- 著者
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伊藤 至乃
天野 幸子
殿塚 婦美子
- 出版者
- The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
- 雑誌
- 栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.39-52, 1993
- 被引用文献数
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3
母子を組 (429) にして児童及び母親の食事に対する意識や態度を調査した結果, 次のことが明らかになった。<br>1) 児童の家の食事と給食の満足, 不満足の主な要因は, 食事の内容と食卓を囲む人間関係や食事をつくる人とのコミュニケーションの問題であることが明らかにされた。家族や友だちと一緒に食べることや食事づくりの手伝いは, 満足度を高める要因である。ただし給食当番は, 家庭での手伝いほど満足度に影響を与えていなかった。<br>2) 食事に満足している母親は, 家族と密なコミュニケーションがあり, 食事づくりにかける時間が長い。<br>3) 子どもの意識や態度を通しての母親の意識や態度の観察では, 次の3点に違いがみられた。<br>(1) 家の食事に満足している子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に工夫をし, 食事づくりに時間をかけていた。<br>(2) 手伝いをよくする子どもの母親は, 手伝いの期待が高かった。<br>(3) 食べ物の好き嫌いが少ない子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に, 好き嫌いは考えないと工夫しているとに分かれた。好き嫌いを考えない母親は, 家族とのコミュニケーションが親密であり, 互いの期待に応えようとする態度がうかがわれた。<br>(4) 母親の意識・態度を通しての子どもの意識・態度の観察では, 子どもの嫌いな物に対する態度にのみ違いがみられた。子どもが嫌いな物を食べ残した時に何もいわない母親の子どもは, 家の食事に不満足で好き嫌いがあり, 食事も残す。このような母親の子どもに対する消極的な態度とコミュニケーション不足が, 子どもの食事に対する意識や態度に反映されていた。