著者
木崎 治俊 太田 一正 谷本 豊
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

超螺旋構造を持つクロマチンDNAのトポロジーをDNAトポイソメラーゼ(I,II)の阻害剤により変化させ,初期に変化する遺伝子を検索し,二つの遺伝子が特異的に減少することを明かにした.一つは,hnRNPA1であり,mRNAのプロセッシングに関わるタンパクhnRNP A1をコードしていた.もう一つは新規の遺伝子であり,トポイソメラーゼ阻害剤により特異的に抑えられることからTISと命名した.本遺伝子の構造を明かにし,唾液腺癌細胞(HSG)をトポイソメラーゼ阻害剤や,レチノイン酸(tRA),ジブチリルcAMP(bt2cAMP)によりそれぞれ異なった細胞群に分化させ,その過程での本遺伝子の機能について解析した.tRAによりトポイソメラーゼIのmRNAの発現は抑制され,トポイソメラーゼIタンパクはわずかな減少がみられた.bt2cAMPではそのmRNA,タンパクの発現には大きな変化は見られなかった.トポイソメラーゼIIαのmRNAの減少とタンパクの減少がみられ,特にtRAの処理により顕著にみられた(図2).分化誘導剤によるこの酵素の減少は,増殖抑制と分化のトリガーとなるとも考えられる.トポイソメラーゼIIβはタンパクレベルでは検出できず,mRNAの発現も極めて低く,その機能はトポイソメラーゼIIαに比べて明かではなかった.TIS遺伝子の発現は分化誘導剤により初期に抑制され,非常に初期の遺伝子発現の制御に関与していることが示唆された.HSGは多分化能を有する細胞であるが,均一に全ての細胞が分化していくのではなく,分化初期の変動遺伝子を今回のような方法で確認するにいは難しい細胞系といわざるを得ない.そのため,トポイソメラーゼIIβやTISの変動が明確に観察されなかったのではないかと考えている.今後は均一な細胞系で,分化マーカーの確立細胞系を試料としたトポロジーの変化と分化との関連性を明かにする必要があると考える.今回は、トポイソメラーゼの阻害とアポトーシスとの関わりが示唆され,その際の新規なPKCδアイソホームを確認することができ,その機能の解析の重要性が示唆された.
著者
太田 有子
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.19-36, 2006-03-28
被引用文献数
1

歴史社会学は,社会学における一般理論への偏重に対する自省から,分析対象地域の歴史経験や固有の事情をふまえつつ理論構築を志向する試みとして発達したが,同分野の定義をはじめ,さらには分析方法から理論の射程範囲に至るまで,現在もなお議論が続いている.なかでも比較分析は,歴史社会学分野において主要な分析方法として用いられ,また近年は広く社会科学分野においても,その意義が注目されているが,そのあり方をめぐっては諸論が展開している.本稿では,「歴史社会学」の軌跡を辿りつつ,比較分析の方法論ならびに研究例を通じ,その内容を検証すると同時に今後の課題を考察する.
著者
星野 修一 今井 康晴 石原 和明 沢渡 和男 竹内 敬昌 寺田 正次 三隅 寛恭 新岡 俊治 太田 淳 杉山 喜崇 大野 英昭 久保 英三
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.816-819, 1993-06-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

小児(15歳未満)における生体弁置換術の遠隔期成績, 特に弁機能不全につき検討した。1975年1月より78年12月までの4年間に当院で生体弁置換術を行った15歳未満症例中, 病院死亡を除く29症例, 30回の弁置換術症例を対象とした。平均手術時年齢は5.5±3.9歳であった。遠隔死亡は4例で, 実測生存率は82.2カ月で83.0±7.9%であった。人工弁合併症は, thromboembolismは1例(0.93%/patient-year), prosthetic valve endocarditisは2例(1.85%/p-y)であった。structural deteriorationは26例に認められ, 25例が再置換術を行った。再弁置換術は遠隔死亡4例を除く26例に, 術後14カ月から82カ月平均3年9カ月後に行われた。予測非再弁置換術の%Freedomは48カ月で52.3%に低下し, 82.2カ月で0%となり生存症例全例が再置換術を必要とし, 成人例に比し早期かつ高率であった。原因は1例は感染弁, 他の25例はstructural deteriorationであった。
著者
石田 肇 弦本 敏行 分部 哲秋 増田 隆一 米田 穣 太田 博樹 深瀬 均
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

