著者
吉田 純 高橋 幸弘 福西 浩 堤 雅基 牛尾 知雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-54, 2005-03

現在,金星大気超回転の解明を主目的とした金星気象衛星(VCO:Venus Climate Orbiter)を打ち上げるPlanet-Cミッションが宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部を中心として進行中である.我々はVCOに搭載する雷・大気光カメラ(LAC:Lightning and Airglow Camera)の開発を行っている.LACは金星夜面における雷放電発光・大気光を2次元で高速イメージングする観測器である.雷放電観測では,まずこの現象の存在の決定的な証拠を得て,長年の論争を収束させることを目標とする.さらに,その電荷生成・分離メカニズムの解明や硫酸雲物理学の理解,惑星メソスケール気象学の発展,金星大気中における熱的・化学的寄与の見積もりなど,様々な分野に貢献することが期待される.大気光観測では,発光強度の緯度・経度分布から金星超高層大気の運動を継続的にモニターし,さらに波状構造をイメージングすることで,金星下部熱圏と下層大気の力学的結合過程の解明,金星熱圏大気大循環メカニズムの理解の進展が期待される.さらに近年,地上望遠鏡で発見された558nm[OI]の連続観測も実施し,その発光強度分布や時間変動を捉え,オーロラとも解釈できるこの発光現象の解明を目指す.LACのセンサーとしては,高感度を有し,かつ高速サンプリングが可能なものが要求される.また本観測器は,雷放電発光観測用に波長777nm[OI]の干渉フィルタを採用し,50kHzプレトリガーサンプリングでデータを取得する.一方,大気光観測時には波長551nm[O_2Herzberg II],558nm[OI]で連続サンプリングを行い,積分時間10secで1枚の画像を作成する.VCOは金星低緯度を周回する長楕円軌道をとるが,LACはこのうち近金点(高度300km)付近から金星より3Rv離れた地点までの高度範囲で運用する.その際,雷放電発光観測に関しては距離3Rvの地点から地球の平均的発光強度のものを,1000kmの高度からはその1/100レベルのものまでを検出することを目標とする.一方,大気光に関しては発光強度100Rのものを,SN比=10を確保して検出することを目標とする.上記の性能を達成するため,我々は第一に,LACのセンサーとして光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)とアバランシェ・フォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)の2つを検討した.いずれも8×8の2次元配列素子である.絶対感度校正実験から得られた出力電流値と,暗電流測定試験から得られた暗電流値から,本観測器で100Raylieghの光源を観測した場合の暗電流統計揺らぎによるSN比が10以上であることを確認した.しかしながらAPDについてはバックグラウンドレベルの温度安定性が低く,光量の小さい大気光観測は適さないことがわかった.またPMTに関しては波長777nmにおける量子効率がAPDに比べて小さく,雷放電発光観測は困難であることが判明した.第二に,金星夜面観測の際に視野内に混入することが予想される迷光(太陽直達光,金星昼面光)の量を見積もり,迷光減衰要求量11桁を達成する高い遮光技術を有する光学系の設計・開発を行った.衛星側面に設置し片側を宇宙空間に暴露させ,対物側に4枚の遮光板(vane)と1段バッフルを取り付けた光学系を設計した.本光学系を採用する際,衛星表面を覆う金色のサーマルブランケットや設置面上にある突起物を介して,迷光が観測視野内に混入することが懸念されるため,我々は暗室内で精密な模型実験を行った.その結果,衛星突起物がベーン陰影内にある場合,その迷光量はカメラ部の1段バッフルから検出器間の遮光対策で十分減衰可能な量であることを定量的に示した.第三に,高速サンプリング時におけるデータ取得方法の考案・検討を実施した.忘却係数という概念を用いてトリガーサンプリング方法を考案し,地上フォトメータで捉えられた地球雷放電発光の波形で試験した結果,ノイズと分離して信号を検出することに成功した.本研究成果により,LAC開発に必要不可欠な基礎技術の活用に見通しを立てることができた.
著者
吉田 忠雄 丁 大玉 大木 雄造 檜垣 守正
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会関東支部ブロック合同講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.179-180, 2005-08-25

