著者
大和田 猛
出版者
青森県立保健大学研究推進・知的財産センター研究開発科雑誌編集専門部会
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-59, 2010-12

本研究は、認知症高齢者ケアにおける実存主義的な視点から考察したものである。これまで、認知症高齢者のケアについては、ほとんどがケアする側の視点で行為やサービスのあり方、負担感などと関連して議論されてきた。すなわち、主語は「ケアする側」であり、ケアされる側は受け手として常に受動的な立場に置かれてきた。しかし、これまでも、ケアを受ける当事者の経験を理解することが大切である、ということが主張されてきた。認知症になる高齢者にとって、その経験は言うまでもなく初めての経験である。ケアされる側の認知症高齢者は、自分の心身についてなにが起こっているか、的確に認識し、判断することは困難である。認知症というハンディキャップを持ちながらも、一生懸命に生きている高齢者の「今・ここ」での状況を、日常生活の中で具体的に把握することが求められている。 そのため、認知症高齢者が老い衰えてゆく過程、記憶が薄れてゆく過程をどのように体験しているのか、人間存在の根源に根ざした実存的把握が必要不可欠である。 このため、本稿では、実存主義ソーシャルワークの系譜や意義などを概観した上で、ある認知症高齢者の生活関与観察を通して、長年在宅生活を送ってきた、ある、1人の高齢者が、施設入所に至る3日間の状況を記録し、個人の主観的経験へ着目する分析を通して、そのストレングス視点で捉えた行為や、認知症高齢者の言動の奥に込められている苦悶の声や存在不安を〈汲み取る〉ことの必要性や、実存的に理解することの重要性を考察した。This paper aims to study care of demented elderly from an existential viewpoint. Discussions on the care of demented elderly hitherto have almost exclusively been from the carers viewpoint – treating them as passive recipients of the services given by carers. However, in recent years, there have been contentions to the effect that it is important to understand the inner world of the demented elderly receiving care based on their subjective experiences. Being demented and receiving care are situations that they have never experienced before. Conceivably they have difficulty in understanding what is happening to their body and mind. There is a need to concretely grasp the "here and now" within the daily lives of demented elderly who, despite their handicap (i.e. dementia), are living their lives to the fullest.To that end, it is essential to have an existential grasp of how demented elderly experience the process of their aging and deterioration and the decline in their memories.The research presented in this paper at first surveys the origins and significance of existential social work, and then presents a record and analysis of the participant observation of three days in the life of a man suffering from senile dementia – the critical three days before his placement in a facility after having spent many years housebound. Through the analysis of the individual's subjective experiences, this paper shows the necessity of understanding the behavior of the demented elderly from a strength perspective, of perceiving their anguish and existential anxiety through their words and actions, and it confirms the importance of existentialist understanding for the care of demented elderly people.
著者
和田 一雄
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 : Wildlife conservation Japan (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.141-163, 1997-02
被引用文献数
2

Japanese sealing of sea otters and northern fur seals directly entered the stage of marketing management without passing through a stage of natural resource plundering, and it may be considered that sealing had advanced to next stage of preliminary resource management by Meiji's social revolution in Japan. Under the support of the "High Seas Fisheries Activity Promotion" treaty that was established in 1897, Japanese sealing started and abruptly developed. On the other hand, USA and England made a contact with each other concerning sealing at sea management which led to a prohibition of sealing at sea. This was in contrast to previous seal harvest irregardless of sex or age. The Japanese government was obliged to honor an international agreement (ICCNPFS), and sealing advanced to the natural resource management as the forth stage. After the second world war, with the increase of animal research activity, ecological management as the fifth stage started. The United States currently follows the Marine Mammal Protection Act which is based on natural resource management through marine community dynamics. It is expected that Japan too will advance its policies to marine community management as the next stage.
著者
小山 寛介 布宮 伸 和田 政彦 三澤 和秀 田中 進一郎 鯉沼 俊貴
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.163-172, 2010-04-01 (Released:2010-10-30)
参考文献数
46