オホーツク文化人集団は 55 歳以上で亡くなる個体がかなり多い。オホーツク文化集団は、船上の活動などが腰椎の関節症性変化発症に関与した。久米島近世集団は、男女とも腰椎の関節症の頻度が高い。四肢では、オホーツク文化人骨では肘関節、膝関節で高い傾向を示した。沖縄縄文時代人は、目と目の間が平たいという特徴がある。成人男性の平均身長が約 153cm と、南低北高の傾向がみえる。北東アジア人の大腿骨骨体上部の形状が扁平形状であることを示した。四肢骨 Fst は頭蓋や歯の値より 2-3 倍大きい。SNP の解析により、アイヌ人と琉球人は一つのクラスターをなし、アイヌ・琉球同系説を支持した。
著者
江刺 洋司 太田 宏 吉岡 俊人
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本研究は省エネルギーを前提として国連が計画中の、国際植物遺伝子銀行設立に際してコンサルタントを依頼され、それを実現に導くための基礎的な種子の貯蔵条件を解明するために実施された。その結果、遺伝資源としての植物種子の長期間に亙る貯蔵を、永久凍土の年平均-3.5℃で行うためには、従来各国で採用されてきた方法を適用することは妥当ではなく、種子の劣化を招く主要因となっている水分と代謝生産物であるカルボニル化合物を除去することが必要なことが判明した。そのための最も簡便な方法として、定期的な真空脱気法の導入が望ましいことが明かになった。ただ、残念ながらこの場合には完全なエネルギーコスト消減は不可能ということになり、初期の目的には沿わないことになる。また、施設費も相当嵩むことになることから、相当長期に亙る運用を前提とした経済的な検討が、実際に建設に踏み切る場合にはなされる必要がある。ただ、そうだとしても、将来の化石燃料枯渇の時代を予測するならば、本計画は実行に移されるべき性質のものと私は判断する。幸運なことに、本研究の過程で、種子の老化機構についての実体が解明され、種子の貯蔵湿度に対応して二種類の劣化の道が作動することが判明した。一つは、高い湿度下でのみ進む補酵素群の消耗、ミトコンドリア発達能の低下によるものであり、通常採用されている乾燥種子の保存の場合には殆ど問題とはならないと思われる。二つめの種子老化の仕組は種子自らが貯蔵期間中に生成・放出するカルボニル化合物、主としてアセトアルデヒドと種子中の機能蛋白質のアミノ基との間でシッフ反応の結果、蛋白質の変成を来して老化する機構であり、この反応率も高湿度下で高いものの前者とは違って、通常用いられる低湿度下でも進行するものである。後者の仕組みは植物の老化に一般的に当てはまるものと推定され植物の老化の研究に新たな展望を与えることになった。
著者
太田 秀樹 齋藤 邦夫
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

降雨後の駿河湾地震 (2009年8月) で崩壊した東名高速道路牧の原盛土の盛土材料を実験に供したうえで現場データと比較照合したところ、現場で崩壊せずに残った盛土がおおむね1200kPa程度の定体積せん断強度を持っていたと判断された。崩壊した盛土の強度が120kPa程度であったことが分かっているから、崩壊した盛土は水がしみ込んで泥濘上になり強度が120kPa程度にまで低下していたと推定できる。永年の浸水による盛土の劣化・強度喪失のメカニズムを一連の実験によって推定したところ、崩壊前後の現場状況と定量的に整合し力学的に妥当と思われる結果がえられ、水による盛土の経年劣化機構が明らかになった。
著者
柴原 弘明 世古口 英 竹下 祥敬 鈴木 伸吾 森本 美穂 稲熊 幸子 森 陽子 工藤 壽美代 太田 由美 西村 美佳 植松 夏子 今井 絵理 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.523-528, 2013 (Released:2013-06-29)
参考文献数
10

【緒言】フェンタニル貼付剤による色素沈着の報告は現在までにみられない. 【症例】43歳, 男性. 直腸がん術後再発に対して, セツキシマブ+イリノテカン療法後, パニツムマブ+FOLFIRI療法を施行した. がん疼痛に対して, フェンタニル貼付剤(フェントス®)投与し, 再発部位に後方からの放射線療法を行った. 経過中, 胸部と腹部のフェンタニル貼付剤の貼付部位に色素沈着がみられた. 貼付中止後, 4カ月でほぼ消失した. 【考察】色素沈着の機序として, フェンタニル貼付剤による接触皮膚炎後の炎症後色素沈着である可能性が高い. 正確な機序の解明のためには, パッチテスト・皮膚生検が望ましい. 【結論】フェンタニル貼付剤投与時には, 色素沈着に留意する必要がある.
著者
太田 純貴
出版者
京都哲学会 ; 1916-
雑誌
哲学研究 (ISSN:03869563)
巻号頁・発行日
no.597, pp.48-69, 2014-04
著者
太田 伸広 OTA Nobuhiro
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.33-59, 2011-03-30