Black powder is an important component of fireworks and was invented in China in the latter half of the 8^<th> century. Black powder was used for medicine at first and then for military purposes in 10^<th> century. Fireworks using black powder appeared in 12^<th> century. In the end of 13^<th> century Italian displayed fireworks. In Japan gun was imported in 1543 and black powder was also imported simultaneously. Then fireworks were manufactured. Fireworks display gained popularity in the Edo period. On and after the Meiji era, spherical fireworks shells were made giving bright and many colors. Japan became top-rank in Fireworks. Recently, China has become first-rank in manufacturing and export of fireworks. Fireworks have been developed mainly by experience. But, from now on science and technology will support the prosperity of fireworks.
著者
吉田 公晴 森 陽一 西野 浩明 宇津宮 孝一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.220-221, 1997-09-24

製造分野における新製品の開発には, 試作品の製作と評価, およびその改良を繰り返し行うプロトタイピングに多くの時間と労力を要する。例えば, 新作花火の製造に関して言うと, 花火の制作時には乾燥に多くの時間を要する。また, 火薬を使用するので, 繰り返し作業をするほど危険度が増す。そこで我々は, 一連の花火の作業工程(設計, 試作, 打上げ)をVR (virtual reality)技術を用いて再現することにより, VRの問題点の洗い出しを行ってきた。本稿では, 仮想打上げ花火システムにおける3次元空間での視点移動機能などについて述べる。
著者
岡田 裕作 吉田 修 竹内 秀雄 児玉 宏
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.417-423, 1982-04

A 23-year-old man who frequently passed pure calcium oxalate urinary stones after resection of about 100 cm of his ileum and all of his colon for Crohn's disease is presented. Various clinical data, including sodium oxalate loading test, disclosed that hyperabsorption of oxalate from the intestine was the cause of recurrent urolithiasis, which had been well controlled by the adherence to a low-oxalate, low-fat diet and medication of calcium lactate for more than two years. To our knowledge, this is the first reported case of enteric hyperoxaluria due to Crohn's disease in Japan.
著者
吉田 孝宣 岡崎 伸生 荒木 英爾
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.167-170, 1988

必須脂肪酸欠乏状態にあるドンリュー系雄ラットに腹水肝癌細胞AH130(以下,無脂肪食AH130細胞)を継代移植して,その脂肪酸構成の変化を観察し,宿主の栄養環境の変化が腫瘍細胞に与える影響について検討した。その結果,無脂肪食AH130細胞の脂肪酸組成は普通食で飼育したラットに移植したAH130細胞のそれに比べ,18:1(n-9)の増率と18:2(n-6)の減率,および,20:3(n-9)の出現と20:3(n-6)の消失が見られた。一方,無脂肪食で飼育したラットの肝と血清では,これらの変化に加え20:4(n-6)の減率も認められた。無脂肪食AH130細胞に見られたこれらの脂肪酸組成の変化は,宿主の肝と血清における変化と同方向の変化で,AH130細胞の脂肪酸組成は宿主であるラットの栄養環境の影響を強く受けていることを示している。しかし,20:4(n-6)が宿主の肝においてのみ有意に減率していた事実は,AH130細胞独自の脂肪酸代謝機構の存在を示唆しているものと推定される。
著者
蓬田 高正 吉田 充 加藤 譲
出版者
筑波大学体育センター
雑誌
大学体育研究 (ISSN:03867129)
巻号頁・発行日
no.24, pp.35-42, 2002-03