【目的】下部消化管穿孔の合併症と予後の調査,及び重症化の危険因子に関する検討を行う。【方法】2006年4月から2008年3月までの2年間に,下部消化管穿孔に対する緊急手術後ICU管理を行った50例を対象とした。術後急性期の臓器障害の合併頻度と28日死亡率を後向きに調査した。また重症化の危険因子解明のため,ICU-free days(IFD)をエンドポイントとしてSpearman順位相関分析と多重ロジスティック回帰解析を行った。【結果】下部消化管穿孔術後急性期の臓器障害はショック(40%)が最も多く,次いで播種性血管内凝固(24%)の合併頻度が多かった。また,28日死亡率は6.0%であった。重症化の危険因子としては,Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(オッズ比1.85,P=0.025)と血中の白血球減少(オッズ比20.6,P=0.016)が有意にIFDを減少させる独立危険因子であった。【結論】下部消化管穿孔術後急性期はショックと凝固障害の合併が多い。ICU入室時のSOFAスコア,血中の白血球減少が下部消化管穿孔の重症化に関係することが示唆された。
著者
宮本 亮祐 岡田 力 山根 明典 森 和也 早川 洋平 山田 祐輝 和田 友孝 大月 一弘 岡田 博美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.449, pp.253-258, 2010-02-25
被引用文献数
1

火災・地震などの災害発生時に,大型建造物内より迅速に避難できないため数多くの犠牲者を出す事態がしばしば生じている.本研究は,情報通信技術を用いてこのような問題を解決あるいは軽減することを目的としている.すなわち,GPS付き携帯端末間のアドホック通信により建造物内の人々の位置情報を自動的に交換し,災害発生時の人の動きにより周囲の状況を把握・共有し,リアルタイムな災害発生検知および適切な避難路検索・表示を実現する非常時緊急通信(ERUC)システムの開発を目指す.本稿ではERUCの実現を目指し,災害時に周囲の人々と同じ行動を取ろうとする心理的な同調偏向によるパニック行動の伝搬性を考慮した、正確かつ迅速な災害発生位置推定法を提案する.災害発生検知の正確性や迅速性および災害避難時の有効性をシミュレーションにより検証する.
著者
和田 七夕子
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

シロイヌナズナ系統間交配により得られた種子の大きさについて、ゲノムワイド関連解析をおこなうことで、シロイヌナズナ種子発達に作用する父性因子を探索した。雌しべ親をCol-0に固定し、123種類のシロイヌナズナ種内系統を花粉親として交配した種子サイズについてのGWASは、5か所の弱く相関するゲノム領域が得られた。雌しべ親に四倍体Col-0を用い、花粉親に65系統を用いた交配種子の大きさについては、3か所のゲノム領域において弱い相関が見られた。
著者
和田 英一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.448-452, 2010-04-15
著者
菊地 正悟 稲葉 裕 和田 攻 黒沢 美智子 山城 雄一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成7年12月から平成8年3月の間に、1.5歳児検診を受診した95人と3歳児検診を受診した113人の唾液中Helicobactor pylori抗体を測定した。また、平成7年度に小学校1年生であった310人と中学2年生であった300人から、平成7年6月と平成8年6月の2回唾液を採取し、唾液中H.pylori抗体を測定した。同意に保護者に、既往症、家族歴、ペットなどに関する質問票の記入を依頼した。さらに、平成8年に小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定した。唾液の測定は、英国Cortecs社製のキット、Helisalによって、血清の測定は米国Biomerica社製のキット、Pilika Plate G Helicobactorによって行った。小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定したところ血清陽性者は4人で、その唾液中抗体価は1.5以上が3人、0.5未満が1人であった。こうしたデータに基づき、1.5歳児では唾液中抗体価1.0以上を陽性、1.0未満を陰性とし、3歳児では1.5以上を陽性、1.0未満を陰性とし、1.0-1.49の児は分析から除いた。小学生と中学生については、平成7年8年とも唾液中抗体価1.0以上を陽性、2回とも1.0未満を陽性とし、2回の結果が1.0にまたがる例は分析から除いた。同胞がいる小児は1.5歳と3歳で唾液中抗体陽性率はそれぞれ8.6%、24.1%で、同胞のいない小児の0.6%、7.7%より大きく、3歳児では有意であったが、小中学生では唾液中抗体と関連を認めなかった。1.5歳児では、同室で同胞と寝ていた期間が唾液中抗体陽性者で有意に長かった。3歳児では、親が添い寝していた期間が唾液中抗体陽性者で有意に短かった。小中学生では、唾液中抗体陽性者で、小学校入学以前の共同生活の期間が有意に長かった。乳幼児の栄養や、親が噛んだ食べ物を与えたか否か、出生児や健康受診時の体格、両親の胃疾患の既往、ペットの有無は、いずれの年齢でも唾液中抗体と関連を認めなかった。
著者
真野 博 清水 純 任 良? 中谷 祥恵 野口 有希 増田 和成 和田 政裕 Mano Hiroshi / Shimizu Jun / Im Ryanghyok / Nakatani Sachie / Noguchi Yuki / Masuda Kazunari / Wada Masahiro マノ ヒロシ シミズ ジュン Im Ryanghyok ナカタニ サチエ ノグチ ユキ マスダ カズナリ ワダ マサヒロ
出版者
出版者:日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.177-183,
被引用文献数
3