魔女はお年寄りで、ほとんどが森の中の小さな家に住んでいる。魔女の身分や職業、暮らしぶりはほとんどわからない。魔女が真珠や宝石、金銀などの宝を持っている場合は5例で少ない。魔女の魔女たるゆえんはやはり魔法を使うということである。しかし、その目的、使用の相手はほとんどが不明である。魔法の解き方も様々で一定しない。ところが、魔法という武器を持ちながら、魔女が相手に打ち勝つために魔法を用いることはない。それどころか、意外な脆さを見せ、没落する。魔女は殺人など数々の悪事を働く。そのせいか、悲惨な末路を迎える魔女が多い。魔女は山姥や鬼婆と違い、人を食わない。またグリム童話の魔女は、魔女裁判に出てくる「舞踏」、「集会」、「淫行」、箒での飛行、穀物や家畜への危害とも無縁である。さらにグリム童話の魔女は、神学の魔女規定とは違い、悪魔と結託することもない。
著者
山田 正 平野 廣和 藤吉 康志 太田 幸雄 大石 哲 平野 廣和 藤吉 康志 太田 幸雄 大石 哲
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雲物理過程解明のために行った実験よりエアロゾル量の増加に伴い雲水量も増加するがエアロゾル量が閾値を超えると生成される雲水量が一定になり飽和状態になる。また上昇風速が大きくなればなるほど雲水量が増加することがわかった。ヒートアイランドを緩和させる効果のある河川周辺で行った微気象観測により河川の大きさに関わらず水面付近の気温は周囲より低く、河川上の冷気が運ばれやすい風道がある場所の気温は2~3℃周囲より低いことがわかった。
著者
貝 健三 小峯 優美子 小峯 健一 浅井 健一 黒石 智誠 小堤 知行 板垣 昌志 太田 實 熊谷 勝男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.873-878, 2002-10-25
被引用文献数
6 23

乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に罹患したホルスタイン種の乳牛に対して,ウシラクトフェリンの臨床効果を評価した.3農場でブドウ球菌性乳房炎を発症した41分房から無作為に選定した12分房にはウシラクトフェリンを投与し,29分房には対照として抗生剤を投与した.その結果,ウシラクトフェリン投与区では91.7%の乳房炎分房が分娩後7日目までに治癒し,対照区では48.3%が治癒した.別の分房を用いて乳汁の変化を調べたところ乳房炎分房における乳汁中のブドウ球菌数は,ウシラクトフェリンを投与した5分房および抗生剤を投与した対照の5分房において,投与後,有意に減少した(p<0.05).この乳汁における全細胞数は,ウシラクトフェリンを投与した分房では増加したが,対照分房では変化が認められなかった.また,健康な乳房においてもウシラクトフェリンを投与した6分房に限って,乳汁中全細胞数が増加し,これらの細胞の多くは多形核白血球および補体受容体であるCD11bの陽性細胞といった食細胞群であった.乳房炎分房における乳汁中C3濃度はウシラクトフェリンを投与した5分房で有意に増加したが(p<0.05),対照の5分房では投与後の有意差は認められなかった.以上の結果より,ウシラクトフェリンによる治療には乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に対して宿主の自然免疫を誘導し,乳房炎の治癒率が高まる可能性が示唆された.
著者
宮澤 一治 太田 助十郎 小嶋 由希子 水沼 隆秀 西川 俊昭
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.724-728, 1998 (Released:2008-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2 4

仰臥位で行われた手術後,一過性に下肢のしびれ感,疼痛,歩行障害が出現し,腓骨神経麻痺の診断で治療を要した3症例を経験した.3症例とも症状は一過性で麻痺を残すことはなかった.今回の腓骨神経麻痺は術中の体位固定による膝部の過伸展が主な原因ではないかと考えられた.膝上部大腿後面にスポンジ製パッドを敷き,膝窩部をやや屈曲させ,また,ベルト状の抑制帯は膝部を避け,ややゆとりをもって大腿部もしくは下腿部に巻くなどの防止策をとって以来,仰臥位手術後の腓骨神経麻痺の発現をみていない.

1 0 0 0 OA 鮮支一瞥

著者
太田寿 編
出版者
太田寿
巻号頁・発行日
1929
著者
河野 勝 日置 佳之 田中 隆 長田 光世 須田 真一 太田 望洋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-61, 1997

Nowadays, ponds in urban parks as habitats of plants and animals are strongly required in order to maintain biodivesity. The authors investigated on present and past situation of aquatic plants and structure of ponds in urban parks by questionnaires which sent to management staffs of urban parks. 160 sample data from all parts of Japan. were analyzed for clarifying relationships between aquatic plants and some factors of ponds' structures.<BR>Consequently, following relationships became cleared.<BR>(1) Approximately 30% of ponds are made with waterproof sheets and area of them are limited below mostly 10, 000<SUP>2</SUP> The main reason that ponds' area are limited is difficulty of water supply.<BR>(2) Most of the substratum of natural or semi-natural ponds are mud or silt in contrast that gravel used in man made (artificial) ponds.<BR>(3) More than 50% of ponds have only hygrophyte and emerged plants. On the other hands floating plants and benthophyte disappeared in many ponds though they were existed in past. It is considered that floating plants and benthophyte are sensitive for environmental impacts such as eutrophication.<BR>(4) Four structural factors; area of ponds, waterproof, structure of ponds' shore, and origin of ponds are related each other. Also certain relationship between hygrophyte or emerged plants and area of ponds or structure of ponds' shore are recognized. However, these kinds of relationships are not exist between hygrophyte or emerged plantsand waterproof or origin of ponds.