill, and a converge mill as mechanochemical grinding machine. After the grinding, we examined the heavy metal absorbencies of the ground materials, and of the compounds with seashell-origin hydroxyapatite (HAP). As a result, followings were found out: 1) When seashell-origin hydroxyapatite was used, it showed adequate heavy metal absorbency (Cd, Pb). 2) When mechanochemically ground scallop seashells without HAP were used, it showed adequate heavy metal absorbency (Cd, Pb). 3) When the scallop seashells are ground for long time under dry condition (mechanochemical grinding), the material tends to be amorphous, and its heavy metal absorbency becomes greater.
著者
藤原 俊義 黒田 新士 吉田 龍一 田澤 大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、テロメラーゼ依存性アデノウイルスOBP-301(Telomelysin)に多機能がん抑制遺伝子であるp53を搭載した次世代型武装化ウイルス製剤 OBP-702(Pfifteloxin)の膵癌間質細胞による免疫抑制機構への効果を検証し、臨床試験用ロットの大量製造が進む本製剤の難治性膵癌を対象とした実用化を目指す。特に、がん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast; CAF)の免疫抑制分子であるTGF-β発現調節や免疫活性化に繋がるPTENがん抑制遺伝子の膵癌細胞での発現調節に着目してin vitroおよびin vivoでの解析を進める。
著者
吉田 城
出版者
日本フランス語フランス文学会
雑誌
フランス語フランス文学研究 (ISSN:04254929)
巻号頁・発行日
vol.85.86, pp.273-291, 2005-03-01 (Released:2017-08-11)

Notre objectif, dans le present article, est de jeter quelques lumieres sur la genese de Du cote de chez Swann de Marcel Proust, en nous appuyant sur les premieres epreuves corrigees, dont l'existence n'a ete devouverte qu'en 2002. Il s'agit d'un jeu de placards etablis par l'editeur Grasset en 1913, sur lequel Proust a apporte de nombreuses corrections et additions. Chose curieuse, il n'y a guere de chercheurs proustiens qui se soient penches sur ce probleme. Une etude des procedes de correcton dans ces placards nous permettra de combler cette lacune concernant la genese de la Recherche. Voici le sort qu'a subi ce document preciex: apres la mort de Marcel, Robert Proust et sa femme Marthe l'ont conserve avec d'autres dossirs manuscrits de leur frere. Quand Robert est mort en 1935, Marthe l'aurait vendu au collectionneur Jacques Guerin, celui qui vendra a la Bibliotheque Nationale les treize Cahiers de brouillon (63 a 75). On a retrouve ces epreuves dans la collection de Guerin quand celui-ci a decede le 6 aout 2000 a l'ate de quatre-vingt-dix-huit ans. Le 6 juillet 2002, elles ont ete mises aux enchers chez Christie's a Londres. C'est le Musee Bodmer a Geneve, appele a cette epoque Bibliotheca Bodmeriana, qui les a acquises. Ces placards se composent de 52 feuilles de grand format, contenent chacune 8 colonnes imprimees et non paginees. La premiere feuille porte le timbre du ≪31 mars 1913≫, date de composition chez l'imprimeur Charles Colin a Mayenne. Sur la derniere feuille (l'avant-derniere page d'≪Un Amour de Swann≫) est appose le cachet du ≪14 mai 1913≫. Nous choisissons quatre episodes dont l'etat de correction presente un interet particulier : l'incipit de la Recherche, la lanterne magique, M. Vinteuil et sa fille et enfin l'ouverture d'≪Un Amour de Swann≫. L'examen de ces textes corriges nous devoile que Proust a continue avec acharnement et jusqu'au dernier moment le travail de suppression et d'ajout de facon a donner a ces episodes un sens profond qui puisse annoncer et preparer la suite du roman. Loin d'etre un simple remainement lexical, thematique ou stylistique, la correction proustienne nous rappelle ici comme ailleurs l'importance de la transformation textuelle, voire structurelle, qui ne cesse de s'effectuer au-dela de la premiere compositon de l'imprimeur.
