著者
太田 尚宏
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-33, 2014-03

本稿では、国文学研究資料館所蔵の真田家文書のうち、「家老日記」として分類される日記類(特に松代に関する日記)を分析対象として、そこに含まれる日記の種類と性格について論じた。まず、日記の外見的考察により、文政期までの日記の表紙に記されている「松代」「御国」といった記載の多くが後筆であることを確認し、これらの追記や朱字の番号で示されている管理の痕跡が、松代藩や真田家ではなく、家老の望月氏によるものであると推定した。さらに、これらの日記の中には、家老日記とは性格が異なる「御国日記」の原本(あるいは全体の転写本)が混入していること、望月氏自身が御国日記の転写を進めていたことなどを明らかにした。続いて、望月行広という人物の動向に着目し、家老日記の性格について検討した。その結果、①松代藩における公式の家老日記は、「置附日記」という家老御用部屋に設置された日記であり、真田家文書に残る家老日記は、御用番を担当した家老が「置附日記」の下日記として記したもので、「置附日記」への転記にあたり記事の取捨選択が行われていたこと、②18世紀半ばには、家老の執務内容のうち定例化・慣習化された事項について日記には記述しないと規定されていたこと、③望月行広が「勝手懸り」を担当してからは、職務上の需要に応じて、自らが御用番のとき以外の日記も詳細に転写するようになり、勝手懸り関係の記述も加わって、1年間を通じた記事を御用番・勝手懸りの2本立てで記す「御在所日記」の形式を完成させたこと、などの点を明らかにした。This paper discusses the descriptions and characteristics of "KaroNikki"(Diary of chief retainer), the Sanada family's documents of National Institute of Japanese literature. From the contents written on the cover of this diary until Bunsei era, it was confirmed that some descriptions such as "Matsushiro"and "Okuni" were written later. It is presumed that postscripts and running number were written by Mochizuki chief retainer. It was also confirmed that "Okuni Nikki" (Okuni Diary), which was different with "Karo Nikki'', was included and Mochizuki chief retainer was carrying out the transcription of "OkuniNikki". .Subsequently, we focused on the activity of Mochizuki Yukihiro and studied the characteristics of "KaroNikki''. As a result of this study, it was clarified that an official diary of the Matsushiro domain was "Okitsuke Diary" and a diary preserved by Mochizuki family had a function of a rough draft. Originally, "Karo Nikki" was created based on a work shift on monthly bases, but it was also clarified that a file type of diary (Gozaisho Diary) had been begun to create throughout the year in stated of a monthly work shift diary since the middle of 18th century due to the volume of work was increased, the contents were written in more details and the descriptions regarding the financial affairs were added.
著者
音琴 淳一 渡邊 英俊 大野 美知昭 日垣 孝一 佐藤 哲夫 椎名 直樹 伊豫田 比南 温 慶雄 上條 博之 坂本 浩 河谷 和彦 伊藤 茂樹 太田 紀雄
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.13-24, 2001-03-28
被引用文献数
2

歯周病患者のパノラマX線写真パラメーターを臨床パラメーターと比較することにより,歯周病と骨粗髷症の関係を明らかにし、さらにパノラマX線写真パラメーターを用いて骨粗髷症の診断を試みた。被験者は歯周治療経験,全身疾患のない20歯以上を有する歯周病患者(男性群113名,女性群113名)とした。パノラマX線写真パラメーターとして歯槽骨吸収量,下顎下縁皮質骨量(MCW),Central panoramic mandibularindex(C-PMI)を計測した。臨床パラメーターとして現在歯数,プラークコントロールレコード,臨床的アタッチメントレ・ベル,Gingivallndex,Gingival Bleeding lndex,動揺度を測定した。被験者は男性群と女性群,女性群を閉経前群と閉経後群(閉経後1〜5年群,閉経後6〜10年群,閉経後11年以上群)に分類し,年齢は20代から70代の各年代群に分類した。年齢およぴ閉経後年数と各パラメーターとの相関関係,各パラメーター問の相関関係を各群間で評価した。さらに,MCWを用いた骨粗髷症の診断を試みた。その結果,男女群間にはMCWを除いて全ての計測値に有意差を認めなかった。女性群においては,閉経後6年を越える群に歯槽骨吸収量の有意な増加およぴMCWの有意な減少を認めた。閉経後群は現在歯数の減少,閉経後11年以上群には臨床的アタッチメントレ・ベルの有意な増加を認めた。男性,女性群において年齢と歯槽骨吸収量,女性群において年齢と現在歯数および歯槽骨吸収量,MCWと歯槽骨吸収量,閉経後群において閉経後年数と歯槽骨吸収量,MCWと臨床的アタッチメントレベルは相関関係を認めた。またMCWから2名の女性被験者において骨粗髷症を発見することができた。この結果から歯周病と骨粗髷症との関連が示され,MCWを用いた女性歯周病息者の閉経後骨粗髷症診断の可能性が示された。
著者
太田 浩 芦沢 真五 渡部 由紀 野田 文香 新田 功 横田 雅弘 堀田 泰司 上別府 隆男 杉本 和弘
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