現在の大学教育では、初等中等教育における自ら学び、自ら考える力の育成を基礎に「課題探求能力の育成」を重視することがもとめられている。そうした自ら学ぶ力や課題探求能力は、自発的な取り組み、つまりはその行動自体が「報酬」でその行動をするという内発的動機づけとして捉えることができよう。 ...
著者
岡田 全司 大原 直也 吉田 栄人 鈴木 克洋 井上 義一 源 誠二郎
出版者
独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.結核菌症のキラーT細胞分化機構:(1)抗結核キラーT細胞から産出されるGranulysin〔15kdのGranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。GraはMφ内結核菌を殺傷した。(2)結核患者キラーT細胞から分泌されるkiller secretory protein(Ksp37)が血清中で低下していることを初めて明らかにした。(3)15K Gra DNAワクチンは結核予防効果を示した。(a)15K Granulysin DNAワクチン(b)9K Granulysin DNAワクチン(c)分泌型9K Granulysin DNAワクチン(d)Adenovirusベクター/15K Granulysinワクチンをすでに作製した。(4)15K Gra Transgenicマウスを初めて作製し、Granulysin transgenicマウスは生体内の抗結核菌殺傷作用のみでなく、結核に対するキラーT細胞の分化誘導を増強した。また、結核菌に対するT細胞増殖能増強作用とIFN-γ産生増強効果を示した。2.新しい結核予防ワクチンの開発(1)新しいDNAワクチンの開発(1)BCGワクチンより1万倍強力な結核予防ワクチン(HVJ/Hsp65+IL-12DNAワクチン)開発に成功した。(2)カニクイザルの系で世界で初めて、結核予防ワクチンの有効性を示した。(Vaccine 2005)これらのワクチン効果とキラーT誘導活性は相関した。3.新しい結核治療ワクチンの開発(Hsp65DNA+IL-12DNAワクチン)上記のHsp65+IL-12DNAワクチンは結核治療ワクチン効果も示し、世界で初めて結核治療ワクチンを創製することに成功した。これらの治療ワクチン効果と、IFN-γ産生細胞の増殖(Elispotアッセイで測定)活性は相関した。
著者
岡田 全司 吉田 栄人 大原 直也 鈴木 克洋 井上 義一 露口 一成
出版者
独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1)新しい結核治療ワクチンの開発:HVJ-エンベロープ/HSP65 DNA+IL-12 DNAワクチンはマウス及びヒト結核感染に最も近いカニクイザルを用い、多剤耐性結核や超薬剤耐性結核に対し、治療効果(結核菌数減少及び延命効果)を発揮する画期的なワクチンであることを発見。(2)この抗結核効果がキラーT細胞分化誘導と関係。(3)15K granulysinタンパクが結核菌に対するキラーT細胞分化誘導活性を示すことを発見。IL-6 やIL-2と相乗的なキラーT分化誘導を示した。(4)granulysin Tgマウスを作製した。
著者
吉田 智一 高橋 英博 寺元 郁博
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.187-198, 2009
被引用文献数
2 4

多数の圃場を管理する地域農業の担い手が直面している栽培管理事務作業を効率化し負担を軽減する目的で,GIS互換の圃場地図を使用した作業計画管理ソフトを開発している.このソフトは作物生産に関係する圃場や作付から一連の栽培作業,収穫後の調製・出荷に至るまでの様々な生産過程で発生する情報をデータベース化して管理することを基本とし,そのユーザインタフェイスにGIS互換の圃場地図を使用して直感的に分かりやすい視覚的なデータ入力および表示を実現しているところに一つの特長がある.同様の機能は市販のGISソフトを用いても構築可能であるが,本ソフトではデータベースエンジンやマップ表示にランタイムライセンスフリーのコンポーネントを使用し,その上に圃場管理や農作業管理に必要なユーザインタフェイスを実装していることから,無償配布可能となっていることにもう一つの特長がある.本ソフトはWeb公開による利用者からのフィードバックに基づき機能を改良・拡充しながら,現場農業者への普及を進めている.<br>
著者
吉田 稔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

テキスト中の数値表現を適切に取り扱い,数値と言語の統合的なマイニングを行うための基盤技術の研究を行った.具体的な方針として,テキストを接尾辞配列により索引付けし,そこで数字列に対し,数値としての検索が行えるように拡張を行った.このシステムを,大規模なテキストに適用できるよう高速化し,これにより,文字列と数値の関係を対話的に取得できる基盤を構築できた.また,応用先として,数値を多く含む業務レポート等に対するテキストマイニングの研究を行った.
著者
長友 晃夫 吉田 英一
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.512-527, 2009
被引用文献数
7

岐阜県東部に分布する阿寺断層の地質的履歴解析のために断層帯中に発達する小断層群と割れ目系解析および充填鉱物の鉱物学的・地球化学的分析を行った.その結果,小断層群は(1)充填鉱物を伴わないカタクレーサイト,(2)高温性の充填鉱物を伴う断層,(3)低温性の充填鉱物を伴う断層の3タイプに分けられた.小断層群周辺の割れ目にも,石英やプレーナイト等の熱水循環に伴う充填鉱物と,後の天水浸透に伴う鉄水酸化物の沈殿が認められた.これらから阿寺断層は,地下の高封圧下でカタクレーサイトを形成(ステージ I)した後,熱水変質を伴いつつ未固結の断層ガウジを形成し(ステージ II),そして隆起と断続的断層活動に伴う断層ガウジの発達と天水循環による変質拡大(ステージ III),という形成史を経たと考えられる.このような断層および割れ目系とその充填鉱物を用いた多角的応用解析は,断層形成史や断層運動に伴う割れ目発達解析に有効であると考えられる.