著者
内科系学会の男女共同参画に関する連絡協議会 橋本 悦子 瀧原 圭子 鈴木 眞理 成瀬 桂子 内田 啓子 金子 猛 三谷 絹子 村田 美穂 相良 博典 駒瀬 裕子 名越 澄子 村島 温子 吉田 正樹 安藤 富士子 梶波 康二 西川 典子 檜山 桂子 別役 智子 正木 崇生 山内 高弘 白鳥 敬子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.894-899, 2018
被引用文献数
4

<p> 2012年度及び2016年度に行われた日本内科学会と内科系13学会における男女共同参画の実態調査結果を比較した.女性理事のいる学会が5学会から9学会に増加し,女性評議員数も全学会で増加,男女共同参画推進組織のある学会は10学会から13学会となった.評議員,委員会委員,司会・座長の女性の比率がいずれも会員比と同等の学会は2016年度で1学会のみであったのに対し,専門医の女性比率は13学会で会員比とほぼ同等であった.</p>
著者
島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 吉田 大輔 堤本 広大 阿南 祐也 上村 一貴 伊藤 忠 朴 眩泰 李 相侖 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101181, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)は、標的細胞表面上にある特異的受容体TrkBに結合し、神経細胞の発生、成長、修復に作用し、学習や記憶において重要な働きをする神経系の液性蛋白質である。BDNFの発現量はうつ病やアルツハイマー病患者において減少し、運動により増加することが明らかとなっている。血清BDNFは主に脳におけるBDNF発現を反映していると考えられているが、その役割や意義は明らかとされていない。この役割を明らかにすることで、理学療法における運動療法が脳機能を向上させる機序をBDNFから説明することが可能となる。本研究では、高齢者を対象に血清BDNFを測定し、その加齢変化や認知機能との関連を検討し、血清BDNFが果たす役割を検討した。【方法】分析に用いたデータは、国立長寿医療研究センターが2011 年8 月〜2012 年2 月に実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)によるものである。全対象者は5,104 名であり、BDNFの測定が可能であった対象者は5,021 名であった。アルツハイマー病、うつ病、パーキンソン病、脳卒中の既往歴を有する者、要介護認定を受けていた者、基本的日常生活動作が自立していない者を除外した65 歳以上の地域在住高齢者4,539 名(平均年齢71.9 ± 5.4 歳、女性2,313 名、男性2,226名)を分析対象とした。血清BDNFは−80 度にて冷凍保存後ELISA法により2 回測定し、平均値を代表値とした。認知機能検査はNCGG-FATを用いて実施した。記憶検査として単語の遅延再生と物語の遅延再認、遂行機能として改訂版trail making test B(TMT)とsymbol digit substitution task(SDST)を測定した。分析は、5 歳階級毎に対象者を分割し年代間のBDNFの差を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。BDNFと認知機能検査の関連を検討するため、認知機能低下の有無で対象者を分類し、t検定にてBDNFを比較した。認知機能の低下は、年代別平均値から1.5 標準偏差を除した値をカットポイントとした。また、認知機能に影響する年齢、性別、教育年数を含んだ多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は認知機能低下の有無とし、独立変数は年齢、性別、教育年数、BDNFとした。BDNFはピコ単位での微量測定値であったため4 分位でカテゴリ化して分析を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し、書面にて同意を得た。【結果】年齢階級別のBDNF(平均 ± 標準誤差)は、65 〜69 歳が21.8 ± 0.1 ng / ml、70 〜74 歳が20.9 ± 0.1 ng / ml、75 〜79 歳が20.5 ± 0.2 ng / ml、80 歳以上が19.6 ± 0.3 ng / mlとなり、加齢とともに有意な低下を認めた(F = 24.8, p < 0.01)。多重比較検定の結果、70 〜74 歳と75 〜79 歳間以外の比較では、すべて有意差を認めた。認知機能低下の有無によるBDNFの比較では、単語再生、TMT、SDST(すべてp < 0.01)において有意に認知機能低下者のBDNFが低値を示した。多重ロジスティック回帰分析では、BDNFはSDSTと有意なトレンドを認め(p < 0.01)、Q(4 24,400 pg / ml)に対してQ(1 17,400 pg / ml)のSDST低下に対するオッズ比は1.6(95%信頼区間: 1.2-2.2, p < 0.01)であった。その他の項目に有意差は認められなかった。【考察】PhillipsらはBDNFmRNAがアルツハイマー病患者の海馬において減少していることを明らかとし、BDNFの減少が病態成立に対して何らかの役割を持つと報告した。運動の実施は海馬におけるBDNFやTrkB受容体の発現量を上昇させることが明らかにされている。また、Eriksonらは1 年間の有酸素運動が海馬の容量を増加させ、その変化量と血中BDNFは正の相関をすることを明らかにした。しかし、血中BDNFの研究は少なく、加齢変化や認知機能との関連性は十分明らかとされていなかった。本研究の結果から、血清BDNFは加齢とともに低下を示し、各種認知機能低下との関連を認めた。とくにSDSTとは、年齢、性別、教育年数と独立して関連を認めたため、記憶以外の機能に関してBDNFが何らかの役割を持つのかもしれない。今後は介入前後のBDNFの変化と各種認知機能の変化との関連を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】今後の日本の後期高齢者数の増大は、認知症者の増大を引き起こし、その根治的治療法がない現時点において、運動による予防対策は重要である。理学療法士は、その対策の中核的存在になるべきであり、運動と脳機能改善に関連する知見を集積することは理学療法にとって重要な役割を持つといえる。
著者
眞下 苑子 吉田 成仁 森脇 龍 竹上 綾香 藁科 侑希 永井 智 大西 信三 白木 仁