欧州で進行中の大学評価プロジェクトであるNufficのMINT、CHRのIMPI、IAUのISAS、ACAのAIMの開発者と利用した大学に聞き取り調査を行うと共に文献調査を行い、プロジェクト間の相違点、課題、利点などを明らかにした。そのうち、IMPIが開発した国際化評価の489指標を翻訳し、日本の文脈に照らして妥当と判断される152の指標を使い、質問紙調査を日本の228大学に対して行った。調査で収集したデータの分析結果に基づき、日本の大学国際化の評価に関する現状と今後の評価のあり方、及び日本の大学にとって最も有効性が高いと考えられる指標群、また有効性が高くないと考えられる指標群を明らかにした。
著者
太田 容次 梅田 真理 伊藤 由美
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.27, pp.206-209, 2011-08-20

国立特別支援教育総合研究所では,発達障害教育情報センターを2008年8月に設置した。当センターでは,発達障害のある子どもの教育の推進・充実に向けて,発達障害にかかわる教員及び保護者をはじめとする関係者への支援を図り,さらに広く国民の理解を得るために,Webサイト等による情報提供や理解啓発,調査研究活動を行うことを目的としている。本発表では,発達障害のある子どもの教育に関わる教員を対象に,双方向型Webの機能を活用し実施した教材教具の活用に関する2010年度の情報交換の概要を報告する。
著者
太田 智己
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.49-60, 2013-12-31

An emphasis on the scientific production of knowledge garnered attention in the formation of Japanese art historical scholarship in the 1930s. The present study will delineate the significance of this academic trend in the field of Japanese art history by illuminating the sociocultural background, state initiatives and private agencies involved in the process. Ultimately, it will shed light on the ways in which modern Japanese scholars attempted to situate art historical studies within the "disinterested" academic realm of human science through the rational systemization of artifacts, historical accuracy, and empirical values. Indeed, this marked a turning point in the development of art historical study in Japan distinguishing it from antiquarian and hobbyist practices of art appreciation. This paper will contribute to the ongoing historical reassessment of Japanese art historical scholarship in the first half of the twentieth century. Moreover, I will analyze not only the interdisciplinary approaches but also a Neo-Kantian scientific perspective on Japanese art history. Finally, I will show how the scientific research trend had been avidly incorporated into the academic disciplines of Japanese art history, contrary to prevalent nationalistic rhetoric of this time.
著者
野田 五十樹 太田 正幸 篠田 孝祐 熊田 陽一郎 中島 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.131, pp.31-36, 2003-01-29
被引用文献数
5

利便性の高い公共交通手段としてデマンドバスは注目されているが、現状では小規模な運営にとどまっており、採算性の問題を抱えている。本稿ではデマンドバスの大規模運営の可能性を探るため、シミュレーションによりデマンドバスと従来の固定路線バスの利便性と採算性の関係を解析した。その結果、次のようなことが示された。(1)デマンドバスはデマンドの増加に従い急速に利便性が悪化する。(2)デマンド数とバスの運用台数を一定に比率に保つ場合、規模の拡大に従いデマンドバスの利便性は固定路線バスより早く改善する。(3)十分な利用者がいる場合、同じ採算性でも固定路線バスよりデマンドバスの利便性をよくすることができる。
著者
太田 訓正
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本申請では、Human Dermal Fibroblasts(HDF細胞)からリプログラミング物質の同定を目的とした。乳酸菌を超音波破砕処理後、クロマトグラフィーを繰り返し、細胞塊形成能を持つ分画を同定した。その分画を用いて、MALDI-TOF-MS解析を行い、リプログラミング物質の同定を試みた。私たちは、リプログラミング物質の同定に成功し、これをHDF細胞に作用させると乳酸菌を用いた時と同様に細胞塊を形成した。これらの細胞塊は脂肪細胞、骨細胞、神経細胞などへと分化したことから、乳酸菌由来リプログラミング物質は、宿主HDF細胞の遺伝子発現をコントロールしていることが示唆された。
著者
諏訪 博彦 山本 仁志 岡田 勇 太田 敏澄
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.59-70, 2006-03-31
被引用文献数
6

持続可能な社会の実現のために、様々な方法で環境問題の解決が試みられている。しかし現状では、環境教育プログラムによって環境に対する態度は変化させられるものの、環境配慮行動を促す効果的なプログラムの開発は不十分である。我々は、どのような「環境に配慮する態度」をもっている個人が、「環境に配慮する行動」を実行しているのかを明らかにしたい。このために、既存の環境教育力リキュラムの順序性と心理的プロセスを援用し、人々が環境に対してどのような関心や動機を持ち、行動を行っているのかに関して質問紙調査を行った。調査結果を基に環境配慮行動を促す環境教育プログラム開発のための関心・動機・行動間のパスモデルを構築した。その結果、意識的環境配慮行動を規定する要因として、費用負担意思がもっとも高い影響を及ぼしていることがわかった。