DNAマイクロアレイ解析法を用いることで, 沖縄伝統野菜ニガナ (Crepidiastrum lanceolatum) を摂取させた実験動物の肝臓では, 遺伝子発現パターンが大きく変動していることを明らかにした。特に, ニガナは強力なエリスロポエチン (EPO) 遺伝子発現誘導活性を有していることがわかった。このことから, ニガナの摂取は体内のEPOタンパク質産生を上昇させる可能性が考えられた。さらに, Potential Free Energy (pF) 1.5, pF 1.8, pF 3.0の条件で灌水量を調節し, 成分量 (栄養成分や硝酸態窒素) を変化させ, 品質を改良したニガナを作製した。3種類のニガナのうちpF 1.5の灌水量条件で栽培したニガナは, 硝酸態窒素含量およびカリウム含量が比較的少なく, その他のビタミンやミネラル含量は他と同程度であったが, EPO遺伝子誘導活能が最も高かった。本研究の結果, 食品を投与した実験動物を用いたDNAマイクロアレイ解析は, 食品の新たな品質設計技術の一部として有用であると考えた。
著者
和田登作
出版者
信濃毎日新聞社
巻号頁・発行日
1975
著者
南部 功夫 和田 安弘 大須 理英子 大須 理英子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。
著者
西澤 奈津子 大隅 清陽 藤森 健太郎 稲田 奈津子 金子 修一 石見 清裕 桑野 栄治 野田 有紀子 安田 次郎 和田 英信 松岡 智之 末松 剛 吉永 匡史 武井 紀子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

古代日本においては、律令制の導入に続いて、8世紀になってから礼の本格的な導入が始まり、9世紀には儀式書の成立という形に結実する。その後9世紀から12世紀にかけての古代から中世の変革期において、中国の礼を受容して形成された儀式が支配構造との関係でどのように変容したかを、中国の賓礼や軍礼、凶礼などに該当する儀式を検討することによって明らかにした。また、同時期の中国や朝鮮半島諸国の礼や儀式の変化と比較することによって、日本の儀式の変化の特徴に迫った。その結果、中国において当該期に礼や儀礼が庶民化すること、皇帝権力の伸長により変化があることなどが確認された。
著者
和田 浩一 松田 謙次郎
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究はコーパス言語学的なアプローチによって、近代オリンピック参加以前の日本におけるオリンピズムの受容に直結する雑誌記事の著者を推定した。主な成果として、1)ピエール・ド・クーベルタンの筆による著書6冊および雑誌記事49本分のコーパスを作成したこと、2)著者推定の分析に必要なデータ形式へのコーパスからの整形方法を確立したこと、3)文長とK特性値とから上記文献の著者がクーベルタンであったとの仮説を検証したこと、が挙げられる。
著者
内原 俊記 織茂 智之 橋本 款 和田 昌昭
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ヒト剖検脳のαシヌクレインは軸索遠位から神経細胞体へ向かって進展する点で、樹状突起から細胞体へ進展するにつれて4リピートから3リピートへ変化するタウとは異なることを示した。これを反映して、レヴィー小体病では軸索末端が早期から脱落し、これをとらえる MIBG心筋シンチグラフィーが高い診断特異性を有する病態背景を明らかにした。さらこれらの病変の光顕像と免疫電顕像を直接対比できる新たな手法を開発した。今後分子機序との関連を追及するのに強力な手段となる。