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.79-89, 2021-02-01 (Released:2021-01-13)
参考文献数
41

The purpose of this study was to investigate the injury patterns and risk factors of injuries among high school handball players in Japan. A total of 1299 (709 male and 590 female) subjects who played in the 2018 Japanese National High School Handball Championship participated in this study. The questionnaire on injury experience was distributed two weeks before the championship and was collected at the representation meeting the day before the championship. The main results were as follows: 1) The subjects (n=625, 48.1%) reported experiences of injuries in the previous year. Female had significantly more suffer injuries than male. 2) The main body parts of injuries were the ankle, knee, and finger in traumatic injuries and the lower leg, lumber spine/lower back, and knee in overuse injuries. The main types of injuries were sprain, ligamentous rupture, and fracture in traumatic injuries and stress fracture, other bone injuries, and lesion of meniscus or cartilage in overuse injuries. The main cause of injuries was “contact with another athlete”. 3) Age, female players, and back players were associated with increased the occurrences of injuries. Goalkeepers were associated with decreased the occurrences of injuries. These results indicated that a high prevalence of injuries in high school handball players, and it is important to take preventive measures based on age, gender, and player position.
著者
吉田 正
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.852-856, 2019

<p> 80年の時を経た今となっても,核分裂発見の物語は分かりにくい。ここで扱う両大戦のあいだの7年間(1934〜1940年)はナチスの全権掌握から開戦までの苛烈な時代に一致し,発見に至る経緯はこの時代背景ぬきには理解しにくい。いつ,誰が,どう決定的なことを成したのかに焦点をあわせ,核分裂の発見という現代の我々にも計り知れない影響を与えた出来事を,人々の果たした役割や時代推移の節目ふしめに注意を払いながら見てゆく。</p>
著者
吉田 浩通 松浦 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P2397, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】徳島県下における少年野球検診事業の歴史は古く、約30年の実績がある.開始当初は医師の参加によるもので行われていた.平成13年度より検診事業に理学療法士も参加するようになり、現在に至っている.今回、検診システムを紹介するとともに平成19年度における結果を報告する.また検診事業を通し、成長期障害予防における今後の理学療法士の課題について検討した.【対象と方法】検診は、徳島県下全ての小学生野球チームが出場した大会時に行った.検診システムは、大会前のアンケート調査、現場での一次検診、病院での二次検診の3段階で行った.アンケートでは、野球経験年数、練習頻度、ポジション、疼痛既往の有無、野球継続の意志等について解答してもらった.疼痛既往のあった選手、投手、捕手を一次検診者とし、一次検診では各関節可動域、圧痛、ストレス痛についてチェックした.一次検診結果をチーム単位で集計し、有所見者および投手、捕手には協力医療機関での二次検診(X線検査を中心とした画像診断)にて診断を確定し、必要であれば医師、理学療法士による評価、治療を開始した.【結果】平成19年度の大会参加チームは154チームで現場の一次検診を受診したのは139チームであり、受診率は90.3%であった.一次検診を受診した1812名のうち、二次検診が必要と判断されたのは1126名で、このうち二次検診に応じたのは291名であり、二次検診受診率は25.8%であった.二次検診の結果、X線異常を認めたのは77.7%(226名)で、異常部位は計265部位であった.内訳は肘75.9%、肩9.1%、踵7.5%、膝4.5%、その他3.0%であった.【考察】一次検診受診率は90.3%と高いが、二次検診受診率は25.8%と低い.二次検診の結果、画像診断等で77.7%の異常を認めたことからも、現場での一次検診の有用性が認められる.異常の内訳は、肘関節が圧倒的に多く、肩、踵、膝の順であった.野球の競技特性による結果と考えられるが、同時に全身に障害が発生するということも示唆される.また、長年の検診データの結果から、障害発生率は減少傾向にない.我々理学療法士に今後求められることは、検診技術を向上させ定期的なチェックを継続して行い、成長期障害を早期発見すること、障害予防の観点にたち、指導者や保護者、選手に対し日常練習時のプログラムの提案や、スポーツ動作の分析と動作指導等を行い、フィードバックを行う機会を設けることが重要になってくると考える.